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変わりゆく気持ちの行方
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「ひっ」
その人物を見て悲鳴をあげそうになり、璃湖は口元を手で押さえた。
「ひどいな。人を化物みたいに」
ドアの前に立っていたのは、福永だった。口元に笑みを浮かべてはいるが、目が笑っていない。怒っていると一目で気づいた璃湖は、思わず一歩後ずさった。それに気づいた福永が笑みを貼り付けたまま近づいてくる。
「な、なな、なんの御用ですか?」
「それは細井さんが一番よく分かってるんじゃないかな。どうして逃げるの?」
「だ、だって怒ってるじゃないですか」
あっという間にオフィスの奥に追いつめられ、璃湖は強い恐怖を感じた。肉食動物に狙われた小動物の気持ちを初めて理解できた気がする。
「ああ、そこはちゃんと分かってるんだ。なら、その理由も分かってるはずだよね。俺からの連絡を一切、無視して。ちょっとひどいんじゃない?」
「こ、こっちだって怒ってるんですから。私のおもちゃ、いい加減返してください」
昨日の虚しさを思い出してそう言うと、彼の顔から笑みが消えた。普段の温厚な福永からは想像もつかない冷たい視線を向けられて、璃湖はなにか重大な間違いを犯してしまったことに気づく。だが、もう後の祭りである。
「へえ、あれ使おうとしたんだ。俺のものしか挿れちゃダメって約束、破ろうとしたんだね。やっぱり預かっておいて正解だったな」
壁に押しつけられて、一気に距離がゼロになる。久しぶりに感じる彼の体温と香りに、秘所から蜜があふれた。それに匂いで気づいたのだろう。福永が璃湖のスカートをめくり、ショーツの中に手を差し入れた。
「あっ、やあっ」
いきなり蜜壺に指を入れられて、璃湖の身体がビクリと跳ねた。福永がこんなところでこんなことをするなんて、信じられない。
だけどそれをちっとも嫌だと思っていない自分はとんだ変態だ。福永になら、なにをされたって構わない。
「はは、すんなり入った。びしょびしょじゃん。二週間もしてないもんね、溜まってるんじゃない? もしかしてひとりでしてた?」
ジロリと睨まれながら中をかき回されて、オフィスにふさわしくない淫靡な水音が響く。いやらしい声が漏れそうになり、慌てて両手で口元を押さえた。
「ん、ふうぅ、んん……」
「中、ひくついてる。会社でこんなことされて、もしかして興奮してる?」
いい場所を指でノックするみたいに叩かれて、快楽に身体が震える。だけど、それは相手が福永だからだ。
すがるように彼を見上げると、見たこともないような意地の悪い笑みを浮かべていた。それにドキリとして、膣がきゅっと福永の指を締めつけた。
「……かわいいなぁ。このまま襲いたいくらいだ。ここでイかされるのと、場所を変えるのどっちがいい?」
耳元で囁かれて、璃湖はポロリと涙をこぼした。福永は表情を変えずに璃湖のことを見下ろしている。本気だ。
璃湖が答えなかったら、きっとここで追い詰められてしまう。会社でそんなことをするのもさせるのも避けたい。
「場所……変えたいです」
「OK。そうしよう。帰る準備をしてきて」
璃湖の答えが分かっていたのだろう。ふっと笑った福永が蜜壺に埋まっていた指を引き抜いた。そして蜜がべっとりとついたそれをペロリと舐める。
「はあ、久しぶりの細井さんの愛液美味しい。さ、早く移動しよう」
壮絶な色気にあてられて、璃湖は頬を赤らめた。そして早くと急かされて、更衣室に向かう。そのままドアの前に陣取って腕を組む福永を見て、璃湖は目を見開いた。
「まさか、そこで待つつもりですか?」
「そうだけど? なにか問題ある?」
ありまくりである。営業部のオフィスには誰も残っていなかったが、他の部署はどうか分からない。福永といるところを誰かに見られたら悪目立ちするのは確実だ。想像するだけで恐ろしい。
「駅で待ち合わせしましょうよ。社内はまずいですって」
「嫌だよ。逃げられたら困る」
「逃げませんから」
「悪いけど、信用できない」
真顔で拒否され璃湖は天を仰いだ。身から出た錆とはいえ、どうしたものか。どうにかして福永を説得しようとしていると、更衣室のドアがガチャリと開いた。
「あら、福永くん……と、細井さん?」
中から出てきたのは、同じ部署に所属している中田早紀と高野和香だった。早紀は福永と同期である。璃湖は早紀がずっと福永に好意を持っていると思っていたのだが、今年社外の男性と結婚した。
