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神世への追憶編

第二次エルヴスヘイム事件8(神々の愛情とゾルデニールの憎悪)

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 今回のお話は“因縁との対決”の前書き部分、及び“絶対熱の極意”の前書き部分と、更に付け加えさせていただけますならば“ハウシェプストの迷走”本編
を御覧になられてから見ていただけるとより理解が深まるかと存じます。

 また今回のお話は一部霊能者から聞いた事象や彼等の実体験を元にして物語を構築しております、悪しからず御了承下さい。
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「・・・じゃあつまりは、魔物って言うのはそれほど大した力を持っている訳では無いのね?」

「まあ、そう言う事になりますね。何しろ奴らの大半は人間によって勝手に生み出された存在だから、その辺の悪霊とかにちょっと毛をはやした程度の力しか持っていないんだ。だから落ち着いて対処出来ればそれほど手間取る相手では無いんですよ?ただしそれはちゃんと修業や鍛錬を積んだ神官や僧侶、陰陽師にとっては、と言う話ですからね。一般人から見た場合にはやはり、恐ろしくて厄介な事この上ない存在である事には変わりはないんです・・・!!!」

 “エルヴスヘイム”の大地を北へ北へと進みつつ、蒼太がノエルとレアンドロとに色々と語って聞かせるモノの戦力的にもまた“心構え”と言う意味に於いてもまだまだ“一般人”と呼んで差し障りない存在である彼等に対してせめて、“知識くらいは授けておくべきだ”と考えたからである。

 あの後、フォルジュナから“アウディミア”に対するより細やかなレクチャーを受けた一行は更に、フォルジュナからの好意によって全員が“ミスリルで出来た鎖帷子(くさりかたびら)”やエルフのナイフ、それにそれぞれに必要な装備品やアイテム等を与えてもらい、二晩の休みを経てから晴れて“黒雲の魔女”征伐の旅路へと本格的に出立していったのだ。

「本当に恐ろしいのはむしろ“鬼”や“悪魔”と呼ばれている連中の方ですよ。何せアイツらときたら小型の奴でも、“心霊スポット”と呼ばれている場所に屯(たむろ)している、人に取り憑く事もある程に性質(たち)の悪い死霊100体以上が束になって掛かって行っても返り討ちにされてしまう程に強力な鬼力、呪力を持っているんだ・・・!!!」

「げえぇぇ・・・っ!!!」

「そ、それ程にまで強力な奴らがいるって言うのか・・・!!?」

 そんな蒼太の話に一喜一憂しながらもそれでも、ノエル達は普段のおちゃらけは何処へやら、それなりに真面目に蒼太の言葉に耳を傾けてくれていた、どうやら彼女達なりに、この旅に於ける使命に付いて真剣に向き合ってくれている様子である、それ自体は良い傾向である、と評して構わないであろう。

「でもでも、だけど・・・。“魔物”だって人の弱点や弱味を突いて来るんでしょう?私やレアンドロで対処出来るかなぁ~っ(´・_・`)(´・_・`)(´・_・`)」

「それは大丈夫です、ノエルさん」

 神妙な面持ちとなってそう聞き返して来るこのゆるフワピンクの年上フレンドに対して青年があっけらかんと明るく応えた。

「さっきも言いましたけれども、“魔物”って言うのはそれほど大した魔力を持っていないんです。それに正義感が強くて高い霊力を保持していたり、または神の祝福を受けている人物なんかはその誘惑や恐喝を自ら撥ね除けて断ち切る事も出来るんですよ?しかもなんだかんだ言った所でしっかりと、もしくはギリギリだったとしてでもそれでも、ちゃんと己自身を保った上でね。そう言う人達って言うのはやはり、何があっても決して最後の最後で自分自身を見失ったりはしないものなのですよ。それだけじゃあありません、現に彼等は勿論の事、所謂(いわゆる)“霊能者”と呼ばれている存在の中にも悪魔からの度重なる意識的触手や悪意ある波動すらをも跳ね返し続けている人物達だっているんですからね。況(いわ)んや魔物程度の存在ならば全く以て問題はありませんよ!!!」

 かつてと同じく高次元の純正法力を練り込んで編まれた“白精のローブ”に身を包み、また右手には“長老の木”の枝より顕現せし“白き導き手の杖”を握り締めた蒼太がそう教え諭すがここまでノエルがあれこれと彼に、それなりの熱意を持って様々な事を尋ねるのにはある訳があった、それは。

「はあぁぁ~っ( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)」

(私はまだまだ半人前なんだから・・・。せめてソー君の話だけでも聞いておかないと、せっかく“力”を授けて下さったフォルジュナ様に対して申し訳が立たないんだよねぇ~っ!!!)

