8 / 113
第 1 章
第 8 話
しおりを挟む
「エルヴィーノさん!」
「あいよ!」
オルフェオをあやして時間を潰していると、受付の女性から声をかけられる。
それに応じ、エルヴィーノは受付のカウンターへと向かった。
「こちらが3件の依頼達成費になります」
「どうも!」
受付に向かうと、ギルド職員の女性は硬貨をトレイに乗せ、エルヴィーノの前へと差し出す。
エルヴィーノは、そのトレイに乗っている硬貨を受け取り、財布としている小さい袋の中に入れた。
今朝受けた依頼を達成したことによる報酬金で、エルヴィーノは難なく成功させた。
特にザンナ猪は自分たちの食材用として多めに狩ったこともあり、報酬に色がついたほどだ。
「エルヴィーノ!」
「んっ?」
報酬も得たし、家に帰って夕飯の準備でも始めようかと考えていたエルヴィーノだったが、ギルドの建物から出る前に声をかけられ、立ち止まって振り返る。
誰かと思ったら、ここのギルド所長のトリスターノだった。
“クイッ!”
「……了解」
呼び止めたトリスターノへ向いつつ受付の方に向かって歩いて行くと、トリスターノは親指を立てて後方を指さした。
受付奥にある所長室に来てくれという合図だ。
その意味を理解したエルヴィーノは、それに従って所長室へと向かった。
「それで?」
「その坊のことだよ」
「あぁ……」
所長室に入り、トリスターノと向かい合わせでソファーに座ると、エルヴィーノはさっそくと言わんばかりに、所長室に呼んだ理由を問いかける。
すると、トリスターノはエルヴィーノの胸に抱かれているオルフェオのことを指さして返答した。
「生後半年ほどの赤ん坊関連の事件を調べた結果だ」
「仕事が早いな……」
エルヴィーノの前に3枚の紙を差し出すトリスターノ。
一昨日の朝、大繁殖した一角兎の討伐に向かう前に話したオルフェオのことを、さっそく調べてくれたらしい。
ギルド所長の仕事は、他にも色々と仕事があって忙しいはず。
それなのに、もう動いてくれていたなんて、エルヴィーノは頭に浮かんだ思いが口から出ていた。
「一昨日も思ったが、お前子供好きだろ?」
ギルド所長ともなると、荒事にも対処しなければならないため、腕っぷしも求められる。
トリスターノも元は高ランク冒険者だった。
修羅場もいくつか潜り抜けているせいか、顔は少々強面だ。
顔で判断するのは良くないが、とても子供好きには思えなかったため、エルヴィーノとしては意外だったため、ストレートに問いかけた。
「まあ、それもそうだが、孫のこともあってな」
「孫? あぁ、そいえば、あの娘は結婚して子供を産んだんだっけ……」
トリスターノには、結婚して隣の町に住んでいる娘がいる。
その娘が、何年か前に子供を産んだということをエルヴィーノは聞いていた。
そのため、孫という言葉を聞いたエルヴィーノは、何となく納得できた。
隣町のため会いに行こうと思えばそんなに難しいことではないが、仕事のこともあってなかなか頻繁に会いに行けていなとトリスターノはぼやいていた。
そのため、その孫とオルフェオのことを重ねているのかもしれない。
「よく考えると、あの娘が親なんてやっぱ人族の成長は早いな」
「そういや、お前たちには何度も面倒見てもらったっけ……」
トリスターノの娘のことを思い出し、エルヴィーノはしみじみと呟く。
なぜなら、トリスターノの奥さんは体が弱く、体調を崩すことが少なくなかったため、エルヴィーノとセラフィーナが奥さんと娘の面倒を見ていたからだ。
仕事と看病を懸命に両立していたトリスターノの努力もむなしく、奥さんが亡くなったときは、残された2人を一日中慰めたものだ。
