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夜会にて
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ただでさえ着慣れないドレスで動作がぎこちないというのに、ダンス?
「む、無理ですっ!それは無理っ」
「何だ、苦手なのか」
「に、苦手って言いますか、したこともありませんしっ」
「問題ない――――わたしに合わせればいいだけだ。簡単だろう?」
「ええ!?」
すでにホールにはダンスを楽しむ男女の姿がある。
優雅に踊るその足元は軽やかなステップを刻んでいるが、飛び入り参加でこなせるようなものではないだろう。
「わ、わたしは遠慮しますっ。ダンスがしたいのなら、誰か他の人をっ」
「わたしの相手はおまえだ。――――約束を、忘れていないだろう?」
もう一つの依頼内容を口にされ、言に詰まる。
(絶対無理だってわかってるのに)
及び腰のサーシャの手を掴み、マハは堂々とダンスの輪の中へと加わる。
本当の相手である令嬢なら、ダンスに臆することなどないだろう。
そう考えれば、強引だと指摘することはできない。
公衆の面前で、大恥を掻く――――そう、思っていたのだが・・・・。
「そのように足元ばかりを気にして俯かず、顔を上げよ。背筋を伸ばし、わたしを見るのだ」
「そ、そんな事言われても・・・・」
奏でられる音楽に苦も無く乗れる彼と違い、こちらは足を踏まないようにするので必死なのだ。
「猫背の女を連れているとわたしが笑われる。いいから、言う通りにせよ」
「!」
(そ、そこまで言われるのなら、どうなっても知りませんからね!)
半ば自棄を起こし、言われた通り背筋を伸ばし真っすぐに仮面の奥に見える瞳を射る。
「そうだ。それでいい」
ふっと微笑を浮かべたマハの足を早速踏みそうになり、実際にそうなることを疑わなかったサーシャは、リズムを崩すことなく避けられた足に、目を瞬いた。
ホールには他に何組もの男女がいるというのにターンをしても接触することはない。
全くの初心者であるサーシャが彼といると、まるで、ダンスに親しんでいるかのように、軽やかに身体が動き、難解に思えたステップも踏めている。
(う・・・・そ。あたし、踊れてる・・・・)
「なかなか筋がいいぞ」
「そ、そうですか?」
「ああ。踊る相手がわたしだからな」
そうに違いないだろうが、どこまでもやはり偉そうだ。
尤もらしく言われ、思わず苦笑が浮かぶ。
「何だ?ほんとの話だぞ?誰とでもこのように踊れるとは思わないことだ」
「そうだろうとは思いますけど、相手の方にはそのように言われない方がいいですよ」
「・・・・他にどう言えと?」
「どうとも。せっかく、こうしてダンスを楽しめるのですから――――ただ、その時間を楽しめばよいのだと思います」
相手の技量で完全に助けられてのことだが、ここで下手な意地など張ったところで意味がなく、実際、苦痛を伴うとばかり思っていたこの時間を、サーシャは楽しく感じ始めていた。
「・・・・おまえは今、楽しいのか?」
「楽しいですよ。まさかこんな風に自分が踊れるなんて思いもしませんでしたから。勿論、あなたのおかげでですけど」
「!そ、そうか。楽しいか」
心なしかその声には喜色が滲む。
例の、相手の女性に喜んで貰うために色々と努力しているのだろう――――彼なりに。
(今のは、あたしの感想でしかないけど)
普段の偉そうな態度からは想像もつかない、相手に配慮したリードの仕方は、きっと悪い印象を与えないだろう。
先ほどの高位クラスの青年に触れられた時と違い、サーシャの手を取る手や腰に添えられた手に嫌悪感は感じない。
いつしか、依頼でその場にいることも忘れ、純粋にダンスに夢中になっていたサーシャは、曲調がゆったりとしたものに変わると、我に返った。
「疲れていないか?」
「え、はい」
強いて言えば少し喉が渇いた気がするくらいか。
喉元に意識が向いた瞬間、贈られたチョーカーの存在を思い出した。
そうだ。
流れですっかり失念していたが、このドレスの代金も彼が手配してくれたものだ。
「あの、ありがとうございます」
「ん?」
「夜会の支度をするためのお金を出して下さって、このような装飾品までお貸し頂いて」
「何を言う。それはおまえにやったものだ。返されても困る」
「えっ」
こんな高価なものを簡単にやるなどと言われ、面食らった。
「そ、そんなわけにはゆきませんっ」
思わず足を止めるサーシャに合わせ、マハも立ち止まる。
「気に入らなかったか?――――よく似合うと思うが」
「!あ・・・・ありがとうございます。その、気に入らないなんてことはないんですけど」
自分が見劣りしそうなほど高価な代物で気が引けてしまうが、傷跡を自然に隠せる点がとても有難い。
「ならばいいではないか」
「い、いえ。そういう問題ではなくてですねっ」
マハは立ち止まって動こうとしないサーシャの腕を引きホール中央から抜け出し、会場の隅に連れてくる。
「ここならば落ち着いて話せるだろう」
続きを話すよう促すマハに、サーシャは改めて向き直る。
「このような高価なものを頂くいわれはないですし、第一、普段使うような場面がありませんので」
「それは分からぬだろう。おまえは、調香師として名を上げると言った。これより名のある人物たちに対面する機会もあるだろう。その際、普段のような装いでは済まないと思うが?」
「そ、それは・・・・」
「あって困るようなものでもあるまい。不要とあらばどこへなりと売ればいい」
「えぇ!?」
「それは、すでにおまえのものだ。どうしようと構わない。――――だが、つき返すのだけはやめろ。これでもおまえに似合うものをと選んだつもりなのだ。そう、気持ちだ」
仮面の奥の瞳は、真摯にこちらを見つめる。
(・・・・似合うものを選んだ?)
あたしに?
これも予行練習のうちなのだろうが、サーシャは僅かに狼狽えた。
どう言ったらいいものか逡巡する。
人から――――そのように言われるのは、初めてだ。
「あ・・・・そ、それは、ありがとうございます」
彼はコホンと一つ咳ばらいをし、
「あー・・・・その、なんだ。おまえ、喉は乾いていないか?」
「え。そうですね。何がいいですか?良ければ、取ってきま」
「いや。わたしが取ってこよう。おまえは、何が好みだ?」
「え!?い、いいですよ。自分で取ってきますから」
「わたしが取ってくると言っている」
頑として譲らないマハに、押し負けて、「ジュースを・・・・」と答えるほかなかった。
「分った。すぐ戻る。ここから動くな?」
念を押してから、彼は飲み物を取りに向かった。
その背中を見送りながら、今日はラァスを連れていないことに今更ながらに気づいた。
(今日はあの人に付いてるのかと思ったんだけど・・・・)
何処かで影ながら見守ってたりするんだろうか?
会場内に視線を巡らせその姿を探すが、それらしい姿は見えない。
が、サーシャの視線は別のものを捉えた。
数人の男女を相手に話をしている学院の卒業生である青年だ。
(たしか王立研究院に所属してる人よね)
以前、ノーラの元へ訪れた事のある青年だった。
高い能力を持つと聞いたが、それを何処か鼻にかけたような話し方をする人物で、苦手意識を覚えた事がある。
今も、聞き手になっている人間たちが、微妙な表情をしているのに、彼は気づいていないようである。
(目を合わさないでおこう・・・・)
サーシャは何気ない風を装って視線を外したのだが――――。
「ん?きみ、ちょっと待ちたまえ」
鋭利な印象の強い目がこちらへ向き、声をかけられた。
無視するわけにもいかず、そちらを向けば、彼は、
「・・・・ラグ女史のところの、ルティカ、さんだろう?」
記憶が確かなら、一、二度しか遭遇していないはずだが、どうやら相手はサーシャの名を覚えていたらしい。
が、強烈な印象ばかりが先行してしまい、名前がすぐに出てこない。
愛想笑いで誤魔化しながら、サーシャは記憶を探る。
近づいてきた彼はそんな彼女を睥睨した。
「ふん。きみのような者をこの場で見かけるとはね」
「・・・・はい?」
「ラグ女史の所にいる研究員に聞いたよ。きみ、漂流者だっていうじゃないか」
「そう、ですけど」
別に隠すような事でもなく、知っている者は知っている。
「それで?その装いもラグ女史に用立てて貰ったのかい?」
「いえ、これは・・・・」
「きみのような、得体の知れない人間の面倒を看るなんて、女史もつくづくお人がいい。ドレスだけならまだしも、不相応な装身具まで用意するなんてね」
剥き出しの敵意にサーシャは閉口した。
以前はただただ、自慢先行の話ばかりされた覚えはあるが、こんな対応をされるとは思わなかった。
夜会の支度金を用意したのは、ノーラではない。
が、彼が言うように場違いだという言葉は否定できないのだ。
黙り込んだサーシャに気を良くしたのか、彼は更に棘のある言葉を向けてきた。
「何が目的でここへ来たのかな?高貴な身分の紳士にでも取り入ろうと?」
「!違いますっ」
「でなければ、きみのような出自の人間がこんな場所に出てくるわけがないと思うが?」
「っ」
憤りにかっと頬が染まった。
仮にも接客業。
我慢しなければならないのはわかっていたが、嬲るように告げられるそれに、身体が怒りに震えるのを抑えられない。
が、次の瞬間。
皮肉げな笑みを浮かべる彼の顔面に薄桃色の液体がぶちまけられた。
「!?」
「――――すまない」
唖然とする青年と驚愕するサーシャの間に割って入った声の主は、飄々と続けた。
「手が滑ってしまった」
いつの間にか空のグラスを片手に、サーシャの傍らに仮面の青年がいた。
――――――――周囲がざわめくのを聞きながら、サーシャは騒動の予感を覚え、怒りに高まった熱が急速に冷えていくのを感じた。
「む、無理ですっ!それは無理っ」
「何だ、苦手なのか」
「に、苦手って言いますか、したこともありませんしっ」
「問題ない――――わたしに合わせればいいだけだ。簡単だろう?」
「ええ!?」
すでにホールにはダンスを楽しむ男女の姿がある。
優雅に踊るその足元は軽やかなステップを刻んでいるが、飛び入り参加でこなせるようなものではないだろう。
「わ、わたしは遠慮しますっ。ダンスがしたいのなら、誰か他の人をっ」
「わたしの相手はおまえだ。――――約束を、忘れていないだろう?」
もう一つの依頼内容を口にされ、言に詰まる。
(絶対無理だってわかってるのに)
及び腰のサーシャの手を掴み、マハは堂々とダンスの輪の中へと加わる。
本当の相手である令嬢なら、ダンスに臆することなどないだろう。
そう考えれば、強引だと指摘することはできない。
公衆の面前で、大恥を掻く――――そう、思っていたのだが・・・・。
「そのように足元ばかりを気にして俯かず、顔を上げよ。背筋を伸ばし、わたしを見るのだ」
「そ、そんな事言われても・・・・」
奏でられる音楽に苦も無く乗れる彼と違い、こちらは足を踏まないようにするので必死なのだ。
「猫背の女を連れているとわたしが笑われる。いいから、言う通りにせよ」
「!」
(そ、そこまで言われるのなら、どうなっても知りませんからね!)
半ば自棄を起こし、言われた通り背筋を伸ばし真っすぐに仮面の奥に見える瞳を射る。
「そうだ。それでいい」
ふっと微笑を浮かべたマハの足を早速踏みそうになり、実際にそうなることを疑わなかったサーシャは、リズムを崩すことなく避けられた足に、目を瞬いた。
ホールには他に何組もの男女がいるというのにターンをしても接触することはない。
全くの初心者であるサーシャが彼といると、まるで、ダンスに親しんでいるかのように、軽やかに身体が動き、難解に思えたステップも踏めている。
(う・・・・そ。あたし、踊れてる・・・・)
「なかなか筋がいいぞ」
「そ、そうですか?」
「ああ。踊る相手がわたしだからな」
そうに違いないだろうが、どこまでもやはり偉そうだ。
尤もらしく言われ、思わず苦笑が浮かぶ。
「何だ?ほんとの話だぞ?誰とでもこのように踊れるとは思わないことだ」
「そうだろうとは思いますけど、相手の方にはそのように言われない方がいいですよ」
「・・・・他にどう言えと?」
「どうとも。せっかく、こうしてダンスを楽しめるのですから――――ただ、その時間を楽しめばよいのだと思います」
相手の技量で完全に助けられてのことだが、ここで下手な意地など張ったところで意味がなく、実際、苦痛を伴うとばかり思っていたこの時間を、サーシャは楽しく感じ始めていた。
「・・・・おまえは今、楽しいのか?」
「楽しいですよ。まさかこんな風に自分が踊れるなんて思いもしませんでしたから。勿論、あなたのおかげでですけど」
「!そ、そうか。楽しいか」
心なしかその声には喜色が滲む。
例の、相手の女性に喜んで貰うために色々と努力しているのだろう――――彼なりに。
(今のは、あたしの感想でしかないけど)
普段の偉そうな態度からは想像もつかない、相手に配慮したリードの仕方は、きっと悪い印象を与えないだろう。
先ほどの高位クラスの青年に触れられた時と違い、サーシャの手を取る手や腰に添えられた手に嫌悪感は感じない。
いつしか、依頼でその場にいることも忘れ、純粋にダンスに夢中になっていたサーシャは、曲調がゆったりとしたものに変わると、我に返った。
「疲れていないか?」
「え、はい」
強いて言えば少し喉が渇いた気がするくらいか。
喉元に意識が向いた瞬間、贈られたチョーカーの存在を思い出した。
そうだ。
流れですっかり失念していたが、このドレスの代金も彼が手配してくれたものだ。
「あの、ありがとうございます」
「ん?」
「夜会の支度をするためのお金を出して下さって、このような装飾品までお貸し頂いて」
「何を言う。それはおまえにやったものだ。返されても困る」
「えっ」
こんな高価なものを簡単にやるなどと言われ、面食らった。
「そ、そんなわけにはゆきませんっ」
思わず足を止めるサーシャに合わせ、マハも立ち止まる。
「気に入らなかったか?――――よく似合うと思うが」
「!あ・・・・ありがとうございます。その、気に入らないなんてことはないんですけど」
自分が見劣りしそうなほど高価な代物で気が引けてしまうが、傷跡を自然に隠せる点がとても有難い。
「ならばいいではないか」
「い、いえ。そういう問題ではなくてですねっ」
マハは立ち止まって動こうとしないサーシャの腕を引きホール中央から抜け出し、会場の隅に連れてくる。
「ここならば落ち着いて話せるだろう」
続きを話すよう促すマハに、サーシャは改めて向き直る。
「このような高価なものを頂くいわれはないですし、第一、普段使うような場面がありませんので」
「それは分からぬだろう。おまえは、調香師として名を上げると言った。これより名のある人物たちに対面する機会もあるだろう。その際、普段のような装いでは済まないと思うが?」
「そ、それは・・・・」
「あって困るようなものでもあるまい。不要とあらばどこへなりと売ればいい」
「えぇ!?」
「それは、すでにおまえのものだ。どうしようと構わない。――――だが、つき返すのだけはやめろ。これでもおまえに似合うものをと選んだつもりなのだ。そう、気持ちだ」
仮面の奥の瞳は、真摯にこちらを見つめる。
(・・・・似合うものを選んだ?)
あたしに?
これも予行練習のうちなのだろうが、サーシャは僅かに狼狽えた。
どう言ったらいいものか逡巡する。
人から――――そのように言われるのは、初めてだ。
「あ・・・・そ、それは、ありがとうございます」
彼はコホンと一つ咳ばらいをし、
「あー・・・・その、なんだ。おまえ、喉は乾いていないか?」
「え。そうですね。何がいいですか?良ければ、取ってきま」
「いや。わたしが取ってこよう。おまえは、何が好みだ?」
「え!?い、いいですよ。自分で取ってきますから」
「わたしが取ってくると言っている」
頑として譲らないマハに、押し負けて、「ジュースを・・・・」と答えるほかなかった。
「分った。すぐ戻る。ここから動くな?」
念を押してから、彼は飲み物を取りに向かった。
その背中を見送りながら、今日はラァスを連れていないことに今更ながらに気づいた。
(今日はあの人に付いてるのかと思ったんだけど・・・・)
何処かで影ながら見守ってたりするんだろうか?
会場内に視線を巡らせその姿を探すが、それらしい姿は見えない。
が、サーシャの視線は別のものを捉えた。
数人の男女を相手に話をしている学院の卒業生である青年だ。
(たしか王立研究院に所属してる人よね)
以前、ノーラの元へ訪れた事のある青年だった。
高い能力を持つと聞いたが、それを何処か鼻にかけたような話し方をする人物で、苦手意識を覚えた事がある。
今も、聞き手になっている人間たちが、微妙な表情をしているのに、彼は気づいていないようである。
(目を合わさないでおこう・・・・)
サーシャは何気ない風を装って視線を外したのだが――――。
「ん?きみ、ちょっと待ちたまえ」
鋭利な印象の強い目がこちらへ向き、声をかけられた。
無視するわけにもいかず、そちらを向けば、彼は、
「・・・・ラグ女史のところの、ルティカ、さんだろう?」
記憶が確かなら、一、二度しか遭遇していないはずだが、どうやら相手はサーシャの名を覚えていたらしい。
が、強烈な印象ばかりが先行してしまい、名前がすぐに出てこない。
愛想笑いで誤魔化しながら、サーシャは記憶を探る。
近づいてきた彼はそんな彼女を睥睨した。
「ふん。きみのような者をこの場で見かけるとはね」
「・・・・はい?」
「ラグ女史の所にいる研究員に聞いたよ。きみ、漂流者だっていうじゃないか」
「そう、ですけど」
別に隠すような事でもなく、知っている者は知っている。
「それで?その装いもラグ女史に用立てて貰ったのかい?」
「いえ、これは・・・・」
「きみのような、得体の知れない人間の面倒を看るなんて、女史もつくづくお人がいい。ドレスだけならまだしも、不相応な装身具まで用意するなんてね」
剥き出しの敵意にサーシャは閉口した。
以前はただただ、自慢先行の話ばかりされた覚えはあるが、こんな対応をされるとは思わなかった。
夜会の支度金を用意したのは、ノーラではない。
が、彼が言うように場違いだという言葉は否定できないのだ。
黙り込んだサーシャに気を良くしたのか、彼は更に棘のある言葉を向けてきた。
「何が目的でここへ来たのかな?高貴な身分の紳士にでも取り入ろうと?」
「!違いますっ」
「でなければ、きみのような出自の人間がこんな場所に出てくるわけがないと思うが?」
「っ」
憤りにかっと頬が染まった。
仮にも接客業。
我慢しなければならないのはわかっていたが、嬲るように告げられるそれに、身体が怒りに震えるのを抑えられない。
が、次の瞬間。
皮肉げな笑みを浮かべる彼の顔面に薄桃色の液体がぶちまけられた。
「!?」
「――――すまない」
唖然とする青年と驚愕するサーシャの間に割って入った声の主は、飄々と続けた。
「手が滑ってしまった」
いつの間にか空のグラスを片手に、サーシャの傍らに仮面の青年がいた。
――――――――周囲がざわめくのを聞きながら、サーシャは騒動の予感を覚え、怒りに高まった熱が急速に冷えていくのを感じた。
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