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第一幕 転生

第四話

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ガタガタと馬車に揺られて王宮へむかう(心境)。実際は公爵家の金に物言わせて全く揺れない魔法の馬車だけど。私の心はガタガタと不穏な音を立てながら、面倒くさい行事にイライラが募っていく。そんな心境は緊張している双子の妹を眺めると言うことでしか平穏が保てない。これもすべて母に勝てない父のせいである。

奥さんミリアも、愛娘セレニアも、機嫌悪いときはそっくりだなぁ……」
「わたくしだって怒っていますわよ!」
「「セレノアはかわいいねぇ~」」
「ちょっと!ニアまで!わたくしだって怒っていますのよ?!」

ほんのり赤いほっぺたをぷくーと膨らませて、態々怒っていると主張するあたりがとてもかわいい。そんな癒やし光景に思わず口から出た言葉はお父さまともろかぶりした。いやでもセレノアのかわいさは世界共有だから仕方ないかなぁ!

「ところでおとうさま!お母さまと王妃さまはご学友でしたの?」
「そうだよ~。ミリアとレイラ王妃は学園時代からの親友でねぇ、ライバルもすごくいて当時の婚約者だった僕はそれはもう…」
「お母様に守られていらしたのですよね!」
「うん、そうそう…ってなんで知ってるんだい?!」
「ロイから聞きましたわ」
「余計なことを…!」

ロイとは父の従者であり、父の乳母兄弟でもある褐色エルフだ。この世界は肌でダークエルフとかエルフで区別されることなどなく、エルフはエルフとしてか区別されていない。まあ、裏情報で喜ぶなんてコアなファンくらいだろうし、そもそもエルフ族の多いクラーク家出身は悪役令嬢であるセレノアの家系だからかそんなに詳しくゲームでも記載されていなかった。
愛娘に自分の恥ずかしい黒歴史を知られていることに対し、乳母兄弟に念を送っているのかだらしない顔が一層崩れている。シャンとしてればちゃんとエルフなのに残念だなお父様は。

「さあ、着きましたよ。御三方様」
「ふわぁ!これが王宮なのですね、とてもお庭が素敵ねニア」
「「庭よりもノアの笑顔のほうが数百倍素敵だよ…」」
「~~もうふたりとも!!!」

大きなお目々が零れそうなほど輝かせた緑の宝石と笑顔に、またお父さまと台詞もろ被りした。違う意味で照れたセレノアがプンスコすればそこはまさに天国だ。慣れ親しんでいる御者は笑いながら馬車に傾斜台をつけ、さあ、いってらしゃいと声をかけられる。

「はじめのいーーーっぽ!」
「なんですの?」
「んー?」

馬車から降りて、王宮の庭に一歩踏み出して言葉を発した。不思議そうな顔をするセレノアの手を握って、同じく不思議そうな顔をしているお父さまに悪巧みした顔で見上げると、長年の勘で何かを察したように青ざめたお父様が何かを言う前に、セレノアの手を握って走り出す。

「せ、セレニアーーー!!!ちょ、まっ」
「王宮にはちゃんと来ましたからねー!お母さまによろしくおねがいしまーす」

絶望と涙を流した声を聞きながら、私はセレノアと共に走り出す。やりたいことを察したセレノアが私に引っ張られる形から横を走り出すのはすぐだった。

「これじゃあお父さま、お母さまに叱られちゃうわ」
「私達の午後を台無しにしたんだから、このくらいは平気だよ」
「そうかしら?」
「そうだよ」
「お母さま、怒るかしら?」
「私達は怒られないよ、きっと」
「ええ、そうね。怒られないわ、きっと」

何年立っても変わらないやり取りに自然と声が上がる。公爵家も広い庭園だが、王宮はさらに広大だ。きゃっきゃっと二人で声を上げながら、お父さまの声をBGMに大人の言う通りなんてならないように、2人で未知の世界へ走り出した。

「図書館に行きたいわ」
「王宮一の大木を登りに行こう?」
「ドレスがよごれちゃうわ」
「じゃあ厨房へいって、おやつでもくすねよう!」
「王宮のお菓子!たのしみだわ」
「みつからないように」
「しずかに、すみやかに」
「「楽しみだ」わ」

くすくす、と。2人で悪巧みして笑い合う。王宮でも、公爵でも、城下町でも変わらない。2人でいれば、そこはどこだって冒険への道だから。

「ニア!ここってすごく広いのね」
「まあ、仮にも王族が住んでいるんだもの」
「ララのビースト化はとてもかわいいリスだったわ」
「ルルも小さなうさぎだったね」
「王族の方々は大きな獅子なのよね?」
「大きな獅子だってきくね」
「どのくらい大きいのかしら」
「おしろよりおおきくなっちゃったり?」
「それはすごいわ!」

くすくす、こしょこしょ。あー楽しい。本当、クラーク家を選んでセレノアといっしょに要られて本当によかったわぁ。




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