御伽ヒロイック学院 ーラノベ主人公科ー

もみじ

文字の大きさ
27 / 43
第三章 御伽ヒロイック学院

魔法少女科と合同授業

しおりを挟む
 魔法少女科の生徒は全部で五人。その中でも可愛い子と言ったら今朝会ったピンク娘、愛くらいである。あとはハズレ感が漂う。

「それでは皆ペアを組んで下さい」

 都留岐の合図で男達が一斉に愛にむらがった。

「おい、お前等!ペア組めって言ったろ!」
「糾先生。言っちゃ悪いんすけど可愛い子相手じゃないと本気でないっすよ」

男性一同が翔にうなずく。

「お前等なぁ・・・」

 気持ちは分かる。いかにも純情そうな愛を除くと、先程の性格悪いみなみ。小学生に見間違えるほど小柄でウェーブのかかった髪に大きめのオーバーコートから細い素足を伸ばす青。長手袋とエナメルブーツ、体に張り付くノースリーブのニットワンピースからそのグラマスなスタイルが一目で分かる黄。全身を黒一色にまとめたチュニックにレギンス姿の眼鏡の陰険そうな紫。
 どの子も素材は悪くないがいかんせん玉にきずだらけ。正義も生徒の立場なら無難な愛を選んでしまう。

「これでは話になりませんね・・・」

 愛が手を上げる。

「都留岐先生、私達も選びたいです!」
「では女子に選んでもらいましょう」

 女性陣は一斉にいくさの前に群がった。

「あのぉ・・・皆?」
「つ~るぎ先生。そもそもわたし達ぃ~、あんな人類の吹き出物みたいな連中とペア組む気ありませんからぁ~」

 女子一同が青い子に頷く。

「ていうか都留岐先生、私女なんですけど女同士でペア組まなきゃいけないんですか?」

 紫の子が小声でいくさに問う。

「もしかしていくささん・・・私達とペア組むの・・・嫌なの?」
「女を口説く趣味は無いよ」
「では朏さんは糾先生とペアを組んで下さい」
「はっ!?何で!」

 思わず二人は口を揃えた。

「仕方ないじゃないですか。ラノベ主人公科は6人、魔法少女科は5人、生徒だけでは頭数が足りないんですから」
「無理無理無理無理、絶対無理!こんなオッサンに口説かれたら鳥肌立つ」
「口説くのは朏さんの方ですよ」
「もっと無理!!」
「では女の子同士でもいいと?」
「・・・仕方ない」

 いくさが肩を落とすと魔法少女達はハイタッチして喜んだ。

「だけど都留岐先生、この調子だとペア組むだけで今日の授業終るぞ?」
「ではくじ引きで決めましょう」

 都留岐は紙を切り、一から七の数字を振って右手に握りしめる。

「今からこれを魔法少女科の皆が出席番号順に引きます。そして書かれた番号と同じ出席番号の男子とペアを組む。これなら公平ですよね?」
「では魔法少女科の一番からくじを引いて下さい。あと簡単な自己紹介もお願いします」

 黄色の子が前に出た。

「魔法少女科出席番号第一番、竹井未希たけいみきです」

 彼女が魔法少女科のエース。
 オトヒロでは成績の優劣で出席番号の順番を決める。即ち出席番号第一番とはそのクラスで最優を意味する。講師ですら強さで威厳を誇示するような歪んだ体制。オトヒロの闇は生徒にも深く根付いていた。

 正義は竹さんをなじる様に見る。

 一番を張るにしては華奢きゃしゃだしどんくさそう。とても強いようには思えない。だがそこは魔法少女、どんな能力を持っているか見た目で判断するのは難しい。
 底知れぬ実力にもどかしさを感じつつ、正義は机にひじをつく。

「ところでいくささんは出席番号何番かしら?」
「七番・・・」
「そう、なら七番引けば良いのね」
「竹さんまでいくささん狙ってるの?意外だなぁー、あんまそういうの興味なさそうなんだけど」
「本当は誰でも良いのよ、ただ皆狙ってるから私が当てたら面白いかなと思って」
「うっわ・・・性格悪っるぅ~」
「さやか、あんたが言うなよ」

 竹さんは都留岐の手からくじを引いた。
 手を合わせ必死に祈る京ちゃん。

「当てられませんように当てられませんように当てられませんように・・・」
「京ちゃん、あの子そこまで悪くないだろ?スタイルもなかなかのもんだぜ?逆に本命外して残りの三人に当たった時の方が悲惨だろ」
「クマさん、俺幼女にしか奴興味ないんで。お姉さんにはあんま興奮しないんです」
「幼女なんていないだろ、あの青い子だって実際いくつか分かったもんじゃない」
「いや、あれどっからどう見ても小学生っすよ。もう抱きしめてちゅっちゅしたぁ~い!」

