86 / 242
学院編
86 自習時間
しおりを挟む
次の授業までは十分の休憩時間を挟むが、その間にディクソン先生が時間割りのプリントを持ってきた。
「次の授業は『宮廷マナー』です。受けない方は隣の教室に移動してください」
『宮廷マナー』か。
およそ僕には関係無さそうなので隣の教室に移動した。
アーサーも僕と一緒に隣の教室へと移動する。
「アーサーは受けなくていいのか?」
僕よりも家柄は上なのだから、王宮に呼ばれる機会はあるはずだ。
けれどアーサーは軽く頭を振ると僕の隣の席に腰を下ろした。
「跡を継ぐのならマナーは必要だと思うけど、僕は継がないしね。何処かの家に婿養子なんて話もないし…」
そう言って。アーサーは教室内をぐるっと見渡した。
こちらに移動して来たのはほとんどが男爵の家系の者だった。
しかも次男か三男で、家督を継ぐ予定のない者達ばかりだ。
おそらく、何処かの貴族の婿養子に入る予定もない人達なのだろう。
それとも、僕みたいに端から貴族とは距離を置きたいと考えている人もいるのだろうか?
他人の事情など聞いて回るわけにもいかないので、そこまではわからない。
始業のチャイムが鳴ったので大人しく自習をする事にした。
「自習って、何をやる?」
アーサーに尋ねると、アーサーは今貰った時間割のプリントに目を通した。
「そうだなぁ…。うえっ! この後は計算の授業かよ。…はぁ…、一気にやる気が無くなったな…」
ペタリと机に突っ伏すアーサーに僕は苦笑するしかない。
「今度、掛け算の仕方を教えてあげるよ」
そう、声をかけたが返事がない。
おかしいな?
いつもなら、ガバッと身体を起こして「ホントか? 流石はエド、頼りになるな」
とか言いそうなものなのに…。
まさか、あの一瞬で寝ちゃったのか?
「アーサー、聞いてる?」
隣にいるアーサーの身体をユサユサと揺するけれど何の反応もない。
「アーサー?」
再びアーサーの身体を揺すってみるけれど、起きる気配すらない。
一体、アーサーの身に何が起こったんだ?
立ち上がろうとした僕は教室の中がやけにしん、としている事に気付いた。
誰からも何の反応もないのだ。
慌てて隣の席を見ると、静止画のように止まったままの姿の生徒がいた。
彼だけでなく、僕以外の皆が今までしていた仕草のままで止まっているのだ。
まるで、僕以外の人の時間が止まってしまったかのようだ。
「何で…? どうしてこんな事に…?」
呆然としている僕の目の前に突然、誰かが現れた。
真っ白な長い髪をして、真っ黒なローブを着た若い男性だ。
その耳が尖っている事に気付いた僕は思わず呟いた。
「エ、エルフ?」
そのエルフの男性は僕を見て、ニッと笑ってみせる。
「心配いりませんよ。私とあなた以外の人間の時間をちょっと止めただけです」
時間を止めた…?
「どうして、そんな事を?」
「あなたとゆっくり話すためですよ。エドアルド君」
僕の名前を知っている?
今、初めて会ったばかりなのにどうして僕の名前を知っているんだろう?
驚いている僕を見て、エルフの男性はまたもやクッと小さな笑いを漏らす。
「おや。不思議そうな顔をしていますね。私が誰だかわからないのでしょうか? これならどうでしょう」
エルフの男性の身体を白い霧が包む。
その霧が晴れると、背の低い老人が現れた。
その顔を見て僕は思わず呟く。
「マ、マーリン先生?」
「次の授業は『宮廷マナー』です。受けない方は隣の教室に移動してください」
『宮廷マナー』か。
およそ僕には関係無さそうなので隣の教室に移動した。
アーサーも僕と一緒に隣の教室へと移動する。
「アーサーは受けなくていいのか?」
僕よりも家柄は上なのだから、王宮に呼ばれる機会はあるはずだ。
けれどアーサーは軽く頭を振ると僕の隣の席に腰を下ろした。
「跡を継ぐのならマナーは必要だと思うけど、僕は継がないしね。何処かの家に婿養子なんて話もないし…」
そう言って。アーサーは教室内をぐるっと見渡した。
こちらに移動して来たのはほとんどが男爵の家系の者だった。
しかも次男か三男で、家督を継ぐ予定のない者達ばかりだ。
おそらく、何処かの貴族の婿養子に入る予定もない人達なのだろう。
それとも、僕みたいに端から貴族とは距離を置きたいと考えている人もいるのだろうか?
他人の事情など聞いて回るわけにもいかないので、そこまではわからない。
始業のチャイムが鳴ったので大人しく自習をする事にした。
「自習って、何をやる?」
アーサーに尋ねると、アーサーは今貰った時間割のプリントに目を通した。
「そうだなぁ…。うえっ! この後は計算の授業かよ。…はぁ…、一気にやる気が無くなったな…」
ペタリと机に突っ伏すアーサーに僕は苦笑するしかない。
「今度、掛け算の仕方を教えてあげるよ」
そう、声をかけたが返事がない。
おかしいな?
いつもなら、ガバッと身体を起こして「ホントか? 流石はエド、頼りになるな」
とか言いそうなものなのに…。
まさか、あの一瞬で寝ちゃったのか?
「アーサー、聞いてる?」
隣にいるアーサーの身体をユサユサと揺するけれど何の反応もない。
「アーサー?」
再びアーサーの身体を揺すってみるけれど、起きる気配すらない。
一体、アーサーの身に何が起こったんだ?
立ち上がろうとした僕は教室の中がやけにしん、としている事に気付いた。
誰からも何の反応もないのだ。
慌てて隣の席を見ると、静止画のように止まったままの姿の生徒がいた。
彼だけでなく、僕以外の皆が今までしていた仕草のままで止まっているのだ。
まるで、僕以外の人の時間が止まってしまったかのようだ。
「何で…? どうしてこんな事に…?」
呆然としている僕の目の前に突然、誰かが現れた。
真っ白な長い髪をして、真っ黒なローブを着た若い男性だ。
その耳が尖っている事に気付いた僕は思わず呟いた。
「エ、エルフ?」
そのエルフの男性は僕を見て、ニッと笑ってみせる。
「心配いりませんよ。私とあなた以外の人間の時間をちょっと止めただけです」
時間を止めた…?
「どうして、そんな事を?」
「あなたとゆっくり話すためですよ。エドアルド君」
僕の名前を知っている?
今、初めて会ったばかりなのにどうして僕の名前を知っているんだろう?
驚いている僕を見て、エルフの男性はまたもやクッと小さな笑いを漏らす。
「おや。不思議そうな顔をしていますね。私が誰だかわからないのでしょうか? これならどうでしょう」
エルフの男性の身体を白い霧が包む。
その霧が晴れると、背の低い老人が現れた。
その顔を見て僕は思わず呟く。
「マ、マーリン先生?」
362
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる