メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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神世への追憶編

衝突・序章

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 蒼太君は気分次第で“俺”と言ったり“僕”と言ったりします(また王様の前等では“私”と言ったりもします)。

 ただ基本的には友人達の前だったり怒っている時等は“俺”であり、反対にメリアリアちゃん達と一緒の時や冷静でいる時等は“僕”と言います。

 またこの場をお借り致しましてお伝えさせていただきたい事柄が御座います、今まで散々やれ“純愛だ”、“真心だ”等と言っておきながら誠に申し訳ないのですが、私も決して口ほどの存在では無いのです、時には嘘だってつきますし、卑猥だったり卑劣な事を考えたりもします。

 それでも何か、この世界の神々や他人様方の役に立ちたいと思い立ち、自分の勉強した事や体験した事、そしてそれらから学んだ事等を書かせていただいている次第です(どうか悪しからず御了承下さいませ)。

 そしてもう一つだけ、皆様方に大切な事を言い忘れておりました、それは愛や真心と言うのはちゃんとそれを理解して受け止め、返してくれる人に捧げ尽くしてこそ、意味があると言うモノです←“愛”=“合い”ではないか、と言わせていただいたのはそう言う意味で御座います(ちゃんと“愛”や“真心”を知っている人と“愛し合う”事が出来ないと利用されるだけ利用されて、都合が悪くなったならポイ捨てされる、等と言う実に悲劇的な事態に発展しかねません)。

 皆様方もお気を付け下さいませ?特に最初から此方に対して“遊んでやろう”、“たかってやろう”等と思っている人に対してやれ“愛”だの“真心”だの言っても無駄ですからね(そう言うのは此方の思いにキチンと応えてくれる人に投げ掛けなければ何にもならないと言う事です)。
ーーーーーーーーーーーーーー
「・・・聞こえますか?“メリー・ジェーン”。“羊”は窖(あなぐら)の中にいる。繰り返す、“羊”は窖(あなぐら)の中にいる」

「ザ、ザーッ。ピッ!!!聞こえるぞ?“シャーロット”。やはり此方の“思惑通り”に情報が漏れていたようだな?」

「・・・あんまり嬉しがらないで下さい、“メリー・ジェーン”。これは本来であれば非常に由々しき大問題なのですから」

 セイレーン本部から少し離れた路地裏の小道において周囲に意識を張り詰めさせながらも超小型高性能無線機を耳に当てて話を続ける金髪碧眼の女性の隣で黒髪黒眼の少女が顔を顰(しか)めるモノの、彼女達こそはエイジャックス連合王国の誇る超秘密組織である王室護衛魔法騎士団“レウルーラ”の最高戦力、“超新星”の主要メンバーである“黄昏のルクレール”と“青天のエヴァリナ”の2人であった。

 予てよりの計画に則ってここ“ガリア帝国”に侵入を果たした彼女達は同国内部に潜伏していた諜報機関“M16”の工作員と接触し、武器や情報、食料等の支援を受けていたのである。

 もっとも。

 侵入を果たせたのはあくまでも“秘密裏に”であって、何も白昼堂々、検閲を潜り抜けて来た訳では決して無かった、これは万が一にも計画が事前に漏れていた場合に備えてマーガレットが下した決断であったがここに来てそれが“吉”と出たのだ。

 そしてその為にはM16を始めとした幾つかの国家権力に骨を折ってもらう必要があったがその潜入方法と言うのが実に手の込んでいるモノであった、まずは事情を知らないM16の新人若手工作員数名をガリア帝国国際空港から侵入させる一方、海からは王室名義で密かにチャーターした旧式の小型タンカーをジブラルタル経由でマルセイユへと向かわせたのである。

 勿論、これらは全てマーガレット達やその直下の親衛隊の面々を安全且つ可能な限り迅速にガリア帝国へと送り込む為の“囮”であった、かくて若手工作員達は事前情報を得ていた警察官達に空港の検問所で取り押さえられ、一方のタンカーは“手筈通りに”明け方、ドーバー海峡を渡る途中でわざと座礁して救難信号を発信、そうやってガリア帝国内部の治安維持組織や沿岸警備隊の目を自分達へと釘付けにさせる事に成功していたのだった。

