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55 カインとの再会
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騎士団の詰め所を出て自宅に戻る馬車の中で、僕は先程のカインの様子を思い返していた。
昔の面影はあったけれど、知らずに会っていたらカインだとはわからなかっただろう。
体格もかなりいい方だった。
孤児院にいた頃のようにお腹いっぱい食べられずにお腹を空かせていた頃とはまるで違った。
だが、盗賊に身を置いているという事は悪い事をしてお金を稼いでいるという事だ。
どうしてカインがそんな盗賊の仲間になってしまったのかはわからない。
できる事ならば足を洗ってやり直してほしいと思うけれど、騎士団に捕まれば間違いなく強制労働に送られて一生許される事はないかもしれない。
それを考えると捕まって欲しくはないと思うけれど、僕はもう騎士団の人間だ。
それならば、いっその事僕の手で捕まえるべきなんだろうか。
「ジェレミー。次にあいつに会ったら斬るのか?」
突然、アーサーが話かけてきた。
「アーサーは彼がカインだって気付いてたの?」
僕の横に立てかけているアーサーに問うとスッと柄の部分が僕の顔の側に来た。
「いいや。すぐにはわからなかった。ただ、やけに懐かしい感じがしたんだ。まさかカインが盗賊になっているとはな」
ピカピカと魔石を光らせて喋るアーサーに、僕も同意した。
「まったくだよね。どうしてそんな事になったのか聞きたいけれど、話をするのは難しいのかな」
馬車はやがて公爵家の屋敷に入って行く。
いつものように使用人に出迎えられ、あれこれと世話を焼かれる。
孤児院にいた頃とは雲泥の差の生活だ。
「今日は盗賊に遭遇したそうだな。怪我はなかったのか?」
夕食の席で父上に問われたが、随分と情報の早い事だ。
「怪我はないので大丈夫です。だけど盗賊達を取り逃がしてしまいました」
僕達の会話に母上が眉をひそめる。
「まぁ、なんて恐ろしい。ジェレミー、くれぐれも怪我はしないでね。後でグィネヴィアに言っておかないと。アーサーにジェレミーを守るようにとね」
グィネヴィアに発破をかけられるのか。
アーサーに同情するよ。
その後も何度か騎士団に同行したが、盗賊に遭遇する事はなかった。
他の班もパトロールをしていたが、どの班も盗賊に遭遇する事はなかった。
拍子抜けしつつも何処かでほっとしている自分がいた。
何事もなく日々は過ぎて行き、盗賊に遭遇してから2週間以上が過ぎた。
夜、自室にいると、寝転がっていたシヴァがいきなり立ち上がり、窓の側に駆け寄った。
「ジェレミー、お客のようだぞ」
シヴァの隣に行き、窓の外に目を凝らすと微かに人影が見えた。
まさか、カイン?
だけど、どうやってここがわかったのだろうか。
それに屋敷には結界が張ってあって侵入出来ないようになっているはずなのに…。
まさか?
隣のシヴァに目をやると、素知らぬ顔をしている。
どうやらカインが来たら入れるようにしていたに違いない。
僕がカインと話したがっていることに気付いていたんだろう。
カインは窓の数歩手前でピタリと足を止めた。
どうやらシヴァの優しさもそこまでだったようだ。
カインはそれ以上僕に近付けない事に戸惑っていたが、やがて諦めてフッと笑った。
「やぁ、ジェレミー。久しぶりだね。元気だった?」
その笑顔は昔と変わらない、屈託のない笑顔だった。
「カイン、久しぶり。僕は元気だよ。こうして実の親も見つかったしね。だけど、どうしてここが分かったの?」
カインは少し目を伏せて語りだした。
「裏の稼業の中に情報を扱う奴がいるんだよ。その情報を元にこの間のような仕事をするんだ。そいつにジェレミーと言う名の騎士を探してもらったらここに行き着いたと言うわけさ。だけどまさかジェレミーが貴族だったとは思わなかったな。俺なんかとは大違いだな」
カインだって父親が殺されたりしなければ、それなりに生活が出来たはずだ。
だけど父親を殺した盗賊の仲間になっているなんて、何があったんだ。
「カインはどうして盗賊になったんだ。君のお父さんを殺したのも盗賊なんだろう?」
カインは自嘲気味に口を歪めて笑った。
「あの火事の翌日、孤児院に行ったんだ。どうにかしてまたみんなで暮らせないかと思ってね。だけど院長の婆さんは、火事を起こしたのが俺達のせいだって喚き出したんだ。そこで婆さんと揉み合いになって、気付いたら婆さんが倒れていた。そこに居合わせたのが今の盗賊の首領だ。婆さんの死体を始末してやる代わりに仲間になれと言われたんだ」
カインが孤児院長を殺した?
まさかの発言に僕は驚きを隠せなかった。
だけど、孤児院長が死んだなんて話は聞いていない。
アンだってそんな事は言わなかった。
一体何がどうなっているんだ?
「カイン。本当に孤児院長は死んだの?」
僕の質問にカインは虚を付かれたようだった。
「わからない。だってピクリとも動かなかったし…。それに首領が『人を殺したら縛り首だぞ』って言うから…」
もしかしてカインを仲間にするために婆さんとひと芝居うったのか?
それとも意識を失っただけなのを死んだと思い込ませたのか?
僕にはどちらとも判断がつかなかった。
昔の面影はあったけれど、知らずに会っていたらカインだとはわからなかっただろう。
体格もかなりいい方だった。
孤児院にいた頃のようにお腹いっぱい食べられずにお腹を空かせていた頃とはまるで違った。
だが、盗賊に身を置いているという事は悪い事をしてお金を稼いでいるという事だ。
どうしてカインがそんな盗賊の仲間になってしまったのかはわからない。
できる事ならば足を洗ってやり直してほしいと思うけれど、騎士団に捕まれば間違いなく強制労働に送られて一生許される事はないかもしれない。
それを考えると捕まって欲しくはないと思うけれど、僕はもう騎士団の人間だ。
それならば、いっその事僕の手で捕まえるべきなんだろうか。
「ジェレミー。次にあいつに会ったら斬るのか?」
突然、アーサーが話かけてきた。
「アーサーは彼がカインだって気付いてたの?」
僕の横に立てかけているアーサーに問うとスッと柄の部分が僕の顔の側に来た。
「いいや。すぐにはわからなかった。ただ、やけに懐かしい感じがしたんだ。まさかカインが盗賊になっているとはな」
ピカピカと魔石を光らせて喋るアーサーに、僕も同意した。
「まったくだよね。どうしてそんな事になったのか聞きたいけれど、話をするのは難しいのかな」
馬車はやがて公爵家の屋敷に入って行く。
いつものように使用人に出迎えられ、あれこれと世話を焼かれる。
孤児院にいた頃とは雲泥の差の生活だ。
「今日は盗賊に遭遇したそうだな。怪我はなかったのか?」
夕食の席で父上に問われたが、随分と情報の早い事だ。
「怪我はないので大丈夫です。だけど盗賊達を取り逃がしてしまいました」
僕達の会話に母上が眉をひそめる。
「まぁ、なんて恐ろしい。ジェレミー、くれぐれも怪我はしないでね。後でグィネヴィアに言っておかないと。アーサーにジェレミーを守るようにとね」
グィネヴィアに発破をかけられるのか。
アーサーに同情するよ。
その後も何度か騎士団に同行したが、盗賊に遭遇する事はなかった。
他の班もパトロールをしていたが、どの班も盗賊に遭遇する事はなかった。
拍子抜けしつつも何処かでほっとしている自分がいた。
何事もなく日々は過ぎて行き、盗賊に遭遇してから2週間以上が過ぎた。
夜、自室にいると、寝転がっていたシヴァがいきなり立ち上がり、窓の側に駆け寄った。
「ジェレミー、お客のようだぞ」
シヴァの隣に行き、窓の外に目を凝らすと微かに人影が見えた。
まさか、カイン?
だけど、どうやってここがわかったのだろうか。
それに屋敷には結界が張ってあって侵入出来ないようになっているはずなのに…。
まさか?
隣のシヴァに目をやると、素知らぬ顔をしている。
どうやらカインが来たら入れるようにしていたに違いない。
僕がカインと話したがっていることに気付いていたんだろう。
カインは窓の数歩手前でピタリと足を止めた。
どうやらシヴァの優しさもそこまでだったようだ。
カインはそれ以上僕に近付けない事に戸惑っていたが、やがて諦めてフッと笑った。
「やぁ、ジェレミー。久しぶりだね。元気だった?」
その笑顔は昔と変わらない、屈託のない笑顔だった。
「カイン、久しぶり。僕は元気だよ。こうして実の親も見つかったしね。だけど、どうしてここが分かったの?」
カインは少し目を伏せて語りだした。
「裏の稼業の中に情報を扱う奴がいるんだよ。その情報を元にこの間のような仕事をするんだ。そいつにジェレミーと言う名の騎士を探してもらったらここに行き着いたと言うわけさ。だけどまさかジェレミーが貴族だったとは思わなかったな。俺なんかとは大違いだな」
カインだって父親が殺されたりしなければ、それなりに生活が出来たはずだ。
だけど父親を殺した盗賊の仲間になっているなんて、何があったんだ。
「カインはどうして盗賊になったんだ。君のお父さんを殺したのも盗賊なんだろう?」
カインは自嘲気味に口を歪めて笑った。
「あの火事の翌日、孤児院に行ったんだ。どうにかしてまたみんなで暮らせないかと思ってね。だけど院長の婆さんは、火事を起こしたのが俺達のせいだって喚き出したんだ。そこで婆さんと揉み合いになって、気付いたら婆さんが倒れていた。そこに居合わせたのが今の盗賊の首領だ。婆さんの死体を始末してやる代わりに仲間になれと言われたんだ」
カインが孤児院長を殺した?
まさかの発言に僕は驚きを隠せなかった。
だけど、孤児院長が死んだなんて話は聞いていない。
アンだってそんな事は言わなかった。
一体何がどうなっているんだ?
「カイン。本当に孤児院長は死んだの?」
僕の質問にカインは虚を付かれたようだった。
「わからない。だってピクリとも動かなかったし…。それに首領が『人を殺したら縛り首だぞ』って言うから…」
もしかしてカインを仲間にするために婆さんとひと芝居うったのか?
それとも意識を失っただけなのを死んだと思い込ませたのか?
僕にはどちらとも判断がつかなかった。
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