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謁見(レティシア視点)
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馬車に揺られて40分程、目的地に到着したようで止まった。
お父様、お兄様、私の順で降りていき、ノエルちゃんが降りてくる…はずだった。
降りるのが少し怖いのか、降りる手前で固まっていた。
手を貸してあげなければ…そう思ってノエルちゃんに近寄って行こうとした時、フラリとその小さな体がよろめいた。
落ちても死ぬ事は無い高さだけれど、とても痛いだろう。
思わず目を瞑った。
…いつまでたっても地面に落ちた様な音がしないので、ソロリと目を開けると…なんとエルストス王国第2王子────レオンハルト・エルストスが、ノエルを抱き止めていた。
お父様やお兄様も驚いている様で、固まっている。
「……っレオンハルト様、ありがとうございます。ノエルさん…大丈夫かい?」
硬直がいち早く解けたお兄様が、そう言う。
ついでハッとしたお父様と私も、レオンハルト様へ感謝を述べてからノエルに心配そうに言葉をかけて視線を向けた。
その間も、レオンハルト様はジッとノエルを見つめていた。
「…寝ているから、大事無いだろう。」
そう言うと、寝ているらしいノエルちゃんを横抱きにすると、父上が待っていますよ、とこちらに微笑みスタスタと歩き出した。
………私は少し、(いや、かなり)恨めしい目を第2王子に向けた。
ノエルちゃんを抱きかかえるなんて…羨ましい、と。
その視線を知ってか知らずか、私達の前を歩いて案内してくれている。
くっ…あんなフワフワで、まだ幼児体温で暖かなノエルちゃんを抱きかかえているなんて………。
13歳…と言うより10歳か、それよりも少し下の歳に見れる体でお人形の様なクリクリしたオッドアイの目…。
正直に言いますと見た瞬間、抱き枕にしたいと思った。
馬に乗った時だって、少し怖かったのかキュッと私に抱きついてそれはもう可愛い…………じゃなかった。
案内されると、そこには国王陛下がお待ちになっていた。
淑女の礼をして名乗り、お兄様の横に座る。
ちなみにノエルちゃんは未だに眠っているので、第2王子の膝の上だ。
ノエルちゃんを渡して欲しい。
切実に、返していただきたい。
「あの……僭越ながら、その子を返せ…返していただきたいのですが。」
思わず、返せ…などと口にしてしまい、慌てて(特に慌ててはいなかったが)訂正した。
ニッコリと笑って誤魔化すのも忘れない。
「あー、その子が…お知らせした子ですので……まぁその、娘の方に渡していただいても…?」
私の第2王子に向ける視線に気付いたのかお父様が援護して下さった。
「この者が、か…?随分と小さいな。」
そう言うと、たぶん確実に私の視線に気づいているのに、寝ているノエルちゃんの頬をフニっとつついた。
んぅ…とノエルちゃんが反応した。
…一瞬、スっと底冷えする様な視線を送った。
こちらを見てニヤリと笑い(元い、微笑み)返してきた。
第2王子で無かったら確実に殴るなり何なりしていた。
返されたノエルちゃんをギュウッと抱き締めた。
お父様はそれを見て苦笑して、それで…と話を始めた。
1時間ほど話し合い、ひと段落したので今は少し寛いでいる。
ノエルちゃんが異種だと言う事や、また、珍しい種族の血も混ざっている事、処遇についてを話し合っていた。
今後どうするかは、ノエルちゃんが起きない事には話し合えないので、まだその事の話し合いはしていない。
そして、目を付けたか気に入ったかは知らないけれど、第2王子は私の腕の中のノエルちゃんを凝視している。
私は、その視線から少しでも逃れさせようと隠している。
「…………んー、ぅ………。」
起きたのか、モゾモゾと動いている。
ほんの少しボゥっとしていたが、ハッとした様に覚醒した。
それに気付いたのか、国王陛下もこちらに視線を向けた。
ちなみに顔は私の方を向けている。
「……んむ、あの…くうしいれしゅ。」
胸に押し付けるかたちだったので、もごもごとノエルちゃんが言った。
名残惜しいので、ソロっと離すと、私を上目遣いで見て、
「あの…国王陛下は、?」
