メサイアの灯火

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ガリア帝国編

メリアリア・カッシーニ編12

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「この前の傷、大丈夫・・・!!?」

「うん、あれ位何でも無いよ。僕だって少しは回復魔法が使えるし。それになにより僕、男の子だからね!!!」

「だけど本当にごめんなさい、私のせいで・・・!!!」

「全然、違うよ。悪いのはアイツらだよ、メリー殴ろうとするなんて許せない!!!女の子をよって集って殴ろうとするなんて、絶対におかしいよ!!!」

「蒼太・・・!!!」

 メリアリアと蒼太がそれぞれ、8歳と6歳になった年の5月の下旬。

 メリアリアのクラスでとある騒ぎが起きた、メリアリアがクラスのガキ大将グループに目を付けられてしまい、下手をしたら叩かれるかも知れない寸前まで行ったのであるモノの、それを救ったのが彼女の幼馴染(ボーイフレンド)である蒼太だった、彼はメリアリアの危機を察すると彼女に“逃げろ!!!”とそう言いつつも、自分よりも年も体格も上のガキ大将グループ達に臆することなく立ち向かって行き、ボロボロにやられながらも見事に主犯格であるペイジルを投げ技を使って投げ飛ばし、教室の床に叩き付ける事に成功したのであった。

「ぐあああぁぁぁぁぁっ!!!!?」

「あああっ!?」

「ペイジルッ!!」

 この時の騒ぎ自体は、仲間二人が駆け寄って様子を伺っていた所にクラスメイトの女の子達が担当教諭を呼んで来てくれたお陰で彼等3人が厳しい叱責を受ける事となり、それどころでは無くなったのとペイジルのダメージが思った以上に大きかった為に、自然消滅していってしまったのであるモノのこの事件以降、メリアリアの少年を見る目は一層、熱いモノへと変わって行った、蒼太がいるところでは頬を少し上気させて心底楽しそうに笑い、彼がいない所では宙を仰いでは切な気な溜息を繰り返すようになっていったのである。

 蒼太を見つめる彼女の青空色の瞳はこの淡い思いを寄せ始めていた少年の事をもっとよく見ようと瞳孔が開き、普段よりも多くの光りを反射してキラキラと輝いていたのだ。

「ねえねえ、蒼太蒼太っ!!!あれ見てよっ、あれっ!!!」

「ええっ!?ど、どれかな。ひょっとしてあの水鳥の群れの事?」

 その日、蒼太とメリアリアはルテティア郊外の森を散策していた、その日は特別に外に出て遊ぶことが許されていた日でもあったから、メリアリアは久方振りの自由な時間に蒼太と一緒に思いっ切り羽を伸ばすべく、この森にまで足を運んで来たのであったがその中央部分からもう少し奥に分け入った所にある、大きな池の側を通り掛かったその時だ。

 不意にメリアリアが蒼太に声を掛けて来るモノの、そんな彼女の指差す方向を向き直るとそこにはカルガモの群れに交じって1羽の白鳥が優雅に羽繕いをしていたのであった。

「あれ白鳥よねぇっ?珍しいわ。普段はこの季節、もっと北の方に行く筈なのに!!!」

「そう言えば、そうだよね?でも近くに群れがいない、と言う事はアイツ、逸(はぐ)れたのかも知れないな・・・!!!」

 メリアリアの疑問に蒼太が持論を展開するモノの、確かに彼の言う通りでほんの稀にだが群れから逸れてしまう個体が渡り鳥等の中にはいることも確かであり、今、目の前にいる白鳥もそんな群れから逸れた1羽なのかも知れなかった。

「凄いわ!!?蒼太っ。物知りなのねっ!!!」

「偶々(たまたま)家に、生物図鑑があってそこに記事が載っていただけだよ、でも勉強しておいて良かった!!!」

 そう言って謙遜する蒼太だったがしかし、そんな彼氏にメリアリアは確かな頼もしさを感じていた、ここの所、前にも増して考え方もしっかりとしたモノになっていっているし、日に日に逞しくなって行くその存在感に“自分はいつか、必ずこの少年に追い抜かれる”と言うことを、否応なしに意識させられて行く。

(本当に凄いわ、蒼太ったらどんどん強くなっていくのね。もう私なんかじゃ歯が立たないかも・・・!!!)

