メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

メリアリア・カッシーニ編13

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 今回はちょっと短めなお話しなのですが(本当はもう少し長めの話にする筈だったのですけれども主要部分だけを皆様方に強調させていただきたかったモノですから、敢えてそうさせていただきました)、どうしても書かなければならないものでした(二人が初めてキスをした時のお話しです)、この時メリアリアちゃんは、既に蒼太君に(幼な心にですが)ハッキリとした愛情を抱いています(本人なりにそれを認識もしているのです、ただしまだ子供なので完全に覚醒している訳では無くて、正直に言ってしまえば“手探り状態”と言った感じなのです)、そして本人なりに“関係をもう一歩進めたい”、“もっと愛し合いたい”と言う思いがあって、キスをする、と言う流れになるのですが(蒼太君とキスをする場面自体はかなり前から想像する事はあったのですがしかし、ハッキリと“したい”と言う“より強い思い”を抱くようになったのは前の話で自分の中に秘められていた蒼太君への愛情を自覚してからです)しかし、まだ若干9歳の女の子がキスのやり方等を詳しく知る由もありませんのであくまでもテレビやドラマで見たモノの見よう見まねでしかないのですが、それでも二人はキスをしました、まだバードキスの前段階のような軽いモノですが、しかし確かにキスを交わしたのです。

 今後は遊ぶ度にディープキス等を交わして行く事になろうかと思われます(そして最後は“擬似的なセックス”までするようになるのです←そこまで書いてメリアリア・カッシーニ編は漸くにして終了なのです、なのでもう暫くお付き合い下さいませ)。

 またこれは前話の後書きでも書かせていただいたのですが、本来であればもう少し詳しく、順序立てて理路整然とメリアリアちゃん自身の中に秘められていた、蒼太君への気持ちに自分で徐々に気付いて行く、その過程を書き出して行きたかったです(最初は“好き”だったのが“恋”になり、やがては“愛”になって行く、と言うその過程をです)。

 もう少し詳しく言ってしまいますと、最初は直感で蒼太君への愛情と運命とを感じ取った彼女が(これについては“メリアリア・カッシーニ編プロローグ”において言及が為されていますが)年齢が行くに従って自我が成熟して行き、それと同時に蒼太君との様々な出来事や思い出を通して“ああ、私は確かにこの人を愛していた”、と言う場面をお届けしたかったのです、それもなるべくゆっくりじっくりと、丁寧にやって行きたかったのです。

 しかし勿論、ただそれだけでは御座いません、確かに子供と言うのは純粋で純朴で純真なモノですから、だから例えば“見えないモノが見えたり”だとか“色々な生き物達の声が聞こえる”だとか(中には“神様に出会えた”と言うの話もありますけれども)、私自身はそう言った、“子供だからこそ理解できる物事”、“感じられる事象”というのは絶対にあると思うのです(前に述べさせていただいた通り、運命の人を一発で見極める事が出来たりだとかも、私自身は充分に有り得ると思っています)。

 ただ一方で(そう言った超自然的で不可思議な力がある事も事実ですが)、“まだ子供で自我が充分に発達しきってもいないのに、そんなに自分の事や他人の事が何でもかんでも解ってしまうモノなのか?”と言う御指摘もあるかな、等とは思ったりもします(何が言いたいのか、と言えばこれは例えば皆様方も子供の時の事を思い返していただきたいのですけれども、“~君が好き”、“~ちゃんが好き”、と言う事はあってもいきなり“愛してる”と言う言葉を使ったりはしなかったと思うんですよね?)、メリアリアちゃんも同様で、最初の内はだから(何度も繰り返しますが“潜在意識下では”ちゃんと自分の気持ちを理解しているし、自覚もしているんですが)、中々蒼太君の事を“愛してる”とは言わないのです(でも既に、何となく感じてはいるんです、“自分がこの人と結婚するんだ”と解った時に、その秘めたる思いも一緒に感じて認識する事が出来ていたからです)、ただしまだ“顕在意識下では”それをキチンと自分の言葉として、気持ちとして理解出来ないのです(勿論“愛してるのかどうか?”と問われれば“愛してる”と彼女は言うでしょう、その時代のメリアリアちゃんに意識を向けると照れ臭さそうにはにかんで俯きながら、そう言う風に応えている姿がイメージとして帰って来ますから←ただそれはまだまだ漠然としたモノであり、“愛情レベル1”と言った所のモノでしかありません)。

