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2. 転落
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しおりを挟む夜の十時頃、冴子は二度の射精に満足し、スウスウと寝息を立て、美玖に背を向ける形で眠っていた。
美玖の方は初めてのセックスに精飲と、気持ちの昂りが治まらず、不慣れな友人のベッドの上でモゾモゾと態勢を変えたり戻したりしていた。
そして、小さな声で口を開いた。
「どうせ見てるんでしょ…?」
部屋は暗く、目で姿を捕らることは叶わなかったが、確かに淫魔がそこに居る事が美玖には気配でわかった。
『やっぱりバレてた?』
美玖の頭の中へ囁く淫魔の声。
「冴子をこんなにしたのもあなたの仕業なんでしょ?」
美玖の指摘。薄々勘付いていた冴子の豹変の原因。
「…元に戻してあげて」
『ふふっ、どうだろうねぇ』
玉虫色の回答。美玖の確信。
「ヒトを道具扱いして…どうしてこんな事するのよ」
美玖の堰が切れた嗚咽。
淫魔の仕打ちへの怒り。
友人を巻き込んだ理不尽。
そして快楽に堕ちてしまった身体と、未だ抵抗する心との歪み。
『理由?道具扱い?うぅん、そうだなぁ』
淫魔の思考。美玖への適切な伝達方法の模索。
『お姉さん朝に牛乳よく飲んでるよね?』
淫魔の意図を掴めない美玖の沈黙。淫魔が続けた。
『どうやってお店に大量の牛乳が並んでいるか知ってる?』
それは酪農家が生産し、発達した流通網に乗る事で自分達の手元に回っているからだと美玖は考えた。
『その乳牛ってお姉さん達ヒトが品種改良したんでしょ?おっぱいがよく出るようにって』
六百年前の流通量からは考えられないと淫魔は加えた。美玖の方も少しずつ淫魔の話の意図に想像が追いつく。
『自分達の為に、他の動物を飼っているんだよね?』
美玖はようやく気が付いた。淫魔が自分をお姉さんと呼ぶ理由に。
『別にボクは批判しているんじゃないんだよ?ヒトが生きていく上で必要な事なんだから』
『ただね。ボクはお姉さん達と同じ事をしてるだけだよ?』
淫魔にとって美玖は食糧を生産する家畜なのだ。
『じゃあお腹も膨れたし、そろそろ行くね。お姉さんも"今の内に"寝ておいた方が良いよ』
「ちょっと待っ…て…」
惜しむ様子も無い淫魔の別れ。そして急激な眠気が美玖を襲う。別れ際の初歩的淫術。
『あ、そうそう。元に戻したいって言ってたよね?今日は満腹で気分も良いから教えてあげる』
意識が薄れる美玖へ淫魔が告げた。
『ボクの淫術ってさ、本人が本当に望めばすぐに解けるんだ。お姉さんの中のも、後ろのお姉さんに生えてるのもね』
『効果が残ってるって事は、つまりそういうことだよ?』
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