御伽ヒロイック学院 ーラノベ主人公科ー

もみじ

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第三章 御伽ヒロイック学院

朝のミーティング

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 真暗な部屋にオトヒロの職員達が集まる。
 明かりが島を照らした。

「それでは職員会議を始めます」

 両手の指を絡め、曇った表情を見せる島。映写幕えいしゃまくの前に座る彼をオトヒロの講師陣が囲む。
 全七クラス。ダークヒーロー科の島を筆頭にメタルヒーロー科、勇者科、戦隊ヒーロー科、スーパーヒーロー科の講師達が席をつらねる。そしてその周りをその他大勢の事務職員が取り巻いた。

 島に席が近ければ近いほど発言力がある。一見上下関係の無さそうな業界だがそこにはしっかりとそれが明示されている。無論、正義の席は一番端だ。隣には都留岐。彼女もまたオトヒロの中では下の方だった。まるで意地をこね固めたような重たい空気に正義は息を詰まらせる。

「先生方も知っての通り、ここ最近怪人の仕業と思われる事件が多発しています。昨晩、ついにうちの生徒からも被害者が出てしまいました。先日の学院長先生襲撃の件も踏まえ、生徒達には怪人を見つけても自分で倒そうと思わないよう、よぉ~く言い聞かせて下さい」
「うは、先生襲うなんて何処の命知らずだよ」

 正義は思わず身を引いた。
 都留岐が正義の耳元でささやく。

「聞いた話、獣耳の怪人らしいですよ。集団で襲ってきて、二匹取り逃がしたとか・・・」

 正義はレゥの存在を思い出した。まさかあの怪人が・・・と思うと気が気でならない。
 念のため鎖で繋いでおいたから大丈夫。新左翼との決戦でエンゲルスが使用した拘束具、怪人の腕力をもってしてもそうやすやすと引き千切れる代物ではない。だがあれから十年も経っている事を思うと劣化してないか心配だ。


「ハ、ハブシュッ!!」

 急に鼻がむずがゆくなり大きくくしゃみをするレゥ。垂れた鼻水をすする。
 その容姿は随分物々しい、両手を後ろ手に縛られ首輪まではめられている。まるで猛獣扱い。どこにも逃げられぬよう正義が取り付けたのだ。腕にめい一杯力を込めても鎖はギシギシと音を立てるばかりでびくともしない。鉄の鎖なんて簡単に引き千切ってみせると豪語した自分を激しく責める。こんな事になるなら安易に縛らせるんじゃなかった。

「こんちくしょぉぉ!!なんつう堅さだこの鎖、全然千切れねぇ。こんな所ヒーローに見られたらやべぇぞ、なぶり殺される」

 すると目の前を数人の子供が通りがかった。遠足だろうか?真新しいリュックサックが映える幼い子供達、レゥよりも遥かに幼い。道なりから外れてこんな小道に足を踏み入れるなんてよほどの冒険者か方向音痴である。そのうちの一人がレゥに声をかけた。

「お姉ちゃん何やってんの?」
「じろじろ見んなガキ共。見せもんじゃねぇんだよ、どっか行け」

 その応答に虫の居所を悪くする子供、何を思ったのかやんちゃそうな一人がレゥに向かって石を投げつけた。それに続けと他の子供達も石を投げる。

「このクソガキ!!」

 怒りに任せて飛びかかる、だが首の鎖がその邪魔をした。
「グェッ」とうめいてダイナミックに倒れるレゥ、ここぞとばかりに子供達が一斉に襲い掛かる。仰向けになった彼女の胸部にまたがり無邪気にも頬や耳、髪の毛を引っ張る。

「キミ達辞めなよ」

 なまりのある発音で子供達を止める。
 見るとそこにはサイズの合わない学生服から豊満な胸をこぼす金髪ツインテールの美少女、長いマフラーを払うと子供達の首根っこを掴んでひょいと持ち上げた。