 その隙に、タンカーに乗り込んでいたマーガレット達二十名は手早く潜水服に着替えると最低限の荷物を手に集団で寄り添い合ったまま荒波の只中に飛び込んで海中を進み続け、無事に仲間達の待つノルマンディーから上陸、そのまま彼等の助力を得て何とかガリア帝国へと潜伏を果たし、その後実に2週間程を掛けて蒼太の行方を追い続けていた、と言う次第であったのだが、しかし。

「どうするの?“メリー・ジェーン”。情報が漏れていたのはもう、どうしょうもない事だとして・・・。だけどこのままだと埒が空かないわ?セイレーン本部の警戒は流石に厳重だし。まあ裏を返せばそれがターゲットがアソコの内部で匿われているであろう事を何よりもハッキリと物語っているのだけれど・・・」

「もしガリア帝国側が何の情報も得ていないのだとするならば、こんなにも検問や警備が厳しくなっている事の説明が着きませんわ?だとしたならルクレールさんの仰られる通り、“羊”は最も警戒が厳重な場所で守られている、と考えなくてはなりませんけれど・・・。一体全体どうなさいます?」

「・・・慌てる事は、全く無いぞ?“シャーロット”、そして“エミリア”。“羊”の側から出て来てもらう!!!」

 “奴の仲間を襲って撃滅しろ”とマーガレットは指示を出した、“殺すか生かしたまま捕らえるかは其方に任せる”とそう告げて。

「・・・向こうに動揺を与える為に最低でも3回、計10人程を襲撃してもらう。なるべくならば生かしたまま捕らえて欲しい所だがまあ、状況次第だな」

「それは良いアイディアだと思うけど・・・。でも本当に良いの?私達がここに潜入を果たしている事も向こうに露見してしまうわよ?」

「せっかくわざわざ苦労して潜入したのに、自分から治安維持当局の活動を活発化させる結果となってしまいますわ?本当によろしいんですのね?」

「構わん・・・」

 2人の迷いや懸念を払拭させる為だろう、マーガレットは無線機の向こうで語気を強めて頷いた。

「そうすれば奴等はますます、我等への対応を考慮せざるを得なくなる。それにもし本当に“ソウタ・アヤカベ”と言う男が私の睨んだ通りの勇者ならば、彼は必ずやこれ以上犠牲者を出さない為にも自ら出張って来るだろうよ。その舞台を整えてやろうではないか!!!」

「了解しました、“メリー・ジェーン”。早速任務に移ります・・・」

「これで通信を終わりますわ・・・?」

「期待しているぞ?“シャーロット”、そして“エミリア”。何かあったらまた報告を入れろ。Over!!!」

 そう言って。

 マーガレットは通信を切った、彼女の思惑としては仲間達がやられて行けば必ずや蒼太は事態を打開する為に自ら出馬して来るだろうし、それに何よりもそうせざるを得ないだろう、と判断していたのである。

 如何に使える手駒とは言えどもたった一人の事を何時までも守り通すわけにはいかないだろうし何より、隊員達の犠牲が増えれば上から圧力が掛かって来る筈であるからメリアリア達“女王位”も動かなければなるまい。

(・・・奴等はどうやら定期的に日用雑貨や食料、飲料の買い出しを行っているらしいな?ソイツらを襲撃して捕縛ないし制圧する。それを繰り返して行けば堪え性の無いミラベル上層部の事だ、結局は守り切れなくなって必ずやセイレーン側に圧力を掛けて蒼太を出撃させるだろう。まずはその機会を創らねばな!!!)

 “それに食料や飲料が手に入らなければどうにもなるまい”と、それがマーガレットの考えであり基本方針だったのであるモノの、一方で。

「・・・・・」

「・・・どうします?ルクレールさん」

 マーガレットからの指令を受けたルクレールとエヴァリナは頭を悩ませていた、ここ数日間の張り込みで“買い出し部隊”と思われる連中が定期的に5人一組で車に乗り込み、セイレーン本部から出立していっては近くにあるスーパーマーケットにてそれなりの量の食べ物や飲み物、それに日用雑貨を買い漁っている事は承知していた、当然、襲うとならば彼等しかいない。

「・・・今日は金曜日。前回の買い出しが行われたのが月曜日だったから連中、そろそろ動き出す頃合ね?」

「ええ、そうですわね。・・・それでどうします?」

「・・・今現在、私達のグループには私とエヴァリナ、それに親衛隊の女の子達7名が在籍しているわね?これをA班とB班に分けるわ、私がA班を率いてまずは奴等の正面から仕掛けるから、エヴァリナ。貴女(あなた)はB班を率いて背後に回ってちょうだい?ここから全員で移動してスーパーマーケットの前まで行くわよ?」

「圧倒的多数でもって襲撃し、しかも最終的には挟み撃ちにする。悪くない戦法です・・・!!!」

 “解りました!!!”と頷くとエヴァリナは早速別働隊3名を率いて周囲を警戒しつつもセイレーンの隊員達が使っているスーパーマーケット“カルラール・ルテティア店”へと歩を進めて行った。

 当然、ルクレールもその後を追うが一方で。

「今日は俺達が当番の日だな。何が食いたいんだ?蒼太・・・」

「・・・そうだな、久し振りにカルボナーラが食べてみたいけど」

「よっしゃ。冷凍食品が最近ハイ・クオリティなんだ、それを買って来てやるよ!!!」

「すまないな、アンリ・・・」

 そう言って意気揚々と出立して行く親友に蒼太が悪そうに声を掛けるとアンリは“気にするな”と明るい笑顔で応えてくれた、“お前には以前、救われた借りがあるからな!!!”とそう言って。

「救われたって・・・。オーバーだな、お前は。あれは偶々たまたま、俺の推理が当たっていたからだ。運が良かったのさ・・・!!!」

「そんな事は無いぞ?お前の推理が無ければ俺の実家は完全にエイジャックスに乗っ取られていたんだ、それをお前は防いでくれたんだ。少しは恩返しをさせろや・・・!!!」

 そう言うとアンリを含めた隊員達5名は防弾防爆性の高い専用の黒いベンツに乗り込んで、カルラール目指して出立して行った。

 途中は特に、変わった事は何も無かった、いつもと変わらぬ街並み、いつもと変わらぬ日常、そしていつもと変わらぬ時間が過ぎ去ろうとしていた、その時だ。

「おわ・・・っ!!?」

「ぐは・・・っ!!!」

「なんだ・・・っ!!?」

 カルラールの駐車場に着くなや否や、不意にドライバー役の男性隊員が急ブレーキを掛けてベンツをその場に停車させるが、見ると窓ガラスに数カ所、明らかに銃撃されたと思しき罅(ひび)が入っており、何者かの襲来が予想された。

「早く、車を出せ。買い物は中止だ・・・っ!!!」

 アンリが叫ぶとドライバー役の男性隊員もまた、同じ気持ちだったのだろうベンツを急発進させる。

 しかし。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「なんだ、アイツは・・・っ!!!」

 まるで“そうはさせない”とでも言うかのようにして、フロントガラスの目の前に左右一対のレイピアを構えた1人の女性が立っていた、ややメッシュブラウンに近い軽めのダークブロンドのストレートロングにアイスブルーの瞳をした、所謂(いわゆる)“北欧系美人”な顔立ちをしている女性であるがアンリ達はその顔に見覚えがあった、レウルーラの超新星が1人、“黄昏のルクレール”だ。

「・・・・・っ!!?」

「ル、ルクレール・・・ッ!!!」

「バカな、何故ここに・・・っ!!?」

 アンリ達が愕然とするモノの、良く考えればこれはチャンスである、此方には“自動車”と言うアドバンテージがあり向こうは生身だ、普通に考えたならどちらが優勢なのかは一目瞭然である。

 折しも駐車場に他の人影は疎(まば)らであり、少なくとも自分達の側には誰もいない、今ならば誰も巻き添えにしなくて済むと、アンリ達は判断していた。

「ど、どうする?アンリ・・・!!!」

「主義には反するが・・・。しかし奴等の戦闘力は・・・っ!!!」

 と僅かな間だけ逡巡していたアンリであったがやがて意を決したように叫んだ、“このまま突撃しろ!!!”とそう述べて。

「相手は生身だ、虚仮威(こけおど)しだろう。危なくなったら退く、そしたらそのまま突っ走って逃げるぞ!!!」

「解った!!!」

 アンリの言葉に勇気付けられてドライバーはアクセルを全開に踏み込んでルクレールに吶喊した、アンリ達の思考は至って正常且つ冷静であり通常ならば決して間違いでは無かった、しかし相手は尋常なる存在では無くて、その事だけが彼等の計算を狂わせる要因となっていたのだ。

