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アイリをダシにする
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「ところでアミー、どうやってあなたのいう能力主義の学園に作り替えるのですか?いくらあなたが言ったところで周りの人は聞いてくれないと思いますけど?」
それはその通りだ。
「私の両親がこの国1番の領地だとしても、たかが娘一人が喚いたところでなにも変わらないでしょうね」
これまでだって私のような存在はいたはずだ、だけど少数派の意見なんて無視されるのがいいところだろう。
「それじゃあ逆にアイリに聞くね。どうしたら身分の高い人たちは話を聞いてくれると思う?」
礼儀作法は不得意なアイリだけど、思考力が優れているアイリなら私が求めている答えに近いものを言ってくれるはずだ。
「…より身分の高い人が、大勢で主張すればいいのでしょうか?」
「うん、私も大体その考えだよ。さすがアイリだね。アイリならわかると思ってたよ!」
そう言って、アイリの頭を撫でながら褒めまくる。
まぁ、今の所の問題は、身分の高い人が私ぐらいしかいないことだけどね。
「もうアミー、こんな事でそんなに褒めなくても大丈夫ですって」
照れ臭そうにしながらも、決して私の手を払い除けないアイリ。
「でもねアイリ、間違っちゃだめだよ。こんな考えが思いつく人はなかなかいないんだよ」
「そうでしょうか?考えれば思いつきそうなものだと思うんですけど?」
「普通の人はね、自分の境遇を受け入れてしまうものなんだよ。だからそれを打破するような方法さえ思いつかないし、思いついても怖くて言えないよ」
この学園には身分主義がこびりついている。
だからそれから外れるような考えは排斥されるし、そのせいでこんな事を考える人もいないだろう。
「だからアイリ。あなたは私にとって特別な人なの」
アイリの柔軟の思考は、私が行き詰まった時に助けになる。
期待を込めてアイリを見つめる。
「私がアミーの特別な人…」
そう呟くアイリは自分が言った言葉を噛み締めるようにして、
「嬉しいです」
ふんわりと笑ってくれた。
「そう言ってくれて、私も嬉しいわ」
そうして二人で見つめあって笑顔を交わす。
このまま、こんな時間を過ごしたいけど、
「もっと詳しい話をしたいけど、そろそろ次の講義の時間ね。この話はとりあえず二人だけの秘密ね?」
「はい、わかりました」
そう言って二人で立ち上がり、教室まで歩いていく。
私との秘密を共有したからか、呼び方が変わったからか。
これまでよりも、少しだけアイリとの距離が近くなった気がする。
「アイリ?」
「何でしょうか、アミー?」
私のことをただの友人のように、身分に関係ないように呼んでくれるアイリ。
「ううん、なんでもないよ♪」
そうしてステップしたくなるような気持ちで返事を返す。
ところで、この学園では講義を受けるときの席は自由である。
より能力を高めることを目的としてた学園だから、やる気のあるものは自ら最前列で講義を受けろとでもいう理由があったのだろう。
まぁ今の学園では、身分の高いものほど前の席に座り、身分の低い人は後ろでかたまっていた。
ちなみに、入学してからずっと、何故か私の周りの席には誰も座ろうとしなかった。
…解せぬ!
そんな教室で、異変が起こっていた。まぁ周りの人にとってはだけど。
「ねぇアミー。すごい居づらいんですが」
講義中だから小声で私に囁いてくるアイリ。
「そうかしら?いつも通りだと思うけど」
素知らぬ顔で返事をする私。
「それはアミーにとってはでしょう!?」
小声で怒っているアイリ。怒っているアイリも可愛いかも。
なんでアイリが怒っているのかはもちろんわかっている。
原因はもちろん私である。
先ほどいつものように後ろの席に向かおうとしたアイリに、
「アイリ。今日は私の隣の席で勉学に励みましょう」
「えっ本気ですか?私なんかがアミーの隣に座ったら色んな人から非難されそうなんですが」
「いいからいいから。そんなの私が全部黙らせてやるから」
そう言って半ば無理やりにアイリを私の隣に座らせたのだ。
入学してからずっと、私のことを知っている人たちが経緯は払ってくれるけど決して私には近づいてこなかった。
だから講義は全部一人で受けてきた。
でもこれからは違うもんね、アイリと仲良く受けるんだもんね。
「そこまでしても一人で講義を受けるのが嫌だったんですね…」
アイリが優しい眼差しをしてくる。
気のせいだろうか、実家のお母さんみたいな雰囲気を感じる。
勘違いされている気しかしないので、訂正しておかないと。
「一人が嫌なわけじゃないの。アイリと一緒に受けたいの」
「はい、わかっていますよ」
尚も私に向ける眼差しは変わらない。
まぁ、結果が同じならいいか。
そうして一度は承諾したはずのアイリだが、何故か今は文句がありそうな顔でこちらを見てくる。
「3人掛けのテーブルなんだから左右に分かれたらいいじゃないですか!?」
「どうして。嫌なのかしら?」
そう言いあっている私たちは肩がピッタリとくっつくぐらいに近づいている。