 ですから例えば今現在のメリアリアちゃんの、蒼太君に対する“確立された愛”に比べると、まだまだ朧気なモノでしかありません、それが蒼太君との様々な事柄や思い出を通して(段々と年が行って自我が成熟して来た事もあり)徐々に“好き”と言う気持ちが“恋”になり、そして遂には“本当の答え”、“自分自身の気持ち”に辿り着くのです(即ち“愛”として覚醒するに至るのです←“結婚”や“愛”については既に、“第113話”と“第115話”にて詳しく述べられているかと思いますので今回は割愛させていただきます)。

 そしてその過程をこそ、書き表して行きたかったのですが、中々に物語の展開が掴みにくかったり、ハッキリとした関係の進展が無い上に説明がゴチャゴチャとしていたので、読者の皆様方におかれましても“いつまで同じ事を繰り返すんだ?”、“この前と表現が一緒じゃないか!!”と思われた箇所もあったかも知れませんが、あれはそう言った事だったので御座います←それに加えてもう一つの話と致しましては最初からあまりにもメリアリアちゃんの愛情をマックスにしてしまいますと前に述べさせていただきました通り、彼女の気持ちの成長、成熟が追えなくなってしまいますし、また“追憶編”や第58話や第77話、78話、79話で書いて来た事への整合性が取れなくなってしまいますので、それを避ける為の処置でもありました)、ただそれだって、もう少しダイナミックに、解りやすく書くことは出来た筈です(或いは皆様方に前もってキチンとご説明、申し上げさせていただくべきでした、そうすれば皆様方を混乱、困惑させる事は、そして要らぬ御迷惑、御不安、御心配等をお掛けする事は無かったであろうと思われます、ここは私がつとに反省しなければならない所で御座います)大変申し訳御座いませんでした、失礼を致しました。

 今後、物語は徐々に佳境に入って行く事になろうかと思われますがどうか今後とも、変わらぬ御愛顧、御声援の程、よろしくお願い申し上げます。

 また次のお話しは今日から数えて九日以内に出させていただきます。

                敬具。

          ハイパーキャノン。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 2月のある日曜日の朝ー。

 その日は冬にしては珍しく、猛烈なまでの雨の日だった、土砂降りだった。

 厚く垂れ込める灰色の雲からもたらされた大粒の雫が窓を激しく打ち付けて来るモノの、そんな中を一人の雨ガッパを着た少年が直走りに走って行った。

 “彼”はアジア系の、否、もっと言ってしまえば大八洲の男の子だった。

 名を綾壁蒼太と言う彼はこの時既に7歳となっており、自我もほぼ完全に覚醒していて一年前までとは比べ物にならない位にまで意識も心も身体も技術も、何もかもが完成していたのである、それを裏付けるようにー。

 これだけの雨の日にも関わらずに足取りも軽く、しかも泥を跳ね飛ばさないようにして彼は一路、大切なる幼馴染(ガールフレンド)の元へと向かって足を進めていたのであったが、その一方でー。

 そんな少年の事を、いつものように門の前まで迎えに来ていた“メリアリア・サーラ・デ・カッシーニ”は彼が現れるのを今か今かと待ち焦がれていた、“もう少しで蒼太が来る”、“私に会いに来てくれる”。

 それもこの雨の中を今頃、自分に会うためだけにこの館へと向けて真っ直ぐに向かって来てくれているだろう事を考えるとそれだけで胸がこれ以上無いほどにまで高鳴ってしまっていったが、そうなのだ、彼女はこの時、この幼馴染のボーイフレンドに対して殆ど明確な恋心を抱いていた。

 否、それはもっとハッキリとした、愛情の発露そのものであった、と言っても言いが、満9歳を迎えて彼女は漸くにして己の中に秘め宿りたる彼への“確かなる思いの丈”を掛け替えのない“真実の暖かさ”を認識する事が出来たのであり、自身の気持ちに気付いてしまった彼女は最早誰にも、どんな物にも憚る事無く少年を求めて行動を共にして行った、勉強、遊び、登下校。

 何かと理由を付けては蒼太と同じ時間と空間とを共有するに至っていたのであるモノの、しかし、ただし勿論の事として、甘い時間だけを過ごしていた訳では決して無かった、自身の鍛錬に抜かりは無かったし、そしてそれは蒼太もまた同じ事であったのだ。

 家に帰れば両親からの厳しい指導が待っており、それは時として少年を、肉体的にも精神的にも極限状態へと追い詰める程に過酷極まるモノであったがそれでも、蒼太は断じてへこたれなかった、それどころかより一層、修行に精を出しては多くの技や術式をモノにすると同時に心身両面での底力の更なる発展、上昇を成し遂げるに至っていたのである。

 特に。

 それは精神力や生命力、体力や耐久力等の所謂(いわゆる)“タフさ”においては実に顕著であり、それは例えるならば、メリアリアや他の生徒を“短距離型”とするのならば間違いなく“長距離型”のランナーであって、しかも単に長時間の運動に特化しているだけでは無くて、その瞬発力、直感力、反射神経等も全てが理想に近い能力値を叩き出すに至っていたのであった。

 そのフィジカル、メンタルな力も強さも、そしてまた波動の質、量共に幼年期(6歳までのそれ)と比べると徐々に高くて多大なモノへとなって行き、今や何処からどう見ても一人の落ち着いた少年へと成長を遂げていた訳で有るのであるが、そんな日に日に逞しくなって行く彼氏の事をだから、メリアリアは余計に意識してしまうようになってしまっており、彼の事を考えると自分で自分が抑えきれなくなってしまう事が度々出て来た、しかもそれまではただ抱き締め合って肌と肌とを重ねていれば、満足できていたそれが、更にもう一段階進んでハッキリと“キスをしたい”と思うようになっていたのだ。

 それは特にあの、公園を散策している最中に、胸の中で彼への気持ちが一気に燃え上がってしまって以降、ますますの高まりを見せていたと言うのに、そこへ持ってきて未来から来た自分達自身との邂逅も相俟って、キスの具体的なやり方までは解らないけれどもしかし、“あんなにも長い間、唇を触れ合っていられるんだ”、“愛し合っているのならばそれは別におかしな事では無いんだ”、と言うことが認識されて以降は“蒼太とだったらしてみたい”、“蒼太と愛の証を交わし合いたい!!!”との思いが段々と強いモノとなって行き、最早どうにもならなくなってしまっていたのである。

 だから。

「蒼太っ!!!」

「メリーッ!!!」

 鉄格子のフェンス越しにその姿を見掛けた時には思わず傘を放り出しては柵に飛び付いてしまい、手で格子を握ったままで顔を赤らめて瞳を輝かせ、彼に触れたい一心で合間から腕を伸ばすモノの、するとその手を蒼太はしっかりと握ってくれて、優しく包み込んでくれたのである。