 京ちゃんは両腕で自分の肩を抱えると、左右に体を揺らす。
 青い子は身震いした。
 竹さんはくじを男達に見せる。

「あら残念、一番だわ」

 くじを掲げ、素気そっけなく微笑む竹さん。
 番号を見てラノベ主人公科の男達は一斉に雄叫びを上げた。

「うおぉぉぉ、ラノベ科と魔法少女科の一番対決うぅぅ!」
「ノブさんやったじゃないっすか、もの凄くグラマスな女の子っすよ」

 眼鏡の長身の男が立ち上がる。いかにも真面目そうな男、ノブさん。
 皆がチャカす中、彼は一歩前へ出て小さく会釈した。

「ラノベ主人公科出席番号第一番、高梨伸男たかなしのぶおです。よろしくお願いします」

 竹さんもつられて会釈する。
 正義は手を叩いた。

「はい!次。たかがくじにどんだけ時間かける気だ?後がつかえてんだから早くしろ」
「じゃあ出席番号第二番、片倉愛、いっきま~す☆」

 本命の登場に男達のテンションはさらに上がる。教室全体がむさ苦しい熱気に包まれた。

「来たあぁぁぁ!!」
「あの子二番だったのか」
「ここで外したら後はもうハズレしかない」
「お願いだから四番引いてくれぇ~」
「ハイウェーブは無理だよ。ここはたぶん一番主人公補正の高い京ちゃんかクマさんが選ばれるんじゃね?」

 愛が都留岐の手からくじを引く。
 男達はかたずを飲んでそれを見守った。

「残念・・・五番」

 しょぼくれる愛。

「愛ついてないわね、あんなオークとペアだなんて」
「オーク!?」

 女子の心無い言葉、クマさんは石膏のように固まった。
 翔は羨ましそうにそんなクマさんの肩を揺する。

「クマさん大本命じゃないっすか、超羨ましいんすけど」
「オーク・・・」

 ハイウェーブは地に膝をつきなげく。

「絶望的だ、死のう・・・」
「ハイウェーブ絶望するの早えぇよ、まだ希望は残ってるぜ!」
「出席番号第三番・・・松木陽子まつきようこです。よろしくお願いします」

 紫の子の登場に男達のテンションは地に落ちた。教室内が一気に冷え込む。

「松っちゃん頑張れぇ~」
「七番七番七番七番・・・」

 女性陣が見守る中、禍々しいオーラを発しながら少女は念仏をとなえるように七番と連呼する。

「松木さん、早く引いて下さい」

 都留岐にうながされ渋々くじを引く松っちゃん、番号を見るやいなや床に手を付いた。

 クラスが静まる。

「四番・・・」

 絶望に打ちひしぐ眼鏡の少女。
 ハイウェーブは白目をむいて倒れた。

「ハイウェーブったぁぁぁぁ!」

 京ちゃんは喜びに声を上げ、いくさにハイタッチする。
 いくさはそれを避けた。

「ちょっと触んないでくんない」

 空を切る京ちゃんの手。彼は寂しげにその手を見つめると、ハイタッチなどはなから無かったかのように前を向く。

「これでハズレが一つ消えた、後はあのデカいのが消えれば!」
「京ちゃん小学生狙ってるなら譲るよ、俺あの赤い子でいいや」
「男子勝手な事言ってんじゃないわよ、出席番号第四番日野ひのみなみっ!」

 みなみは手早く自己紹介を済ませて都留岐からくじを奪った。番号を見て少し浮かない顔をする。
 一体何番を引いたのか?まるで受験合格を祈るように翔と京ちゃんは手を合わせた。
 七番の番号を見せるみなみ。

 「よし!」と京ちゃんは小さくガッツポーズする。
 青い子が奇声を上げた。

「はあぁぁ!?信じらんなぁ~い。メスゴリラにはあの人モドキ達がお似合いよ」
「誰がメスゴリラよロリガッパ!」
「相変わらず二人は仲良しだなぁ」
「仲良くない!」

 二人は愛を叩きつける。
 残るは一人、ウェーブのかかった長い髪に青いケープコートの小学生。ハズレ中のハズレだが、ここで外せば女の子とすらペアを組めない。翔はハズレに全てをかける。
 一方京ちゃんにとっては愛に次ぐ大本命。心の中で勝利に酔いしれる。なぜなら翔の主人公補正はEマイナス、対して自分はC。運負けする筈がない。

「出席番号第五番、水上みなかみさやか、ハズレくじ引きま~す」

 彼女がくじを引く。
 心臓の鼓動が時を刻んだ。

 二人にはその動きがコマ送りのように見えた。それは達人だけが到達する境地、とてつもない集中力が生み出す超世界。

 風は静まり、音は消える。

 水の流れは止まり、飛沫しぶきが空気中で水玉となって固まる。
 世界は時に置き去りにされた。

「六番・・・」

 時が・・・元に戻る。

「やったぁぁぁ!!」

 翔は手を天にかかげ喜びに打ち震えた。
 京ちゃんは真っ白に染まる。

 ずっと楽しみにしていた魔法少女科との合同授業。ただこの日のためだけに辛い授業に耐えてきた。しかし結果はどうだ?たった六分の一のハズレ・・・それを見事に引いてしまう。

 京ちゃんはただ黙って涙を流す。

 正義は彼を哀れんだ。

「岡本・・・まぁそう気を落とすな。生きてりゃこの先良い事もある」

 京ちゃんの眼鏡が涙で曇る。

「先生・・・俺は一体誰と組めば良いんですか?」

 都留岐は正義を見た。

「やっぱオレか?男にこくられるような趣味は無いんだが」
「俺だってやですよぉー!男を口説くなんて」
「そりゃそうだ、だけど仕方ないだろ?」

 都留岐は最後に残ったくじを見る。そして京ちゃんにそれを見せた。

「ならこうしましょう。魔法少女科担任講師、都留岐社。岡本君とペアを組みます」

「ちょっと待てぇい!!」

男達は計ったように同じ言葉を吐き捨てる。
その日、皆の心は一つになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...