LV1から始める異世界チート

もみじ

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第一章 始まり

面接試験

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                ~医務室~

「ヒール」

 ナースの魔法少女がリットに魔法をかける。すると体の傷がみるみる癒えていく。

「たった一回の下級回復魔法で全快出来るのはレベル1の特権だな、もうすっかり治っただろ?」

「はい、これならまだまだ戦える」

「よろしい、ではこれから面接試験に臨むとしよう。仕度しろ」

 これより先は実技試験に合格した者だけが入る事を許される。筆記試験で受験者の大半が落とされ、実技試験でさらにその大半が落とされる、そしてこの面接試験でもうさらに落とされる。
 各ブロックで実技試験をパスした50人と50匹、それが大通路に集結する。そこにあのうるさいシャムの姿はない、やはり落ちたか。

「面接番号1番、今日はついているな」

「ついてる?」

「ああ、他人の面接を待たなくてすむ。早く終わらせて帰るぞ」

「マスターは緊張しないの?」

 緊張?あぁ~そう言えばこの世界の俺にとってはこれが初めての就職面接だった。だが緊張などない、現実世界で年配相手に話すのは慣れている、準備も万全だ、自信はあっても心配はない。

 時間になり俺は扉を叩いた。

 コンコン・・・
「失礼します」

 部屋に入ると5匹の妖精が椅子に座って並んでいた。その中にはあの白い悪魔、フェルトの姿もある。そして部屋の中央にはポツンと席が用意されている。

「バニィ・クロムウェル=ティターニア君じゃな、座りたまえ」

 中央に座る黒山羊の妖精が俺に言う。その見た目は妖精と言うより悪魔、バフォメットを連想させる。やはりこの世界の妖精は異質だ。

 俺は一礼すると席に座りリットを横に立たせる。

「まずは筆記試験、実技試験、共に素晴らしい成績と評価しよう。君ほどの優秀な妖精がこのギルドを受けてくれてとてもうれしく思う。だが一つ聞かせてくれ、なぜヴァルハラを受けたのじゃ?」

「ヴァルハラは帝国最強の魔法ギルド、妖精ならば誰もが一度は憧れるところです。差し出がましいようですが私は私の才覚を誰よりも認知している、この才をいかんなく発揮できるところは最早ヴァルハラしかないと考え今回受けました」

「君の才能がこのヴァルハラに適当だと?何をもってそう言える?君はヴァルハラの何を知っていると言うんだい?」

「ホルス卿、当然私はヴァルハラの栄光しか知りえません。その影など想像もできない。ならば空を仰ぐこの無知な妖精に現実を教えるのもまたあなた方の職分ではないでしょうか?」

「どうも言い回しがくどいな、その話し方は昔からか?」

「申し訳ありませんドラグノフ卿、これは性分でして。もしお気に障られるようであれば矯正します」

 面接官が黙る。しっかりした受け答えができ、間違えは間違えとして受け入れる姿勢、使う側ならば文句のない人材だろう。

「では君はこのヴァルハラで何がしたい、何ができるというのじゃ?」

 あくびの出る質問だ、どこの世界でも面接で聞いてくることはさして変わらない。答えようのない質問で相手を困らせその反応を見たいのだ。変に身の丈以上のことを答えれば挙げ足を取られる。今できる事、それを答えればいいのだ。

「私はレベル1の魔法少女でレベル70越えの魔法少女を倒せる、ならば北の大国を撃ち滅ぼすことも可能でしょう」

 面接官達から「お~・・・」と驚きの声がこぼれる。

「レーテとは大きく出たな、勝算はあるのか?」

「もちろんです、しかし今の私はそれを進言できる立場にない。話してもおそらくは一介のウサギの戯言となるでしょう」

「構わない、述べてみたまえ」

「レーテは大陸を東西にまたぐ大国家、帝国の脅威でもある。軍事力はさることながら、その領土は奪うに奪いきれないほど広大だ、攻めれば必ず兵站する。そして極寒の冬がレーテに味方する限り奴等に負けはない」