「蒼太、蒼太っ!!!」

「メリー・・・ッ!!!」

 大粒の雨の降り頻る中、二人は暫くの間そうやって手を繋ぎ合っていたモノの、蒼太がまず、“メリー”と告げた、“傘を差して?”とそう言って。

「濡れたら、風を引いちゃうよ?早く傘を差しなよ!!!」

「あんっ。平気だわ、これくらい!!!それより蒼太こそ早くこっちに来て!!?」

 そう答えると最早我慢し切れなくなってしまったのであろうメリアリアが蒼太に“すぐに門を開けてあげるね!!?”と告げると自らも急いで正面入り口にまで赴いては、雨に負けないくらいの大きな声で三人いる門番に“急いでゲートを開けなさい!!”と叫び様に指示を出した、すると。

「かしこまりました、お嬢様!!それはよろしいのですけれども・・・」

「それはそれとしてお嬢様。傘は差していただかないと!!」

「そうですよ、雨に濡れたら風を引いてしまいますよ!?」

 “解っているから、早く早く!!!”とメリアリアが告げると、ゲートキーパー達三人は詰め所に入ると中から解錠ボタンをおした、それと同時に。

 ギイイィィィッと巨大な鉄格子の門が音を立てて開いて行き、その隙間から蒼太が滑り込むように中へと入って来たモノの、それを見た瞬間に。

 メリアリアは蒼太目指して走り出していた、蒼太もまた同じように、メリアリア目掛けて走り寄って来るモノの、互いの身体が接触すると同時に、彼等は両の腕を伸ばして広げて、しっかりと相手を抱き締めるがこの時、カッパを着て小走りに駆けて来た為に蒼太は少し汗を掻いており、全身が上気していたモノのメリアリアはお構いなしに彼に頬擦りまでして全身で、その身体の感触を確かめる。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 暫しの間、そうやって互いを抱擁していた蒼太とメリアリアであったがやがては一応、満たされたのかどちらともなく抱擁を解くと、もう一度、相手の顔を見つめては微笑んだ、そうして。

「・・・・・」

「あ・・・っ!!?」

 蒼太がメリアリアの身を濡らしていた雨の雫を拭ってやると、上から自分のカッパを羽織らせては自らは先程、メリアリアが放り投げてしまった傘を拾って来て二人で相合い傘をした。

「・・・・・」

「えへへ、素敵だね?蒼太・・・!!!」

 そう言って甘えたように身を擦り寄せて来るメリアリアに対して蒼太は“うん”と静かに頷いて応えると、“行こうか・・・”と告げて二人で揃って、カッシーニの館へと向けてゆっくりゆっくりと歩を進めて行った。

 メリアリアは、嬉しかった、それまでの出来事を通して彼女は蒼太の事を王子様の様に思っていたから、それは尚更だったのである。

「寒くない?メリー・・・」

「大丈夫よ?蒼太の着てきたカッパ、凄く暖かいもの!!!って言うか、蒼太は大丈夫なの?少し濡れてるよ!!?」

 メリアリアが慌てて心配するモノの、蒼太は“平気だよ、これ位・・・!!!”と言って全く問題視していなかったが、相合い傘をしている関係上、傘の丈が足りずに蒼太の右肩の辺りがグッショリと濡れてしまっていたのだ。

 もっとも全身が筋肉質で新陳代謝の高い蒼太にとってはこの程度の雨の雫は心地良いモノ以外の何物でも無かったのであったモノの、一方のメリアリアにとってはその限りでは無かった、彼女は本気で蒼太が風邪を引かないかどうか、心配で心配で仕方が無かったのである。

「ねえ蒼太、傘ちゃんと使って?私は大丈夫よ?だって蒼太にレインコートを貸して貰っているんだもの」

「全然大丈夫だよメリー、僕を信じて?それに僕、嬉しいんだ、メリーと相合い傘が出来て・・・!!!」

「・・・・・!!!!!」

 その言葉に感極まってしまったメリアリアは、またしても蒼太に飛び付きそうになるモノの、自分達が今、雨の中にいる事を考慮して(そしてもっと言ってしまえば蒼太がビショ濡れになってしまう事を危惧していた為に)“今は我慢だ”とグッと堪えるモノの、その代わりとでも言うかのように身を思いっ切り寄せては蒼太の腕にしがみ付き、照れたように俯いてしまうがそのままの状態で二人はカッシーニ家の玄関まで辿り着き、ダーヴィデやベアトリーチェを始めとした家人の歓迎を受けた。

「良く来たね、蒼太!!」

「雨の中、わざわざようこそ。ゆっくりしていっておくれよ?」

 そんな二人の言葉を皮切りに使用人達が次々と出迎えの用意を整えてはタオルや着替え、熱いお茶等を差し出してくれたモノの(メリアリアの家にはメリアリア自身のモノは勿論の事、急に蒼太が泊まる事になっても良い様にと最低限度の彼の為の着替えやベッドが用意されており、もはや立派なセカンドハウスと化していたのだ)、それに礼を言いつつ着替えに袖を通すと蒼太とメリアリアは濡れてしまったモノは洗濯してもらう事にして、メリアリア共々お茶を携え、早速、キッズルームに籠もって遊ぶことにしたのである。

 最初はカードゲームから始まって次にイメージで魔術合戦を行ったあと、少し冷めてしまったけれどもお茶を飲み干しては喉を潤し、続いてしりとり等の言葉遊びを楽しんだのだが、その内に。

「ああ!?もう言えるモノが無い!!!」

「やった。私の勝ちね!?蒼太!!!」

「あー、やられちゃった。メリー強いね、僕3連敗しちゃった!!!」

「・・・・・っ!!!!!」

 そんな蒼太の裏表の無い、純朴で純粋な姿を目の当たりにして行く内に、自分に一生懸命に向き合ってくれている、その姿を見ている内に、メリアリアは胸の奥底に秘めていた彼への気持ちが更に燃え上がってくるのを感じてまたドキドキとしてしまっていた、彼の声、彼の温もり、彼の感触、彼の存在、そしてふとした時に見せる仕草そのものが、何だかとても尊くて眩しくて、でもそれだけじゃ全然足りない、今の自分を突き動かしている彼への気持ち。

 それは“好き”も“恋”も遥かに超越してしまっている、もっとハッキリとした確かなる暖かさであり、心の底の底の底の底、その更に奥深くから湧き上がってくる、純正無垢なる思いの丈だ。

 それは。

(愛しい・・・っ!!!)。

 とメリアリアは改めて心の中で口にするモノの、そうなのだ、彼女はとっくにこの幼馴染の少年の事を、魂の底の底から愛し続けていたのであるモノの、それが曲がり形にも理解できたのが去年の春の事であり、そしてそれは今やキチンとした実感となって彼女の心を魂の底から焦がし続けていたのである。

(私は、蒼太の事が100%好きっ。ううん、そんなモノじゃ全然足りない、愛してるんだ、蒼太の事をっ!!!)

 とまだ少女のメリアリアはそれでも、少しずつではあるモノの自身の真実の思いに覚醒しつつあったのも手伝って、“霊性なる根源”の央芯中枢から迸って来る真愛と真心の確かなる叫びに一人で途方にくれそうな程の胸の疼きを覚えながらも心の中で何度となくそう呟いていた、幸せだった、彼の側にいられるだけで、その声を聞いて抱き合えるだけで天にも昇る心地になれた、それくらい満たされたのである。

 しかし。

 最近はそれでも足りなくって来てしまっていた、切っ掛けはあの夫婦だった、自身の抱く蒼太への愛情と言ったモノをそれでも、幼な心にハッキリと理解して感じ取っていたメリアリアはその挙げ句に彼等のしていた長時間に渡るキスを見た事で、自分も蒼太との間に“それ”をしてみたい、と言う強くてしっかりとした欲求に駆られる様になっていたのだ。

(いつか必ず蒼太とキスをするんだ!!!)
 