 それであったがあの後、フォルジュナの語り草はかなり長いモノとなりここ、エルヴスヘイムの歴史から話が入る事となったが、それによるとどうやらエルヴスヘイムの大地としての記憶は古く、その起源は地球創世記にまで遡る、とされていた、その当時、神々は“現実世界”とは別に幾つかの“多次元的並行世界”をも同時に作り出しては開闢させて、そこにそれぞれ、様々な生物、存在を定住させて行ったのだった。

 この内“現実世界”には主に多種多様な動植物は勿論の事、恐竜達や他の天体から移住して来た“霊的人類”が生活を営んでおり、“エルヴスヘイム”には“精霊の亜種”が在住して土や水、風と共にその生命の光り輝きを煌々と照らし続けていたのである。

「我等は最初、決まった肉体と言うモノを持ってはいませんでした・・・」

 改めて己が使命、役割を果たす事を決めた蒼太達一行に対してフォルジュナがエルフ族の誕生の経緯(いきさつ)を語って聞かせていた。

「原初の私達は、“霊的人類”がそうであった様に“半人半霊”として存在しており、しかもどちらかと言えば人よりも精霊に近しい者達だったのです・・・」

「それは解る気がするわ・・・?」

 その言葉にメリアリアが頷いて見せる。

「エルフ族って、見た目は人間に近しいのだけれど。その本質は私達とは全然違う、確かに“自然エネルギー的な何か”を感じるもの・・・」

「それは確かに、僕も気になっていたけれど・・・。だけどまさか、本当に人間とは違う種族だったとはね・・・!!!」

 そんな愛妻淑女(メリアリア)の声に蒼太もまた同意するモノのなるほど、確かに言われてみれば彼等は形(なり)は人間族のそれであるモノの、その霊魂的根源はどちらかと言えば大自然の只中に偏在している波動量子や意識レベルに近い気がする、納得の行く答えであった。

「私達は当初は、普段は“霊魂的意識体”として大自然の只中を揺蕩(たゆた)い続け、必要があれば受肉してこの“3次元世界”に顕現しては木々や草花、風と共に遊び戯れる、と言う生活を繰り返して来たのですが・・・。それがガラリと変わってしまったのが、あなた方人類の時間に換算し直すと今から凡(およ)そ3500万年程前の事です・・・」

 フォルジュナの話は続くがその時、神々の手にしよってある異変が起きたのだと言う、その異変と言うのが。

「それまで互いにごちゃ混ぜの状態で存在していた色々な世界を、神々は境界線を定めて区分けし、それぞれに切り離されたのです。・・・理由はある悪逆極まる“エネルギー生命体”にありました、反逆と混沌とをこよなく愛してはその為に破壊と無法を繰り返す、純粋なる暴虐神。反逆皇神“ゾルデニール”です・・・」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「そ、蒼太さん・・・っ!!!」

「“ゾルデニール”だと・・・っ!!?」

 するとそれを聞いた蒼太と花嫁達が驚愕して俄(にわか)に動揺した、まさかこんな所に来てまで“ゾルデニール”の名前を聞く事になるなんて!!!

「で、ですけれども。3500万年前って・・・!!!」

「ゾルデニールとは、そんなに古い神なのですか・・・?」

「いいえ、アウロラにオリヴィア。彼は神々の中ではそれほど古い存在ではありません、むしろ新しい部類に属します・・・」

 そこまで話すとフォルジュナは、やや厳しい顔付きとなって言葉を続けた。

「彼の正体は、かつてこの地球上を席巻していた恐竜達の中から特に、他の惑星から来た“霊的人類”によって選別され、その研究によって誕生して来た“レプティリアン”と言う種族です・・・。それが魂だけの存在となった末に、更に恐ろしい迄の力を持つに至った姿ですね・・・」

「・・・・・」

「・・・“レプティリアン”!!!」

「なんて、ことなの・・・!!?」

「かつての人類が誕生させてしまった、だと・・・!!?」

「ち、ちょっと待って。“他の惑星から来た”って、どゆこと・・・!!?」

「ど、どういう事なんだい?蒼太、僕達にはフォルジュナ様の仰(おっしゃ)られている事が、よく理解出来ないよ・・・っ!!!」

 “後で詳しく説明するから・・・!!!”と自分や花嫁達とはまた違った意味で驚愕の表情を見せるノエルとレアンドロの二人に対して蒼太が小さく、そして素早くフォローを入れた。

「元々・・・。彼等“霊的人類”はこの星に移住してからというもの苦労苦心の連続でした」

 フォルジュナは語るがそれによると、この地にやって来た霊的人類達は当時は今より酸素濃度の高かった環境にそれでも何とか適応して行き、それにともなって森を切り開いては開墾し、上下水道設備や発電施設を新設させて居住地区を整備し、“自分達のコロニー”を完成させるに至っていったが此処で残された課題に直面した、当時地球上を跋扈(ばっこ)していた超大型爬虫類、所謂(いわゆる)“恐竜”達への対処である。

 彼等は皆、押し並べて屈強で狂暴であり、また人間を始めとするその他の生物に加えて遥かに大飯食らいであった、当然その糞尿は垂れ流しであり酷い場合だと環境汚染が引き起こされていた事例すらあったのだ、そんな只中にあって。

 遂に彼等の横暴さと強大さとに手を焼いた“霊的人類達”は自分達の手足となって働いてくれる“労働力”と外敵からコロニーや自身を守る為の“兵士”とを同時に作り出す事にした、襲い来る恐竜達を退け続ける為には彼等だけでは数が足りなかったし第一、人類達自身も些か疲弊して来てしまっていた為であったがその為には。

「ある程度以上の力と知能を持ち合わせている事、基本的な集団生活が送れる事等の諸要素が必須とされていた、との事でした。そしてそれぞれ、名を挙げられた生物達を抑えて筆頭候補として選ばれたのが他ならぬ恐竜達であったのだそうです。しかし・・・」

 此処に、霊的人類達はある誤算を犯した、それは完成した恐竜人間達には確かに強力な膂力と高い生命力、そしてそれなりの知能とが備わっていたモノの如何せん、最重要な霊的エッセンスである“愛情”が人間族程にまで成熟しておらず、また彼等自身、“そんなモノは必要無い”と判断したのか持ち合わそうともしなかったのである。

 かてて加えて。

「レプティリアン自身も大変な迄に気位が高くて身勝手で、それに輪を掛けて狂暴で・・・。段々と人類達の命令や言葉を聞かなくなって来てしまった、との事でした。そして・・・」

 “悲劇が起きたのです・・・”とフォルジュナは言葉を紡ぎ続けた、何かを逡巡するような面持ちとなって。

「あなた方は“キメイラ”と言われる生物達を知っていますか?」

「“キメラ”ですね?確か多種多様な動物達の交じり合った姿形をしている怪物だと聞き及んでいますけれども・・・」

「そうです。人間界にはそのように伝わっているのでしょうが、実はあれは異種交配して行った生物達の成れの果ての姿なのです。・・・それを実行したのが他ならぬレプティリアン達でした、元が恐竜だった彼等は同族間は勿論の事、その獣欲の赴くままに様々な生物達とただひたすらに交わり続けて終いにはそれらが生み落とした我が子をすらも犯し抜いて行ったのです・・・」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「!?!?!?!?!?」

「な、何という・・・っ!!!」

「その極め付けの生物こそがあの“キメイラ”、もしくは“キマイラ”と呼ばれている怪物です。もっとも生まれ落ちて来たキメイラにそれ程高次な自我は無く、彼等もまた欲望に塗(まみ)れて生きるだけの低レベルな生物に過ぎませんでしたが・・・」

 フォルジュナはそこまで言うと“ハァ・・・ッ!!!”と一つの溜息を付いて悲しみの色を更に深めた表情を浮かべた。

「この宇宙に存在しているありとあらゆる生物達には例えば、人なら人、動物なら動物、と言う様にその存在の有り様に一番、即している“最適なる愛の形”が既に神々や創造主から与えられております。ところが彼等はそれを踏み躙り、この星の生命環境を滅茶苦茶に乱して回ったのです」

 “それで”とフォルジュナは話を続けた、“最終的には宇宙や神々の逆鱗に触れて廃滅して行ったのです”と。

「異種交配等はだから、絶対に行ってはいけないのです。何故ならばそれはその存在のアイデンティティーを全く以て歪めてしまうのみならず、神々が与えて下さった“最高の愛の形”を自らの手で捨て去る事になるからです。だと言うのに・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「ごめんなさい、皆様方。“ゾルデニール”の話でしたね?と言ってももう、皆様方もお解りになられたでしょうが彼はそうしたレプティリアン達の霊魂が邪神化したモノなのです。彼はだから神々を憎み、神々が生み出された全てを憎んで世界を自分の意志の元に塗り潰そうとしているのです。その法則も姿形も光り輝きも何もかも全てを自分の思い通りになる様に汚染させた上で。神々はそれを見ていよいよ世界を本格的に分かち、境界線を引く事にされました。生物達のアイデンティティーや意識、そしてその愛の形がこれ以上乱されないようにするために、先手を打たれたのですね。それに当時からゾルデニールの邪力、魔力の影響でこの地球上に本来あるはずの無い幽界や魔界が出現して来てしまっていましたから、それらを現実世界と隔てる必要があったのです。・・・いずれ生まれて来る現生人類、つまりはあなた方を守る為に、です。神々だってちゃんと人類の為にあれこれ考えて動いて下さっておられるのですよ?あなた方が気が付かないだけで、ちゃんとあなた方を愛して守ろうとして下さっておられるのです・・・!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・ね、ねえソー君。ソー君!!!」

「なんですか?ノエルさん・・・」

「幽界や魔界って何なの?元々は無かった世界って、どゆこと?」

 するとフォルジュナの歴史語りがいよいよ確信に近付こうとしている時に、ノエルが思わず口を挟むがこの時の彼女の頭では霊界や幽界の区別が付いておらずにそう言った存在の行き着く先は“あの世”と言う世界に全て一緒くたにされ、ごちゃ混ぜに纏められていた様子であった。

「もともとは、僕達人間族の暮らしている人界のすぐ上に霊界や神界があったのです。ちなみに霊界とは死んだ後にちゃんと成仏した人々が住む場所で神界とは神々のいらっしゃられる宇宙です。それぞれの世界は当時はしっかりと繋がれていたと言いますか、ごちゃ混ぜになって存在していてだから、人々は当たり前の様に神々に詣でたり、霊となった偉人に会って話を聞いたりしていたそうですが、いつの間にかそこに更に、幽界と魔界と呼ばれる世界が出現して入り込んで来たのだそうです。そこは所謂(いわゆる)“幽霊”やら“魔物”やらが跋扈(ばっこ)している汚染された空間でして人々を惑わし、乱れさせ、また神々と繋がるのを邪魔する様になって来たのだと言われています。それで神様は“このままではいかん”と言う事になり、それぞれの世界を切り離しては別けられたのだそうです・・・」

「・・・じゃあ幽霊と霊とは違うって事?」

「ううーん、なんて言えば良いんでしょうかね?幽霊は霊の一種なのですが、どちらかと言えばお化けに近い存在、と言えば良いですか。ほら人間の中にも半グレとか不良っているでしょ?ああいうモノだと思っていただければ解りやすいかと思います」

「要するにグレてしまった霊魂、て事?」

「ああ、そうです。そう言う理解で結構です」

「・・・よろしいですか?」

 蒼太達の話が一段落するのを待ってフォルジュナが再び言葉を紡ぎ始めた。

「そのゾルデニールが唯一、心を開いて心酔していた存在がいました。異端の神“ガドラ”と呼ばれる者なのですがこの神は神々の中でも特に人間を“出来損ない”呼ばわりし、また私達エルフの事も“中途半端な存在”と呼んで蔑視しては根刮ぎ粛清しようとしていたのです・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・異神“ガドラ”か」

 オリヴィアがポツリと放った呟きに“そうです”とフォルジュナが頷いて見せた。

「ガドラは強権的で猜疑心が強く、ともすれば新しい事象や価値観が違う者を容易に受け入れずにおり、また神々の中でもやや浮いていた存在だった様なのですが、そんな彼をゾルデニールは殊の外気に入っていて一種の信仰心すらも抱いていた様です。そしてそんなゾルデニールと同様に、異端神ガドラに心を寄せていた人物がおります。それこそが・・・」

「黒雲の魔女“アウディミア”と言う訳ですか・・・?」

 蒼太の発したその言葉に、フォルジュナは首を縦に振った。

「その通りです蒼太。あろう事か両者は今や意気投合して同盟を結んでいるそうです、“同じガドラを信奉する者”として互いに一目置いているようなのですが・・・。その目的の最終地点が何なのか、と言う事に付いては私達も良く解ってはいないのです・・・!!!」

「だけどとにかく、ゾルデニールとアウディミアが繋がっているのは間違い無いと。そう言う事ですね?フォルジュナ様・・・」

「そうです。両者は確実に連帯していて、現にゾルデニールと取り引きをしているアウディミアは魔界から直接、強力なモンスターをこのエルヴスヘイムの地へと送り込んで来ているのです。改めてお願いします蒼太、そしてその仲間達よ。彼女の野望を何としてでも食い止めていただきたいのです、邪(よこしま)な存在の力を借りて成就させようとしている事象など、恐らくは愚にもつかぬ事を考えていると見て間違いは無いと思われます・・・」

 そこまで話すとフォルジュナはお付きのエルフ達に目配せをしてある物を持って来させた、エルフ達の魔法や技術で生み出された武器、防具の数々だ。

「アウディミアは殊の外強力です、申し訳ないのですがあなた方の武器や防具では歯が立たないでしょう。これらの品々をお持ち下さい、私共からのせめてもの御礼と心ばかりのモノですけれども・・・」

「・・・・・」

「す、凄い・・・っ!!!」

「これがエルフ達の、装備品ですか!!?」

「眩いばかりの輝きを放っている。それだけでは無くて、奥から重厚な力を感じるぞ・・・!!?」

 それらを初めて目の前にしたメリアリアやアウロラ、オリヴィアが思わず驚愕すると同時に瞳を輝かせて喜ぶモノの、そんな中にあって。

「・・・・・っ。ね、ねぇソー君。ソー君!!!これって物凄く価値のあるモノなんじゃない!!?」

「僕達にだってハッキリと解るぞ?物凄い霊力を秘めている品々だ、と言う事がね・・・!!!」

「・・・・・」

 するとそんなノエルとレアンドロの話を聞いていたフォルジュナが特に、彼等を自分の元へと呼び寄せる、そしてー。

 その右手をそれぞれの頭の上に翳(かざ)したかと思うと眼を瞑り、何やら呪(まじな)いの言葉を唱え始めた、その直後に。

「・・・・・っ!!!」

「・・・えっ。え、えっ!!?」

「嘘でしょう!!?」

「何という事だ!!!」

 その場で花嫁達が口々に声を発するモノの、なんとノエルの全身から眩く輝く金色の法力が放たれ始め、継いで施術を受けたレアンドロからも同様に、強烈な光りのオーラが溢れ出して来た。

「・・・・・っ。これで、よろしい!!!」

 全てが終わるとフォルジュナはホッとしたかのような微笑みを浮かべて二人を見据えるモノの、その瞳は心なしか、いつもより慈愛に満ち溢れている感覚を見る者全てに与えていたのだ。

「驚く必要は御座いません。このお二方には、眠らせたままにしている力がありました。それを開放して差し上げたまでのこと」

 “とは言っても”とフォルジュナは更に付け加えた、“まだまだ自由な扱い方や発揮の仕方は良く解らないでしょう”とそう言って。

「白き風の導き手の蒼太よ。あなたに特にお願いしますがこの二人に色々と指導をしてあげて下さい。特にいざと言う時の心の力や心構えを教えてあげて下さい。そうすればこの二人はきっと、自分自身もさる事ながら、お互いの絆をも守り抜く事が出来るでしょうから!!!」

「フォルジュナ様、よく解りました。出来る限りの事はさせていただきます、ただし絶対に守り抜く、と言う事は確約出来ません。それでもよろしいでしょうか?」

「それで、よろしいですよ?蒼太。あなたにも今や何を差し置いても“絶対に守り抜きたい人”がいるのでしょう?」

 “それも三人もね?”と言うフォルジュナの言葉に頷くと蒼太は改めて花嫁達を見てからその家族へと視線をやり、最後にノエル達に顔を向けた。

「君達は最初は、戦闘はしなくて言い。後ろで僕やメリー達の戦い方を見ているんだ・・・。いいね?」

「解ったよ、ソー君!!!」

「よろしくな?蒼太!!!」

 そう言って明るく応える二人に、蒼太は何故だか一抹の不安を覚えて胸がザワつくのを感じていた。
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