LV1から始める異世界チート

もみじ

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第一章 始まり

やられたらやり返せ!それが俺の主義だ!!

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 家に着く。この石造りの大きな館が俺の家、そしてその隣にある犬小屋ならぬ人小屋がリットの家だ。
 リットもまた身寄りのない戦災孤児、魔法少女になれるという一点で俺に飼われている。故に彼女に自由な意思などない・・・のだが・・・。

 少し甘くし過ぎたか?

 父もフェルトも魔法少女との関係は良好に見えた。裏を返せば強い絆が無ければ強い魔法少女には育たない。上級者を見ていれば一目瞭然だ。
 しかし、ただ強いだけでは良い魔法少女とは言えない。こちらの言うことに従い、結果を出せる魔法少女、それが俺の求める魔法少女。
 リットの部屋で俺は改めて今後の教育方針を思索する。

「汚いところだけど我慢してね」

「とんでもありません!雨風を凌がせていただけるだけでも感謝です。この御恩、必ずお返しします」

 あちこちほつれのある藁のベッド、隙間風が入ってこないよう所々補強された壁、使い古されヒビの入った食器。生活に必要最低限の物以外は置かれていない部屋。一見酷いように思えるが、これが没落貴族が孤児に施せる最大の慈恵である。本当なら食費すら惜しみたいところ、それを二人も、無理である。

 俺は窓枠に立ってベッドに座る少女に目線を合わせた。

「シャノワール、これからどうする気だ?」

「分かりません・・・」

「我々は近々アースガルドへ旅立つ、いつまでもここにはいられないぞ」

「マスター、シャノはレベル28の魔法少女、探せば働き口くらいあるでしょ?」

「リット、魔法少女は妖精なくして変身出来ない。シャムに契約を破棄された以上ただの少女だ。新しい契約者を見つけようにも中古の魔法少女は市場価値が低くなる。仮に再契約できたとして、その新たな主はきっと奴隷商人まがいの妖精だろう、使い潰されるのが落ちだ」

「ならマスターが契約すればいい」

「冗談言うな。まだレベル1の、いかようにも育てられる魔法少女ならともかく、レベル28の才を育て潰された魔法少女をどうしろと?俺は今のシャノワールに何の魅力も感じない」

「雑用でも力仕事でも何でもします!だから使ってもらえないでしょうか?」

「さっきも言ったが我が家の家計は火の車だ、残念ながらこれ以上使用人を雇う経済的余裕はない」

「・・・もう奴隷でも構いません。このまま飢えて死ぬよりはマシです」

「君は何がしたい?目的も無しになぜ生きられる?悔しくないのか?」

「なぜって・・・そんなこと考えてこともありません。悔やむとしたら非力な自分が悔しい」

「レベル28もあって非力とは、君はヘイトリッドをバカにしているのか?」

「そんな、めっそうもありません!」

「いいか、君には才能があった、だが運が無かった、どこぞのバカにその才を潰されたのだ。俺なら君をヘイトリッドに次ぐ最強魔法少女に育てられた」

「違います!シャノはシャム様に財の限りを尽くして鍛えてもらいました。なのに期待に応えられなかった・・・だから見放されたのです」

「それは違うぞシャノワール。君はそのレベルになるまで辛い訓練に耐えてきたのだろう?主に従い、主の言う通りにしてきたのに、それなのに捨てられた。おかしいではないか?シャムは敗北の責任を全部君に押しつけて逃げる気だ。許せるのか?俺なら許さない。やり返せ、復讐しろ、こんな道理の通らない事をまかり通すな!」

 シャノワールが嘗ての自分に重なる。柄にもなく熱くなってしまった、俺は何をやっているんだ?こんな事をしても何の得にもならないと言うのに・・・

 目の前の少女はただただうつむくばかり。

 ダメだ。何もかも、この世の不条理さえ自分のせいにしてしまっている。俺とは真逆の性格、俺の魔法少女にするには不適正だ。

 何を言っても無駄、そう判断した俺は無言で小屋を出る。

「あの、待って下さい!」

 シャノワールが俺を呼び止めた。

「せめてもの恩返しに一つご警告させて下さい。シャム様はとても嫉妬深いお方です。シャノを捨てる際、バニィ様のことを酷く妬まれているご様子でした。どうかお背中には気を付けて、きっと何か仕掛けてきます」

「シャムには信頼できる手下が何人いる?」

「えっ?」

「どこぞのウサギを闇討ちしても、絶対にその事を漏らさない信頼のおける手下だ。使用人、友人、親族・・・常にシャムと同行していたお前ならその友好関係くらい知っているだろ?」

「その・・・学生時代、あまりよろしくない方々とつるまれているのは何度か見ました。3匹、とてもガラの悪い妖精です、トリルハイムの制服を着ていました」

 ああ、あいつらか。俺には心当たりがあった。

「安心してマスター、マスターは私が守る、誰にもいじめさせないわ」

「いじめ、ねぇ・・・フッ、ハハハハ!まさかこの歳になって誰かに虐められることになろうとは、何たる喜劇、愉快愉快!」

 俺の反応を見て二人がキョトンする。

「よろしい、ならば愚劣な小動物どもに思い知らせてやろう、人をいじめたらどうなるのか。そして見ておけシャノワール、これが俺のやり方(復讐)だ」


            ~その夜~

 静かな夜、鈴虫のさえずりだけが辺りをにぎわす。
 俺は丘の上から今は使われていない廃城を眺めた。

「マスター、コーヒー」

「うむ」

 俺はリットからコーヒーの入った水筒を受け取ると一口すする。

「リット、シャノワールの様子はどうだ?」

「精神的に疲れたのかもう寝てるわ。マスターはシャノワールのことまだ疑ってるの?」

「昼間会話してみて彼女の心拍数、脈拍、共に違和感はなかった、嘘はついていない。シャムの差し金と言う線は無さそうだ」

「それじゃあ信用するのね?」

「シャムが俺を妬んでいると言うことも含めてな。夕方、俺が明日にも発つとデマ(エサ)を流したら飢えた魚のように食らいついてきたよ。あの廃城が見えるだろ?今あそこにシャムとその愉快な仲間達が集まっている。
 明日、俺達を襲うメンバーはシャムを含め6匹と5人、港の手前で俺達に絡んでお前を傷物にする計画らしい」

「この距離から城の中の会話が聞こえるの?」

「ああ、耳元で囁かれているように聞こえるよ。聴力と脚力だけがウサギのアドバンテージだからな」

「もう地獄耳ってレベルじゃないわね、それ」

「奴らが城から出てくる、我々もそろそろ帰るとしよう。明日が楽しみだ」


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