スナックの女➁~育成~

夢咲忍

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第2章

拐われた女

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 事は思い通りには進まなかった。運転手はルームミラーを見ながら、

「あれ?こっち来ちゃったな。」

と少し困った様子で言った。後ろに着いてきていた車がタクシーと同じ道に来てしまったのだと言う。

 そして、数秒後…

『バキッ!』

タクシーのサイドミラーに後ろから来た車がサイドミラーをぶつけたのだ。タクシーの右のサイドミラーが割れた。相手は黒のコンパクトカーだ。

(はぁ、災難だ。私は一体何時に帰れるの。タクシー乗り換えなきゃいけなくなっちゃった。)

 黒のコンパクトカーはすぐにタクシーの前に左に寄せて止まった。運転席のドアが開き、男性が出てきた。

「あ、すみません。ぶつけちゃって。」

タクシーは少し揺れただけだが、

「お客さん、お怪我はありませんか?」

と運転手は声をかけてくれた。

「大丈夫です。」

「ちょっとお待ちください。運転手と話して、すぐに替わりの車を呼びますので。お客さんにはご迷惑をおかけしちゃったので、お代はいりませんので。」

運転手はドアを開け、外に出た。

 コンパクトカーの運転手はやはり私は見たことのない男性だ。運転手は相手の男性と話す。私は窓を開けていないので、話の内容は聞こえない。窓の外をチラチラと見ながらも、私はスマートフォンを取り出し適当に眺める。

 程なくすると運転手はタクシーに戻り、無線で替わりの車を手配しようとする。

 運転手が無線機を手にした瞬間、後ろから運転手を突飛ばし、無線機のコードをナイフで切った。私は車内で

「きゃあ、何するのよ!」

と叫んだ。相手の男は運転手の胸ぐらをつかんで殴った。タクシー運転手は道路に転がった。前に停めてあるコンパクトカーから2人の男が出てきた。2人はタクシー運転手の口にガムテープを貼り、両手両足をロープで縛った。

 私はタクシーのドアを開けて逃げようと思ったが、チャイルドドアがかかっていたのか、内側から開けることが出来なかった。外側から2人のうちの1人がタクシーの後ろのドアを開ける。ポケットから刃渡り10cm程の折りたたみナイフを取り出した。顔を見ると、今日初めて店に来た2人組の客のうちの小太りの男だ。ということはそとにいるのは… やはり、あの長身の男。

 ナイフを私の首に突きつけ、

「喚くとこのナイフがあんたの首を切ることになるぜ。」

と私を脅した。長身の男が反対側のドアを開ける。そして、私の口にガムテープを貼り、黒い大きな巾着袋を私に被せ、首のところをガムテープで留めた。それからは見えなくなってしまったが、長身の男は外に出て、多分運転席に座った。

 音から判断するとコンパクトカーに1人が乗り込み、発進した。それに続き、タクシーも発進した。私の横には小太りの男がナイフを突きつけている。

 いくつか角を曲がり大通りに出た。そして上り坂に入った。スピードが上がる。それからしばらく停車していないので、恐らく高速道路に乗ったのだろう。

 男達は一切話をしない。黙ったまま走り続ける。

(どこまで行くんだろう?どこへ向かってるんだろう?私は犯されて、どこかへ捨てられちゃうの?そんなの嫌だ。今の仕事すごく楽しいし、まだまだ生きたいし。)

 横にいる男は私の肩に手を置いている。その手が汗ばんでるのが分かる。体全体が熱くなってるかもしれない。熱気が伝わってくる。


 高速道路を下りて、1度どこかで停まった。降りてみると下はアスファルトとは違う、コンクリートだろうか… そこで車を乗り換えた。また私は後部座席に連れ込まれた。

 またそこから無言のまま1時間以上走ったと思う。私は緊張しながらも少し眠気があって、ずっと起きていたか自信は無い。もしかすると2時間ぐらい走ったかもしれない。

 山道と思うようなカーブの多い道路を走る。上り坂が続く。山道を20分から30分は走っただろうか。舗装してない凸凹道を少し走り、停車した。

 私が被っている巾着袋は外してもらえないまま、車を降りた。横にいた男が私の右手を握る。やはり汗でびっしょりだ。

『ガチャッ』

と鍵を開ける音がするとすぐに

『ガラガラッ』

と引き戸を開ける音がした。

男が

「段差があるぞ。5cm高い。」

と低い声で言った。私は少し足を高めに上げて段差を越えた。そこから数歩のところで止まるよう手の動きで指示された。先を歩く者が恐らく照明を点けたのだろう。

『カチッ』

とスイッチらしきものの音がした。

「約30cmの段差がある。高く足を上げて上れ。」

と指示された。

(ここは部屋?廊下?)

「止まれ。そこに椅子がある。座れ!」

そう指示され、膝の裏に座面らしき物が触れたので、腰を下ろした。私はまだ何も見えていない。太ももの横に肘掛けが当たる。


 後からまたドアが開く音が聞こえ、1人の足音がこちらに近づいて来る。

「こいつが例の女か?あのスナックの?」

「そうだよ。あの画像の女だよ。」

小太りの声だ。

「やっとか。夢にまで見たこの女を抱ける時が来たか。」

これは知らない男の声か。

計画的だったことが伺える。

「俺達もやっと童貞卒業できるな。」

「そうだな。やっとだせ。長かった。」

長身の男と小太りの声だ。

(あの画像って言ってたけど、何のことだろう…)

「なぁ、お前犯されて興奮するんだろ?」

私はまだ口にガムテープを貼られたままで、黒い巾着袋を被せられている。

「…」

「お前、前に店で犯されていきまくったんじゃねぇのかよ。」

「…」

(こいつら、私が犯されたこと知ってるのか。何故だ?警察はマスコミを抑えたはずなのに…)

「何で知ってるの?って思ってるだろ?さぁ、何でだろうなぁ。うっひっひっひっ」

(気持ち悪い笑いだ。この店には来なかったヤツがリーダーか。)

「実はな、こいつがSNSにお前が載ってるの見たんだよ。なぁ?」

(ヤられた後で写真撮られたやつを投稿されたけど、すぐにプラットフォームに連絡して削除させたって言ってたけど。もしかすると、削除前のやつを見られたのか…)

「うん。バッチリ全裸で犯された後の写真が載ってるの見たぜ。しかも画像をダウンロードして取っておいてあるぜ。」

小太りの声か。

「早く脱がせようよ。」

これは、長身の男の声か。

私は顔に被された黒い巾着袋を外そうと首に貼られたガムテープを剥がす。その様子を男達は何もせずに見ていた。私は巾着袋を頭から取るとやっと明かりが見え、部屋の様子が分かった。そして、口に貼られたガムテープを剥がす。

「好き勝手言ってんじゃないわよ!」

 部屋は散らかっていて、少し家具が置いてあるが埃だらけだ。

(空き家?でも電気は通ってる。ま、それはどっちでもいいとして、何とかこの状況を打開しなきゃ。)

私はそう思ったが、目の前にいる3人の男達はそれぞれ1本ずつナイフを手にしている。

(うっ、ヤバいなぁ。)
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