210 / 242
冒険者編
210 お迎え
しおりを挟む
ひとしきり泣いた頃、扉をノックする音がした。
慌てて手の甲で涙を拭うと「はい」と返事をする。
泣いたせいで声がちょっと鼻声だ。僕の返事と同時に扉が開いて入って来たのは、オーウェンだった。
予想外の人物の登場に僕は思わず目をしばたたいた。
「…オーウェン? どうしてここに?」
そもそも人前にオーウェンの姿で現れていいものなんだろうか?
そう思いながらまじまじとオーウェンの姿を確認すると、エルフ特有の尖った耳ではなく丸みを帯びていた。
どうやら人間のフリをしているようだ。
「昔なじみから連絡をもらいましてね。エドアルド君を迎えに来たんですよ。何でも命を狙われているとか? とりあえず家まで送りますよ」
例によってキラキラスマイルを振りまくが、どことなく面白がっているようなのが癇に障る。
けれど、敵がどこの誰なのかわからない以上、オーウェンの申し出は有難い。
ここは素直に好意を受け取る事にしよう。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
オーウェンと共に応接室を出ると、皆の視線が一斉にオーウェンへと集中している。
まあ、これだけ完璧な美形がいたら、誰だって目が釘付けになるに決まっている。
特に女性陣達の目がハートになっているのは間違いない。
オーウェンはそんな視線にも我関せずに颯爽と歩いている。
むしろ、一緒にいる僕の方がいたたまれない気分になってくる。
どう見てもオーウェンの引き立て役にしか見えないんだろうな。
冒険者ギルドから出るとそこには馬車が待っていた。
僕達の姿を見てすかさず御者が扉を開けてくれた。
馬車の中には案の定、ヴィンセントの姿がそこにあった。
御者側に腰を下ろすと、後から乗り込んできたオーウェンがヴィンセントの隣に腰を下ろした。
馬車が走り出すと、オーウェンが「そうそう」と切り出す。
「冒険者ギルドに到着したらアーサー君が泣きながら出てきましたよ。友人のアーサー君を泣かせるなんてエドアルド君は悪い子ですねぇ」
オーウェンの言葉が僕の心にナイフのように突き刺さる。
確かにアーサーを泣かせてしまって悪い事をしたと思っている。
だけど、今の僕の現状を思えばそれは仕方のない事だと思う。
誰が敵かわからない以上、僕の側にいるのはとても危険な事だ。
どうにかして敵を突き止めないと…。
そう考えて僕はオーウェン達が現れた理由に思い至った。
「もしかして、敵を暴くために来てくれたんですか?」
そうでなければわざわざ人間の姿で人前になんて現れないだろう。
「仕方がないでしょう。何と言ってもヴィーの子孫ですからねぇ。ここで見殺しにしたらヴィーにも恨まれますからね。…ね」
オーウェンはそう言って隣に座るヴィンセントに同意を求める。
ヴィンセントはそんなオーウェンを鼻で笑う。
「私が頼むより先にオーウェンが動いたじゃないか。エドアルドを気に入っているのを隠さなくていいんだぞ」
どうやら僕はオーウェンに気に入られているらしい。
それをヴィンセントに暴露されてオーウェンはフンとそっぽを向いた。
だから、そういうやりとりは僕が見ていないところでやってもらいたいんだが。
そのうちに馬車はエルガー家の敷地内へと入っていった。
門番がこの馬車を止めずにノンストップで通したのは、オーウェンが何かしらの力を使ったのだろう。
玄関に到着すると御者が扉を開けてくれた。
「私達はここで待っているから、家族の皆と話をしてきなさい」
馬車から降りた僕の背中にオーウェンの声が追いかけてくる。
家族の皆と言われても、義父様は王宮で仕事中のはずなんだけどな。
だが、玄関先で待っていた執事が当たり前のようにこう告げてきた。
「お帰りなさいませ、エドアルド様。皆様がお待ちです」
どうやらオーウェンによって準備万端整えられていたようだ。
慌てて手の甲で涙を拭うと「はい」と返事をする。
泣いたせいで声がちょっと鼻声だ。僕の返事と同時に扉が開いて入って来たのは、オーウェンだった。
予想外の人物の登場に僕は思わず目をしばたたいた。
「…オーウェン? どうしてここに?」
そもそも人前にオーウェンの姿で現れていいものなんだろうか?