「ろくに抵抗できない女の子に寄ってかかって感心しないなぁ、代わりにボクが相手をしてあげるよ」


 都留岐は正義の袖を引いた。

「糾先生のお父さん、学院長先生ってそんなに強いんですか?」
「剣の腕はオレ以上だ」
「へぇ~、そうなんですか。実は私も剣には自信あるんですよ」
「でも先生の本当の怖さは容赦の無さにある。歴代ジャスティスの中でも初代はダーティヒーロー並に性質悪いからなぁ~」
「私も剣には自信あるんです」
「あの超合金のような芯は頑固のレベルを超えている。ブレるどころか揺るぎもしない」
「私も剣には自信が・・・」

 島が二人の会話に割って入った。

「糾先生、都留岐先生。何か質問ある?」
「いえ・・・」

 二人は身を小さくし空気と同化する。

「で、ここからが本題!」

 島が指を鳴らすとプロジェクタが作動し、スクリーンに映像が映し出された。
 そこには黒色のカウボーイハットにマント、下乳を露出させたエロ可愛いコスチュームの少女。金色の髪をなびかせ、化物を次から次へ撃ち倒していく姿があった。見惚れてしまうほどのガンさばき。
 都留岐は「あっ…」と声を漏らす。

「彼女は魔法少女バレット、他の街で活躍するAランクヒーローです」
「で、何が問題かと言うと・・・先の騒動を機にジャスティスが管轄するこの地で事もあろうに活動した!」

 職員達がどよめく。
 島はさらに気を高ぶらせて話を続ける。

「ヒーローは他のヒーローの土地をおかしてはならない・・・その絶対ルールを破ったのだ。すなわち、これはオトヒロの象徴ジャスティスに取って代わりこの地を守ろうと言うオルタの意思!」
「Sランクヒーロージャスティスがよもや負けるとは思えないが、万が一失脚するような事があれば、彼を推し続けたオトヒロに誰が入学しようと思うか?思わない!」
「先生方もそれを肝に銘じ、彼女を見つけ次第速やかに説得。応じない場合は武力による指導をお願いしたい」

 都留岐は終始浮かない顔で話を聞いていた。
 正義はそれを横目で見る。

「都留岐先生、バレットと面識あるのか?」
やぶから棒に何ですか?糾先生」
「いいから答えろよ」

 都留岐は答えにくそうに言葉をにごらせる。

「まぁ・・・昔ちょっと」
「そうか・・・」
「糾先生、どうしてヒーローは他のヒーローの土地で活躍してはならないんでしょうか?同じ平和を守る者同士仲良くすればいいのに」
「愚問だな、理由なんていくらでもある。メンツ、プライド、そして金だ。人外一匹倒すと国からいくら貰えるか知ってるか?」

 戦闘員は一万から五万、怪人ならその十倍、幹部クラスともなればさらにその十倍だ。それがヒーローの大切な収入源であり、他の土地で活躍するという事はそれを奪う事に等しい」

 だからこそ、ヒーロー同士が争わないよう先生達が・・・偉大な先人がそう言うルールを作ったんだ。まぁ魔法少女には到底理解出来ない話かもしれんがな」
「そんな事ないですよ、魔法少女も似たようなものです。ソロで活躍できた昭和と違い、今は魔法少女同士で縄張り争いするのが当然のようになっています」
「規模は小さくても争う理由は同じです。でも最終的には分かり合えると思うんですよ」
「それは魔法少女同士だから出来るんだよ。魔法少女とメタルヒーローじゃそもそも主義主張が違うから共闘は無理だろうな」

 正義は落ち込む都留岐の肩に手をかける。
 すると突然背後から大きな物音がした。皆の視線が正義に向けられる。
 思わず都留岐の肩から手を放す正義。瞬間、身の危険を感じる程の害心がいしんを感じる。振り向いてもそれが誰から放たれたものか分からない。
 だが気のせいではない。共産貴族との戦いでつちかった第六感がそう告げている。
 この職員室のどこかに正義を狙う敵はいた。
 都留岐の机に置かれたダックスフンドの縫いぐるみ。そのつぶらな瞳には辺りを見回す正義の姿が映っていた。



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