折角アイリが隣に来てくれているんだから、こうして仲良くしたい。
それに、この方が後々都合がいいのだ。
「嫌ではないですけど…」
「それじゃあ講義に集中しましょう?」
そう言って、この話はこれまでと打ち切った。
それはその通りだ。
「私の両親がこの国1番の領地だとしても、たかが娘一人が喚いたところでなにも変わらないでしょうね」
これまでだって私のような存在はいたはずだ、だけど少数派の意見なんて無視されるのがいいところだろう。
「それじゃあ逆にアイリに聞くね。どうしたら身分の高い人たちは話を聞いてくれると思う?」
礼儀作法は不得意なアイリだけど、思考力が優れているアイリなら私が求めている答えに近いものを言ってくれるはずだ。
「…より身分の高い人が、大勢で主張すればいいのでしょうか?」
「うん、私も大体その考えだよ。さすがアイリだね。アイリならわかると思ってたよ!」
そう言って、アイリの頭を撫でながら褒めまくる。
まぁ、今の所の問題は、身分の高い人が私ぐらいしかいないことだけどね。
「もうアミー、こんな事でそんなに褒めなくても大丈夫ですって」
照れ臭そうにしながらも、決して私の手を払い除けないアイリ。
「でもねアイリ、間違っちゃだめだよ。こんな考えが思いつく人はなかなかいないんだよ」
「そうでしょうか?考えれば思いつきそうなものだと思うんですけど?」
「普通の人はね、自分の境遇を受け入れてしまうものなんだよ。だからそれを打破するような方法さえ思いつかないし、思いついても怖くて言えないよ」
この学園には身分主義がこびりついている。
だからそれから外れるような考えは排斥されるし、そのせいでこんな事を考える人もいないだろう。
「だからアイリ。あなたは私にとって特別な人なの」
アイリの柔軟の思考は、私が行き詰まった時に助けになる。
期待を込めてアイリを見つめる。
「私がアミーの特別な人…」
そう呟くアイリは自分が言った言葉を噛み締めるようにして、
「嬉しいです」
ふんわりと笑ってくれた。
「そう言ってくれて、私も嬉しいわ」
そうして二人で見つめあって笑顔を交わす。
このまま、こんな時間を過ごしたいけど、
「もっと詳しい話をしたいけど、そろそろ次の講義の時間ね。この話はとりあえず二人だけの秘密ね?」
「はい、わかりました」
そう言って二人で立ち上がり、教室まで歩いていく。
私との秘密を共有したからか、呼び方が変わったからか。
これまでよりも、少しだけアイリとの距離が近くなった気がする。
「アイリ?」
「何でしょうか、アミー?」
私のことをただの友人のように、身分に関係ないように呼んでくれるアイリ。
「ううん、なんでもないよ♪」
そうしてステップしたくなるような気持ちで返事を返す。
ところで、この学園では講義を受けるときの席は自由である。
より能力を高めることを目的としてた学園だから、やる気のあるものは自ら最前列で講義を受けろとでもいう理由があったのだろう。
まぁ今の学園では、身分の高いものほど前の席に座り、身分の低い人は後ろでかたまっていた。
ちなみに、入学してからずっと、何故か私の周りの席には誰も座ろうとしなかった。
…解せぬ!
そんな教室で、異変が起こっていた。まぁ周りの人にとってはだけど。
「ねぇアミー。すごい居づらいんですが」
講義中だから小声で私に囁いてくるアイリ。
「そうかしら?いつも通りだと思うけど」
素知らぬ顔で返事をする私。
「それはアミーにとってはでしょう!?」
小声で怒っているアイリ。怒っているアイリも可愛いかも。
なんでアイリが怒っているのかはもちろんわかっている。
原因はもちろん私である。
先ほどいつものように後ろの席に向かおうとしたアイリに、
「アイリ。今日は私の隣の席で勉学に励みましょう」
「えっ本気ですか?私なんかがアミーの隣に座ったら色んな人から非難されそうなんですが」
「いいからいいから。そんなの私が全部黙らせてやるから」
そう言って半ば無理やりにアイリを私の隣に座らせたのだ。
入学してからずっと、私のことを知っている人たちが経緯は払ってくれるけど決して私には近づいてこなかった。
だから講義は全部一人で受けてきた。
でもこれからは違うもんね、アイリと仲良く受けるんだもんね。
「そこまでしても一人で講義を受けるのが嫌だったんですね…」
アイリが優しい眼差しをしてくる。
気のせいだろうか、実家のお母さんみたいな雰囲気を感じる。
勘違いされている気しかしないので、訂正しておかないと。
「一人が嫌なわけじゃないの。アイリと一緒に受けたいの」
「はい、わかっていますよ」
尚も私に向ける眼差しは変わらない。
まぁ、結果が同じならいいか。
そうして一度は承諾したはずのアイリだが、何故か今は文句がありそうな顔でこちらを見てくる。
「3人掛けのテーブルなんだから左右に分かれたらいいじゃないですか!?」
「どうして。嫌なのかしら?」
そう言いあっている私たちは肩がピッタリとくっつくぐらいに近づいている。
折角アイリが隣に来てくれているんだから、こうして仲良くしたい。
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