 アンリ達のつもりを見て取ったルクレールはしかし、少しも慌てる事無くそのまま立ち尽くしていたモノの、彼等は気が付かなかったがこの時、彼女の全身からは黄金色に輝く淡い光が漏れ出しており、その体とレイピアとを包み込んでいたのであった。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「お、おい嘘だろう?退かないぞ!!!」

「構うもんか、このまま突っ込め!!!」

 そんなやり取りが行われている間にもベンツとルクレールの距離は詰まって行き、とうとう左右に避けるべきタイミングすらも喪失してしまっていた、このまま行けばベンツはルクレールに激突する事になるのだろうが、もはや止まる事も侭ならなかった。

 しかし。

 車体がルクレールと接触するかしないか、と言うそのまさに一瞬の合間にー。

 ルクレールの身体はフワリと宙を舞うとそのまま彼女は手にしていた2本のレイピアを上からベンツの動力部分や座席等がある箇所へと猛烈な勢いで以て連続して突き立てたのだ、するとー。

 何と特殊鋼で出来ている筈のベンツの車体が加熱されたバターか何かのように軽々と劈かれて行き、瞬く間にエンジンとアンリ達の乗っているシートの屋根とが破壊され、穴だらけになってしまった、半壊したベンツはそのまま完全にコントロールを失って壁に激突、大破してしまったのである。

 それだけではない、直撃こそは免れたモノのドライバーや助手席に座っていた男性隊員達がレイピアの刺突により負傷、またアンリ達は辛うじて無傷ではあったモノの衝突の際の衝撃により全身を激しく殴打していた。

「ぐわ・・・っ!!!」

「うお・・・っ!!?」

「痛てて・・・っ!!!」

 そう呻きながらも何とか5人はベンツから這い出して来たモノの、そこには。

 “ルクレール”を始めとした4人の親衛隊の姿があって、しかも向こうは無傷で万全な戦闘態勢を整えていたのだ。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「やってくれやがるぜ・・・っ!!!」

 ヨロヨロと立ち上がるとアンリは身に付けていた超小型高性能無線機を用いて事情を説明した上ですぐさま本部に応援を要請した、“超新星が現れた”、“直ちに来援を請う”と、それをー。

 ルクレール達は身動(みじろ)ぎもせず、また特に邪魔立てする事も無く見守り続けていた、これで自分達の存在はハッキリとバレた訳だがどっちみち事前に情報が漏れていたのであれば正直それほど関係は無かった、それに。

 今頃セイレーンの本部には激震が走っている事だろう、何しろ“超新星”が身近に潜んでいた事に加えてその1人1人の前では彼等の持っている特殊車両が何の役にも立たない事が証明されてしまったのだから。

 つまりはそれだけの実力を持った敵性戦力が多数で首都直下に彷徨(うろつ)いている、と言う事になるのであり、もしもそう言う事態になればますます、あの神経過敏なミラベル上層部が黙ってはいないだろうと、そこまで判断した上でルクレールは行動に及んでいたのである。

「・・・貴様が“黄昏のルクレール”か?蒼太の命を狙っているそうだな。もっともそう易々とは奴を引き渡す気は無いがな!!!」

「・・・・・」

「蒼太が命懸けで持ち帰ってくれた情報から、お前達の戦法は読めている。それに幾ら負傷したからといって此方は大の男が5人だ、お前達に勝ち目は無いぜ?」

「・・・意外と状況が見えていないのね?アンリ・ノルマンディー次期公爵閣下は」

「・・・・・」

「此方を恫喝したいようだけれども、この状況でそんな脅しが通用するとでも思う?」

「・・・脅しかどうかは試してみればすぐに解るぜ?ルクレール」

「・・・確かにそうね、お互いに時間も無い事だし!!!」

「・・・・・っ!!!」

(早い・・・っ!!!)

 そう叫んだかと思うと、ルクレールは瞬時に距離を詰めて前方から突っ込んで来た、細身の身体から繰り出される2本のレイピアの刺突は体重が乗っている事に加えてその突撃衝力の影響だろう、異様な程に鋭かった。

 しかし。

「ちいいぃぃぃ・・・っ!!!」

「・・・・・」

 ギイイィィィンッ!!!と言う金属音が響くと同時にアンリが手にしたレイピアとルクレールのそれとが切り結ぶ。

 彼は落ち着いてルクレールの動きに対処していた、その切っ先に切っ先を宛がう事で鍔迫り合いへと持って行き、それどころか逆に反撃に転じて行ったのだ。

「・・・・・っ!!?」

(かなり鋭いな。それに重い・・・っ!!!)

