主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
239 / 281
3学年 後期

第238話

しおりを挟む
“スタッ!”

「やあっ!」

「…………」

 上空の転移魔法陣から出現し、武舞台上に降り立った1人の少年。
 周囲をキョロキョロと見渡し、伸のことを見ると軽い口調で挨拶をしてきた。
 体から洩れる嫌な雰囲気とは違う態度に、拍子抜けした伸はどう返していいか分からず無言になる。

「君が新田伸だね?」

「あぁ……」

「やっぱり!」

 問いかけに伸が答えると、少年は嬉しそうに声を上げる。

「僕はバルタサール。魔人の王……魔王だ」

「………………はっ?」

 この少年が只者ではないことは、身に纏う雰囲気から嫌でも理解できる。
 様々な魔人や魔物を倒してきた伸でも、戦う前からここまで脅威に感じる相手は存在したことがない。
 だからと言って、太平洋に浮かぶ魔人島に存在していると真しやかに言われていた魔人の王。
 それが、こんな12・3歳の少年の姿をしており、公の前に姿を現すなんて想像もしていなかった。
 少年の言うことが信じられない伸は、思わず素っ頓狂な声を漏らすことになった。

「いや~……、会いたかったよ!」

 両手を広げて嬉しそうに声を上げるバルタサール。

「実は僕は世界への侵攻を目指していたんだけど、実力の有る魔人たちが君にやられて遅れることになってしまった」

 腕を組み、バルタサールは思い出すかのように話始める。

「こう見えても、そのことは結構ムカついていてね。その報いを君の命で贖ってもらおうと、僕自ら出向くことにしたんだ」

 顔は笑っているが、言葉の通り怒りを覚えているのだろう。
 バルタサールから少しずつ伸に向かって殺気が放たれ始めた。

「まぁ、これを機に大和皇国を奪い取るのもいいかもと思ってね。つまり……」

 小さな島である魔人島にいつまでも潜んでいるのは飽きた。
 自分たち魔人が、どうして身を隠すように生きなければならないのか。
 この世界は弱肉強食。
 魔物でも理解しているであろうこの言葉通り、人間などではなく、自分たち魔人が繫栄する世界に変えてしまえば良い。
 どうせそれを始めるのなら、この大和皇国からにしてしまおうと、バルタサールはそう考えたようだ。
 そして、次の言葉を一旦切り、バルタサールは上空を指さす。

「暴れさせてもらうよ!」

 バルタサールが指さした先には、自身が出現した転移の魔法陣が残っている。
 その魔法陣から、次々と魔人たちが姿を現し始めた。

「っっっ!!」

「おっと! 君は行かない方がいい。じゃないと、僕が好き勝手に動き回ってしまうからね」

「……このガキッ!」

 出現する魔人の数は尋常じゃない。
 こんな数を相手にできるほどの魔闘師はこの場にいない。
 応援が来るまでの間、少しでも数を減らそうと伸が動こうとするが、バルタサールはそれを制止する。
 言っていることが嘘でないことを証明するかのように、バルタサールは周囲に殺気をまき散らす。
 それを見た伸は魔人たちの始末に動けず、バルタサールに悪態を吐く。

「失礼な! こんなナリだけど、君より200年以上年上だぞ!」

「っ!? 何っ!?」

 見た目、小学生高学年~中学生くらいのバルタサール。
 しかし、その見た目に反し、どうやらかなり長い年月を生きているようだ。
 バルタサールからの意外な返答に、伸は思わず驚きの声を上げた。

「魔人は食べた人間の姿にしかなれないんだけど、この姿は結構気に入っているんだよね」

「…………」

 バルタサールはなんてことないように話すが、人間にとっては重要なことを言っている。
 言語を話し、人間の姿になれるからこそ魔人と言われている。
 しかし、バルタサールの言い方だと、人間を食べたから姿を変化させることができると言っているかのようだ。
 人間をどれくらい食べれば姿を変化させることができるのか。
 今後のことを考えたら気になるところだが、今はそれどころではない。
 文康が魔人だと知り、観客たちは逃げ始めたばかりで、かなりの人数がまだ残っている。
 全員が逃げ切るまで、バルタサールを相手にしつつ他の魔人の相手をするなんて不可能だ。
 この状況をどうするべきか、伸は無言で頭をフル回転させた。

「……何でそんな姿をしているんだ?」

 バルタサールの身長は、150cm前後と背が低い。
 背が低いと間合いが狭くなり、戦闘においては不利になる事がある。
 200年以上生きる魔人の王なら、相当な数の人間に手をかけているはず。
 それなのに、今の少年の姿をしている理由が気になった伸は、思わずその理由を問いかけた。

「教えてあげよう! それはね……」

 聞かれなくても話すつもりだったのだろう。
 伸の問いかけに、バルタサールは嬉しそうに話し始めた。

「魔王の僕でも魔人になりたての時は弱かった。とある国の魔闘師と戦うことになって殺られそうになった時、その魔闘師の息子を人質に取ったのさ。そうしたら面白いようにその魔闘師は僕の言いなりになり、親子共々僕に殺されましたとさ……」

「…………」

 人間の心を弄ぶような話に、伸は胸糞悪くなってくる。

「何とか生き残った僕は、ある意味命の恩人であるその息子を取り込んで、その時のことを忘れないようにしようと思ったのさ」

『こいつ……』

 今にも殺してやりたいが、感情に任せて斬りかかるのはバルタサールの思うつぼ。
 そのため、伸は努めて冷静を保った。

「……さて、始めようか?」

 もしかしたら、自分の話を不愉快に思って伸が襲い掛かってくるとでも思っていたのだろうか。
 思った通りの反応をしない事につまらなそうな顔をしたバルタサールは、腰に差していた剣を抜き、伸に向かって構えを取った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...