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8 アーサーの話
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「アルフレッドは学院でジュリアを見初めていたが、告白する事はなかった。公爵家には特殊な婚約者選びがあるからだ」
特殊な婚約者選び?
一体何の事だろう?
首を傾げる僕にアーサーが苦笑した。
「いずれお前も体験する事さ」
そして婚約者選びで自分の想い人が選ばれて有頂天になったそうだ。
「そこで安心してちゃんとジュリアに向き合わなかったんだよ。それでなくても表情が乏しくて何を考えているかわからない顔をしているからな」
つまり愛情表現の言葉が足りなかったということか?
まぁ確かに女性は「好き」とか「愛してる」とか言われたいらしいからな。
そう言えば前世で古文の時間に習った大伴坂上郎女の和歌にもあったっけ。
『愛しき言尽くしてよ』
愛の言葉を言い尽くしてほしいって意味だって。いつの時代もどこの世界でも女性が求めるのは愛の言葉のようだ。
学院時代に見初めたんなら尚更「好きだ」って伝えるべきだと思うんだけどね。僕の父親ながらそこはちょっとダメ出しをしたい。
「そこをランスロットがつけ込んで来たのさ。エレインと共謀してね。どうやらエレインはアルフレッドを好きだったみたいだな」
エレインは僕の母親であるジュリアの護衛騎士だそうだ。
好きな男の婚約者の護衛騎士なんて拷問以外の何者でもないよね。
それでも断らなかったのは少しでもアルフレッドの近くにいたかったらしい。
だからこそランスロットが近付いて来たのを利用して僕の母親を公爵家から追い出そうとしたのだろう。
だけどそれって自分が護衛騎士の任務を果たせなかった事になるんじゃないのか?
「あの日、ジュリアが宝飾品を次々と亜空間エリアに放り込んでいるのを見て、私もその中に潜り込んだんだ。グィネヴィアは止めたけどね」
その後、エレインを連れて外出をした先でランスロットと落ち合ったようだ。
「そこでエレインと別れたから彼女がどうアルフレッドに言い訳をしたのかはわからない。ジュリアはそのままランスロットと国外に行こうとしたが、予定より早く産気づいてジェレミーが産まれたんだ」
持ち出した宝飾品で家を借りて住み始めたが、僕の母親であるジュリアは産後の肥立ちが悪く寝たきりになったらしい。
ランスロットは初めの頃は甲斐甲斐しく二人の世話をしていたが、次第に暴言を吐くようになったそうだ。
「ジュリアと結婚したかったらしいが、寝たきりの彼女に手を出すわけにもいかないしね。もっとも彼女が健康であったとしても彼女に触れる事は出来なかったけどね」
「それはどうして?」
僕が首を傾げると、アーサーはちょっと困ったような顔をした。
「子供に聞かせる話じゃないな。ジェレミーが結婚する頃にアルフレッドが教えてくれるさ」
なんか色々と公爵家には秘密があるようだ。
……あれ?
さっきから何処かで聞いたような名前が続いている。
アーサー、グィネヴィア、ランスロット、エレイン…。
これってアーサー王物語に出て来る名前だよね。だけど関係性がちょっとおかしい。
アーサーとグィネヴィアは夫婦だったけど、グィネヴィアは円卓の騎士のランスロットと不倫をしていた。
エレインはランスロットが好きだったけど、ランスロットはグィネヴィア一筋で見向きもされなかった。
そこでエレインは無理矢理ランスロットと関係を持って子供を産んだという。
世界が変わると関係性まで変わってくるのか、それともただ単に名前が同じだけの偶然なのか。
よくわからないけど、とりあえず今は置いておこう。
「結局、生活に疲れたランスロットはジェレミーを捨てる事にしたようだ。ある日籠にジェレミーを入れて家を出ようとしていたので私は慌てて籠の中に滑り込んだ。連れて行かれたのがジェレミーが昨日までいた孤児院だよ。だからあの後、ジュリアとランスロットがどうしたのかはわからない」
アーサーの話を聞いていたが、僕はちょっと疑問に思う事があった。
「アーサーはどうして僕のお母さんに話しかけなかったの?」
僕のお父さんの気持ちを知っていたのならそれとなく話を伝える事は出来たんじゃないのかな。
するとアーサーはちょっと渋い顔をした。
「ジュリアはまだジェレミーが生まれていなかったから公爵家では私の言葉は伝わらなかった。そしてジェレミーが生まれてからはグィネヴィアがいなかったから私の声が聞こえなかったんだ」
「グィネヴィアって誰?」
さっきから名前は聞いていたけど誰の事かは聞いていなかった事を思い出した。
「グィネヴィアは私の妻で私と同じ剣だよ」
アーサーによると公爵家では子供は一人しか生まれず、男の子だったらアーサーが、女の子だったらグィネヴィアが守護するそうだ。
あのまま公爵家で僕が生まれていたら、アーサーは僕のお父さんと僕の二人を守護するはずだったそうだ。
だけど僕のお母さんであるジュリアが家出をしてアーサーが僕に付いて来たので、僕のお父さんの守護はグィネヴィアがしているようだ。
「あのまま公爵家にいたらグィネヴィアがジュリアの守護をして私の言葉を伝えてくれるはずだった」
「ランスロットとエレインと言う名前の者が何度か公爵家にちょっかいをかけてくるが、今回のようにアーサー達が10年も離れ離れになるなんて初めてだ。早速公爵家に向かうとするか」
シヴァが立ち上がると先程のように大きくなった。
「ジェレミー、背中に乗れ。一気に森を駆け抜けるぞ」
アーサーも元のペーパーナイフの大きさに戻ると僕の手の上に乗った。
「さぁ、ジェレミー。家に帰ろう」
こうして僕はアーサーとシヴァを連れて公爵家を目指す事にした。
特殊な婚約者選び?
一体何の事だろう?
首を傾げる僕にアーサーが苦笑した。
「いずれお前も体験する事さ」
そして婚約者選びで自分の想い人が選ばれて有頂天になったそうだ。
「そこで安心してちゃんとジュリアに向き合わなかったんだよ。それでなくても表情が乏しくて何を考えているかわからない顔をしているからな」
つまり愛情表現の言葉が足りなかったということか?
まぁ確かに女性は「好き」とか「愛してる」とか言われたいらしいからな。
そう言えば前世で古文の時間に習った大伴坂上郎女の和歌にもあったっけ。
『愛しき言尽くしてよ』
愛の言葉を言い尽くしてほしいって意味だって。いつの時代もどこの世界でも女性が求めるのは愛の言葉のようだ。
学院時代に見初めたんなら尚更「好きだ」って伝えるべきだと思うんだけどね。僕の父親ながらそこはちょっとダメ出しをしたい。
「そこをランスロットがつけ込んで来たのさ。エレインと共謀してね。どうやらエレインはアルフレッドを好きだったみたいだな」
エレインは僕の母親であるジュリアの護衛騎士だそうだ。
好きな男の婚約者の護衛騎士なんて拷問以外の何者でもないよね。
それでも断らなかったのは少しでもアルフレッドの近くにいたかったらしい。
だからこそランスロットが近付いて来たのを利用して僕の母親を公爵家から追い出そうとしたのだろう。
だけどそれって自分が護衛騎士の任務を果たせなかった事になるんじゃないのか?
「あの日、ジュリアが宝飾品を次々と亜空間エリアに放り込んでいるのを見て、私もその中に潜り込んだんだ。グィネヴィアは止めたけどね」
その後、エレインを連れて外出をした先でランスロットと落ち合ったようだ。
「そこでエレインと別れたから彼女がどうアルフレッドに言い訳をしたのかはわからない。ジュリアはそのままランスロットと国外に行こうとしたが、予定より早く産気づいてジェレミーが産まれたんだ」
持ち出した宝飾品で家を借りて住み始めたが、僕の母親であるジュリアは産後の肥立ちが悪く寝たきりになったらしい。
ランスロットは初めの頃は甲斐甲斐しく二人の世話をしていたが、次第に暴言を吐くようになったそうだ。
「ジュリアと結婚したかったらしいが、寝たきりの彼女に手を出すわけにもいかないしね。もっとも彼女が健康であったとしても彼女に触れる事は出来なかったけどね」
「それはどうして?」
僕が首を傾げると、アーサーはちょっと困ったような顔をした。
「子供に聞かせる話じゃないな。ジェレミーが結婚する頃にアルフレッドが教えてくれるさ」
なんか色々と公爵家には秘密があるようだ。
……あれ?
さっきから何処かで聞いたような名前が続いている。
アーサー、グィネヴィア、ランスロット、エレイン…。
これってアーサー王物語に出て来る名前だよね。だけど関係性がちょっとおかしい。
アーサーとグィネヴィアは夫婦だったけど、グィネヴィアは円卓の騎士のランスロットと不倫をしていた。
エレインはランスロットが好きだったけど、ランスロットはグィネヴィア一筋で見向きもされなかった。
そこでエレインは無理矢理ランスロットと関係を持って子供を産んだという。
世界が変わると関係性まで変わってくるのか、それともただ単に名前が同じだけの偶然なのか。
よくわからないけど、とりあえず今は置いておこう。
「結局、生活に疲れたランスロットはジェレミーを捨てる事にしたようだ。ある日籠にジェレミーを入れて家を出ようとしていたので私は慌てて籠の中に滑り込んだ。連れて行かれたのがジェレミーが昨日までいた孤児院だよ。だからあの後、ジュリアとランスロットがどうしたのかはわからない」
アーサーの話を聞いていたが、僕はちょっと疑問に思う事があった。
「アーサーはどうして僕のお母さんに話しかけなかったの?」
僕のお父さんの気持ちを知っていたのならそれとなく話を伝える事は出来たんじゃないのかな。
するとアーサーはちょっと渋い顔をした。
「ジュリアはまだジェレミーが生まれていなかったから公爵家では私の言葉は伝わらなかった。そしてジェレミーが生まれてからはグィネヴィアがいなかったから私の声が聞こえなかったんだ」
「グィネヴィアって誰?」
さっきから名前は聞いていたけど誰の事かは聞いていなかった事を思い出した。
「グィネヴィアは私の妻で私と同じ剣だよ」
アーサーによると公爵家では子供は一人しか生まれず、男の子だったらアーサーが、女の子だったらグィネヴィアが守護するそうだ。
あのまま公爵家で僕が生まれていたら、アーサーは僕のお父さんと僕の二人を守護するはずだったそうだ。
だけど僕のお母さんであるジュリアが家出をしてアーサーが僕に付いて来たので、僕のお父さんの守護はグィネヴィアがしているようだ。
「あのまま公爵家にいたらグィネヴィアがジュリアの守護をして私の言葉を伝えてくれるはずだった」
「ランスロットとエレインと言う名前の者が何度か公爵家にちょっかいをかけてくるが、今回のようにアーサー達が10年も離れ離れになるなんて初めてだ。早速公爵家に向かうとするか」
シヴァが立ち上がると先程のように大きくなった。
「ジェレミー、背中に乗れ。一気に森を駆け抜けるぞ」
アーサーも元のペーパーナイフの大きさに戻ると僕の手の上に乗った。
「さぁ、ジェレミー。家に帰ろう」
こうして僕はアーサーとシヴァを連れて公爵家を目指す事にした。
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