なんでも相手は幼なじみらしい。恋愛に疎い璃湖から見ても分かるくらいあからさまな態度だったのに、恋愛と結婚は別、というものなのかもしれないと思った記憶がある。
早紀も和香も、璃湖と福永を見て驚いたように目を丸くしている。それも当然だ。揉めていた流れで福永は璃湖の手を握っているし、どう見てもただの同僚の距離感ではない。
璃湖は慌てて福永の手を振りほどこうとしたが、それを福永は許してくれなかった。それどころかさらに指を絡め、まるで親密さをアピールするかのように肩に手まで回してくる。
「ふたりとも今帰るところなんだね。遅くまでお疲れ様」
「え、ええ⋯⋯福永くんと細井さんも、お疲れ様。それじゃあ、行きましょう高野さん」
「あ、はい。それじゃあ、お疲れ様でした⋯⋯」
満面の笑みを浮かべる福永になんらかの圧を感じたのか、ふたりは戸惑いの色を見せながらもその場を去っていく。小さくなっていく背中を呆然と見送り、ハッと我に返った璃湖は福永のことを睨みつけた。
「ちょっとどういうつもりですか。こんなのひどすぎます」
「なにがひどいの? 嘘をついてまで俺のこと避けてた細井さんの方がよっぽどひどいと思うけど」
ジロリと睨み返されて璃湖はぐっと言葉に詰まった。なぜバレているのか。顔を強張らせる璃湖を見て、福永がため息をついた。
「やっぱり嘘だったんだ」
しまった。カマをかけられただけだったのか。上手い言い訳が思いつかず、目線がウロウロと泳いだ。
「そ、それは⋯⋯。でも、こんなことをして社内で変な噂が広まったらどうするんですか。福永さんだって、困りますよね?」
「俺はまったく困らないよ。むしろその方が好都合。それより早く着替えてきたら? 俺を避けてた言い訳はたっぷり聞かせてもらうから」
福永に背中を押され、璃湖は更衣室に入った。中には誰もいない。電気も点けずに、そのままズルズルと座り込む。
「なんで? どうしてこんなことになるの?」
EDの治療は終わったはずなのに、璃湖になんの用があるというのか。確かに嘘はついたが、治療が終わったのだからふたりで会う理由もない。
彼だってそれが分かっているはずなのだから、そのままフェードアウトしてくれてまったく構わなかった。
だが福永はなぜか怒っている。彼がなにを考えているのかまったく分からず、璃湖は途方に暮れてしまう。
その人物を見て悲鳴をあげそうになり、璃湖は口元を手で押さえた。
「ひどいな。人を化物みたいに」
ドアの前に立っていたのは、福永だった。口元に笑みを浮かべてはいるが、目が笑っていない。怒っていると一目で気づいた璃湖は、思わず一歩後ずさった。それに気づいた福永が笑みを貼り付けたまま近づいてくる。
「な、なな、なんの御用ですか?」
「それは細井さんが一番よく分かってるんじゃないかな。どうして逃げるの?」
「だ、だって怒ってるじゃないですか」
あっという間にオフィスの奥に追いつめられ、璃湖は強い恐怖を感じた。肉食動物に狙われた小動物の気持ちを初めて理解できた気がする。
「ああ、そこはちゃんと分かってるんだ。なら、その理由も分かってるはずだよね。俺からの連絡を一切、無視して。ちょっとひどいんじゃない?」
「こ、こっちだって怒ってるんですから。私のおもちゃ、いい加減返してください」
昨日の虚しさを思い出してそう言うと、彼の顔から笑みが消えた。普段の温厚な福永からは想像もつかない冷たい視線を向けられて、璃湖はなにか重大な間違いを犯してしまったことに気づく。だが、もう後の祭りである。
「へえ、あれ使おうとしたんだ。俺のものしか挿れちゃダメって約束、破ろうとしたんだね。やっぱり預かっておいて正解だったな」
壁に押しつけられて、一気に距離がゼロになる。久しぶりに感じる彼の体温と香りに、秘所から蜜があふれた。それに匂いで気づいたのだろう。福永が璃湖のスカートをめくり、ショーツの中に手を差し入れた。
「あっ、やあっ」
いきなり蜜壺に指を入れられて、璃湖の身体がビクリと跳ねた。福永がこんなところでこんなことをするなんて、信じられない。
だけどそれをちっとも嫌だと思っていない自分はとんだ変態だ。福永になら、なにをされたって構わない。
「はは、すんなり入った。びしょびしょじゃん。二週間もしてないもんね、溜まってるんじゃない? もしかしてひとりでしてた?」