 と、そんな事をメリアリアが思いつつもまた何事かを言おうとしているとー。

 ふと此方(こちら)に向かって近付いてくる二人の人の気配を感じて其方にチラリと目をやるモノの、その瞬間にー。

 メリアリアは奇妙な感覚に陥ってしまい、まるで稲妻にでも打たれたかのように全身が硬直してしまっていた、それは一言で言うのならば“感覚的デジャヴ”に近いモノであって、まるで何処かで見た事のあるような、不思議な既視感のようなそれを抱いたのであるモノの、そしてそれは蒼太もまた、全く以て同じであった、それと言うのはー。

 彼等が気配を感じて目を向けた先には一組のカップルの姿があった、否、カップルと言うよりも、もっと正確に言ってしまえば“彼等は夫婦である”と二人は直感していたのであるモノの、とにかくその内特に蒼太は男性、即ち夫と、そしてメリアリアは女性、つまりは妻と自分が繋がり合っているかのような、もっとハッキリと言ってしまえばまるでもう一人の自分自身が現れたのかのような、そんな感覚を覚えて些か困惑してしまっていたのだ。

(・・・・・っ!?、!?!?!?!?)

(な、なに?あの人達っ。まるで大人になった自分自身を見ているみたい・・・!!!)

 子供達が、そんな事を思っていると知ってか知らずか、夫婦は二人の側までスタスタと歩いて来ると立ち止まり、自分達も池を眺め始めては、まるで何事も無かったかのように、呑気に談笑し始めた。

「ここの公園には確か、群れから逸れた白鳥が居たね・・・!!!」

「そうね?私が見付けてあなたに話を振ったらあなたがそう教えてくれたのだったわ!!!」

「・・・・・!!!」

「・・・・・!!?」

 今し方、自分達がしていた会話と同じような話をしている二人に驚愕しつつも、それでも蒼太は自然とメリアリアを庇える位置に身を置くが、それすらも夫婦はお見通しのようであり、お互いに見つめ合ってクスりと笑うと“やっぱりあなたは優しいわ”と妻が夫に語り掛ける。

「私の事を、庇う位置に立ってくれていたなんて。最初は全然、気付かなかったけど。私、いっぱいいっぱいあなたに助けてもらって来たんだわ、それこそ自分が思うよりも、もっとずっといっぱい、たくさん!!!」

「そんなこと、無いよ・・・!!!」

 とそれを聞いた夫はしかし、少し照れたように俯きながらもそう応えた、“僕の方が、いっぱいいっぱい君に助けてもらって来ているんだよ?”とそう告げて。

「君には、大切な事も教わったしな。物事は心や気持ちが大切なんだ、と言う事も。目に見えるモノだけが、全てではないのだ、と言う事もね?」

「あらっ!?」

 とそれを聞いた妻はまるで、メリアリアのようにそのツインテールを揺らしながら夫へと振り向いてこう言った、“あなただって本当は、それが正しい事だと知っていたのでしょう?”とそう続けて。

「あなたは、全部ちゃんと知っていたんだわ。私が教えた事を、キチンと取捨選択してその上で、何が正しくて何が間違っているのか、何が自分にとって必要なのか、そうでないのかをちゃんと自分で振り分けていたもの!!!」

「そうだったっけ?」

「そうだったわ。だから凄く話し甲斐があったし、“ああ、この子は本当に理解してくれているんだ”って事がこちらにもちゃんと伝わって来て、だからついつい話にも熱が入っちゃったのよ。でもね・・・?」

「・・・・・?」

「本当はね?それだけじゃないの・・・」

「“それだけじゃない”って・・・?」

「私ね、あなたと話すのが凄く好きだったの、あなたと会うまで自分でもあんなにお話しが好きだなんて、思ってもみなかったわ!!!」

「そうなの?」

「そうよ?だってあなた、私の話を一生懸命に聞いてくれて、その上で応えてくれていたし。それに私。あなたの事がずっとずっと好きだったんだもの、愛していたんだもの、あなたの事を!!!」

