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嵐のジジイ登場
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これまで私が、能力の足りないトーマスの代わりに領地を運営していると、度々邪魔をしてきた老害。
それがハロルド・ブライスであった。
私の領地運営には品位が足りないだの、そのような事は民をつけ上がらせるだけだなの。
前時代の考えのお手本とでも言いたくなるような指導という名の妨害を気の向くままに行われてきた。
だが、こんな邪魔者であったはずのハロルドをこれほどまで歓迎したことは一度としてないだろう。
今ならばお爺さまと言って満面の笑みで抱きしめてあげても良い。
まぁもちろんやらないけどね。
ドンっ!ドンっ!ドンっ!
ハロルドが不自由になってしまった足を忌々しく思うかのように、杖を叩きつけるかのようにしながら私の方へと近づいてくる。
そうして先ほど言った言葉は嘘ではないと言わんばかりの大音量で私に怒鳴りつけてくる。
「聞こえているのか!まだいたのかと私が言ったのだ、返事をしたらどうだ小娘よ!」
そうして実家を出るときに使った愛用のカバンを、杖で叩きつけて喚いてくる。
「申し訳ありませんハロルド様。ただいま急いで実家に帰るための準備を進めているところでした」
「ふんっ!全くなんともノロマな奴め。お前には領地運営など荷が重いなど分かりきっていた事であろう。いつでも実家に帰れるように準備をしておけ!」
そう言って再び私のカバンを杖で叩きつける。
今だけの辛抱である。
そう思って痛めつけられるカバンを横目で見る。
それに、これほどまでに私のことを罵れば罵るほど、実家へ尻尾を巻いて帰ることに違和感がなくなるのでこれを利用しない手はない。
「全くもってその通りでした。今になって見ると、トーマス様の様な由緒あるお方にこそ、このような重大な執務は相応しかったと思われます。図に乗って私のようなものがこの広大な領地の運営を行うなど誠に申し訳ありませんでした」
そう言って満面の笑顔を隠すために頭を深く下げ、見かけ上は誠心誠意謝っておく。
これまでは話せば話すほど、私の気持ちを忸怩だる思いに陥らせていたハロルドであった。
だが今は、この老人を調子に乗せれば乗せるほど私の自由は安泰になるのだから、何を言われても気分は高揚してくるばかりである。
自分が正しいと肯定されて気分を良くしたハロルドは、先ほどまでの怒りの表情は収まり、しかし侮蔑の思いはそのままに私に告げる。
「ようやく自分の力量を理解できた様だな。まぁ今更気づいても遅いがな、ここまで我が領地を荒らした報いだと思っておけ」
そうして孫の力量がわかっていない老人の戯言を黙って頷いておくと、ここまで静観を続けていたエリックが恐々とした顔で止めに入る。
「お父様…そのお話なのですが、今一度お考え直すということはできないでしょうか?」
それがハロルド・ブライスであった。
私の領地運営には品位が足りないだの、そのような事は民をつけ上がらせるだけだなの。
前時代の考えのお手本とでも言いたくなるような指導という名の妨害を気の向くままに行われてきた。
だが、こんな邪魔者であったはずのハロルドをこれほどまで歓迎したことは一度としてないだろう。
今ならばお爺さまと言って満面の笑みで抱きしめてあげても良い。
まぁもちろんやらないけどね。
ドンっ!ドンっ!ドンっ!
ハロルドが不自由になってしまった足を忌々しく思うかのように、杖を叩きつけるかのようにしながら私の方へと近づいてくる。
そうして先ほど言った言葉は嘘ではないと言わんばかりの大音量で私に怒鳴りつけてくる。
「聞こえているのか!まだいたのかと私が言ったのだ、返事をしたらどうだ小娘よ!」
そうして実家を出るときに使った愛用のカバンを、杖で叩きつけて喚いてくる。
「申し訳ありませんハロルド様。ただいま急いで実家に帰るための準備を進めているところでした」
「ふんっ!全くなんともノロマな奴め。お前には領地運営など荷が重いなど分かりきっていた事であろう。いつでも実家に帰れるように準備をしておけ!」
そう言って再び私のカバンを杖で叩きつける。
今だけの辛抱である。
そう思って痛めつけられるカバンを横目で見る。
それに、これほどまでに私のことを罵れば罵るほど、実家へ尻尾を巻いて帰ることに違和感がなくなるのでこれを利用しない手はない。
「全くもってその通りでした。今になって見ると、トーマス様の様な由緒あるお方にこそ、このような重大な執務は相応しかったと思われます。図に乗って私のようなものがこの広大な領地の運営を行うなど誠に申し訳ありませんでした」
そう言って満面の笑顔を隠すために頭を深く下げ、見かけ上は誠心誠意謝っておく。
これまでは話せば話すほど、私の気持ちを忸怩だる思いに陥らせていたハロルドであった。
だが今は、この老人を調子に乗せれば乗せるほど私の自由は安泰になるのだから、何を言われても気分は高揚してくるばかりである。
自分が正しいと肯定されて気分を良くしたハロルドは、先ほどまでの怒りの表情は収まり、しかし侮蔑の思いはそのままに私に告げる。
「ようやく自分の力量を理解できた様だな。まぁ今更気づいても遅いがな、ここまで我が領地を荒らした報いだと思っておけ」
そうして孫の力量がわかっていない老人の戯言を黙って頷いておくと、ここまで静観を続けていたエリックが恐々とした顔で止めに入る。
「お父様…そのお話なのですが、今一度お考え直すということはできないでしょうか?」
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