悪役令嬢として役を頂いたからには、最後まで演じきりたいです!

椎名さえら

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オリヴィア・エヴァンス嬢の場合

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思いっきり、素で声が出た。

「ど、どうかなさってます、サットン様…私のことを美しいという人がいるわけありません」

「ここにいる」

そうだけどー!
そうなんだけどーーーー!
こいつなんなんーーーーー!!

「どうして他の者が君の美しさに気づかないのかがわからない…。君は宝石の原石のようだ。この瑞々しい肌に、綺麗で知的なダークグレーの瞳、すっと通った鼻筋に、キスしたくなるような唇ーー」

(ぎゃーーーーー!!!!)

「今でも十分に美しいが、磨けば絶対に王国1の美女になれることを俺は確信している。でも美しくなりすぎて他の者たちに気づかれるのも癪だな…俺だけが知っていればいいか」

(いやいやいやいや!!!)















「それに君は、外見だけではない。中身が非常にユニークで面白い」

あ、中身のことも一応褒めてくれるんすね、ていうか中身こそ普通ですよ!?

レオナルドの後ろに控えていた、我が家のメイドが吃驚仰天と、目を白黒させていた。だよね?貴族令嬢人気ナンバー1といっても過言ではないこの男が壁ドンして、《ほどほどofほどほど》の私に外見が美しいだの、中身も面白いだの囁いてるんだもんー。あれじゃないの、他の貴族子息たちと賭けでもしてるんじゃないっすかね。ヒロインに心奪われている貴族が、彼女にちょいちょい意地悪してる鬱陶しいあのほどほど令嬢を落とせたら、馬を買ってやるとか言われてるんじゃないの。殿上の人々の遊びでありそうでしょ?

「サットン様…あの…私、帰りますのでその腕を退けてください」

彼はそう言われても真剣な顔のまま動かなかった。

「どうして君は俺の言葉を信じてくれないんだ?」

「逆にどうやって信じろと?」

この王国の貴族令嬢なら、王女以外なら誰でも望めば手に入ると言われている彼が、なぜ《悪役令嬢その2》の配役をあてがわれるようなほどほど令嬢の私に?

「それもそうだな、夜会ですれ違う程度だと、圧倒的に話す時間が足りない。今度君の家に遣いを出してから正式に訪ねて行く。そうだな、3日後はどうかな?」

たしかに先触れを出して…と思うと3日後は妥当であろうが…

(3日後は絶対にだめ。女優になる日だもん)

そして物語においてそのシーンはかなり大切なのである。というのも、《悪役令嬢その2》もヒロインの味方になるという大事な、大事なシーンなのよぉーーー!!!!

「いや、3日後はちょっと用事がありまして駄目ですし、あの、大丈夫です、正式に訪ねて来なくて」

彼はぽかんとした。美貌の子息は呆気に取られた顔をしてもイケメンのままでずるい。

「正式に訪ねていかないと、後々求婚できないではないか」

「はっ!?いや、そういう意味じゃなくて、正式じゃなくても正式でも、訪ねて来なくて大丈夫ってことです!」

ーーーーていうか、求婚!?

あまりのパワーワードに私が頭の中をフリーズさせていると、彼がにやりと笑った。

「オリヴィア・エヴァンス。俺は君を訪ねていくからな、居留守使うなよ」

「はぁっ!?」

(マジでなんなのぉーーーー)

彼はやっと満足したのかそっと腕をどけてくれたので、私は戸惑っているメイドと共に王宮を足早に去ったのだった。




2日後。

父であるエヴァンス侯爵が朝食のテーブルにて、満面の笑みで今日は午後にサットン侯爵子息が訪れるから家にいるようにと私に告げてきた。

(はやっ!!!)

「オリヴィア、お前、あのサットン侯爵子息と知り合いだったとはな!どこで知り合ったんだ?この前の王宮のパーティでか?」

おっとりした母もニコニコと微笑ましそうに私を眺めていた。

「今日は可愛いドレスを着なくてはなりませんね」

(うわぁーーー信じられないほどの歓迎ムード…)

それはそうだ、サットン侯爵家といえば王家の覚えもめでたいという優秀な一族で、その上レオナルドは見目もあれだけ麗しく、年頃の貴族令嬢たちが全員嫁になりたいと熱望しているといってもあながち嘘ではない。

「レオナルド様は次男でいらっしゃったかな?今年…確か26歳だっただろうか。22歳のオリヴィアとは年齢もぴったりだな」

「おおおおお父様、きっとサットン様はそんなことは微塵もお考えになっていないに違いありませんわ」

「そうか?メイドの話だと、レオナルド様はかなり乗り気のようだったが…」

ああああの目を白黒させていたメイドが情報源かーー!!
メイドを買収するの忘れてたーーー!!!

「まぁまぁ貴方、きっと恥ずかしいのですわ、オリヴィアは。こうやって横から私たちが余計な口を出すと、まとまるものもまとまらないんじゃないかしら」

母がおっとりと口を挟む。

「まぁそれもそうか。若い者は若い者同士ってね!」

両親はいい人たちなんだが…なんでこう…お見合いの仲介人みたいなことを言ってるんだい…。私はとりあえず口をつぐむと、朝食を取るのに戻ったのだが、味がまったくわからなかったのは仕方ないことだろう…。




母はああいっていたが、彼女は私の部屋に凄腕のメイドたちを送り込み、いつにないくらいのドレス、化粧、ヘアメイクを施された。

(お母様のが本気じゃん…)

出来上がりは確かに、いつもより相当綺麗な私になっていた。しかしその裏に母の本気度が透けてみて、私はぶるりと震えたのである。
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