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第一章 始まり
光もあれば影もある
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~それから数日が経つ~
「坊ちゃま、坊ちゃま!」
「どうしたメリー、騒がしいぞ」
「ヴァルハラよりお手紙が届きました」
俺は使用人のメリー(昔からこの家に仕えている羊の妖精)から手紙を受け取る。
皇族の印が押された封筒。ふむ、確かにヴァルハラからの通知だ。
「メリー、母上とリットを呼んできてくれ、皆の前で開けたい」
「か、かしこまりました!」
皆が広間に集まる。
「バニィ、それで結果はどうだったの?」
「そう急かさないで下さい母上、俺もまだ見ていないのです」
俺はナイフで封を几帳面に切る。
・・・
「マスター、もったいぶらず早く教えて」
「母上、来月予定していた縁談の話ですが・・・」
俺は皆に通知を見せる。
「断ってもらえますか?合格です」
「はぁ~」と息を吐いて母が倒れた。
「奥様、奥様!お気をしっかり!」
まあ当然か、あの程度の失態で落ちる訳がない。なのにどうだ?この周りの喜びよう、俺以上に悦に入っている。
毛玉の親とはいえ、多少は孝行してやらないとな。受けた恩も必ず返す、それが俺のポリシーだ。
そしてその日はなんだかんだとパーティーになった。
それから俺がヴァルハラに合格したという話は流行り病のごとく町全体に広がる。
言いふらしているのは母とメリー。おかげでたちまち俺はヒーローだ、行く先々で賛美の声を浴びせられる。
ここは町の工具店、俺はそこの店主に声をかける。
「そこにある釘、100ダースくれ」
「まいど!バニィ様」
「代金はいくらだ?」
「ヴァルハラの方からお代なんてめっそうもない、どうぞこのままお持ち帰ってください。その代わり今後ともこの店を御ひいきに」
「・・・」
俺はリットに大量の釘を担がせた。
「マスター人気、なんか得した気分ね」
「ああ・・・想定していたことだが全く嫌になる。出来る事ならこの町を焼き払いたい」
「いや?どうして?」
「父上が生きていた頃と同じ、どうせあいつらは俺の恩恵にあやかりたいだけだ、それが無くなればすぐに手の平を返すさ。俺は母上にサプライズできればそれで良かったのに・・・あぁ~苦痛だ」
「マスター、友達いないでしょ?」
「友人なんてものはいても面倒くさいだけだぞ」
リットが立ち止る。
「リット、どうした?」
「マスター、あれ」
リットの視線の先には藁を敷いて座るみすぼらしい少女が一人、空の皿を置いて蹲っていた。
シャノワールだ・・・
「リット、関わるな」
しかしリットは構わず彼女のところに行ってしまう。
「シャノ・・・ワールね、こんなところで何しているの?」
「ヘイトリッド?・・・どうかお恵みを・・・」
そう言うとシャノワールは空の皿を前に差し出した。
「マスターに捨てられたのね」
彼女はコクリと頷く。
当然光もあれば影もある。俺が皆の脚光を浴びる中、この地を治めるキャスリバーグ辺境伯の息子、シャムが落ちたという話も裏ではまことしやかに囁かれていた。
落ち目の貴族が合格して盛りの貴族が不合格、シャムにしてみればなんとも面白くない話である。
貴族の魔法少女になれば金に物を言わせて当然強くなれる。しかし見限られた時はいとも簡単に捨てられてしまう。それがこの世界の常だ。
「酷い顔、ご飯食べてるの?」
シャノワールは首を横に振った。
「ここ数日、何も食べていません」
「マスター、この子に何か食べ物を」
「やめておけ、施しても何にもならないぞ」
リットは俺の言うことなど聞かず自分の弁当をシャノワールに分けてしまう。
「ありがとうございます、ありがとうございます・・・」
シャノワールは泣きながら弁当を食べた。
「シャノ、家族は?」
「いません、戦争で皆死んでしまいました」
孤児だったか。
「マスター」
「ダメだ」
「まだ何も言ってない」
「どうせシャノワールを連れて帰ろうと言うのだろう?言っとくがうちに二人も魔法少女を養う余裕はない」
「ならせめて寝床だけでも!」
「母上が許さないだろう」
「だったら私の小屋に連れていく」
「その小屋だってうちの所有物だろ?」
「マスターは黙っててくれればいい、絶対迷惑かけないから」
「そもそもそいつが本当に捨てられたのかも怪しい、もしかしたら寝首をかくためかもしれないぞ」
「だとしてもほっとけない」
こうなるとリットは頑固だ、そういう性格である。全く、捨て猫を拾うのとはわけが違うというのに・・・
「好きにしろ」
ここで意地を張ってもしこりが残るだけ、俺はリットとの関係を優先した。
「坊ちゃま、坊ちゃま!」
「どうしたメリー、騒がしいぞ」
「ヴァルハラよりお手紙が届きました」
俺は使用人のメリー(昔からこの家に仕えている羊の妖精)から手紙を受け取る。
皇族の印が押された封筒。ふむ、確かにヴァルハラからの通知だ。
「メリー、母上とリットを呼んできてくれ、皆の前で開けたい」
「か、かしこまりました!」
皆が広間に集まる。
「バニィ、それで結果はどうだったの?」
「そう急かさないで下さい母上、俺もまだ見ていないのです」
俺はナイフで封を几帳面に切る。
・・・
「マスター、もったいぶらず早く教えて」
「母上、来月予定していた縁談の話ですが・・・」
俺は皆に通知を見せる。
「断ってもらえますか?合格です」
「はぁ~」と息を吐いて母が倒れた。
「奥様、奥様!お気をしっかり!」
まあ当然か、あの程度の失態で落ちる訳がない。なのにどうだ?この周りの喜びよう、俺以上に悦に入っている。
毛玉の親とはいえ、多少は孝行してやらないとな。受けた恩も必ず返す、それが俺のポリシーだ。
そしてその日はなんだかんだとパーティーになった。
それから俺がヴァルハラに合格したという話は流行り病のごとく町全体に広がる。
言いふらしているのは母とメリー。おかげでたちまち俺はヒーローだ、行く先々で賛美の声を浴びせられる。
ここは町の工具店、俺はそこの店主に声をかける。
「そこにある釘、100ダースくれ」
「まいど!バニィ様」
「代金はいくらだ?」
「ヴァルハラの方からお代なんてめっそうもない、どうぞこのままお持ち帰ってください。その代わり今後ともこの店を御ひいきに」
「・・・」
俺はリットに大量の釘を担がせた。
「マスター人気、なんか得した気分ね」
「ああ・・・想定していたことだが全く嫌になる。出来る事ならこの町を焼き払いたい」
「いや?どうして?」
「父上が生きていた頃と同じ、どうせあいつらは俺の恩恵にあやかりたいだけだ、それが無くなればすぐに手の平を返すさ。俺は母上にサプライズできればそれで良かったのに・・・あぁ~苦痛だ」
「マスター、友達いないでしょ?」
「友人なんてものはいても面倒くさいだけだぞ」
リットが立ち止る。
「リット、どうした?」
「マスター、あれ」
リットの視線の先には藁を敷いて座るみすぼらしい少女が一人、空の皿を置いて蹲っていた。
シャノワールだ・・・
「リット、関わるな」
しかしリットは構わず彼女のところに行ってしまう。
「シャノ・・・ワールね、こんなところで何しているの?」
「ヘイトリッド?・・・どうかお恵みを・・・」
そう言うとシャノワールは空の皿を前に差し出した。
「マスターに捨てられたのね」
彼女はコクリと頷く。
当然光もあれば影もある。俺が皆の脚光を浴びる中、この地を治めるキャスリバーグ辺境伯の息子、シャムが落ちたという話も裏ではまことしやかに囁かれていた。
落ち目の貴族が合格して盛りの貴族が不合格、シャムにしてみればなんとも面白くない話である。
貴族の魔法少女になれば金に物を言わせて当然強くなれる。しかし見限られた時はいとも簡単に捨てられてしまう。それがこの世界の常だ。
「酷い顔、ご飯食べてるの?」
シャノワールは首を横に振った。
「ここ数日、何も食べていません」
「マスター、この子に何か食べ物を」
「やめておけ、施しても何にもならないぞ」
リットは俺の言うことなど聞かず自分の弁当をシャノワールに分けてしまう。
「ありがとうございます、ありがとうございます・・・」
シャノワールは泣きながら弁当を食べた。
「シャノ、家族は?」
「いません、戦争で皆死んでしまいました」
孤児だったか。
「マスター」
「ダメだ」
「まだ何も言ってない」
「どうせシャノワールを連れて帰ろうと言うのだろう?言っとくがうちに二人も魔法少女を養う余裕はない」
「ならせめて寝床だけでも!」
「母上が許さないだろう」
「だったら私の小屋に連れていく」
「その小屋だってうちの所有物だろ?」
「マスターは黙っててくれればいい、絶対迷惑かけないから」
「そもそもそいつが本当に捨てられたのかも怪しい、もしかしたら寝首をかくためかもしれないぞ」
「だとしてもほっとけない」
こうなるとリットは頑固だ、そういう性格である。全く、捨て猫を拾うのとはわけが違うというのに・・・
「好きにしろ」
ここで意地を張ってもしこりが残るだけ、俺はリットとの関係を優先した。
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