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第一章 脱ホームレス、立ち直りへの道
自分を大切にしたい年頃
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冬の日没は早い。まだ五時過ぎだと言うのに神園はもう薄闇に包まれている。
帰り道、正義は人気のない鉄橋を潜る。頭上を電車がけたたましい音を立てて走り抜けた。
“オレが異端なのか?”
都留岐はヒーローとして正しい。見返りを求めず、ただひたすらに人の幸せを願えるのは素晴らしい事だ。それを皆に説いて何が悪い?過去聖人君子がやってきた事ではないか?だがその果ての末路が正義である。御伽公園に戻ればただのホームレス、これほど惨めな事は無い。
とある童話に幸福な王子というものがある。自我を持つ金箔の王子像が貧しい人々に自分の体を分け与える童話だ。結果、王子像は全身の金箔を失い捨てられてしまう。皮肉な話、今の自分そのものである。嘗て身を呈して守った神園。しかし人々は今、新たなるヒーローに釘付けで正義の事など気に掛けもしない。ヒーローと言う金箔を剥され御伽公園に捨てられた王子、それこそ正義である。一体誰がこんな人生勧められようか?正義は理想に目を輝かせていた頃の自分を懐かしむ。
“思えばあれは、ただ目が眩んでいただけだったんだなぁ・・・”
やるせない思いで正義の胸は張り裂けそうになった。すると目の前を長髪の女の子が横切る。寒空の下、黒のトレンチコートにミニスカスパッツの女の子。人一人背負い、おぼつかない足取りでヨロヨロと歩く様に危なっかしさを感じる。貴重なアフターファイブを無駄には過ごせない。手を貸しても一銭の得にもならないし、関わらない方が無難である。そう自分を戒めると正義は己を笑った。
五代目ジャスティスも地に落ちたものだ、昔なら躊躇なく助けていた。しかし今はどうだ?彼女を見ても知らんぷりする周りの人間と何も変わらない。都留岐に否されて当然である。正義は女の子に追いつこうと足早に歩く。
「あの~・・・後ろの人大丈夫ですか?手伝いましょうか?」
その言葉に女の子が振り向いた。
「いえ、大丈夫です。この子ただ眠ってるだけなんで・・・」
正義はその顔を見て言葉を失う。彼女を知っていたのだ。ラノベ主人公科の紅一点、唯一の女生徒。男ばかりのむさ苦しいクラスなので特に印象に残っている。
「あれ?キミ、確かうちのクラスの・・・」
「ジャスティス先生?・・・どうも」
彼女はぎこちなく会釈した。
「こら、人前でその名を軽々しく口にすんなよ。元とはいえ一応素性は隠してるんだぞ!」
「糾正義、今日自己紹介しただろ?」
「ところで後ろの子誰?友達?」
「え?まぁ、そう・・・友達」
彼女の視線が不自然に反れる。
「そうか?よく見たらその子傷だらけだぞ?ホントに大丈夫か?」
「ホント大丈夫です、ちょっと転んだだけなんで」
所々肉の抉れている人間を背負って大丈夫な訳がない。これは訳ありだとすぐ分かる。
「遠慮するなって、人助けはヒーローの性っつうしゴフッ!!!!」
会話の途中で突然正義が吹く。彼女の頭突きが男の鳩尾に決まったのだ。
思わぬダメージに正義は身を屈めて悶える。
「先生ごめん、私急いでるから」
そう言うと彼女はその場から逃げるように走っていった。都留岐に啓発されて柄にもなく善意を見せたらこの仕打ち。一体オレが何をした?やっぱ人助け何て気軽にするもんじゃねぇな。そう思いながら正義は生徒の後姿を見送る。
帰り道、正義は人気のない鉄橋を潜る。頭上を電車がけたたましい音を立てて走り抜けた。
“オレが異端なのか?”
都留岐はヒーローとして正しい。見返りを求めず、ただひたすらに人の幸せを願えるのは素晴らしい事だ。それを皆に説いて何が悪い?過去聖人君子がやってきた事ではないか?だがその果ての末路が正義である。御伽公園に戻ればただのホームレス、これほど惨めな事は無い。
とある童話に幸福な王子というものがある。自我を持つ金箔の王子像が貧しい人々に自分の体を分け与える童話だ。結果、王子像は全身の金箔を失い捨てられてしまう。皮肉な話、今の自分そのものである。嘗て身を呈して守った神園。しかし人々は今、新たなるヒーローに釘付けで正義の事など気に掛けもしない。ヒーローと言う金箔を剥され御伽公園に捨てられた王子、それこそ正義である。一体誰がこんな人生勧められようか?正義は理想に目を輝かせていた頃の自分を懐かしむ。
“思えばあれは、ただ目が眩んでいただけだったんだなぁ・・・”
やるせない思いで正義の胸は張り裂けそうになった。すると目の前を長髪の女の子が横切る。寒空の下、黒のトレンチコートにミニスカスパッツの女の子。人一人背負い、おぼつかない足取りでヨロヨロと歩く様に危なっかしさを感じる。貴重なアフターファイブを無駄には過ごせない。手を貸しても一銭の得にもならないし、関わらない方が無難である。そう自分を戒めると正義は己を笑った。
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「あの~・・・後ろの人大丈夫ですか?手伝いましょうか?」
その言葉に女の子が振り向いた。
「いえ、大丈夫です。この子ただ眠ってるだけなんで・・・」
正義はその顔を見て言葉を失う。彼女を知っていたのだ。ラノベ主人公科の紅一点、唯一の女生徒。男ばかりのむさ苦しいクラスなので特に印象に残っている。
「あれ?キミ、確かうちのクラスの・・・」
「ジャスティス先生?・・・どうも」
彼女はぎこちなく会釈した。
「こら、人前でその名を軽々しく口にすんなよ。元とはいえ一応素性は隠してるんだぞ!」
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「そうか?よく見たらその子傷だらけだぞ?ホントに大丈夫か?」
「ホント大丈夫です、ちょっと転んだだけなんで」
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「遠慮するなって、人助けはヒーローの性っつうしゴフッ!!!!」
会話の途中で突然正義が吹く。彼女の頭突きが男の鳩尾に決まったのだ。
思わぬダメージに正義は身を屈めて悶える。
「先生ごめん、私急いでるから」
そう言うと彼女はその場から逃げるように走っていった。都留岐に啓発されて柄にもなく善意を見せたらこの仕打ち。一体オレが何をした?やっぱ人助け何て気軽にするもんじゃねぇな。そう思いながら正義は生徒の後姿を見送る。
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