そう思いながらまじまじとオーウェンの姿を確認すると、エルフ特有の尖った耳ではなく丸みを帯びていた。
どうやら人間のフリをしているようだ。
「昔なじみから連絡をもらいましてね。エドアルド君を迎えに来たんですよ。何でも命を狙われているとか? とりあえず家まで送りますよ」
例によってキラキラスマイルを振りまくが、どことなく面白がっているようなのが癇に障る。
けれど、敵がどこの誰なのかわからない以上、オーウェンの申し出は有難い。
ここは素直に好意を受け取る事にしよう。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
オーウェンと共に応接室を出ると、皆の視線が一斉にオーウェンへと集中している。
まあ、これだけ完璧な美形がいたら、誰だって目が釘付けになるに決まっている。
特に女性陣達の目がハートになっているのは間違いない。
オーウェンはそんな視線にも我関せずに颯爽と歩いている。
むしろ、一緒にいる僕の方がいたたまれない気分になってくる。
どう見てもオーウェンの引き立て役にしか見えないんだろうな。
冒険者ギルドから出るとそこには馬車が待っていた。
僕達の姿を見てすかさず御者が扉を開けてくれた。
馬車の中には案の定、ヴィンセントの姿がそこにあった。
御者側に腰を下ろすと、後から乗り込んできたオーウェンがヴィンセントの隣に腰を下ろした。
馬車が走り出すと、オーウェンが「そうそう」と切り出す。
「冒険者ギルドに到着したらアーサー君が泣きながら出てきましたよ。友人のアーサー君を泣かせるなんてエドアルド君は悪い子ですねぇ」
オーウェンの言葉が僕の心にナイフのように突き刺さる。
確かにアーサーを泣かせてしまって悪い事をしたと思っている。
だけど、今の僕の現状を思えばそれは仕方のない事だと思う。
誰が敵かわからない以上、僕の側にいるのはとても危険な事だ。
どうにかして敵を突き止めないと…。
そう考えて僕はオーウェン達が現れた理由に思い至った。
「もしかして、敵を暴くために来てくれたんですか?」
そうでなければわざわざ人間の姿で人前になんて現れないだろう。
「仕方がないでしょう。何と言ってもヴィーの子孫ですからねぇ。ここで見殺しにしたらヴィーにも恨まれますからね。…ね」
オーウェンはそう言って隣に座るヴィンセントに同意を求める。
ヴィンセントはそんなオーウェンを鼻で笑う。
「私が頼むより先にオーウェンが動いたじゃないか。エドアルドを気に入っているのを隠さなくていいんだぞ」
どうやら僕はオーウェンに気に入られているらしい。
それをヴィンセントに暴露されてオーウェンはフンとそっぽを向いた。
だから、そういうやりとりは僕が見ていないところでやってもらいたいんだが。
そのうちに馬車はエルガー家の敷地内へと入っていった。
門番がこの馬車を止めずにノンストップで通したのは、オーウェンが何かしらの力を使ったのだろう。
玄関に到着すると御者が扉を開けてくれた。
「私達はここで待っているから、家族の皆と話をしてきなさい」
馬車から降りた僕の背中にオーウェンの声が追いかけてくる。
家族の皆と言われても、義父様は王宮で仕事中のはずなんだけどな。
だが、玄関先で待っていた執事が当たり前のようにこう告げてきた。
「お帰りなさいませ、エドアルド様。皆様がお待ちです」
どうやらオーウェンによって準備万端整えられていたようだ。
187
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる