捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅

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54 盗賊出現

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 二度目の実地演習の日を迎えた。

 前回とは違う時間にパトロールに向かう。

 パトロールのルートや時間は、同一パターンでは行われない。

 パターン化してしまうと野党や盗賊がその隙をついてくるのを防ぐためだ。

 それでもやはり何件かは事件が起きてしまうのは仕方のない事だ。

 少しでも抑制になるようにパトロールの姿を見せておくのも大事だろう。

 しばらく馬を走らせていると前方に馬車が見えてきた。

 馬車との距離が縮まってきているのをみると、どうやら馬車は止まっているようだ。

「何かアクシデントでもあったかな」

 シリル団長が呟くが、どうもそうではないようだ。

 もしかして馬車が襲われている?

 それに気付いたシリル団長は馬を止めた。

「二人ずつ、左右の森を通って近付いて行け。どちらかに逃げ込む場合があるからな。ジェレミーは私と一緒にこのまままっすぐ行くぞ」

 僕達は三方に別れて馬車へと近寄って行くことになった。

 突然の実戦に心臓が早鐘を打つようにドキドキしてくる。

 シリル団長の足手まといにならないように立ち回るだけだ。

 僕は団長に言われてシヴァを呼び出すと森から回り込むように命令した。

「シヴァ。前方で馬車が襲われているみたいなんだ。森の中を通って気づかれないように回り込んでくれ。先輩が二人行ったからフォローを頼むよ」

「わかった。任せておけ」 

 それだけを告げるとシヴァはサッと飛び出して森に入っていった。

 すぐに森の木々に紛れて見えなくなる。

「私達も急ぐぞ」

 シリル団長に言われて僕達は馬を最大限の速さで走らせる。

 馬車が近づくにつれて、道に倒れている人から血が流れているのが見て取れた。

 まさか!

 もう手遅れなんじゃないか?

「しまった! 騎士団だ!皆引け、引けー!」

 僕達が近付いて来たことに気付いた盗賊が、森の中に逃げ込もうとするが、そこにシヴァが現れて道を塞いだ。

「何だ! こいつ! 邪魔をするな!」 

 盗賊の一人がシヴァに向かって切りかかって行くが、シヴァはひらりとそれを避ける。

 馬を降りてシヴァに対峙している盗賊に向かっていこうとした所で、横から斬りかかられた。

 カキィーン!

 咄嗟に剣を抜いて相手の刃を受け止めて振り払い、次の攻撃に備えた。

 だが、相手は一向に斬りかかって来ない。

 何故だ?と思い、相手を凝視すると、その口から思いがけない言葉が出てきた。

「まさか? ジェレミー?」

 そこで自分の名前を呼ばれると思ってもいなかった僕はもう一度、相手の顔をよく見た。

 そこにいたのは…

「もしかして、カイン?」

 あの孤児院の火事の日に別れたままの幼馴染のカインの面影がそこにあった。

 お互いに剣を構えたまま、その場に硬直していた。

 姉のアンに再会したときにカインは行方不明だと聞かされた。

 そのカインが今ここにいるということは、カインが盗賊の仲間であるということだ。

 何故?

 いつからそんな事に?

 頭の中を疑問がグルグルと回っている。

 おそらくカインもそうなのだろう。

 どうして僕がここにいて、カインと対峙しているのかわからないようだ。

 お互いが言葉を発する事も出来ずに、見合っていると僕達を叱責する声が響いた。

「カイン! 何してる! さっさとずらかるぞ!」

「ジェレミー! さっさとそいつを仕留めろ!」

 この剣でカインを斬る?

 たとえ本当にカインが盗賊の仲間でも、僕がカインを斬るなんて到底出来るとは思えない。

 躊躇っているうちにカインが僕に斬りかかって来た。

 キーン!

 何とか避けた剣にカインの剣の刃が当たるが、その勢いで僕は体制を崩して倒れた。

 ヤバい! 

 次が来る!

 斬られるのを覚悟したが、しかしカインはそのまま踵を返して森の中へと入っていった。

「ジェレミー! 無事か!」

 シヴァが僕に駆け寄って立ち上がるのを手助けしてくれた。

「僕は大丈夫だ。だけど馬車の人達はどうなった?」

 治癒魔法が得意な騎士が斬られた人達に回復魔法をかけていた。

 僕も近くで怪我をした人の治療に当たった。

 馬車は王都の商店の物で、買い付けの為に出掛けた所を襲われたそうだ。

 買い付けに用意していたお金を取られ、更に金目の物を奪われそうになっていた所だった。

 王都に引き返すという馬車に付き添う形で僕達はパトロールを続けた。

 王都に入り、騎士団の詰め所に戻った所でシリル団長に手招きされた。

「何でしょうか?」

 言われる事に見当はついていたが、あえて聞いてみる。

「ジェレミー。あの盗賊はお前の知り合いなのか?」

 シリル団長の口から出た言葉は予想通りのものだった。

 だが、ここで正直に話していい事なのだろうか?

 躊躇う僕にシリル団長は軽く手をあげた。

「アルフレッドから聞いている。その時の知り合いで間違いないんだな?」

 僕はシリル団長に頷き返す。

「はい。彼の姉の話によると行方不明になったらしいのですが、まさか盗賊になっているとは思ってもみませんでした」

 シリル団長は少し気の毒そうな表情で僕を見つめる。

「昔の知り合いが盗賊というのはやりにくいかもしれないが、私情を挟んではいけない。生死に関わる事だからな」

「申し訳ありませんでした。次は気を付けます」 

 僕の返事に頷くとシリル団長は団長室へと入っていった。

 僕も着替える為に更衣室へと向かう。

 私情を挟むなと言われる事はわかる。

 でもやはり、カインに何があったのか話をしたいと思うのだった。

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