私の膝の上に座らせて、クルリと国王陛下の方を向かせた。
すると、寝ていたのを見られて恥ずかしいのか、倒れてしまって恥ずかしかったのか、顔を赤く染めた。
…ノエルちゃんは決して第2王子の方を見て頬を染めた訳じゃない。
決して、顔は良い第2王子を見てとか、年は重ねてもまだ格好良い国王陛下を見て頬を染めた訳じゃない。
うん、絶対に違う。
下ろして…と言われてノエルちゃんを下ろすと、礼をして国王陛下と第2王子に自己紹介をした。
国王陛下と第2王子は、幼い子供が頑張ってレディの様に挨拶をしているのを眺めて暖かく微笑んでいた。
大人びているかんじもあるが、見た目もあってか、矢張り可愛い。
ノエルちゃんも起きたので、今後について話し合った。
どうやらノエルちゃんは、冒険者になりたいそうだった。
冒険者になって、自分でお金を稼ぎたい、と言っていた。
ただ、冒険者登録する際に種族などを答える必要があるのだが…それは大丈夫な様だ。
お父様が、スレイド領にある冒険者ギルドに口添えするらしい。
早くCランク冒険者になってね、と第2王子は言った。
Cランク冒険者になると、貴族や王家のクエストを受けたりする事が出来るらしい。
また、指名で依頼される事もあるとか…。
最後に国王陛下が、
「息子は大層気に入ったらしいからな、これからよろしく頼むよ。」
そう、ノエルに言うと仕事があると去って行った。
ポカーンとしているノエルちゃんは、ハッとしたように、ありがとうございます、とお二人に向けて頭を下げた。
ノエルちゃんは、何故気に入られたのかは分からないとコテンと首を傾げた。
そうか、ノエルちゃんは第2王子に抱き止められたのをしらないのだ。
なんだか分からないけど、ノエルに目を出そうものなら第2王子でも許しはしないわ……。
第2王子に、若干の敵意を向けつつ、レティシアは思った。
帰った後、私が就寝時にノエルちゃんを抱き枕にしたのは言うまでもない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
用語解説に、冒険者を追加します!
前の投稿から結構な時間が経ったのでお詫びも兼ねて2つ同時に投稿させて頂きました!
お気に入り登録者様が、どちらも30人を越しました!
嬉しい限りです。゚゚(*´□`*。)°゚。
これからもどうぞよろしくお願いします!
お父様、お兄様、私の順で降りていき、ノエルちゃんが降りてくる…はずだった。
降りるのが少し怖いのか、降りる手前で固まっていた。
手を貸してあげなければ…そう思ってノエルちゃんに近寄って行こうとした時、フラリとその小さな体がよろめいた。
落ちても死ぬ事は無い高さだけれど、とても痛いだろう。
思わず目を瞑った。
…いつまでたっても地面に落ちた様な音がしないので、ソロリと目を開けると…なんとエルストス王国第2王子────レオンハルト・エルストスが、ノエルを抱き止めていた。
お父様やお兄様も驚いている様で、固まっている。
「……っレオンハルト様、ありがとうございます。ノエルさん…大丈夫かい?」
硬直がいち早く解けたお兄様が、そう言う。
ついでハッとしたお父様と私も、レオンハルト様へ感謝を述べてからノエルに心配そうに言葉をかけて視線を向けた。
その間も、レオンハルト様はジッとノエルを見つめていた。
「…寝ているから、大事無いだろう。」
そう言うと、寝ているらしいノエルちゃんを横抱きにすると、父上が待っていますよ、とこちらに微笑みスタスタと歩き出した。
………私は少し、(いや、かなり)恨めしい目を第2王子に向けた。
ノエルちゃんを抱きかかえるなんて…羨ましい、と。
その視線を知ってか知らずか、私達の前を歩いて案内してくれている。
くっ…あんなフワフワで、まだ幼児体温で暖かなノエルちゃんを抱きかかえているなんて………。
13歳…と言うより10歳か、それよりも少し下の歳に見れる体でお人形の様なクリクリしたオッドアイの目…。
正直に言いますと見た瞬間、抱き枕にしたいと思った。
馬に乗った時だって、少し怖かったのかキュッと私に抱きついてそれはもう可愛い…………じゃなかった。
案内されると、そこには国王陛下がお待ちになっていた。
淑女の礼をして名乗り、お兄様の横に座る。
ちなみにノエルちゃんは未だに眠っているので、第2王子の膝の上だ。
