2 / 7
元義父の必死の抵抗
しおりを挟む
婚約破棄を告げられた私は自室へと小走りで戻る。
あの男の気が変わらないうちに早くこの屋敷から逃れるためにだ。
部屋に戻り一人の空間になると気づけば鼻歌を歌い出していた。
まるで幼な子が、初めてのピクニックに行くような気分で、帰るための荷物を整えていく。
この屋敷にくる時から全く増えることのなかった私の荷物はあっという間に整理ができる。
いつかこんな日が来ればいいなぁと夢想しながら日々の凶悪な執務と向き合っていた。
それがついに報われる時がきたということだろう!
たった一人で、ダンスを踊るように軽やかなステップで私に与えられた部屋から私のものを取り除く。
そうしてあっという間に帰り支度が済み、ウキウキしている私のところに控えめなノックの音が届く。
このタイミングで私のところを訪ねてくる相手など想像はつく。
「はい、どうぞ」
そうして私の元にやってきた相手は、元婚約者の父親であるエリック・ブライスであった。
「…トーマスから何か言いつけられたか?」
エリックが慎重に言葉を選びながら私に聞いてくる。
「はい…残念ながら私のような田舎の出の者では、この広大な領地の経営など荷が重いと言われたところです。そして婚約も破棄するとおっしゃられました」
そうして表面上は心底残念そうに振る舞う。
ここで妙な因縁をつけられて私の実家に迷惑がかかってもしょうがないしね。
「そのことなんだが、それはあのバカ息子が勝手に言ったことであって私の本意などではない」
「いえ、この領地をここまで大きくされたお爺さまのお墨付きをいただいたとおっしゃられていました。そして即刻実家に帰るように申しつけられたので、こうして準備をしているところなのです…」
正直に言って、こんなくだらない話など早く終わりにして、残り少ない荷物をカバンに詰める作業に戻りたいのだが?
そうしてこの辛気臭い屋敷から早く自由になりたい。
そんな私の心境を把握しているかのようにエリックが私に詰め寄る。
「分かりきった演技などもういい!お前は高い金と引き換えに、我が領地を再建するためにつれてきたのだ。息子のわがままなどでそれを反故にされてたまるか!」
これは不味いかもしれない、せっかく自由になれるチャンスがやってきたと思ったのにまさかここまで抵抗されるとは…
どうやってこの窮地を乗り切ってやろうかと考えていると、私にとっての救世主がドアを勝手に開けて入ってきた。
「ふんっ!まだいたのか田舎の娘よ!」
そう言って私のことを嘲ってきたのがトーマスの祖父であるハロルド・ブライスであった。
あの男の気が変わらないうちに早くこの屋敷から逃れるためにだ。
部屋に戻り一人の空間になると気づけば鼻歌を歌い出していた。
まるで幼な子が、初めてのピクニックに行くような気分で、帰るための荷物を整えていく。
この屋敷にくる時から全く増えることのなかった私の荷物はあっという間に整理ができる。
いつかこんな日が来ればいいなぁと夢想しながら日々の凶悪な執務と向き合っていた。
それがついに報われる時がきたということだろう!
たった一人で、ダンスを踊るように軽やかなステップで私に与えられた部屋から私のものを取り除く。
そうしてあっという間に帰り支度が済み、ウキウキしている私のところに控えめなノックの音が届く。
このタイミングで私のところを訪ねてくる相手など想像はつく。
「はい、どうぞ」
そうして私の元にやってきた相手は、元婚約者の父親であるエリック・ブライスであった。
「…トーマスから何か言いつけられたか?」
エリックが慎重に言葉を選びながら私に聞いてくる。
「はい…残念ながら私のような田舎の出の者では、この広大な領地の経営など荷が重いと言われたところです。そして婚約も破棄するとおっしゃられました」
そうして表面上は心底残念そうに振る舞う。
ここで妙な因縁をつけられて私の実家に迷惑がかかってもしょうがないしね。
「そのことなんだが、それはあのバカ息子が勝手に言ったことであって私の本意などではない」
「いえ、この領地をここまで大きくされたお爺さまのお墨付きをいただいたとおっしゃられていました。そして即刻実家に帰るように申しつけられたので、こうして準備をしているところなのです…」
正直に言って、こんなくだらない話など早く終わりにして、残り少ない荷物をカバンに詰める作業に戻りたいのだが?
そうしてこの辛気臭い屋敷から早く自由になりたい。
そんな私の心境を把握しているかのようにエリックが私に詰め寄る。
「分かりきった演技などもういい!お前は高い金と引き換えに、我が領地を再建するためにつれてきたのだ。息子のわがままなどでそれを反故にされてたまるか!」
これは不味いかもしれない、せっかく自由になれるチャンスがやってきたと思ったのにまさかここまで抵抗されるとは…
どうやってこの窮地を乗り切ってやろうかと考えていると、私にとっての救世主がドアを勝手に開けて入ってきた。
「ふんっ!まだいたのか田舎の娘よ!」
そう言って私のことを嘲ってきたのがトーマスの祖父であるハロルド・ブライスであった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる