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学院編
170 ミッション終了
王妃のお茶会が終わると僕とブライアンはそのまま昨日のホール近くの控え室に向かった。
この後はサウスフォード王国の使節団の帰国を見送るセレモニーがある。
見送りに立ち会うのは僕達王族と一部の貴族だけでかなり簡素化されたセレモニーだった。
もう少しゆっくりしてもらいたいとは思うが、馬車での移動に時間がかかるので致し方ないだろう。
たとえ前世の記憶があっても、流石に新幹線とか飛行機の開発なんて僕に出来るはずもない。
車の免許も持ってはいたけれど、自動車の仕組みなんてちんぷんかんぷんだ。
またしてもきらびやかな衣装を着せられて僕とブライアンはセレモニーに参加した。
「ハロルド殿。また会える日を待っておるぞ」
国王陛下の言葉に使節団団長は恭しく頭を下げた。
「ありがとうございます。これからも両国の友好に力を入れて参ります」
使節団団長が一歩下がると今度はアンジェリカ王女が前に進み出た。
お茶会での装いとは打って変わってキラキラのドレスが目を引く。
「国王陛下、王妃殿下。お世話になりました。またお会い出来る日を楽しみにしています」
そう言って頭を下げたアンジェリカ王女は、顔を上げるとチラリと僕の方に視線を向けた。
もしかしてアンジェリカ王女はエドワード王子との婚約話を受け入れたのだろうか?
上手く笑い返す間もなくアンジェリカ王女は僕から視線を逸らしてしまった。
そのままサウスフォード使節団の一行はホールから退出していき、ホールの扉が閉ざされる。
「…終わったな」
そう呟いて国王陛下はチラリと僕に視線を向けた。
「…ご苦労だった」
そう告げた後も何か僕に言いたそうな顔をしていたが、やがてフルリと頭を振ると国王陛下は先に退出して行った。
王妃も僕をじっと見つめていたが、こちらも何も言わずにアメリアを伴って行ってしまった。
「エドワード王子、私達も退出しましょう」
ブライアンに促され、僕もホールからプライベートゾーンへと戻る。
部屋に入って上着をサラに預けるとようやく全てから解放された気分になった。
「疲れたー」
ソファにぐったりと座り込むと、ブライアンも同じように向かい側に座り込む。
「私もです。こんなに神経を使ったのは初めてですよ」
そこへ宰相が姿を現した。
「エドアルド様、お疲れ様でした。これから自宅までお送りします」
いつまでも王宮にいては誰かに見咎められかねない。
その前にもう一度エドワード王子を見舞った。
「やあ、エドアルド。ありがとう。本当に助かったよ」
片方の頬を腫らしたエドワード王子がベッドの中から僕をねぎらう。
「誰にも気づかれなかったと思うんだけどね。後で誰かから指摘されたりするかな?」
「その時は、『体調が悪かった』ってごまかしておくよ」
「そうか。それじゃ僕は帰るよ。お大事に」
そう告げて僕は宰相とブライアンと共にエドワード王子の部屋を後にした。
玄関にはここへ来た時と同じ馬車が僕を待っていた。
馬車に乗り込んだのは僕とブライアンだけで、宰相はその場にとどまる。
「それでは、エドアルド様。またお会い出来る日を楽しみにしています」
宰相にそう言われて僕は思わず顔をしかめた。
「もうそんな日は来てほしくないですね」
そう本音を漏らす僕に宰相はフッと口元を緩める。
その意味深な微笑みを見せたまま扉が閉じられ、馬車が走り出した。
王宮の門を抜けたところでようやく僕は全身の力を抜いた。
こうして僕の影武者としてのミッションは幕を閉じた。
それから二週間後、僕は両方の頬を見事に腫らしたのだった。
この後はサウスフォード王国の使節団の帰国を見送るセレモニーがある。
見送りに立ち会うのは僕達王族と一部の貴族だけでかなり簡素化されたセレモニーだった。
もう少しゆっくりしてもらいたいとは思うが、馬車での移動に時間がかかるので致し方ないだろう。
たとえ前世の記憶があっても、流石に新幹線とか飛行機の開発なんて僕に出来るはずもない。
車の免許も持ってはいたけれど、自動車の仕組みなんてちんぷんかんぷんだ。
またしてもきらびやかな衣装を着せられて僕とブライアンはセレモニーに参加した。
「ハロルド殿。また会える日を待っておるぞ」
国王陛下の言葉に使節団団長は恭しく頭を下げた。
「ありがとうございます。これからも両国の友好に力を入れて参ります」
使節団団長が一歩下がると今度はアンジェリカ王女が前に進み出た。
お茶会での装いとは打って変わってキラキラのドレスが目を引く。
「国王陛下、王妃殿下。お世話になりました。またお会い出来る日を楽しみにしています」
そう言って頭を下げたアンジェリカ王女は、顔を上げるとチラリと僕の方に視線を向けた。
もしかしてアンジェリカ王女はエドワード王子との婚約話を受け入れたのだろうか?
上手く笑い返す間もなくアンジェリカ王女は僕から視線を逸らしてしまった。
そのままサウスフォード使節団の一行はホールから退出していき、ホールの扉が閉ざされる。
「…終わったな」
そう呟いて国王陛下はチラリと僕に視線を向けた。
「…ご苦労だった」
そう告げた後も何か僕に言いたそうな顔をしていたが、やがてフルリと頭を振ると国王陛下は先に退出して行った。
王妃も僕をじっと見つめていたが、こちらも何も言わずにアメリアを伴って行ってしまった。
「エドワード王子、私達も退出しましょう」
ブライアンに促され、僕もホールからプライベートゾーンへと戻る。
部屋に入って上着をサラに預けるとようやく全てから解放された気分になった。
「疲れたー」
ソファにぐったりと座り込むと、ブライアンも同じように向かい側に座り込む。
「私もです。こんなに神経を使ったのは初めてですよ」
そこへ宰相が姿を現した。
「エドアルド様、お疲れ様でした。これから自宅までお送りします」
いつまでも王宮にいては誰かに見咎められかねない。
その前にもう一度エドワード王子を見舞った。
「やあ、エドアルド。ありがとう。本当に助かったよ」
片方の頬を腫らしたエドワード王子がベッドの中から僕をねぎらう。
「誰にも気づかれなかったと思うんだけどね。後で誰かから指摘されたりするかな?」
「その時は、『体調が悪かった』ってごまかしておくよ」
「そうか。それじゃ僕は帰るよ。お大事に」
そう告げて僕は宰相とブライアンと共にエドワード王子の部屋を後にした。
玄関にはここへ来た時と同じ馬車が僕を待っていた。
馬車に乗り込んだのは僕とブライアンだけで、宰相はその場にとどまる。
「それでは、エドアルド様。またお会い出来る日を楽しみにしています」
宰相にそう言われて僕は思わず顔をしかめた。
「もうそんな日は来てほしくないですね」
そう本音を漏らす僕に宰相はフッと口元を緩める。
その意味深な微笑みを見せたまま扉が閉じられ、馬車が走り出した。
王宮の門を抜けたところでようやく僕は全身の力を抜いた。
こうして僕の影武者としてのミッションは幕を閉じた。
それから二週間後、僕は両方の頬を見事に腫らしたのだった。
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