その時大泣きしたことを思い出したからか、トリスターノは少し照れくさそうに呟いた。
「つい先日のような気もするが……」
「ダークエルフからすると時間の流れが違うんだろ」
「かもな……」
年寄りがいうようなエルヴィーノの台詞に、トリスターノはツッコミを入れる。
ダークと付くが、髪と目の色が違うだけのエルフだ。
人族の寿命が長くて100年とすると、ドワーフがその倍。
そして、エルフはドワーフの倍と言われている。
そのことから、エルヴィーノとセラフィーナも長くて400年くらい生きることができるはずだ。
それだけ長い年月を生きることができる者からすると、確かにトリスターノが言うように時間の感じ方が違うのかもしれない。
そのため、エルヴィーノはトリスターノのツッコミを受け入れた。
「話を元に戻そう」
「あぁ」
いつの間にか話がずれてしまった。
そのことに気づいた2人は、ようやく先ほどの紙の内容に移ることにした。
「3件か……」
「あぁ。とはいっても、1件は違うと思うがな」
トリスターノがエルヴィーノの前に出した紙には、この町付近の町や村で起きた生後半年前後の赤ん坊に関連する事件の内容が書かれていた。
それに目を通すエルヴィーノに対し、トリスターノは一枚を指さしてオルフェオのことではないと告げる。
「魔物に襲われたって話だからな……」
トリスターノが否定した事件とは、乗り合い馬車が森で魔物に襲われ、御者や乗客が行方不明になっているというものだ。
魔物から逃げきれず、御者も乗客も命を落としたというのが、一番考えられる可能性だ。
もしもの話として、その中の誰かが赤ん坊を連れて逃げてきたとしても、どうしてエルヴィーノの家の前に置いて行ったのか分からないため可能性は低い。
そもそも、馬車の目的地がこの町ではない。
そんな理由から、トリスターノはこれがオルフェオのことではないと判断したようだ。
「こっちも違うだろ……」
トリスターノが否定して残った2件のうち、エルヴィーノはもう1件に対して懐疑的な声を上げる。
その件とは、奴隷商が襲撃を受けて、赤ん坊がいなくなったというものだった。
この国では、法律上奴隷は認められているが、取り扱うのは犯罪者限定だ。
奴隷が生んだ子なのか分からないが、奴隷商に赤ん坊がいること自体があり得ない。
つまり、そこは悪徳奴隷商。
襲撃を受けたのも、家族や友人等が不当に奴隷にされた人間からだろう。
となると、赤ん坊も親の手に戻っているはず。
そのため、エルヴィーノはこの件もオルフェオのことではないと判断した。
「これは……」
残り一件に目を通す。
すると、エルヴィーノは小さく声を漏らして、書かれている内容をじっくりと読み始めた。
「あいよ!」
オルフェオをあやして時間を潰していると、受付の女性から声をかけられる。
それに応じ、エルヴィーノは受付のカウンターへと向かった。
「こちらが3件の依頼達成費になります」
「どうも!」
受付に向かうと、ギルド職員の女性は硬貨をトレイに乗せ、エルヴィーノの前へと差し出す。
エルヴィーノは、そのトレイに乗っている硬貨を受け取り、財布としている小さい袋の中に入れた。
今朝受けた依頼を達成したことによる報酬金で、エルヴィーノは難なく成功させた。
特にザンナ猪は自分たちの食材用として多めに狩ったこともあり、報酬に色がついたほどだ。
「エルヴィーノ!」
「んっ?」
報酬も得たし、家に帰って夕飯の準備でも始めようかと考えていたエルヴィーノだったが、ギルドの建物から出る前に声をかけられ、立ち止まって振り返る。
誰かと思ったら、ここのギルド所長のトリスターノだった。
“クイッ!”
