御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
121 / 242
学院編

121 オーウェンの報告

しおりを挟む
 クリフトンに素顔を見られた翌日から、僕は戦々恐々としながら学院に通った。

 廊下を歩けば、後ろを歩いている足音が聞こえては振り返り、前から歩いてくる人物がいれば顔を隠してやり過ごす、というような事を繰り返していた。

 そんな事を二~三日繰り返していたが、僕の行動をアーサーは不審に思ったようだ。

「エド、どうしたんだ? 最近やけに周りを気にしていないか?」

「え? そ、そうかな? いつもと変わらないつもりなんだけれど…」 

 ゴニョゴニョと言葉尻を濁す僕にアーサーは納得のいかないような顔を見せる。

「何か気になる事があるんなら相談に乗るよ?」

 そう言ってくれるアーサーには悪いけれど、流石に『僕がこの国の王子でクリフトンに素顔を見られた』とは言えない。

「ありがとう、アーサー。でも全然大丈夫だからね」

 そう言って笑ってみせるとアーサーは不承不承ながらも頷いた。

「わかった。でも、本当にいつでも相談に乗るからね」

 アーサーに念を押されて僕はコクリと頷く。

「わかったよ、アーサー。何かあればすぐに相談するからね」

 そう約束をすると、アーサーは満足そうに頷いた。

 その日の授業が終わり帰り支度をしている時だった。

 急に教室内がしんと静まり返り、クラスメイトの誰もが静止画のように動かなくなった。

(まさか、またオーウェンの仕業か?)

 そう思った僕の前に案の定、オーウェンが姿を現した。

「オーウェン、今度は何の用ですか?」

 身構えながら問いかけるとオーウェンは長い髪をサラリと後ろに払い除けてみせた。

 確かに美形だしサマになる仕草だけれど、どうしてわざわざ僕に見せつけるんだろう?

 そういうのは「キャーキャー」言ってくれる女性に対してやればいいのにな。

「エドアルド君が困っているようだから助けてあげようかと思いましてね。それとも私の助けは必要ないですか?」 

「助けって何の事ですか?」 

「とぼけても無駄ですよ。クリフトンに素顔を見られて困っているんでしょう? それに、クリフトンの方もエドアルド君にもう一度会いたいと思っているようですよ」

 オーウェンにズバリと言われて僕は二の句が継げなかった。

 しかもクリフトンが僕に会いたがっていると言われて更に驚いた。

「クリフトンが僕に…。どうして…」

「そりゃ、エドアルド君の顔がエドワード王子に瓜二つだったからですよ。しかもその事をエドワード王子に話していましたからね」

「ええっ!」

 オーウェンの話に僕は心底驚いた。

 まさか、クリフトンが僕の事をエドワード王子に話すとは思ってもいなかったからだ。

「どうしてまた…。オーウェンのお得意の技でクリフトンの記憶を改ざんしたり出来ないんですか?」

 するとオーウェンは「ほうっ」と悩ましげにため息をついてみせた。

 だから、そういうのは要らないってば!

「そうしたいのはやまやまなんですけどね。どういう訳か記憶の改ざんがあやふやなんですよね」

 つまりオーウェンの術が効かないって事なんだろうか?

「とりあえず、一年生の間はエドワード王子とクリフトンには遭遇しないようにしてあげます。だけど二年生になったら合同授業が始まりますからね。その時は覚悟を決めてください」

「…はい」 

 とりあえずはオーウェンのおかげでエドワード王子とクリフトンに顔を合わせなくて済むようだ。

「それじゃ」 

 そう言って姿を消そうとするオーウェンに素朴な疑問をぶつけてみた。

「こうやって時間が止まっている間、僕の時間はどうなっているんですか?」

 予想外の事を聞かれたらしく、オーウェンは一瞬ポカンと口を開けていた。

「そんなの、私達の時間は普通に過ぎているに決まっているじゃないですか」

「え? つまり今、僕達は普通に齢を取っていると…」

「そうですよ」

 オーウェンは何でもない事のように言うけれど、僕にとっては大問題だ。

「他の人達の時間は止まっていても、僕達はその分老化が進んでいるってことじゃないですか!」

「それがどうしたんですか。ほんの数分の事じゃないですか。それくらいで目くじらを立てないでください」

 そう言い残すとオーウェンはサッと姿を消した。

 その途端、教室内はまたいつもの喧騒に包まれていった。


しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...