御伽ヒロイック学院 ーラノベ主人公科ー

もみじ

文字の大きさ
32 / 43
第三章 御伽ヒロイック学院

笑みをこぼす者

しおりを挟む
 時計の針が六時を回る。
 正義は机に伏した。
 あれから部屋を片付け、島に小言を聞かされ、身も心もへとへとである。一週間の疲れが肩に重く伸しかかる。

 隣には都留岐、ホチキスで資料を止めている。

「糾先生、UMAに襲われたって本当ですか?」
「UMAじゃねぇよ!お前が飼ってる妖精だよ、妖精!」
「何の事です?妖精なんて知りませんよ」
「しらばっくれるなよ!あのダックスフンドが喋って動いてるところをこの目で見たんだからな」

 都留岐はダックスの縫いぐるみを取った。

「糾先生、それはきっと夢ですわ・・・ワタクシが喋るはずないですもの」

 彼女の下手糞な腹話術にはほとほと呆れるばかり。
 正義はだるそうに立ち上がるとタイムカードを切る。

「都留岐先生、オレ帰るわ・・・」
「お疲れ様です」
「あれ?追いかけてこないの?」
「仕事残ってますので」
「仕事ったって今日はノー残業デイだろ」
「タイムカードならもう切りました」
「ああ・・・そう・・・」

 都留岐の素気ない態度にやや寂しさを感じる。だがこれと言ってケチをつける理由もなく、正義はすごすごとその場から退散した。

・・・

「行きましたわね」

 縫いぐるみは都留岐の手から抜けると机の上で身だしなみを整える。

「クゥ、あまり無茶はしないで下さい。何かあったらどうするんですか?」
「あら?あの者の住まいをつきとめてほしいと言ったのは社でしょうに、何を今更」
「それとこれは別です、大人の人間にちょっかい出すのは危険ですから止めて下さい。子供と違って捕まったらただではすみませんよ。お姫様に万が一の事があったら私、妖精界の皆さんに申し訳が立ちません」
「心配には及ばなくてよ。ワタクシ、庶民に引けは取りませんの」
「その自信が心配なんです・・・」
「そんな事より社、あなたのパートナーがワタクシであった事を幸運に思いなさい。追跡においてアドバンテージがあるのは数いる妖精の中でも犬型妖精だけですわよ」




 枯葉の舞い散る御伽公園。まばらな人通り。正義は人目を忍んで木々が生い茂る闇に溶けていく。モミの大木が連ねる造林。昼間でさえ人を寄せ付けない林道りんどうの先に休憩所を兼ねた公衆トイレがある。その裏に回る。
 正義の踏む枯葉の音に呼応していくさが怒鳴った。

「先生遅い!今まで何してたんだよ?とっととレゥのかせ外してよ」
「そうくな、こっちも色々あったんだよ。それにそいつは一生そのままの方が良いだろ」

 泥だらけのレゥが悲壮な顔をして言う。

「そりゃねぇよおっちゃん、両腕縛られたままじゃ何も出来ねぇよ」
「お前やけに汚いな、泥遊びでもしたか?」
「ちげぇよ、ガキ共にやられたんだ」
「アハハハ!怪物がガキに汚されたのかよ?情けないな」
「笑い事じゃないよ!レゥいじめられたんだよ。可哀相だと思わないの?」
「丁度良いハンデじゃないか、もし両手とも使えてたら今頃血の海だぞ。笑い事で済んでるうちはまだ平和な証拠さ」

 そんな三人の様子を遠くから見つめる瞳。人をさげすみ、見下すような目。その口元からは不敵な笑みがこぼれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...