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9 勉強と商談
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いやいや、待って!
そんなに堂々と上に掲げないで!
お風呂に入っている間に洗濯はされたらしいが、着ていた下着をそんなふうに広げられるのはいたたまれない。
ガブリエラさんの手からひったくるわけにもいかずに私は真っ赤になる。
「奥様。それを堂々と見せられるのは恥ずかしいからやめてください」
なんとかパンツを引っ込めてもらおうと思ったのだが、ガブリエラさんは私の思惑とは別の言葉に反応した。
「まあ、『奥様』なんて呼ばないで、名前で呼んでちょうだい。なんなら『お母様』でもいいのよ」
お母様?
いやいや。
さっき出会ったばかりなのに娘認定ってどうなの?
流石にそれは行き過ぎでしょう。
「ガブリエラ様。それを下げてもらえますか?」
名前で呼んだのに少し寂しそうな表情をするのはどうしてなのかしら?
それでもガブリエラさんはパンツをテーブルの上に置いてくれた。
「アリスの国ではこんな高級な下着があるのね。こちらの『ブラジャー』とかいうのもとても素晴らしいわ。我が家で贔屓にしている仕立て屋に同じ物を作って貰おうと思うんだけどいいかしら? 勿論アリスの分も作らせるわ」
同じ物を作って貰えるのならば私としても助かるので、打ち合わせには私も参加させて貰いたい。
「ありがとうございます。私の知っている事をお話するのは出来ると思うので、打ち合わせには同席させていただいていいですか?」
「勿論よ。是非ともあなたの知っている事を話してあげて欲しいわ」
「あの、作っていただくのは嬉しいんですが、代金のお支払いは…」
当然の事ながら私はお金を持っていない。
学生カバンの中には財布が入っていて多少のお金は持っていたが、この世界に来る際に何処かへ行ってしまったのだ。
もっともお金を持っていたところで、この世界で使えるとは思えないけどね。
私の杞憂をガブリエラさんはコロコロと笑い飛ばした。
「そんなものはいらないわ。大体、この下着のデザインだけで十分なお金になるのよ。この下着の発案者として登録をしたら、その特権料だけでお金が入ってくる事になるわよ」
この世界にない物を持ち込んだ事で、特許権みたいなものがあるのね。
それでお金が稼げるんなら、それに越した事はないわね。
よく異世界物の小説で美味しいご飯でどうたらってあるけど、下着でもそういうのが出来るとは思わなかったわ。
仕立て屋さんが来る前に私はガブリエラさんにお願いして、この世界の文字を教えて貰う事にした。
普通に会話は出来るけど、この世界の文字がどんなものかはわからないからだ。
「ポリー。新人メイドに文字を教える為の教材があったわね。それでアリスに文字を教えてやってちょうだい」
「かしこまりました、奥様」
侍女長さんの名前はポリーと言うらしい。
ガブリエラさんは仕事があると言ってサンルームを退室していった。
茶器が下げられ、他の侍女が持ってきた教材がテーブルの上に置かれる。
アルファベットに似ているような文字が並んでいるが、侍女長さんに説明されるとスラスラと頭の中に入ってくる。
これがいわゆるチート能力って言うやつかしらね。
侍女長さんに筋がいいと褒められつつも読み書きを習っていたが、自分でも驚くほど早く習得出来た。
仕立て屋が到着したと他の侍女が呼びに来て、私は応接室へと連れて行かれた。
「まあ、お美しいお嬢様ですこと。エイブラム様のご婚約者様ですか?」
挨拶をされた仕立て屋の女性に爆弾発言をされて私は慌てふためいた。
いくらなんでも今日会ったばかりの人の婚約者なんてとんでもない事だ。
「残念ながら違うのよ。そうなってくれればわたくしも肩の荷が下りるのだけど…」
ガブリエラさんもそんなに残念そうに言うのはやめて欲しいわ。
私が着ていた下着を見て仕立て屋さんは目を丸くしていた。
「なんて素晴らしいレースなんでしょう。こんなに目が細かくて揃っているなんて! 人間技とは思えません!」
…そりゃあ、機械で編んでますからね…
私は仕立て屋さんの熱意に乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
そんなに堂々と上に掲げないで!
お風呂に入っている間に洗濯はされたらしいが、着ていた下着をそんなふうに広げられるのはいたたまれない。
ガブリエラさんの手からひったくるわけにもいかずに私は真っ赤になる。
「奥様。それを堂々と見せられるのは恥ずかしいからやめてください」
なんとかパンツを引っ込めてもらおうと思ったのだが、ガブリエラさんは私の思惑とは別の言葉に反応した。
「まあ、『奥様』なんて呼ばないで、名前で呼んでちょうだい。なんなら『お母様』でもいいのよ」
お母様?
いやいや。
さっき出会ったばかりなのに娘認定ってどうなの?
流石にそれは行き過ぎでしょう。
「ガブリエラ様。それを下げてもらえますか?」
名前で呼んだのに少し寂しそうな表情をするのはどうしてなのかしら?
それでもガブリエラさんはパンツをテーブルの上に置いてくれた。
「アリスの国ではこんな高級な下着があるのね。こちらの『ブラジャー』とかいうのもとても素晴らしいわ。我が家で贔屓にしている仕立て屋に同じ物を作って貰おうと思うんだけどいいかしら? 勿論アリスの分も作らせるわ」
同じ物を作って貰えるのならば私としても助かるので、打ち合わせには私も参加させて貰いたい。
「ありがとうございます。私の知っている事をお話するのは出来ると思うので、打ち合わせには同席させていただいていいですか?」
「勿論よ。是非ともあなたの知っている事を話してあげて欲しいわ」
「あの、作っていただくのは嬉しいんですが、代金のお支払いは…」
当然の事ながら私はお金を持っていない。
学生カバンの中には財布が入っていて多少のお金は持っていたが、この世界に来る際に何処かへ行ってしまったのだ。
もっともお金を持っていたところで、この世界で使えるとは思えないけどね。
私の杞憂をガブリエラさんはコロコロと笑い飛ばした。
「そんなものはいらないわ。大体、この下着のデザインだけで十分なお金になるのよ。この下着の発案者として登録をしたら、その特権料だけでお金が入ってくる事になるわよ」
この世界にない物を持ち込んだ事で、特許権みたいなものがあるのね。
それでお金が稼げるんなら、それに越した事はないわね。
よく異世界物の小説で美味しいご飯でどうたらってあるけど、下着でもそういうのが出来るとは思わなかったわ。
仕立て屋さんが来る前に私はガブリエラさんにお願いして、この世界の文字を教えて貰う事にした。
普通に会話は出来るけど、この世界の文字がどんなものかはわからないからだ。
「ポリー。新人メイドに文字を教える為の教材があったわね。それでアリスに文字を教えてやってちょうだい」
「かしこまりました、奥様」
侍女長さんの名前はポリーと言うらしい。
ガブリエラさんは仕事があると言ってサンルームを退室していった。
茶器が下げられ、他の侍女が持ってきた教材がテーブルの上に置かれる。
アルファベットに似ているような文字が並んでいるが、侍女長さんに説明されるとスラスラと頭の中に入ってくる。
これがいわゆるチート能力って言うやつかしらね。
侍女長さんに筋がいいと褒められつつも読み書きを習っていたが、自分でも驚くほど早く習得出来た。
仕立て屋が到着したと他の侍女が呼びに来て、私は応接室へと連れて行かれた。
「まあ、お美しいお嬢様ですこと。エイブラム様のご婚約者様ですか?」
挨拶をされた仕立て屋の女性に爆弾発言をされて私は慌てふためいた。
いくらなんでも今日会ったばかりの人の婚約者なんてとんでもない事だ。
「残念ながら違うのよ。そうなってくれればわたくしも肩の荷が下りるのだけど…」
ガブリエラさんもそんなに残念そうに言うのはやめて欲しいわ。
私が着ていた下着を見て仕立て屋さんは目を丸くしていた。
「なんて素晴らしいレースなんでしょう。こんなに目が細かくて揃っているなんて! 人間技とは思えません!」
…そりゃあ、機械で編んでますからね…
私は仕立て屋さんの熱意に乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
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