ジロリと睨まれながら中をかき回されて、オフィスにふさわしくない淫靡な水音が響く。いやらしい声が漏れそうになり、慌てて両手で口元を押さえた。
「ん、ふうぅ、んん……」
「中、ひくついてる。会社でこんなことされて、もしかして興奮してる?」
いい場所を指でノックするみたいに叩かれて、快楽に身体が震える。だけど、それは相手が福永だからだ。
すがるように彼を見上げると、見たこともないような意地の悪い笑みを浮かべていた。それにドキリとして、膣がきゅっと福永の指を締めつけた。
「……かわいいなぁ。このまま襲いたいくらいだ。ここでイかされるのと、場所を変えるのどっちがいい?」
耳元で囁かれて、璃湖はポロリと涙をこぼした。福永は表情を変えずに璃湖のことを見下ろしている。本気だ。
璃湖が答えなかったら、きっとここで追い詰められてしまう。会社でそんなことをするのもさせるのも避けたい。
「場所……変えたいです」
「OK。そうしよう。帰る準備をしてきて」
璃湖の答えが分かっていたのだろう。ふっと笑った福永が蜜壺に埋まっていた指を引き抜いた。そして蜜がべっとりとついたそれをペロリと舐める。
「はあ、久しぶりの細井さんの愛液美味しい。さ、早く移動しよう」
壮絶な色気にあてられて、璃湖は頬を赤らめた。そして早くと急かされて、更衣室に向かう。そのままドアの前に陣取って腕を組む福永を見て、璃湖は目を見開いた。
「まさか、そこで待つつもりですか?」
「そうだけど? なにか問題ある?」
ありまくりである。営業部のオフィスには誰も残っていなかったが、他の部署はどうか分からない。福永といるところを誰かに見られたら悪目立ちするのは確実だ。想像するだけで恐ろしい。
「駅で待ち合わせしましょうよ。社内はまずいですって」
「嫌だよ。逃げられたら困る」
「逃げませんから」
「悪いけど、信用できない」
真顔で拒否され璃湖は天を仰いだ。身から出た錆とはいえ、どうしたものか。どうにかして福永を説得しようとしていると、更衣室のドアがガチャリと開いた。
「あら、福永くん……と、細井さん?」
中から出てきたのは、同じ部署に所属している中田早紀と高野和香だった。早紀は福永と同期である。璃湖は早紀がずっと福永に好意を持っていると思っていたのだが、今年社外の男性と結婚した。
なんでも相手は幼なじみらしい。恋愛に疎い璃湖から見ても分かるくらいあからさまな態度だったのに、恋愛と結婚は別、というものなのかもしれないと思った記憶がある。
早紀も和香も、璃湖と福永を見て驚いたように目を丸くしている。それも当然だ。揉めていた流れで福永は璃湖の手を握っているし、どう見てもただの同僚の距離感ではない。
璃湖は慌てて福永の手を振りほどこうとしたが、それを福永は許してくれなかった。それどころかさらに指を絡め、まるで親密さをアピールするかのように肩に手まで回してくる。
「ふたりとも今帰るところなんだね。遅くまでお疲れ様」
「え、ええ⋯⋯福永くんと細井さんも、お疲れ様。それじゃあ、行きましょう高野さん」
「あ、はい。それじゃあ、お疲れ様でした⋯⋯」
満面の笑みを浮かべる福永になんらかの圧を感じたのか、ふたりは戸惑いの色を見せながらもその場を去っていく。小さくなっていく背中を呆然と見送り、ハッと我に返った璃湖は福永のことを睨みつけた。
「ちょっとどういうつもりですか。こんなのひどすぎます」
「なにがひどいの? 嘘をついてまで俺のこと避けてた細井さんの方がよっぽどひどいと思うけど」
ジロリと睨み返されて璃湖はぐっと言葉に詰まった。なぜバレているのか。顔を強張らせる璃湖を見て、福永がため息をついた。
「やっぱり嘘だったんだ」
しまった。カマをかけられただけだったのか。上手い言い訳が思いつかず、目線がウロウロと泳いだ。
「そ、それは⋯⋯。でも、こんなことをして社内で変な噂が広まったらどうするんですか。福永さんだって、困りますよね?」
「俺はまったく困らないよ。むしろその方が好都合。それより早く着替えてきたら? 俺を避けてた言い訳はたっぷり聞かせてもらうから」
福永に背中を押され、璃湖は更衣室に入った。中には誰もいない。電気も点けずに、そのままズルズルと座り込む。
「なんで? どうしてこんなことになるの?」
EDの治療は終わったはずなのに、璃湖になんの用があるというのか。確かに嘘はついたが、治療が終わったのだからふたりで会う理由もない。
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