 今度はルクレールが驚愕する番だった、正直に言って彼女はアンリがここまで強い等とは思ってもみなかったのだ。

 流石は蒼太の友人だけの事はあると思ったがしかし、打ち勝てない相手では決して無いと、その自信は些かも揺らいではいなかった、そんな彼女はだから、自身も至って冷静にもう1本のレイピアをつがって更なる刺突を2度3度と繰り出していった。

「てやああぁぁぁっ!!!」

「くううぅぅぅっ!!?」

 2人の気合いと金属音とが周囲に何度も何度も響き渡る。

 奇しくも得物は同じであり、相手の戦術や動き、手の内等もそれ故に、互いにある程度は予測の付く範囲のモノとなっていた、筈だったが。

「・・・・・っ!!?」

 だがやはり2本のレイピアを自在に操るルクレールの卓越した技量の前に、アンリは次第に追い詰められて行き、防戦一方となっていった、それを見てルクレールが追撃態勢に入るモノのしかし、次の瞬間そんな彼女が咄嗟に身を捩りつつも剣を引き、その場から跳躍して後方へと一気に退ると直後にそれまで自身がいた周辺の空間が圧縮して大爆発が巻き起こり、膨大なまでの熱と衝撃波がその影響下にいた何もかもをも薙ぎ払っていった。

「・・・・・」

「・・・・・っ!!!」

(爆裂魔法が使えるのか?それを剣に伝わらせて纏わせ、相手に距離を詰めさせて発動。周囲の空間ごと敵性勢力を吹き飛ばす、と言う訳か。これが・・・!!!)

 “アンリの戦い方・・・!!!”とその一瞬でルクレールは見抜いてみせた、しかしこうなると迂闊に剣を交わらせる事は出来ないし、況んや鍔迫り合いや近接戦闘等以ての外だ、確実に相手の思う壺と化してしまうだろう。

「・・・どうした?“黄昏のルクレール”ともあろう者が、これ位の子供騙しに恐れを為したか!!!」

「・・・・・」

(言ってくれるわね・・・!!!)

 もうもうと立ち込める爆煙の向こう側からアンリがそう声を掛けるがこれには流石のルクレールもカチンと来てしまった、元来がメリアリアと同じくらいにお転婆で負けず嫌いだった彼女は挑戦とあらば受けて立たずにはいられない性分である、自身の超新星としての能力を存分に発動させて相手をしてやろうと心に決めた、その時だった。

「・・・・・っ!!?」

(く・・・っ!!!)

 まだ爆煙が治まりきっていない状況下にも関わらずに今度はアンリ自身が突っ込んで来た、それを躱すには通常ならば此方も突っ込み返すしか無いが、向こうにはあの爆裂戦術がある、無闇矢鱈(むやみやたら)と応じる訳には行かない。

(・・・とにかく。まずは距離を取らないと!!!)

 ルクレールは咄嗟に親衛隊の面々に下がるよう手で合図をすると次の瞬間、自身も大きく後退して体勢を立て直そうと試みる。

 そうしておいて“超新星”としての能力を存分に発揮させ、ヒット&アウェイを連発させてジワジワと相手の体力や精神力等を削り取って行く心積もりであった、のであったが。

「・・・・・っ!!!」

(バカな、これは・・・っ!!?)

 それこそがアンリの思う壺だった、ルクレールが迂闊だったのは彼が直に触れているモノにしか魔法力を伝達出来ないと思い込んでしまった点にあった、それはある意味で正しくて、しかし尚も至らなかった。

(空間伝達っ!!?直接触れていなくとも法力を空間中に撃ち放つ事でそこに爆裂魔法を生成して・・・っ!!!)

「空間には様々な粒子が存在している。それらに法力を流し込んで伝わらせる事で離れた場所に対する攻撃も可能とするんだぜ?ルクレール・・・」

 “覚えておきな”とアンリが言い放った直後にー。

 再びとなる大爆発が発生して周囲の空間を熱波と衝撃波とが舐め尽くしていった。
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