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5 出産
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ガシャーン!
その知らせを聞いた途端、リリアーナは手にしていたカップを思い切り壁に投げつけた。
投げられたカップはお茶を撒き散らしながら壁に当たり派手な音を立てて粉々に砕け散る。
「あの女も妊娠したですって! どういう事よ!」
アロイスからの伝言を伝えに来た使者はリリアーナの剣幕に首をすくめた。
使者がアロイスから託された伝言はルイーズの妊娠ともう一つ別の事があった。
だが、最初のルイーズの妊娠を告げただけでこの剣幕なのだ。
もう一つの事を告げればリリアーナがどれだけ怒り狂うかわかったが、告げずに戻るわけにはいかなかった。
「リリアーナ樣。もう一つ陛下からの言付けがございます」
リリアーナが少し落ち着いた頃を見計らって使者が口を開いた。
リリアーナはギロリと使者を睨むと話を続けるように促した。
使者はリリアーナの顔色を伺うように恐る恐る話し出す。
「今後、陛下の夜のお渡りはございません。それと時々西の宮を訪ねると言った事も撤回させていただくそうです」
使者はそれだけを告げるとリリアーナの怒りが爆発する前にそそくさとお辞儀をしてその場を立ち去った。
「…なんですって?」
思いがけない言葉にリリアーナが二の句を告げる事が出来なくなっていた。
「…あの女…。またしてもわたくしの邪魔をするのね…」
リリアーナはテーブルの上に残されたソーサーをカップと同じように壁に投げ付けた。
ガシャーン!
こちらもカップと同じように壁にぶち当たり粉々に砕け散った。
アロイスと結婚して三年経っても妊娠の兆候がなかったのに、リリアーナが側妃になった途端に同じように妊娠する。
もっと早くに妊娠していれば、リリアーナが側妃になることもなかった。
おまけに時々西の宮に足を運ぶと言ったアロイスの伝言も撤回される事になった。
実際にアロイスがこの西の宮を訪れる事はほぼ皆無だった。
まるきりここを訪れないのもお腹の子の成長に差し支えると思ったのか、数回アロイスは西の宮を訪ねて来たが、ほんの少しリリアーナの顔とお腹の成長を見るとそそくさと帰って行った。
「わたくしの方が先に身籠ったのにこんな仕打ちはないわ!」
リリアーナはお腹の子が大きくなるに連れてアロイスへの不満も大きくなっていった。
その一方でアロイスにそっくりな男の子を産めば、きっと自分を認めてもらえるかもしれないという期待も抱いていた。
お腹の子もみるみる成長していき、やがてリリアーナは臨月を迎えた。
予定日より少し早く産気づいたリリアーナはやがて一人の男の子を産み落とした。
産まれた我が子を見てリリアーナは愕然とした。
アロイスに似ているのは顔立ちだけで、髪の色はリリアーナと同じく真っ赤な色をしていた。
「何故? どうしてこの子は陛下と同じ金髪でないのかしら…」
がっかりもしながらアロイスが来るのを待っていると、知らせを聞いたアロイスがすぐにやってきた。
アロイスはリリアーナのベッドの横にあるベビーベッドに寝かされている男の子を見て一瞬目を見張った。
「リリアーナ。よくやった。無事に王子を生んでくれた事に感謝する」
アロイスはベッドに眠る男の子に「ランベール」と名前を付けた。
「陛下。どうかランベールを抱いてやってくださいませんか?」
リリアーナが懇願するとアロイスは少し躊躇った後、ランベールを抱き上げる為にベッドの中に手を伸ばした。
アロイスが今にもランベールを抱き上げようとした瞬間、扉が開かれ声が聞こえた。
「陛下! 王妃様が王子を出産されました!」
それを聞いたアロイスはランベールに伸ばした手を引っ込めると、クルリときびすを返して出て行った。
「陛下、どちらへ? せめてランベールを抱いてからにしてください!」
リリアーナの呼びかけも虚しく、アロイスは振り返る事なく出て行った。
その知らせを聞いた途端、リリアーナは手にしていたカップを思い切り壁に投げつけた。
投げられたカップはお茶を撒き散らしながら壁に当たり派手な音を立てて粉々に砕け散る。
「あの女も妊娠したですって! どういう事よ!」
アロイスからの伝言を伝えに来た使者はリリアーナの剣幕に首をすくめた。
使者がアロイスから託された伝言はルイーズの妊娠ともう一つ別の事があった。
だが、最初のルイーズの妊娠を告げただけでこの剣幕なのだ。
もう一つの事を告げればリリアーナがどれだけ怒り狂うかわかったが、告げずに戻るわけにはいかなかった。
「リリアーナ樣。もう一つ陛下からの言付けがございます」
リリアーナが少し落ち着いた頃を見計らって使者が口を開いた。
リリアーナはギロリと使者を睨むと話を続けるように促した。
使者はリリアーナの顔色を伺うように恐る恐る話し出す。
「今後、陛下の夜のお渡りはございません。それと時々西の宮を訪ねると言った事も撤回させていただくそうです」
使者はそれだけを告げるとリリアーナの怒りが爆発する前にそそくさとお辞儀をしてその場を立ち去った。
「…なんですって?」
思いがけない言葉にリリアーナが二の句を告げる事が出来なくなっていた。
「…あの女…。またしてもわたくしの邪魔をするのね…」
リリアーナはテーブルの上に残されたソーサーをカップと同じように壁に投げ付けた。
ガシャーン!
こちらもカップと同じように壁にぶち当たり粉々に砕け散った。
アロイスと結婚して三年経っても妊娠の兆候がなかったのに、リリアーナが側妃になった途端に同じように妊娠する。
もっと早くに妊娠していれば、リリアーナが側妃になることもなかった。
おまけに時々西の宮に足を運ぶと言ったアロイスの伝言も撤回される事になった。
実際にアロイスがこの西の宮を訪れる事はほぼ皆無だった。
まるきりここを訪れないのもお腹の子の成長に差し支えると思ったのか、数回アロイスは西の宮を訪ねて来たが、ほんの少しリリアーナの顔とお腹の成長を見るとそそくさと帰って行った。
「わたくしの方が先に身籠ったのにこんな仕打ちはないわ!」
リリアーナはお腹の子が大きくなるに連れてアロイスへの不満も大きくなっていった。
その一方でアロイスにそっくりな男の子を産めば、きっと自分を認めてもらえるかもしれないという期待も抱いていた。
お腹の子もみるみる成長していき、やがてリリアーナは臨月を迎えた。
予定日より少し早く産気づいたリリアーナはやがて一人の男の子を産み落とした。
産まれた我が子を見てリリアーナは愕然とした。
アロイスに似ているのは顔立ちだけで、髪の色はリリアーナと同じく真っ赤な色をしていた。
「何故? どうしてこの子は陛下と同じ金髪でないのかしら…」
がっかりもしながらアロイスが来るのを待っていると、知らせを聞いたアロイスがすぐにやってきた。
アロイスはリリアーナのベッドの横にあるベビーベッドに寝かされている男の子を見て一瞬目を見張った。
「リリアーナ。よくやった。無事に王子を生んでくれた事に感謝する」
アロイスはベッドに眠る男の子に「ランベール」と名前を付けた。
「陛下。どうかランベールを抱いてやってくださいませんか?」
リリアーナが懇願するとアロイスは少し躊躇った後、ランベールを抱き上げる為にベッドの中に手を伸ばした。
アロイスが今にもランベールを抱き上げようとした瞬間、扉が開かれ声が聞こえた。
「陛下! 王妃様が王子を出産されました!」
それを聞いたアロイスはランベールに伸ばした手を引っ込めると、クルリときびすを返して出て行った。
「陛下、どちらへ? せめてランベールを抱いてからにしてください!」
リリアーナの呼びかけも虚しく、アロイスは振り返る事なく出て行った。
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