主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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2学年 後期

第161話

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「倒したって……、私は止めを刺しただけだけど?」

 兎の魔人を倒したのは伸であって、自分ではない。
 自分は、あくまでも止めを刺しただけだ。
 そのため、伸が言うように自分が倒したとは言うわけにはいかない。
 伸の発言に首を傾げ、綾愛は問いかけた。

「だからだよ」

「…………?」

 止めを刺しただけなのに、どうして伸は自分が倒したということにしたいのだろうか。
 伸の考えが良く分からず、綾愛は再度首を傾げるしかなかった。

「いいか?」

「……うん」

 理由が分からず首を傾げている綾愛に、伸は説明をすることにした。

「俺からすれば大したことなかったけど、この兎の魔人は結構な強さだ」

「うん」

 自分が時間を稼ぐだけで精一杯だった兎の魔人をはっきりと大したことないと言う伸に、蒼としては若干複雑な思いがある。
 しかし、結果的に事実なため、綾愛はすんなり頷いた。

「それを、全く無名の俺が倒したとか言っても、だれも信用しない」

「……そうだね」

 大会に来ていたテレビ局によって、魔人たちの姿は映像として残っている。
 その映像を見れば、能力の高い魔闘師ならある程度の強さなのかを計ることができるだろう。
 兎の魔人を倒したのが伸だと、綾愛や会場内に残って戦う名門家の関係者が証言すれば、もしかしたら信じてもらえる可抜生はある。
 だが、それを見ていない人間からすると信用してもらえず、場合によっては炎上するかもしれない。
 そう言われると、たしかに見ていない人間に理解してもらえないため、綾愛は頷くしかなかった。

「でも、会場外の魔人は?」

「目撃者はいるかもしれないけれど、そいつが俺を見えたのか分からない」

「あぁ……」

 伸は会場の外にいる魔人たちを倒した後、ここに入ってきたと言った。
 ならば、その魔人たちを倒した姿を見ている人間がいるはず。
 そう思って綾愛が質問すると、伸は確実に見られたと言い切れないことを説明する。
 探知により、魔人が会場の外だけでなく中にも数体いることは分かっていた。
 そのため、急いで倒したということもあり、あっという間に魔人を倒した自分の姿を目撃できた人間がいるのか分からないからだ。
 伸が本気を出せば、速度に自信のある自分ですらその姿を見ることができるか分からないため、外の魔闘師たちが速すぎて見えなかったという可能性がある。
 伸の返答に、綾愛は納得の返事をする。

「でも……」

「それに、柊が倒したってなれば、国民は信用して安心してくれるだろ?」

「……うん」

 柊の名前は伊達ではない。
 しかも、綾愛は対抗戦を連覇している。
 若手の魔闘師の中では最強と、今まで以上にその名が広まるはずだ。
 その綾愛なら夏休みのこともあるし、魔人を倒したと言っても信用してもらえるはず。
 しかし、だからと言って嘘を言うのは気が引ける。
 なので、綾愛は信じてもらえなくても伸が倒したとするべきなのではないかと言おうとした。
 だが、次に伸が言ったことを聞いて受け入れることにした。
 この国は、去年から魔人が頻出している。
 伸のお陰もあって、被害はできる限り抑えられているように思えるが、毎年現れる上に数まで増えてきているとなると、魔闘師ではない人間にとっては不安しかない。
 魔闘師であっても、魔人の出現は勘弁願いたいものだ。
 全国民にとって、畏怖の対象である魔人が倒されたという確実な情報は、魔人が出ても倒してくれる人間がいるという安心を与えることに繋がる。
 伸は、嘘と言われようと自分が倒したとして名を上げるよりも、国民の不安を取り除くことを選択したということだ。
 そんな伸の考えを尊重することにし、綾愛は受け入れることにした。

「それに嘘を言う訳じゃないだろ? 止めを刺したのは事実なんだから……」

「うん」

 自分が止めを刺したと聞けば、見ていない者は綾愛が倒したと考える。
 同じようで違う意味なのだが、止めを刺したのは事実なのだから、綾愛がそれをわざわざ訂正する義務はないだろう。
 伸のその言葉に、納得した綾愛は頷いた。

「……さて、他も始末しないとな……」

「うん。お願い」

 実の所、いつまでも綾愛と話している訳にもいかない。
 ここに現れた魔人は兎の魔人だけではない。
 名門家の代表や関係者の者たちも善戦しているが、他の魔人の実力もるもの。
 かなりギリギリの戦いを繰り広げている。
 彼らに死なれては、伸のいう国民の安心なんて得られない。
 それを阻止するために、伸は他の魔人も倒さなければならないと考えた。
 伸なら心配する必要もない。
 そう信じる綾愛は、伸に他の魔人の討伐をお願いした。





「……何だ? あいつは……」

 仲間の兎の魔人が殺されたのを見て、上長圭太と戦っていた鼠の魔人が信じられないと言うかのように呟く。
 突然現れた伸を、鼠の魔人は勘違い小僧という印象を持っていたが、ふたを開けてみれば、兎の魔人があっさりと殺されてしまったのだから、そう呟きたくなるのも無理はない。

「……こっちだって知りたいよ」

 鼠の魔人の呟きに、戦っていた上長佳太が反応する。
 佳太も、こんな危険な場所に無名の少年である伸が現れた時、逃げるように警告するつもりでいた。
 しかし、戦い始めたと思ったら、兎の魔人を苦もなく倒してしまった。
 完全に予想外の状況に、佳太自身も伸が何者かを知りたいくらいだ。
 鼠の魔人の武器クレイモアによる攻撃に、四苦八苦しながらなんとか戦っている。
 そんな鼠の魔人と同等かそれ以上の強さを感じさせる兎の魔人を、あっさりと倒してしまったのだから、そう思うのも仕方がない。

「……これは、いつまでもお前の相手をしている場合ではなさそうだな……」

 兎の魔人をあっさりと倒すような人間を、このまま放っておく訳にはいかない。
 そう考えた鼠の魔人は、佳太との戦いを一刻も早く終わらせることにした。

「ムンッ!!」

「……マジかよ?」

 気合いの言葉と共に、鼠の魔人が纏う魔力が膨れ上がる。
 ここまで本気で戦っていた自分とは違い、魔力量を増やすことにより、鼠の魔人は1段階上の身体強化を図ったようだ。
 両手剣のクレイモアによるパワーに苦戦していたというのに、更なるパワーアップが成されたようだ。
 これまで以上のパワーとなると、刀で受け流すことも危険になる。
 信じられないと言うかのように、佳太は思わず呟いた。

“ズバッ!!”

「「っっっ!?」」

 佳太とパワーアップした鼠の魔人が剣を交える寸前、何かが2人の間を横切る。
 辛うじて人間だと分かった佳太と鼠の魔人は、通り過ぎて止まった人間に目を向けた。

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