ノエルちゃんを渡して欲しい。
切実に、返していただきたい。
「あの……僭越ながら、その子を返せ…返していただきたいのですが。」
思わず、返せ…などと口にしてしまい、慌てて(特に慌ててはいなかったが)訂正した。
ニッコリと笑って誤魔化すのも忘れない。
「あー、その子が…お知らせした子ですので……まぁその、娘の方に渡していただいても…?」
私の第2王子に向ける視線に気付いたのかお父様が援護して下さった。
「この者が、か…?随分と小さいな。」
そう言うと、たぶん確実に私の視線に気づいているのに、寝ているノエルちゃんの頬をフニっとつついた。
んぅ…とノエルちゃんが反応した。
…一瞬、スっと底冷えする様な視線を送った。
こちらを見てニヤリと笑い(元い、微笑み)返してきた。
第2王子で無かったら確実に殴るなり何なりしていた。
返されたノエルちゃんをギュウッと抱き締めた。
お父様はそれを見て苦笑して、それで…と話を始めた。
1時間ほど話し合い、ひと段落したので今は少し寛いでいる。
ノエルちゃんが異種だと言う事や、また、珍しい種族の血も混ざっている事、処遇についてを話し合っていた。
今後どうするかは、ノエルちゃんが起きない事には話し合えないので、まだその事の話し合いはしていない。
そして、目を付けたか気に入ったかは知らないけれど、第2王子は私の腕の中のノエルちゃんを凝視している。
私は、その視線から少しでも逃れさせようと隠している。
「…………んー、ぅ………。」
起きたのか、モゾモゾと動いている。
ほんの少しボゥっとしていたが、ハッとした様に覚醒した。
それに気付いたのか、国王陛下もこちらに視線を向けた。
ちなみに顔は私の方を向けている。
「……んむ、あの…くうしいれしゅ。」
胸に押し付けるかたちだったので、もごもごとノエルちゃんが言った。
名残惜しいので、ソロっと離すと、私を上目遣いで見て、
「あの…国王陛下は、?」
私の膝の上に座らせて、クルリと国王陛下の方を向かせた。
すると、寝ていたのを見られて恥ずかしいのか、倒れてしまって恥ずかしかったのか、顔を赤く染めた。
…ノエルちゃんは決して第2王子の方を見て頬を染めた訳じゃない。
決して、顔は良い第2王子を見てとか、年は重ねてもまだ格好良い国王陛下を見て頬を染めた訳じゃない。
うん、絶対に違う。
下ろして…と言われてノエルちゃんを下ろすと、礼をして国王陛下と第2王子に自己紹介をした。
国王陛下と第2王子は、幼い子供が頑張ってレディの様に挨拶をしているのを眺めて暖かく微笑んでいた。
大人びているかんじもあるが、見た目もあってか、矢張り可愛い。
ノエルちゃんも起きたので、今後について話し合った。
どうやらノエルちゃんは、冒険者になりたいそうだった。
冒険者になって、自分でお金を稼ぎたい、と言っていた。
ただ、冒険者登録する際に種族などを答える必要があるのだが…それは大丈夫な様だ。
お父様が、スレイド領にある冒険者ギルドに口添えするらしい。
早くCランク冒険者になってね、と第2王子は言った。
Cランク冒険者になると、貴族や王家のクエストを受けたりする事が出来るらしい。
また、指名で依頼される事もあるとか…。
最後に国王陛下が、
「息子は大層気に入ったらしいからな、これからよろしく頼むよ。」
そう、ノエルに言うと仕事があると去って行った。
ポカーンとしているノエルちゃんは、ハッとしたように、ありがとうございます、とお二人に向けて頭を下げた。
ノエルちゃんは、何故気に入られたのかは分からないとコテンと首を傾げた。
そうか、ノエルちゃんは第2王子に抱き止められたのをしらないのだ。
なんだか分からないけど、ノエルに目を出そうものなら第2王子でも許しはしないわ……。
第2王子に、若干の敵意を向けつつ、レティシアは思った。
帰った後、私が就寝時にノエルちゃんを抱き枕にしたのは言うまでもない。
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前の投稿から結構な時間が経ったのでお詫びも兼ねて2つ同時に投稿させて頂きました!
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