御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
170 / 242
学院編

170 ミッション終了

しおりを挟む
 王妃のお茶会が終わると僕とブライアンはそのまま昨日のホール近くの控え室に向かった。

 この後はサウスフォード王国の使節団の帰国を見送るセレモニーがある。

 見送りに立ち会うのは僕達王族と一部の貴族だけでかなり簡素化されたセレモニーだった。

 もう少しゆっくりしてもらいたいとは思うが、馬車での移動に時間がかかるので致し方ないだろう。

 たとえ前世の記憶があっても、流石に新幹線とか飛行機の開発なんて僕に出来るはずもない。

 車の免許も持ってはいたけれど、自動車の仕組みなんてちんぷんかんぷんだ。

 またしてもきらびやかな衣装を着せられて僕とブライアンはセレモニーに参加した。

「ハロルド殿。また会える日を待っておるぞ」

 国王陛下の言葉に使節団団長は恭しく頭を下げた。

「ありがとうございます。これからも両国の友好に力を入れて参ります」

 使節団団長が一歩下がると今度はアンジェリカ王女が前に進み出た。

 お茶会での装いとは打って変わってキラキラのドレスが目を引く。

「国王陛下、王妃殿下。お世話になりました。またお会い出来る日を楽しみにしています」

 そう言って頭を下げたアンジェリカ王女は、顔を上げるとチラリと僕の方に視線を向けた。

 もしかしてアンジェリカ王女はエドワード王子との婚約話を受け入れたのだろうか?

 上手く笑い返す間もなくアンジェリカ王女は僕から視線を逸らしてしまった。

 そのままサウスフォード使節団の一行はホールから退出していき、ホールの扉が閉ざされる。

「…終わったな」

 そう呟いて国王陛下はチラリと僕に視線を向けた。

「…ご苦労だった」

 そう告げた後も何か僕に言いたそうな顔をしていたが、やがてフルリと頭を振ると国王陛下は先に退出して行った。

 王妃も僕をじっと見つめていたが、こちらも何も言わずにアメリアを伴って行ってしまった。

「エドワード王子、私達も退出しましょう」 

 ブライアンに促され、僕もホールからプライベートゾーンへと戻る。

 部屋に入って上着をサラに預けるとようやく全てから解放された気分になった。

「疲れたー」

 ソファにぐったりと座り込むと、ブライアンも同じように向かい側に座り込む。

「私もです。こんなに神経を使ったのは初めてですよ」

 そこへ宰相が姿を現した。

「エドアルド様、お疲れ様でした。これから自宅までお送りします」

 いつまでも王宮にいては誰かに見咎められかねない。

 その前にもう一度エドワード王子を見舞った。

「やあ、エドアルド。ありがとう。本当に助かったよ」

 片方の頬を腫らしたエドワード王子がベッドの中から僕をねぎらう。

「誰にも気づかれなかったと思うんだけどね。後で誰かから指摘されたりするかな?」

「その時は、『体調が悪かった』ってごまかしておくよ」

「そうか。それじゃ僕は帰るよ。お大事に」

 そう告げて僕は宰相とブライアンと共にエドワード王子の部屋を後にした。

 玄関にはここへ来た時と同じ馬車が僕を待っていた。

 馬車に乗り込んだのは僕とブライアンだけで、宰相はその場にとどまる。

「それでは、エドアルド様。またお会い出来る日を楽しみにしています」

 宰相にそう言われて僕は思わず顔をしかめた。

「もうそんな日は来てほしくないですね」

 そう本音を漏らす僕に宰相はフッと口元を緩める。

 その意味深な微笑みを見せたまま扉が閉じられ、馬車が走り出した。

 王宮の門を抜けたところでようやく僕は全身の力を抜いた。

 こうして僕の影武者としてのミッションは幕を閉じた。



 それから二週間後、僕は両方の頬を見事に腫らしたのだった。



 
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...