祖国奪還

ポリ 外丸

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第8話 セヴェーロ

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「エレウテリオの奴遅いな。何故青垣砦からの報告が来ないのだ?」

 大和王国の首都である官林州の日花にちはな市。
 現在、王族が住んでいた王城は、帝国の将軍の居住地となっていた。
 城内にあった金目のものは、本土にいる帝国の皇帝へと献上されて、少々殺風景な雰囲気になっており、昔の煌びやかさは全くなくなっていた。
 我が物顔で玉座に腰かけたセヴェーロ将軍は、青垣砦を攻め込むことを聞いてから数日経つというのに、エレウテリオから何の情報も届かないことに不機嫌そうにしつつ、側に使える者へと問いかけた。

「また悪い癖でも出ているのではないでしょうか……」

「あぁ……」

 セヴェーロに問いかけられた男には、思い当たる節があった。
 エレウテリオは女好きとして有名で、しかもロリコンの気がある。
 青垣砦に逃げ込んだ水元公爵家の当主である江奈は、器量良しとして知られている。
 もしも、もう青垣砦が占領されていれば、その江奈を捕虜としていることだろう。
 そうなると、エレウテリオが江奈に手を出さないはずがない。
 どうせ処刑するのだからと、好き勝手に犯しているに違いない。
 部下からの言葉を聞いたセヴェーロも同じ考えに思い至り、情報が遅れているのは仕方ないと考えるようになっていた。

「死なない程度に済ませてくれるとありがたいんだがな」

「そうですね」

 エレウテリオは、気にいった女を壊れるまで楽しむ傾向がある。
 そのため、江奈のことも壊してしまう可能性がある。
 大和王国を完全に掌握したことを示すためにも、最後の公爵家である江奈は公衆の面前で処刑しなくてはならない。
 それをおこなう前に死なれては、帝国の威光を他国に知らしめることが弱くなる。
 そうならないためにも、遅れているのはしょうがないと諦めるとして、楽しむのはほどほどにしてもらいたいところだ。

「できれば、他の奴らと同様に、俺も早く帝国へ戻りたいな」

 西南、西北、東南の地区を占領した他の将軍たちは、後の作業は部下に任せて本土の帝国へと戻っていった。
 大和王国を得たことで、皇帝は次を狙っているはずだ。
 次はどこへ攻め込めと言われるか分からないが、戻って準備を始めたいところだ。
 自分も一緒に帰りたかったのだが、クジ引きで負けて、エレウテリオの進軍を見届けるという役をしなければならなくなってしまった。
 クジで負けなければ自分も帰れただけに、先に帰れた他の将軍たちは羨ましい限りだ。

「この国も手に入ったし、今度は南のメイソーマって所か?」

「そうですね。その方が侵攻しやすいかもしれないですね」

 次に帝国が侵略に向かうとすれば、南のメイソーマ王国が有力だ。
 帝国の北にはプリグマベーラ王国とスペリカ王国か存在している。
 その2国は、帝国への対抗策として同盟関係を結んでいる。
 プリグマベーラはそこまで脅威にはならないだろうが、スペリカ王国はかなり強大な国家だ。
 下手にプリグマベーラに手を出して、スペリカ王国とことを構えるようなことになると、帝国も相当なダメージを負うことになりかねない。
 その点、メイソーマは大和王国と同盟国であるため手を出せないでいたが、もうその大和王国も潰れたも同然。
 今の状況ならメイソーマに手を出しても問題ないため、2人は次の標的がメイソーマということで一致した。

「そういえば、殺した公爵家の人間が言ってたこと覚えているか?」

「えぇ。どこかに、この国全土の魔素を吸収する王族しか知らないダンジョンが存在してるって話ですね?」

「あぁ」

 昔は帝国と同じような魔物が出現していた言うのに、この国は何故か強い魔物が出現しなくなってきた。
 皇帝がこの国を手に入れようと考えたのも、それが狙いの1つだった。
 強い魔物が出なければ被害に遭って死ぬ人間も少なくなり、家畜や作物も安定して育てられ、人口も増える。
 大和王国が発展したのも、強い魔物が出なくなったからだろう。
 その魔物の弱体化は、この国のどこかにあるダンジョンによるものだと、セヴェーロは立花公爵を殺した時にたまたま聞くことができたのだ。

「そんなのあったら確かに安全なのでしょうが、その吸収した魔素でダンジョン内の魔物が強力になってしまうのではないでしょうか?」

「そうだな」

 たしかに国全土の魔素を吸収するダンジョンがあるとすれば、魔物が弱くなるのも頷けるというものだ。
 しかし、そんなダンジョンがあったら、吸収した魔素で生まれた魔物は数も強さも危険極まりないものになるだろう。
 そんな魔物がダンジョンから出てくれば、それまでの平和はあっという間に元の木阿弥と化すことになる。

「死ぬ前の戯言ではないでしょうか?」

「う~ん……」

 王族が死んだ今、そのダンジョンの場所も分からないし、そもそもそんなダンジョンがあるなんて誰も信じていないだろう。
 しかし、セヴェーロは死ぬ前の立花の様子から、なんとなく戯言で片付けられないでいた。
 本当にそんなダンジョンがあったとして、管理さえしっかりしていれば問題ないように感じたからだ。
 大和王国の王族はかなり戦闘力の高い人間が多い。
 帝国は不意打ちで仕留める以外の方法が見つからなかったほどだ。
 その強さの理由は、もしかしたらそのダンジョンが関係していたのではないだろうか。
 この世界では、生物を倒すと僅かながら能力が上がると言われている。
 まだ証拠を示すことはできていない説だが、魔物を倒している数が多い人間ほど強いのはたしかだ。
 その能力上昇も、相手が強者であればあるほどその上昇値は変わってくるという話のため、大和王国の王族が強かったのもそのせいなのではないかと思えてきた。 

「もしも本当にそんなダンジョンがあったら、俺たちもここにいたら危ないのかもな……」

 これまでは王族がそのダンジョンの管理をして来たのだとしたら、その王族がいなくなった今、そのダンジョンは放置された状態。
 いつ強力な魔物が出現してくるか分かったものではない。
 そう考えると、セヴェーロは何となく嫌な予感がして来た。

「セヴェーロ様……?」

「まぁ、根拠のない予感なんだけどな」

 そんなダンジョンがあるなんて信じられない自分とは違い、セヴェーロはそうでもない様子だ。
 部下の男は何でそんな風にセヴェーロが思っているのか分からず、首を傾げるしかなかった。
 セヴェーロ自身も半信半疑のため、その反応も分からなくない。
 そのため、セヴェーロは根拠のないものだと笑って答えたのだった。 

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