 元々、その思い自体は持ってはいた、それは正直に言って凄い恥ずかしくて照れ臭かったモノだったけれどもそれでも、二人でそうなった時の事を想像してはドキドキと胸を高鳴らせつつもその瞬間を夢見ていたのであるモノのしかし、だからこそと言うべきか、自身の彼への思いを理解したメリアリアはもう止まれなくなってしまっていた、“蒼太とキスがしたい”、“恥ずかしいけどしてみたい”、“絶対、絶対キスをする!!”もうその意志の塊と化していた彼女はだから、しりとりが一段落した後で蒼太に言った。

「ねえ蒼太?」

「なにさ?メリー・・・」

「ちょっとそこで目を瞑って立っていてくれる?」

「・・・・・?」

 そんな少女からの言葉を不思議に思いつつもそれでも、蒼太はすぐに言われた通りにした、その場で直立した姿勢のままで双眸を閉じては力を抜くモノの、それを見たメリアリアはゆっくりと蒼太に近付くと、両手をソッと頬に添えた、そうしておいてー。

「ちゅ・・・っ!!!」

「んっ?んん・・・!!?」

 自らも瞳を閉じると顔と顔を近付けては唇同士を接触させて、短いが確かに、触れ合うような軽いバードキスをするモノの最初。

 蒼太は何が起きたのかがまるで解っていなかった、いきなり唇に唇が重ねられた感触がして、彼女の甘い吐息と体臭とが鼻先を掠める。

 しかしすぐに理解が追い付いて来た、自分がメリアリアとキスをしているのだと解ると言い知れぬ程のドキドキを感じると同時に幸福感を覚えて感動してしまい、胸がいっぱいになってしまうがしかし、それは同時にメリアリアもまた同様であり、これ以上無い喜びと恍惚感とに包まれた彼女はだから、そのまま10秒間程は蒼太と口付けを交わしたままで動かずにおり、その幸せな時間を堪能していたのであるモノの、だからー。

 唇を離した後も、メリアリアはウットリとした顔で蒼太を見つめ続けており、蒼太もまた、柔らかな微笑みを浮かべたままで彼女を真っ直ぐに見つめ返すが、そんな二人は再びー。

 軽めのしかし、長い長いキスをした、何度も何度もキスをした、その日だけで10回はしただろう、それほど夢中になっていった、唇同士を合わせただけの、本当にバードキスの前段階のようなそれは本来であればだから、無味無臭の筈のであったのにしかし、とっても甘くて幸せな味がした、メリアリアは恐ろしい程に満たされてまた、高まって行く自分を感じていた、大好きな男の子とこんなにも素晴らしい体験が出来るだなんて、思ってもみなかったから、感動と愛しさとで胸がいっぱいになっていった。

 キスを終えると二人はやがて恥じらいと照れ臭さとが顔を擡げて来てクスクスと笑い合った、それすらも二人にとっては幸せで満たされた時間だった、お互いの気持ちや心情と言ったモノが、手に取るように良く解ったからである。

「ねえ蒼太・・・!!?」

「な、なに?メリー・・・」

「内緒だからね?」

 そう言うと。

 メリアリアはまた蒼太に“ちゅ・・・っ!!”とキスをした、それも十数秒間の長い長い、しかし実に短いそれだったが蒼太にはメリアリアの思いが充分に伝わっていた、“二人きりの秘密にして、愛を重ねて行きましょう?”と言うそれである。

 蒼太は確かに、その意志を感じたのであり、そしてそれは間違い等では決して無かった、雨はもう、上がっていた、二人はその日、ずっと手を繋いだまま過ごし続けた、言葉は何も要らなかった、ただ二人で一緒にいられるだけで、この上無いぐらいにまで幸せであり、満たされて行ったのであるモノのこの日以降、蒼太とメリアリアは何十回も、何百回ものキスを交わし続けては、より一層互いの仲を、その愛情によって結ばれた絆を深くて確かなモノへとして行く事になるのだった。
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