「・・・・・っ!!!!!」

 “有り難う”とその言葉を聞いた夫が妻に返して尋ねた、“だけど一体、何時からだったの?”と、すると。

 メリアリアはハッキリとこう言ったのである、“初めて会った時からよ?”と。

「ううん。それ以上前から、きっと生まれる前から知っていて、その時から愛してたんだわ!!!」

「・・・・・っ。そうか!!!」

 “有り難う、メリー!!!”とその男性は妻に向かってそう告げると、妻は顔を赤らめながらも甘えるかのようにして、全身を夫へと擦り寄せて行く、そうしておいてー。

「ん・・・」

「・・・・・」

 瞳を閉じて顔を上げ、夫にキスを強請るモノの、それを見た夫は妻の唇にソッと自らのそれを重ねてバードなタッチの口付けを交わす。

 と言っても啄むような軽いモノでは断じて無くて、かと言ってそれほどディープなそれでも決して無かった、一応、人前だからと言う事で気を使っているんだろうか、それでも重ね合わせた唇同士を長時間、そのままにしておいて更に互いに抱擁を交わしては、チュウチュウとそれ同士を吸い重ねて行った。

 やがて。

「ちゅぷ・・・」

「んむむむっ!!?」

 不意に妻が驚愕したかのような声を挙げるが、近くにいたとは言っても二人からはそれなりに距離もあったのと、目に映る角度の問題からよくは解らなかったのであるモノの、なんとこの時、夫が妻の口の中に舌を入れて掻き回し、更にはそれら同士を絡ませるようにしていたのである。

「んぶぶぶっ!?んぶじゅぶっ。ちゅぶ、ちゅぶっ。ちゅぷぷぷっ、ちゅるるるるるる~っっ❤❤❤❤❤んぶぶぶうううぅぅぅぅぅっっっ!!?んふぅーっ、んふぅーっ、んふぅーっ。んふううぅぅぅ・・・っ❤❤❤ん、んむむむむむむむっ!!?んぶ、ちゅぶっ。ちゅるるるっ、クチュクチュ、レロレロレロレロ・・・ッ!!ちゅ、ちゅぱっ。じゅるるるるるるるっ!!!ちゅぶちゅぶっ。じゅるるるるるるるるるるるる~っっっ❤❤❤❤❤❤❤」

「ん、んむっ。クチュ、レロ。ちゅむちゅむ、ちゅるちゅぱっ。クチュクチュ、レロレロ、じゅるるるるるるるっ。ちゅぷちゅぷ、じゅるるる、ちゅるるるるるるるるる~っ!!!!!」

 激しいキスの応酬を繰り広げる二人を前に、子供達は身動きが取れなくなってしまっていた、彼等にとってはそれはとても大切なモノと言うのはよく解っていたのであるがしかし、それ以上にとても恥ずかしいモノでもあったから(ましてやお互いが直ぐ側にいた為に、尚更そうだった)、思わず顔を俯かせつつも目だけはチラチラと夫婦の光景を盗み見するモノの、そんな子供達の心境を知ってか知らずか、もはや夫婦は完全に己達自身の世界に入ってしまっており、お互いをしっかりと抱き締めたままで脇目も振らずに相手との口付けに没頭して行く。

 唇を啜り合っては、涎を絡ませ、舌で舌を弾かせる二人の左手の薬指にはしかし、金でも銀でも無い不思議な輝きを放っている、エンゲージリングが光っていたのだ。

「ちゅぷ、じゅぶっ。ちゅむ、ちゅるっ、じゅぶぶぶぶぶぶぶ~っっ❤❤❤❤❤んむうううぅぅぅぅぅっ!!?んふぅーっ、んふぅーっ、んふぅーっ。んふううぅぅぅっ❤❤❤ちゅ、ちゅぷ、じゅるっ。じゅぷぷぷっ。レロレロレロレロ、クチュクチュクチュクチュ・・・ッ!!ちゅ、ちゅぱっ。ちゅるるるるるる、じゅるるるるるるるるるるるる~っっっ❤❤❤❤❤❤❤」

「んむ、ちゅむっ。じゅるじゅるっ。ちゅううぅぅぅっ、じゅるるるるるるるっ!!!じゅるり、じゅぶ、ちゅるっ。じゅるじゅるっ。じゅるるるるるるるるるっ!!!!!ちゅぽん、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・っ!!」

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ。はああぁぁぁ・・・っ!!!ああんっ。もっと、もっとおおぇぉぉっ❤❤❤❤❤ん、んぷっ。じゅぷじゅぷっ。ちゅるるる、じゅるるるるるるるる~っっっ♪♪♪♪♪♪♪」

 一旦は夫が妻から唇を離して、それで終息したかに見えた濃厚なる接吻の嵐であったがすぐに妻からの熱い要望を受けては再開させられ、それまでよりも一段と激しいモノへと形を変えるモノの、そんな夫婦の終わりなき口付けの輪舞曲(ロンド)を蒼太とメリアリアはもはや隠す事も忘れ、半ば呆然としつつも見守っていた、周囲には彼等の他には人どころか如何なる存在の気配も無い、それを夫婦は解っているのであろう、何に遠慮するでも無く、また心になんの憚りもなく、ただただひたすらどこまでも、夢中になって相手とのキスを堪能して行く。

 どちらかといえば夫よりも妻の方がより激しく彼のことを求めているかのように見受けられたが、現に夫が接吻を止めようとするとその度に妻が“もっと、もっと”とせがんで継続させる、と言った事が、何度となく繰り返されては結局、そのままそこで、小一時間程口付けの応酬は繰り返されていたのである。

 やがて。

「ぷはあああぁぁぁぁぁ・・・っっっ!!!!!!!はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ。はああぁぁぁ・・・っ❤❤❤」

 漸く満足したかのように、妻が唇を離すモノの、その時の彼等の顎の周りは涎でベトベトになっており、口と口との間にツーッと一筋の糸が垂れるが、それを夫は持って来たハンカチで拭うと妻にも同じようにして顔を綺麗にしてあげていた。

「はあはあ・・・っ!!あははっ。メリー、ベトベトになっちゃったね・・・!!」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ。はああぁぁぁ・・・っ❤❤❤も、もう。あなたったら、私なんてもう、アソコがグチョグチョになってるんだから・・・!!!」

「うん、僕もギンギンだよメリーッ。もう我慢できない!!」

 “帰ろうか?”と夫が告げると妻は荒い吐息を付きながらも“はい・・・”と応えて二人はそのまま身を寄せ合い、お互いの身体に腕を回してその場から歩いて立ち去っていった、後に残された蒼太達は、無言でそれを見送った後に、二人で顔を見合わせて“今のなんだったんだろうね?”と話し合う。

「ねぇ見た?今の人達、あれって・・・!!?」

「う、うん。まるで僕達自身みたいだった、大人になった僕達・・・!!!」

 そう頷き合うと二人はまた彼等が去って行った方を呆然と見つめるモノの、そこにはもはや、何の気配も感じられずにただただひたすら心地好い、春のそよ風が木々の合間を駆け抜けて行くだけであったのである。

「・・・・・」

「・・・・・」

(あ、あの人達って一体全体、何だったんだろう?やっぱり私達なのかな?でもなんて言うか。うーん・・・!!!)

(大人になった僕達・・・。でも確かにあの人は奥さんの事を“メリー”って呼んでいたし。それにあのデジャヴって言うより一体感は・・・!!!)

 と、二人は彼等の正体についてもだったが同時に、夫婦が行っていた、キスの応酬についても考えを巡らせていた、特にメリアリアに至ってはそれまでにも蒼太との間で接吻をする想像を働かせる事が何度かはあったのであるモノの、その度毎に恥ずかしい思いに駆られていたのと、そもそも論的な話としてはキスなどやった事が無かった為に、最後までは中々具体的なイメージを湧かす事が出来ずにいつもちょんと唇同士をくっ付ける程度のそれで終わっていた事が多かったのである、しかし。

 今回、あの自分達そっくりな(と言うよりも自分達自身と同一人物かと思う程に一体感を覚えて感覚的にも重なり合っている)夫婦のそれを現実として見せられた時に蒼太との間で“いつかは自分もこの人とキスをするのだ”、“キスってあんなにも長い時間するモノなんだ”、とここで初めてこの少年との口付けに対する一歩踏み込んだ認識を抱くに至っていた訳であるモノの(ただしそれでもバードキスやディープキス等の名称や種類、方法等の詳しい事は何一つとして解ってはいなかったのであるが)、そんな事も手伝ってこの時以降、メリアリアは徐々に彼と“そう言う事をしたい”と考えては、顔を余計に真っ赤にさせて恥じらい悶える、と言う事を何度となく繰り返すようになっていくのであった。

「ね、ねえ蒼太・・・?」

「なにさ?メリー・・・」

「・・・・・っ。う、ううん。何でも無いのよ?なんでも!!!」

 そう慌てふためいて応えるモノの、本当は少年との接吻の事を考えては顔を上気させつつ俯いてしまうメリアリアだったが、幸いな事に蒼太はまだ、キスについてはそれほど深くは考えていない様子である、この話題はとてもではないが、し続けられないと考えては他の方面へと話を持って行く事にした。

「ね、ねえでも。本当に何だったんだろうね?あの人達・・・!!!」

「うーん?本当に、大人になった僕達、なのかな・・・?」

「でもそうとしか、説明のしようが無いじゃない!!?」

 とメリアリアは恥じらいを払拭する意味もあって、やや語気を強めてそう応えた。

「あの人達は、間違いなく大人になった私達自身だったんだわ!!?それも蒼太の事を“あなた”って呼んでいたし、蒼太は私の事をハッキリと“メリー”って呼んでたし。それになによりかにより、左手の薬指には結婚指輪も・・・っ。あああっ!!?」

 そう思うとメリアリアは顔が真っ赤になってしまい、感激のあまりに顔をクシャクシャにしたままで涙を流して喜びに打ち震えるが、それほどまでにこの金髪碧眼の少女にとっては少年との結婚と言うモノは、愛を交わし合う、と言う事は何よりも得難い、大切なモノであったのである。

 だからこそ。

 それが叶う、と知った時には嬉しくて嬉しくて堪らなくなり、瞳から熱い雫を溢れさせていたのであるが、そんなメリアリアを見ている内に蒼太も喜びが込み上げて来た、実感が湧いてきた、と言うのもあるにはあったが、それ以上にメリアリアがそこまで喜んでくれている事が、嬉しくて仕方が無くなってしまったのである。

「メリー・・・!!!」

「ヒグ、グス・・・ッ!!!・・・・・?」

「今日さ、帰ったら踊ろう?また二人でずっと、日が暮れるまで・・・!!!」

「・・・・・!!!!!」

 そんな少年からの言葉にメリアリアはまた、喜びが噴出して来てしまっていた、“蒼太も凄く喜んでくれている”、“自分と同じ気持ちを抱いてくれているんだ!!!”と思うと心が奥底から一気に熱くなって来て、それと同時にあの衝動が彼女を突き動かして行っては蒼太に抱き着かせていたのである。

「ヒグ、グス・・・ッ!!蒼太ぁっ。蒼太蒼太蒼太蒼太蒼太っ。蒼太あああぁぁぁぁぁっ❤❤❤❤❤❤❤」

「メリー・・・ッ!!!」

 泣きながら自分に抱き着いてくる彼女の事を、蒼太はしっかりと抱き止めながら背中を擦ってやるモノの、正直に言ってこの時までのメリアリアの心情としては“蒼太の事が好きなのであるが、まだハッキリと恋心を自覚するには至っていない”と言った状況である、と言った方が正しかった、ただし。

 その思いは日に日に強いモノとなっていたし、彼に抱く衝動の正体にも、メリアリアは薄ぼんやりと気が付き始めていたのであるモノのそうなのだ、言ってみれば彼女は蒼太に対する深い愛情を、その確かなる暖かさを少しずつ理解し始めていたのであり、それがあってますます、蒼太の事を自分に付き合わせては引きずり回すようになっていたのであるが、しかし。

「蒼太、蒼太蒼太・・・っ❤❤❤❤❤」

「・・・・・」

 本当の事を言ってしまえば、それは元からそうだった、と言っても過言では無かっただろう、メリアリアは蒼太に抱き着きながら、その匂いと感触とに包まれながらあの女性の言っていた事が、即ち大人の自分が言っていた事が確かに、間違いでは無いと確信していた、そうだ、彼女は知っていたのである、蒼太の事も、彼への思いも、そして将来、結ばれるべき人なのである事すらも。

 みんなみんな、私は知っていたんだ、この人の事を愛していたんだ、とメリアリアはこの時に、何となくだが確かにそう感じており、そしてその証拠にそれらの思いは心の奥底にまでストンと何の違和感も無く落とし込まれて行ったのだった。

(愛してる。私、蒼太の事を愛してるんだ・・・!!!)

 とメリアリアはここに来て急速に、自分の中での彼への思いが花開いて行くのを感じていた、好き、愛しい、一緒にいたい。

 それらが急速に昂ぶって行って、それと同時に己自身も高まって行って。

 そしてそれと同時に胸の中で何かがパアァッと弾けたようになってしまって。

 自分で自分が抑え切れずに収拾がつかなくなってしまった。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ。メリー?」

 “どうしたの?”と尋ねる蒼太にメリアリアは顔を真っ赤にしたまま“な、何でも無いっ!!”、“何でも無いったら!!!”と殊更自分に起きた“それ”を、気付いてしまった彼への“思い”を恥ずかしさと照れ臭さから、必死になって隠そうとする。

「・・・・・っ。メリー顔真っ赤だけど、平気?」

「・・・・・っ!!!!!へ、平気平気っ!!!何でも無いったら何でも無い、いや何でも無くは無いんだけど・・・。も、もうっ、蒼太ったら!!!!!」

「・・・・・っ。え、えっ!?えっ?」

 “僕?”とキョトンと聞き返して来る少年に対してメリアリアは思わずギュウウゥゥゥッと抱き着いては幸せいっぱいな気持ちのまま彼にその身を擦り寄せ続ける。

 彼女はこの時、漸く胸の中の気持ちが弾けて本格的に火が灯り始めてきたのである、即ち。

 “自分は蒼太が好きなのだ”と、“この人の事を愛してるんだ”と、まだ幼い心にそれでももう一歩踏み込んで自覚し始めて行ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 二人が出会ったのは紛れもなく未来の彼等自身です。

 ではこの時代に一体、何をしに来ていたのか、と言うとそれは追々語られて行く事になろうかと思われます。

 またこのお話しでメリアリアちゃんは蒼太君の事を本格的に意識し始めて行きます(元々、無意識下では彼の事が大好きで、これ以上無い位にまで深く愛してはいたのですが、しかし何分にもまだ幼すぎたのと子供心に認識できる自身の彼への思い、確かさと言うモノが、“好き”と言うそれで精一杯だった為に、そこまで解らなかったのですね、ところが徐々に月日を重ねて年が行く内に意識や自我が成熟して来るにしたがって、段々とそれだけでは無い事に気が付いて行くのです、即ち“好き”から“恋”になり、そして“恋”から“愛”になる、本当はこの“メリアリア・カッシーニ編”においてはそうしたメリアリアちゃんの蒼太君に対する己自身の本質の顕現、その過程における心や魂と言った、根源部分から湧き上がって来る、恋から愛へと変化して行く彼女の内面の成熟、成長こそを上手く書き表して行きたかったのですが、何分にも力が足らずに、申し訳御座いません。下手をするなら読者の皆様方におかれましても多分、読んで下さっておられる内に些か混乱、困惑されて来てしまったのではないか、と思っております←そうでなければよいとつとに願っております、なお当然の事ながら、作者として最大限努力は致しましたし、筆が乗って上手く書けた所もあったのですが)、蒼太君との様々な事柄や思い出を通して遂にメリアリアちゃんはそれまでずっと無意識下において秘め続けていた蒼太君への思いや、彼と出会った時から感じ続けていた蒼太君と自分自身の運命の絆と言うモノを、再認識して行くのです、それで今後は蒼太君共々、所謂(いわゆる)一つの“両片思い”の状態になって行く、と言う訳なのです(それが本当の意味で解決されるのはメリアリアちゃんが11歳と半年、蒼太君が9歳と半年の時に、初めて結ばれた瞬間です)。

 皆様方、本当に有り難う御座いました、皆様方が支えて下さったお陰で何とかこの物語をここまで終わらせる事が出来ました、大変に感謝しております。

 後もう少しで(と言ってもまだ暫くは続きますが)“ガリア帝国編”も終わりますのでもう暫くお付き合い下さいませ(そこまで一気に突っ走りたいです)。


                 敬具。

           ハイパーキャノン。
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