「つまりヴァニルは勝てないと?」

「少なくとも従来のやり方では、しかし今日私がやって見せたようにやり方さえ変えればレベル1がレベル70を倒すことだって可能だ」

「待て、レベル1を我らに例えるとは何事か!貴様は我等ヴァニル帝国民が劣っていると言うのか!?」

「まぁまぁ、少し落ち着きたまえドラグノフ卿、もう少し彼の話を聞いてやっても良いじゃろ。バニィ君、続けよ」

「少し語弊がありました、レベル1とはレーテよりさらに東の国及び、現在レーテの支配を受けている少数民族のことです。我々が彼らに力を授け、国を起こさせ、巨国レーテを引き裂くのです」

「ほう、面白い。レーテを内側から壊すとな、しかしそう上手くいくものかのう」

「レーテは巨大な国家です、しかし蓋を開けてみればただの有象無象の集団、絶妙な内政の上に成り立っています。甘い言葉でつつけばたちまち崩壊するでしょう。
 民族解放という旗のもと、東西より二正面作戦を展開、春から秋にかけての電撃作戦ののち、冬は手中に収めた領土の戦線を維持しつつ反レーテ勢力を支援。親ヴァニルの国家を誕生させれば行く行くは・・・」

「バカバカしい、ただ領土を簒奪さんだつしたいなら西側の諸国を攻めて支配した方が早いだろ、なぜわざわざリスクのある強国と戦わなければならない?」

「西の海の向こうにはもう一つ、アトランティスという大きな国がある。そしてアトランティスもレーテもおそらく新たな巨国の誕生を許さない。もしそうなったらその時二正面作戦を強いられるのは我らです」

「でもどこを攻めてもアトランティスが戦争に加わる可能性は拭いきれない、それについてはどう思うバニィ君」

「アトランティスの最大の仮想敵国はレーテです、そのレーテが弱体化、もしくは無くなるとあれば二頭の悪魔の対決として傍観すると考えます」

「ライバルが増えることは良しとしないが減るならば良しとするか・・・その歳でよくもまぁそんな先の先まで読めたものじゃのう。まるで知っていたかのようではないか?」

 知っているも何も、俺の元いた世界が通った道だ。ここが嘗ての労働党と同じ道を辿ろうとしているのは政治を見ていれば分かる。だからその前に方向修正する。

「レーテには父を殺された借りがあります。あの頃は精神的にもまだまだ稚拙ちせつだったもので、学生時代はこのような愚考ばかり巡らせていました、全くお恥ずかしい限りです」

「いや、バニィ、なかなかの弁舌だったぞ。だが一つ忠告してやろう、戦場はそんなに甘くない。なぁフェルト卿?」

「ドラグノフ卿、戦場を知っているようで知らないのは案外我々の方かもしれないぞ?」

「ふぇ、フェルト卿?何を言い出す・・・」

「ふぉっふぉっふぉっ、あの白い悪魔が一目置くとは驚いた。君は将来有望じゃの」

 俺も驚いた、まさかあの白い悪魔に肩を持たれようとは。嬉しい誤算である。俺の有用性を示せた上に、面接官に好印象を与えられれば合格は決定的だ。

「ギルド長にそう言ってもらえるとは光栄です」

「ちょっとバニィ君!」

「?」

「アマルティア侯爵はギルド長じゃないよ」

「・・・」

「ふぉっふぉっふぉっ、もうギルドマスターでなくてすまんの」






 やってしまった・・・

 俺達は丘を下り城門を出る。

「マスター、浮かない顔」

「面接官の反応を見る限り99%合格だろう、だが1%・・・不安要素を残してしまった。まさかアマルティア侯爵がギルド長を降ろされていたとは。情報収集の甘さが露呈してしまった」

「そんなに気に病むこと?」

「確かに気に病むほどの事ではない、だが万に一つ、詰めの甘い男のレッテルを張られてしまったら・・・俺は一生好きでもない女に媚びへつらって生きなければならない!」

 俺は頭を抱える。小さなミスをここまで後悔した日はない。





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