無能な婚約者の代わりに領地を運営する私に婚約破棄を言い渡すなんて〜実家で悠々自適の生活を送らさせて頂きます

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嵐のジジイ暴走する

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そう言った瞬間のハロルドの顔は私を怒鳴りつけてきた見慣れた表情に変わった。

それには気づかないままエリックは話を続ける。

「このヘレナは領地運営に対する才覚だけは本物なのです!言いたくはありませんが我が息子のトーマスよりも断然優れております。今後の領地のためを思えばここはグッと堪えて」

エリックが言い終わることすら待てなかったハロルドは、杖を振り上げてエリックの右肩へとそれを大きく振り下ろした。

「黙れ!!よくもそんな妄言を恥もなくいうことができたな!この領地を運営してきたものとは思えない言葉だ、恥を知れ!」

そう言って杖を何度もエリックへと叩きつけるハロルドを私は無感動に眺めていた。

自分の性格は聖女のそれではないので、私のことをずっと虐げ続けてきたハロルドにもエリックにも良い感情をもっていないのは当然である。

婚約者としての扱いとは到底思えないことをしてきたエリックに対する恨みが、一振りごとに消えていくかのようだ。

しかし、こんな乱暴を受けているのにエリックは尚も私のことを引き止めようと言葉を続ける。

「恥を承知で再度言わせていただきます。ヘレナの才覚は本物なのです、悔しながら私よりも、もしくはお父様よりも」

あ~あ、なんでそんなことを言っちゃうんだろう。

完璧にハロルドを逆撫でする様なセリフを言ってしまったエリックに、思わず笑い声が出るのを止めるのに大変だった。

案の上、こめかみの血管が切れてしまうのではというほどの顔をしたハロルド。

「よくもっ!よくもその様なことを言えたな!」

そうして火山が噴火したのを感じた。

この様な対応を見ても、この二人の領主としての器の小ささを感じるんだよね。

なんでこんな大事な話を冷静な頭で考えることができないんだろう。

「まさかお前がそこまでの愚鈍な奴だとは思わなかった。本当にわしの息子であるのか疑ってしまうわ!」

そうして怒鳴ったハロルドは呼吸を整えたのち、

「これまではお前にはお前の、領主としての考えがあると思って放っておいた。領主として成長するためには自分の考えで物事を進めることが大事だと私にはわかっていたからだ」

ハロルドが意外と立派なことを言い始めてビックリしてしまう。

まぁ私にはその考えを適用してくれなかった様だけどね。

「しかしだ!自分の能力の低さを棚に上げて、この様な田舎者に我が領地を任せるという暴挙まで許した覚えはない!」

あっ安定のハロルド様で逆に安心しました。

そうだよね、ハロルド様と言ったらこうでなきゃ。

今となっては無邪気に喜び出す私。

「私の様な偉大な元領主が、運営に口を出せば萎縮してしまうと思っていた。だがこれからは、先代のわしが教育をしてやりながら、トーマスを私を超えるような領主へとしてやろう」

「しかしながらお父様!ヘレナを婚約者として我が領地に連れてくるためには、多額の金もすでに支払っているのです。これではただ金をこの物の領地に寄付した様なものではありませんか」

確かにお金のことを後から言われるのは辛いなぁ。

あの時のお金はすでに領地の運営のために使っちゃったしなぁ。

どうしたものかと考えていると、我らがハロルド様が気持ちの良い一言を言ってくれる。

「その様な端金くれてやれ!そもそも金で婚約者を連れて来ようということがそもそも間違っておったのだ!」

ハロルドの言葉に項垂れるエリック。

どんまい!でも次があればお金以外の方法でつれてくるといいよ?まぁ次なんて無理だろうけどね。

内心は歓喜しながら、無表情のまま話を聞いていた私に顔に向かって、ハロルドが杖を向けてくる。

「最後の忠告だ、もう金輪際わしの領地に関わるな」

そうして私が待ち望んでいた言葉をハロルドお爺ちゃまが告げてくれる。

私は無念そうな表情を精一杯作り上げて項垂れる。

そうして最後に嘲笑った顔で私に告げてくる。

「これ以上お前のような田舎者と話していると品位が下がる。田舎者に相応しい見窄らしい馬車を用意しておいてやるからさっさと消え失せるがいい」

そう言って台風の様に私の部屋へと入ってきたハロルドは、言いたいことを言い終わると部屋から出て行った。

それを呆然としたままエリックは眺め、フラフラと怪しい足取りで私の部屋から出ていった。

そうして私は、正真正銘の自由を手に入れた。
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