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学院編
159 打ち合わせ
僕と宰相達はエドワード王子の寝室から元の部屋へと戻ると、待ち構えたように王妃が口を開いた。
「どう? エドワードの代わりをお願いする理由がわかったかしら?」
「はい。確かにあの顔ではお見舞いを拒否するのもわかります。初対面の人にあんな顔を見せたくはないですよね」
僕がうなずくと王妃はこめかみを押さえてほうっと息を吐いた。
「本当にどうしてこんな大事な時に病気になったのかしら? 今まで病気らしい病気なんてした事がなかったのに…」
どうやらエドワードも病気とは無縁に生きてきたようだ。
前世では男の子は病気にかかりやすく、僕も和也もしょっちゅう病気をしては寝込んでいた。
おまけに双子だからどちらかが病気をもらってきたら、もう片方も病気になるというパターンが多かった。
今となっては懐かしい思い出だ。
ほんの少しノスタルジックな気分に浸ったが、すぐに気持ちを切り替えた。
明日、エドワード王子の代わりをするのなら、その内容を把握しておかなければならない。
「それで? 明日僕は何をすれば良いんですか?」
前に座る二人に尋ねると王妃はチラリと視線を国王に向けた。
それを受けて国王が明日の事について説明してくれる。
「今日はこのままここに泊まってもらう。晩餐会は夕方だが、その前に隣国の大使との顔合わせがあるからな。その顔合わせの後に晩餐会があるが、エドアルドは『体調が優れない』と言って途中退席してもらって構わない。そして明後日、大使達が帰国する際に顔を見せるだけで構わない」
どうやら必要最低限の顔出しで済ませるようだ。
国王はそれから僕の後方に控えているブライアンに目を向けた。
「それから、ブライアンにはエドアルドの側近として側に仕えてもらう。これからエドワードの仕草などをエドアルドに叩き込んでくれ。また、王宮内についても説明してやってくれ」
僕が振り返ってブライアンを見ると、ブライアンは深々とお辞儀をした。
「かしこまりました。これからみっちりエドアルド様にエドワード王子について学んでもらいます」
顔を上げたブライアンの目はやる気に満ちていた。
僕の失敗はエドワード王子の失敗として他の人には映るだろう。
そんな事態を避けるためにもブライアンはあの手この手で阻止しようとするに違いない。
それにしても王宮に泊まるって、大丈夫なのか?
エルガー家には連絡が行っているんだろうか?
「ダニエルとセレナには使いをやったわ。今日明日は王宮に泊まらせると伝えたから心配しなくても大丈夫よ。ただし、エドワードの代わりをするなんて誰にも口外しないでちょうだい。それじゃ、後の事は任せるわ」
そう告げると王妃はそそくさとこの部屋から出て行った。
やはり、国王とは仲が悪いからこの部屋に長居はしたくないんだろうな。
そう思っていると、王妃が退出したのを見計らったかのように、奥にある扉が開いて一人の侍女が入って来た。
その顔を見るなり僕はポカンと口を開けた。
その侍女は僕の様子など気づいていないようで、国王の後ろに立った。
その顔は忘れもしない、僕を捨てたサラのものだった。
そうか。
この女が来るから王妃はこの部屋から出ていったのか。
既に冷めた関係とはいえ、自分の夫の愛人と同席なんてしたくないよね。
僕自身、サラとはあまり顔を合わせたいとは思わない。
いくら命令されたからといって何の躊躇いもなく生まれたばかりの赤ん坊の僕を捨てに行った人物だからね。
僕は心の中にモヤモヤした気持ちを抱えつつ、視線をサラから国王に移した。
「どう? エドワードの代わりをお願いする理由がわかったかしら?」
「はい。確かにあの顔ではお見舞いを拒否するのもわかります。初対面の人にあんな顔を見せたくはないですよね」
僕がうなずくと王妃はこめかみを押さえてほうっと息を吐いた。
「本当にどうしてこんな大事な時に病気になったのかしら? 今まで病気らしい病気なんてした事がなかったのに…」
どうやらエドワードも病気とは無縁に生きてきたようだ。
前世では男の子は病気にかかりやすく、僕も和也もしょっちゅう病気をしては寝込んでいた。
おまけに双子だからどちらかが病気をもらってきたら、もう片方も病気になるというパターンが多かった。
今となっては懐かしい思い出だ。
ほんの少しノスタルジックな気分に浸ったが、すぐに気持ちを切り替えた。
明日、エドワード王子の代わりをするのなら、その内容を把握しておかなければならない。
「それで? 明日僕は何をすれば良いんですか?」
前に座る二人に尋ねると王妃はチラリと視線を国王に向けた。
それを受けて国王が明日の事について説明してくれる。
「今日はこのままここに泊まってもらう。晩餐会は夕方だが、その前に隣国の大使との顔合わせがあるからな。その顔合わせの後に晩餐会があるが、エドアルドは『体調が優れない』と言って途中退席してもらって構わない。そして明後日、大使達が帰国する際に顔を見せるだけで構わない」
どうやら必要最低限の顔出しで済ませるようだ。
国王はそれから僕の後方に控えているブライアンに目を向けた。
「それから、ブライアンにはエドアルドの側近として側に仕えてもらう。これからエドワードの仕草などをエドアルドに叩き込んでくれ。また、王宮内についても説明してやってくれ」
僕が振り返ってブライアンを見ると、ブライアンは深々とお辞儀をした。
「かしこまりました。これからみっちりエドアルド様にエドワード王子について学んでもらいます」
顔を上げたブライアンの目はやる気に満ちていた。
僕の失敗はエドワード王子の失敗として他の人には映るだろう。
そんな事態を避けるためにもブライアンはあの手この手で阻止しようとするに違いない。
それにしても王宮に泊まるって、大丈夫なのか?
エルガー家には連絡が行っているんだろうか?
「ダニエルとセレナには使いをやったわ。今日明日は王宮に泊まらせると伝えたから心配しなくても大丈夫よ。ただし、エドワードの代わりをするなんて誰にも口外しないでちょうだい。それじゃ、後の事は任せるわ」
そう告げると王妃はそそくさとこの部屋から出て行った。
やはり、国王とは仲が悪いからこの部屋に長居はしたくないんだろうな。
そう思っていると、王妃が退出したのを見計らったかのように、奥にある扉が開いて一人の侍女が入って来た。
その顔を見るなり僕はポカンと口を開けた。
その侍女は僕の様子など気づいていないようで、国王の後ろに立った。
その顔は忘れもしない、僕を捨てたサラのものだった。
そうか。
この女が来るから王妃はこの部屋から出ていったのか。
既に冷めた関係とはいえ、自分の夫の愛人と同席なんてしたくないよね。
僕自身、サラとはあまり顔を合わせたいとは思わない。
いくら命令されたからといって何の躊躇いもなく生まれたばかりの赤ん坊の僕を捨てに行った人物だからね。
僕は心の中にモヤモヤした気持ちを抱えつつ、視線をサラから国王に移した。
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