「……了解」
呼び止めたトリスターノへ向いつつ受付の方に向かって歩いて行くと、トリスターノは親指を立てて後方を指さした。
受付奥にある所長室に来てくれという合図だ。
その意味を理解したエルヴィーノは、それに従って所長室へと向かった。
「それで?」
「その坊のことだよ」
「あぁ……」
所長室に入り、トリスターノと向かい合わせでソファーに座ると、エルヴィーノはさっそくと言わんばかりに、所長室に呼んだ理由を問いかける。
すると、トリスターノはエルヴィーノの胸に抱かれているオルフェオのことを指さして返答した。
「生後半年ほどの赤ん坊関連の事件を調べた結果だ」
「仕事が早いな……」
エルヴィーノの前に3枚の紙を差し出すトリスターノ。
一昨日の朝、大繁殖した一角兎の討伐に向かう前に話したオルフェオのことを、さっそく調べてくれたらしい。
ギルド所長の仕事は、他にも色々と仕事があって忙しいはず。
それなのに、もう動いてくれていたなんて、エルヴィーノは頭に浮かんだ思いが口から出ていた。
「一昨日も思ったが、お前子供好きだろ?」
ギルド所長ともなると、荒事にも対処しなければならないため、腕っぷしも求められる。
トリスターノも元は高ランク冒険者だった。
修羅場もいくつか潜り抜けているせいか、顔は少々強面だ。
顔で判断するのは良くないが、とても子供好きには思えなかったため、エルヴィーノとしては意外だったため、ストレートに問いかけた。
「まあ、それもそうだが、孫のこともあってな」
「孫? あぁ、そいえば、あの娘は結婚して子供を産んだんだっけ……」
トリスターノには、結婚して隣の町に住んでいる娘がいる。
その娘が、何年か前に子供を産んだということをエルヴィーノは聞いていた。
そのため、孫という言葉を聞いたエルヴィーノは、何となく納得できた。
隣町のため会いに行こうと思えばそんなに難しいことではないが、仕事のこともあってなかなか頻繁に会いに行けていなとトリスターノはぼやいていた。
そのため、その孫とオルフェオのことを重ねているのかもしれない。
「よく考えると、あの娘が親なんてやっぱ人族の成長は早いな」
「そういや、お前たちには何度も面倒見てもらったっけ……」
トリスターノの娘のことを思い出し、エルヴィーノはしみじみと呟く。
なぜなら、トリスターノの奥さんは体が弱く、体調を崩すことが少なくなかったため、エルヴィーノとセラフィーナが奥さんと娘の面倒を見ていたからだ。
仕事と看病を懸命に両立していたトリスターノの努力もむなしく、奥さんが亡くなったときは、残された2人を一日中慰めたものだ。
その時大泣きしたことを思い出したからか、トリスターノは少し照れくさそうに呟いた。
「つい先日のような気もするが……」
「ダークエルフからすると時間の流れが違うんだろ」
「かもな……」
年寄りがいうようなエルヴィーノの台詞に、トリスターノはツッコミを入れる。
ダークと付くが、髪と目の色が違うだけのエルフだ。
人族の寿命が長くて100年とすると、ドワーフがその倍。
そして、エルフはドワーフの倍と言われている。
そのことから、エルヴィーノとセラフィーナも長くて400年くらい生きることができるはずだ。
それだけ長い年月を生きることができる者からすると、確かにトリスターノが言うように時間の感じ方が違うのかもしれない。
そのため、エルヴィーノはトリスターノのツッコミを受け入れた。
「話を元に戻そう」
「あぁ」
いつの間にか話がずれてしまった。
そのことに気づいた2人は、ようやく先ほどの紙の内容に移ることにした。
「3件か……」
「あぁ。とはいっても、1件は違うと思うがな」
トリスターノがエルヴィーノの前に出した紙には、この町付近の町や村で起きた生後半年前後の赤ん坊に関連する事件の内容が書かれていた。
それに目を通すエルヴィーノに対し、トリスターノは一枚を指さしてオルフェオのことではないと告げる。
「魔物に襲われたって話だからな……」
トリスターノが否定した事件とは、乗り合い馬車が森で魔物に襲われ、御者や乗客が行方不明になっているというものだ。
魔物から逃げきれず、御者も乗客も命を落としたというのが、一番考えられる可能性だ。
もしもの話として、その中の誰かが赤ん坊を連れて逃げてきたとしても、どうしてエルヴィーノの家の前に置いて行ったのか分からないため可能性は低い。
そもそも、馬車の目的地がこの町ではない。
そんな理由から、トリスターノはこれがオルフェオのことではないと判断したようだ。
「こっちも違うだろ……」
トリスターノが否定して残った2件のうち、エルヴィーノはもう1件に対して懐疑的な声を上げる。
その件とは、奴隷商が襲撃を受けて、赤ん坊がいなくなったというものだった。
この国では、法律上奴隷は認められているが、取り扱うのは犯罪者限定だ。
奴隷が生んだ子なのか分からないが、奴隷商に赤ん坊がいること自体があり得ない。
つまり、そこは悪徳奴隷商。
襲撃を受けたのも、家族や友人等が不当に奴隷にされた人間からだろう。
となると、赤ん坊も親の手に戻っているはず。
そのため、エルヴィーノはこの件もオルフェオのことではないと判断した。
「これは……」
残り一件に目を通す。
すると、エルヴィーノは小さく声を漏らして、書かれている内容をじっくりと読み始めた。
205
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる