184 / 242
学院編
184 卒業式
しおりを挟む
ホールの入り口付近に到着すると、そこには既に上位貴族の卒業生達が待機していた。
それぞれ在校生達によって制服の左胸に花の形のコサージュを付けられている。
在校生達は僕達が到着したのに気づいてこちらに寄ってきた。
「ご卒業おめでとうございます。コサージュを付けさせていただきます」
コサージュを付けてくれるのが男子生徒なのは色気がないけど、変に男子生徒と女子生徒が密着するのを避けるためだから仕方がない。
コサージュを付けてもらうと僕達は整列をしてホールへの入場を待った。
「それでは卒業生の皆さんにご入場いただきます」
ホールの中から高らかな声が聞こえてホールの入り口が開けられた。
先頭にいるのは勿論エドワード王子だ。
皆が見守る中、卒業生達が入場するのだが、僕は正面にあるスクリーンを見てギョッとした。
以前、国王の告白の際に設置されたスクリーンはそのまま撤去もされなかったが、そこに僕達が入場する姿が映し出されていたのだ。
まさか、この卒業式を国内全体に中継しているわけじゃないよね?
誰かにそう聞きたかったが、そんな状況でないのは明白だ。
僕は必死に表情を取り繕うと自分の席へと足を進めた。
卒業生全員が入場を終えるといよいよ卒業式が始まった。
開式の言葉が述べられた後、卒業証書の授与式である。
一人一人の名前が呼ばれ、壇上に上がって学院長から卒業証書を受け取る。
当然の事ながら、そのシーンも後ろのスクリーンに映し出された。
真っ先に名前を呼ばれたのはエドワード王子だ。
名前を呼ばれたエドワード王子は「はい」と返事をすると壇上に上がっていった。
エドワード王子の顔がスクリーンに大写しになると、一部の女子生徒から「ほう」とため息が漏れている。
本当にあのエドワード王子と僕が瓜二つなんて信じられないな。
学院長から卒業証書を受け取ったエドワード王子はホール内を軽く見回してニコッと笑顔を見せた。
その笑顔にまたしても女子生徒達からため息が漏れる。
何とも気障な奴だな。
エドワード王子が壇上から降りると、ブライアン、クリフトンと続いていった。
上位貴族が終わると今度は僕達の番だった。
子爵家の生徒達の後で僕の名前が呼ばれた。
「はい」と返事をして壇上に上がったが、緊張していたのかどうかはわからないが、何故か足がつんのめってしまった。
「うわっ!」
必死に体勢を立て直したのですっ転ぶ事はなかったが、何故か黒縁眼鏡が顔からずり落ちそうになった。
すぐに何事もなかったかのように眼鏡の位置を戻したから、誰にも見られなかったに違いない。
正面にいる学院長も澄ました顔を崩していない。
僕は卒業証書を受け取ると、少し顔を伏せるようにして自分の席へと戻った。
******
エドアルドが危惧したとおりに国内に設置されたスクリーンには学院の卒業式の様子が映し出されていた。
人々は皆一様に集まって卒業式を見届けていた。
「あれが、エドワード王子様? とっても素敵な方ね」
「お若い頃の王妃様によく似ていらっしゃるわ」
「いや、国王陛下の面影もあるぞ」
人々はそのうち、一人の男子生徒を見てハッとした。
その男子生徒は壇上に上がると何かに躓いたようで転びそうになっていた。
体勢は立て直したものの、かけていた黒縁眼鏡が顔から盛大にズレていた。
「あ、あれは!」
エドアルドはすぐに眼鏡を直したつもりでも、その素顔は間違いなく全国民にさらけ出されてしまっていた。
人々はすぐにそれが『もう一人の王子』だと悟ったが、誰も声に出して言ったりはしなかった。
(国王陛下が公表しない以上、自分達が声を上げるわけにはいかない)
そこには確かに暗黙の了解が交わされていた。
それぞれ在校生達によって制服の左胸に花の形のコサージュを付けられている。
在校生達は僕達が到着したのに気づいてこちらに寄ってきた。
「ご卒業おめでとうございます。コサージュを付けさせていただきます」
コサージュを付けてくれるのが男子生徒なのは色気がないけど、変に男子生徒と女子生徒が密着するのを避けるためだから仕方がない。
コサージュを付けてもらうと僕達は整列をしてホールへの入場を待った。
「それでは卒業生の皆さんにご入場いただきます」
ホールの中から高らかな声が聞こえてホールの入り口が開けられた。
先頭にいるのは勿論エドワード王子だ。
皆が見守る中、卒業生達が入場するのだが、僕は正面にあるスクリーンを見てギョッとした。
以前、国王の告白の際に設置されたスクリーンはそのまま撤去もされなかったが、そこに僕達が入場する姿が映し出されていたのだ。
まさか、この卒業式を国内全体に中継しているわけじゃないよね?
誰かにそう聞きたかったが、そんな状況でないのは明白だ。
僕は必死に表情を取り繕うと自分の席へと足を進めた。
卒業生全員が入場を終えるといよいよ卒業式が始まった。
開式の言葉が述べられた後、卒業証書の授与式である。
一人一人の名前が呼ばれ、壇上に上がって学院長から卒業証書を受け取る。
当然の事ながら、そのシーンも後ろのスクリーンに映し出された。
真っ先に名前を呼ばれたのはエドワード王子だ。
名前を呼ばれたエドワード王子は「はい」と返事をすると壇上に上がっていった。
エドワード王子の顔がスクリーンに大写しになると、一部の女子生徒から「ほう」とため息が漏れている。
本当にあのエドワード王子と僕が瓜二つなんて信じられないな。
学院長から卒業証書を受け取ったエドワード王子はホール内を軽く見回してニコッと笑顔を見せた。
その笑顔にまたしても女子生徒達からため息が漏れる。
何とも気障な奴だな。
エドワード王子が壇上から降りると、ブライアン、クリフトンと続いていった。
上位貴族が終わると今度は僕達の番だった。
子爵家の生徒達の後で僕の名前が呼ばれた。
「はい」と返事をして壇上に上がったが、緊張していたのかどうかはわからないが、何故か足がつんのめってしまった。
「うわっ!」
必死に体勢を立て直したのですっ転ぶ事はなかったが、何故か黒縁眼鏡が顔からずり落ちそうになった。
すぐに何事もなかったかのように眼鏡の位置を戻したから、誰にも見られなかったに違いない。
正面にいる学院長も澄ました顔を崩していない。
僕は卒業証書を受け取ると、少し顔を伏せるようにして自分の席へと戻った。
******
エドアルドが危惧したとおりに国内に設置されたスクリーンには学院の卒業式の様子が映し出されていた。
人々は皆一様に集まって卒業式を見届けていた。
「あれが、エドワード王子様? とっても素敵な方ね」
「お若い頃の王妃様によく似ていらっしゃるわ」
「いや、国王陛下の面影もあるぞ」
人々はそのうち、一人の男子生徒を見てハッとした。
その男子生徒は壇上に上がると何かに躓いたようで転びそうになっていた。
体勢は立て直したものの、かけていた黒縁眼鏡が顔から盛大にズレていた。
「あ、あれは!」
エドアルドはすぐに眼鏡を直したつもりでも、その素顔は間違いなく全国民にさらけ出されてしまっていた。
人々はすぐにそれが『もう一人の王子』だと悟ったが、誰も声に出して言ったりはしなかった。
(国王陛下が公表しない以上、自分達が声を上げるわけにはいかない)
そこには確かに暗黙の了解が交わされていた。
265
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる