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近づいていく距離
出会い色、エメラルド・ミスト
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「にしても、よかったねー早く治って」
「いつも一日二日だけどね、珍しい。俺らが出張に行ってる間だったんでしょ?」
翔の勤めるバー、『GAZE』。体調も回復した咲はいつも通り会社で秘書の仕事をしてから、梨紗と蓮と一緒にまた来ていた。
「そうそう。あ、何飲む? 蓮ここ来るの初めてだよね」
「あー、二人がここによくいるってのは知ってたけど」
「それであの日も仕事終わらせて来てくれたわけかー。さすが海外事業部の星」
「杉本、人外みたいに言わないでくれ……さすがに傷つく」
「ワーカホリックなのはどっちよ?」
ワーカホリック──生活の糧を得るための仕事を、日常生活を犠牲にして打ち込むことだ。
「咲も十分そうでしょうに……翔君、『ズーム』三つ」
「かしこまりました」
カクテル・グラスに、強くシェークしたブランデー、蜂蜜、そして生クリームを注げば完成。
──これが、甘い甘い『ズーム・カクテル』だ。
「……甘いな」
ズームを一口含んで、感想を口にした蓮。どちらかといえば、彼は辛口の方が好みなようだが──疲れた脳には、甘いものが一番いいということを咲は知っていた。
「蜂蜜と生クリームだっけ。あ、あとブランデーか」
「……『エメラルド・ミスト』、いい?」
「あ──ははっ、はい」
「え、どうかした? 何か可笑しい?」
ことりと首を傾げる咲。
「いえ……前に初めて咲さんをここで見かけたとき、飲んでたなぁと。あと『ミント・ジュレップ』も飲んでました」
「あぁー──ぁ? 記憶にないや……大分酔ってたのかな」
「『エメラルド・ミスト』は強いですからね……はい、こちらです」
クラッシュド・アイス──限界まで細かく砕かれた氷が詰められグラスが冷えるために、ミストに覆われたように見える、緑色の美しいカクテル──どちらかといえば、青に見えるが。それが、『エメラルド・ミスト』だ。
「んー、美味しかったぁ。翔君、シェリー酒ってある?」
「え……ありますけど、大丈夫ですか?」
「はっ? ど、どういうこと?」
「竹内さん、ちょっと……」
「ん、何」
こそこそと蓮に耳打ちを始めた翔。口元には笑みが──悪企みの笑みが浮かんでいる。咲はその理由に気づいているようで、苦笑いしていた。
「ほー……なるほどねぇー」
「そうなんですよねぇ、無知は罪ですね。じゃあ二つ作っときます」
「あーぁ、梨紗、今日もかぁ……無事を祈るよ」
「別に殺すわけじゃないけど。あ、梨紗。一つくれる?」
「ふぇっ? はーい」
すっとグラスを滑らせ、蓮に差し出す。
エメラルド・ミストとは違い、高いグラスに注がれた深紅のワイン。アルコール度数は高めだ。
「ん、おいし……わ、咲、もう飲み終わったの?」
「遅いだけよ。『カンパリ・オレンジ』」
「かしこまりました」
「……ねー蓮。さっきこそこそしてたの、なーに?」
「梨紗、あんた早速酔ってるわね? ったく……酒言葉のことよ」
「酒言葉ぁ? なんか花言葉みたいだね」
「同じようなものですよ。ちなみに『カンパリ・オレンジ』は『初恋』で、シェリー酒は……まぁ、そのうちわかりますよ。ねー、蓮さん」
「ん。『ブルドック』」
「お……知ってるんですか?」
「知ってるよ、相手は知らないけどね、多分」
「頑張って守ってあげてくださいねっ」
──あなたを守りたい──無縁な言葉だ、と咲は思う。恋人を作る気は毛頭ない咲には、縁がないと。
「もー……秘密ばっかり。じゃあ『スクリュー・ドライバー』は?」
「『油断』です。レディー・キラーとも言われてます」
「……『女殺し』? えっ、どういうこ──」
「飲みやすくて女性にも人気。にもかかわらずアルコール度数は高めで酔いやすい。知らない男に飲まされちゃいけないやつだよ……まぁ、蓮なら大丈夫か」
「むしろ飲ませたいね」
「咲、よく知ってるね……なんで?」
「……実家がバーだから」
「へぇー、なんで継がなかったんですか?」
「兄が継いだ。私が手伝う必要もないし」
手伝おうとしても、拒否されるし──その言葉は、唇に触れたグラスにかき消された。
「じゃあ、知ってるわけですね。はい、『カンパリ・オレンジ』です」
「ありがと……翔、今日は飲まないの?」
「最後に二、三杯って決めてるんで。今日は何飲もうかな……あ、そうだ。咲さん、『スプリッツァー』飲んでみますか?」
「き、気が早いね……うん、飲んでみる」
「おい、梨紗。大丈夫か?」
「んーっ、大丈夫。なんか気持ちよくなってきたぁ……ははっ」
「ほんとにレディー・キラーね……蓮にとっては違うけど」
「ねぇねぇ、翔君だっけ。なんかおすすめのやつある? 俺、知ってるっつっても少しだからさ。作るなんてもってのほかだし」
空になったグラスをもてあそびながら言った翔。綺麗な黒髪はかなり短め、しかしその眼は焦げ茶色だ。酔っているようには、今の所見えない。
「そう、ですね……蓮さんは、お強いですか」
「私よりも強いわよ。飲み比べしたことあるから」
「ほー……じゃあ、ちょっと変わり種のカクテルを」
「ん、ありがと」
『カンパリ・オレンジ』──ショートタイプ、つまり飲む時間が少ないカクテルを、咲は時間をかけて味わっているようだ。梨紗はシェリー酒を飲み終わりかけている。
「こちらです」
蓮は、翔が差し出したものを見て固まった-もちろん、驚いて、だ。
「こ、これって……?」
蓮の目の前には、リキュールグラスに注がれた琥珀色の酒。しかし異質なのは、そのグラスの飲み口の上に、分厚くスライスされたレモンと、そのまた上に白い粉末が固めて乗せられていることだ。
「『ニコラシカ』といいます。じゃあ、レモンとグラスを口に入れて数回噛んでください」
レモンの酸っぱい味わいと、上白糖の甘ったるいそれが混ざり、甘酸っぱい味が生まれる。四、五回ほど噛んだ後、蓮は翔を助けを求めるかのように見た。
「それで、このブランデーを一気飲みしてください」
「んっ……く……美味い」
「……やはりお強いですね。二十五度以上もあるのに」
「それなりに、強烈だな……」
「私も『ニコラシカ』は飲まないな。強すぎて……一回記憶なくした時あるし。確か梨紗の部屋に泊めてもらった……よね?」
「んー、私もよく覚えてないかな。でもニコはやばいよ、やめときな」
「いや、スクリューと『ブルー・ラグーン』で普通に酔ってた梨紗に言われたくないし……」
「それは言わないでよ……」
「まぁ……梨紗はその辺にしとけ。いたず──んんっ、介抱するの誰だと思ってんだよ」
思わずこぼれ出た言葉には、蓮の本音が隠されている──少し、いたずら好きなようだ。
「え、蓮でしょ? 違うの?」
「違わねぇけど……どうなっても知らねー」
「う……弱いのにしとく。なんか弱くて美味しいのない?」
「あ、じゃあ、皆さんで『スプリッツァー』飲んでみませんか? アルコール度数が五度の、白ワインと炭酸水を混ぜたカクテルなんですが」
「五度? いいんじゃない? 飲んでみようよ」
梨紗の飲み終わったシェリー酒のグラスを受け取った翔は、また新たなカクテル『スプリッツァー』を作り始めた。
『スプリッツァー』はグラスに直接白ワインと炭酸水を注ぐこと──ビルドすることで出来るカクテルだ。スパークリングワインとの違いは、もとより瓶内に炭酸ガスを閉じ込めて発酵させることで発泡性をもたせたワインのことが『スパークリングワイン』であり、二つは全くの別物である。
あの日、オーナーには二つのことを教えてもらっていた。スパークリングワインとスプリッツァーの違い──ふざけて、『浮気と不倫の違いだ、がはは』なんて言っていたが──と、咲さんのことだ。
「……お待たせしました、『スプリッツァー』です」
あの日、翔が自分で作って飲んでみた『エメラルド・ミスト』は、未熟の味だったと翔は思う。オーナーが咲に作った、完璧な青色のカクテルとは程遠く────。
「……爽やかだな。ジュースみたいだ」
「はい。度数も低いですから」
「私、これ好きかも……長めに飲めそう」
「確かに、これは梨紗でも酔わないかもね。美味しい……んく」
「杉本はいつもと変わんねぇな」
「そう? それなり酔ってるよ。ほろ酔いのほろ酔いみたいな感じかな」
「にしても、俺は『ニコラシカ』にハマりそうだ。やっぱり弱いのは性に合わないらしい……もう一回飲んでもいいか」
「えぇ、構いませ──すごいですね、一気飲み」
『スプリッツァー』に注がれた、しゅわしゅわと泡が弾ける白ワイン──炭酸が入っている。グラスのくびれから吹き込まれているようにも見えるそのカクテルを一気に飲み干す。そしてその顔は──全くと言っていいほど普通だ。
「分かりました……あ、咲さんなにか?」
「あぁ、うん。『バカルディ・カクテル』」
「言ってたやつですね、かしこまりました」
そしてまた、新たにカクテルを作り出す。オーナーのお墨付きをもらえるまで、翔はバーテンダーとして成長した──今なら『エメラルド・ミスト』も──と、翔は密かに思っている。
「こちら、『ニコラシカ』です」
あの日咲に会ったことが、翔の酒に対する姿勢を作った。
いつかあの人にカクテルをオーダーされたら、オーナーよりも上手く作って、笑わせてみたい。
弾けるような笑みを。
「いつも一日二日だけどね、珍しい。俺らが出張に行ってる間だったんでしょ?」
翔の勤めるバー、『GAZE』。体調も回復した咲はいつも通り会社で秘書の仕事をしてから、梨紗と蓮と一緒にまた来ていた。
「そうそう。あ、何飲む? 蓮ここ来るの初めてだよね」
「あー、二人がここによくいるってのは知ってたけど」
「それであの日も仕事終わらせて来てくれたわけかー。さすが海外事業部の星」
「杉本、人外みたいに言わないでくれ……さすがに傷つく」
「ワーカホリックなのはどっちよ?」
ワーカホリック──生活の糧を得るための仕事を、日常生活を犠牲にして打ち込むことだ。
「咲も十分そうでしょうに……翔君、『ズーム』三つ」
「かしこまりました」
カクテル・グラスに、強くシェークしたブランデー、蜂蜜、そして生クリームを注げば完成。
──これが、甘い甘い『ズーム・カクテル』だ。
「……甘いな」
ズームを一口含んで、感想を口にした蓮。どちらかといえば、彼は辛口の方が好みなようだが──疲れた脳には、甘いものが一番いいということを咲は知っていた。
「蜂蜜と生クリームだっけ。あ、あとブランデーか」
「……『エメラルド・ミスト』、いい?」
「あ──ははっ、はい」
「え、どうかした? 何か可笑しい?」
ことりと首を傾げる咲。
「いえ……前に初めて咲さんをここで見かけたとき、飲んでたなぁと。あと『ミント・ジュレップ』も飲んでました」
「あぁー──ぁ? 記憶にないや……大分酔ってたのかな」
「『エメラルド・ミスト』は強いですからね……はい、こちらです」
クラッシュド・アイス──限界まで細かく砕かれた氷が詰められグラスが冷えるために、ミストに覆われたように見える、緑色の美しいカクテル──どちらかといえば、青に見えるが。それが、『エメラルド・ミスト』だ。
「んー、美味しかったぁ。翔君、シェリー酒ってある?」
「え……ありますけど、大丈夫ですか?」
「はっ? ど、どういうこと?」
「竹内さん、ちょっと……」
「ん、何」
こそこそと蓮に耳打ちを始めた翔。口元には笑みが──悪企みの笑みが浮かんでいる。咲はその理由に気づいているようで、苦笑いしていた。
「ほー……なるほどねぇー」
「そうなんですよねぇ、無知は罪ですね。じゃあ二つ作っときます」
「あーぁ、梨紗、今日もかぁ……無事を祈るよ」
「別に殺すわけじゃないけど。あ、梨紗。一つくれる?」
「ふぇっ? はーい」
すっとグラスを滑らせ、蓮に差し出す。
エメラルド・ミストとは違い、高いグラスに注がれた深紅のワイン。アルコール度数は高めだ。
「ん、おいし……わ、咲、もう飲み終わったの?」
「遅いだけよ。『カンパリ・オレンジ』」
「かしこまりました」
「……ねー蓮。さっきこそこそしてたの、なーに?」
「梨紗、あんた早速酔ってるわね? ったく……酒言葉のことよ」
「酒言葉ぁ? なんか花言葉みたいだね」
「同じようなものですよ。ちなみに『カンパリ・オレンジ』は『初恋』で、シェリー酒は……まぁ、そのうちわかりますよ。ねー、蓮さん」
「ん。『ブルドック』」
「お……知ってるんですか?」
「知ってるよ、相手は知らないけどね、多分」
「頑張って守ってあげてくださいねっ」
──あなたを守りたい──無縁な言葉だ、と咲は思う。恋人を作る気は毛頭ない咲には、縁がないと。
「もー……秘密ばっかり。じゃあ『スクリュー・ドライバー』は?」
「『油断』です。レディー・キラーとも言われてます」
「……『女殺し』? えっ、どういうこ──」
「飲みやすくて女性にも人気。にもかかわらずアルコール度数は高めで酔いやすい。知らない男に飲まされちゃいけないやつだよ……まぁ、蓮なら大丈夫か」
「むしろ飲ませたいね」
「咲、よく知ってるね……なんで?」
「……実家がバーだから」
「へぇー、なんで継がなかったんですか?」
「兄が継いだ。私が手伝う必要もないし」
手伝おうとしても、拒否されるし──その言葉は、唇に触れたグラスにかき消された。
「じゃあ、知ってるわけですね。はい、『カンパリ・オレンジ』です」
「ありがと……翔、今日は飲まないの?」
「最後に二、三杯って決めてるんで。今日は何飲もうかな……あ、そうだ。咲さん、『スプリッツァー』飲んでみますか?」
「き、気が早いね……うん、飲んでみる」
「おい、梨紗。大丈夫か?」
「んーっ、大丈夫。なんか気持ちよくなってきたぁ……ははっ」
「ほんとにレディー・キラーね……蓮にとっては違うけど」
「ねぇねぇ、翔君だっけ。なんかおすすめのやつある? 俺、知ってるっつっても少しだからさ。作るなんてもってのほかだし」
空になったグラスをもてあそびながら言った翔。綺麗な黒髪はかなり短め、しかしその眼は焦げ茶色だ。酔っているようには、今の所見えない。
「そう、ですね……蓮さんは、お強いですか」
「私よりも強いわよ。飲み比べしたことあるから」
「ほー……じゃあ、ちょっと変わり種のカクテルを」
「ん、ありがと」
『カンパリ・オレンジ』──ショートタイプ、つまり飲む時間が少ないカクテルを、咲は時間をかけて味わっているようだ。梨紗はシェリー酒を飲み終わりかけている。
「こちらです」
蓮は、翔が差し出したものを見て固まった-もちろん、驚いて、だ。
「こ、これって……?」
蓮の目の前には、リキュールグラスに注がれた琥珀色の酒。しかし異質なのは、そのグラスの飲み口の上に、分厚くスライスされたレモンと、そのまた上に白い粉末が固めて乗せられていることだ。
「『ニコラシカ』といいます。じゃあ、レモンとグラスを口に入れて数回噛んでください」
レモンの酸っぱい味わいと、上白糖の甘ったるいそれが混ざり、甘酸っぱい味が生まれる。四、五回ほど噛んだ後、蓮は翔を助けを求めるかのように見た。
「それで、このブランデーを一気飲みしてください」
「んっ……く……美味い」
「……やはりお強いですね。二十五度以上もあるのに」
「それなりに、強烈だな……」
「私も『ニコラシカ』は飲まないな。強すぎて……一回記憶なくした時あるし。確か梨紗の部屋に泊めてもらった……よね?」
「んー、私もよく覚えてないかな。でもニコはやばいよ、やめときな」
「いや、スクリューと『ブルー・ラグーン』で普通に酔ってた梨紗に言われたくないし……」
「それは言わないでよ……」
「まぁ……梨紗はその辺にしとけ。いたず──んんっ、介抱するの誰だと思ってんだよ」
思わずこぼれ出た言葉には、蓮の本音が隠されている──少し、いたずら好きなようだ。
「え、蓮でしょ? 違うの?」
「違わねぇけど……どうなっても知らねー」
「う……弱いのにしとく。なんか弱くて美味しいのない?」
「あ、じゃあ、皆さんで『スプリッツァー』飲んでみませんか? アルコール度数が五度の、白ワインと炭酸水を混ぜたカクテルなんですが」
「五度? いいんじゃない? 飲んでみようよ」
梨紗の飲み終わったシェリー酒のグラスを受け取った翔は、また新たなカクテル『スプリッツァー』を作り始めた。
『スプリッツァー』はグラスに直接白ワインと炭酸水を注ぐこと──ビルドすることで出来るカクテルだ。スパークリングワインとの違いは、もとより瓶内に炭酸ガスを閉じ込めて発酵させることで発泡性をもたせたワインのことが『スパークリングワイン』であり、二つは全くの別物である。
あの日、オーナーには二つのことを教えてもらっていた。スパークリングワインとスプリッツァーの違い──ふざけて、『浮気と不倫の違いだ、がはは』なんて言っていたが──と、咲さんのことだ。
「……お待たせしました、『スプリッツァー』です」
あの日、翔が自分で作って飲んでみた『エメラルド・ミスト』は、未熟の味だったと翔は思う。オーナーが咲に作った、完璧な青色のカクテルとは程遠く────。
「……爽やかだな。ジュースみたいだ」
「はい。度数も低いですから」
「私、これ好きかも……長めに飲めそう」
「確かに、これは梨紗でも酔わないかもね。美味しい……んく」
「杉本はいつもと変わんねぇな」
「そう? それなり酔ってるよ。ほろ酔いのほろ酔いみたいな感じかな」
「にしても、俺は『ニコラシカ』にハマりそうだ。やっぱり弱いのは性に合わないらしい……もう一回飲んでもいいか」
「えぇ、構いませ──すごいですね、一気飲み」
『スプリッツァー』に注がれた、しゅわしゅわと泡が弾ける白ワイン──炭酸が入っている。グラスのくびれから吹き込まれているようにも見えるそのカクテルを一気に飲み干す。そしてその顔は──全くと言っていいほど普通だ。
「分かりました……あ、咲さんなにか?」
「あぁ、うん。『バカルディ・カクテル』」
「言ってたやつですね、かしこまりました」
そしてまた、新たにカクテルを作り出す。オーナーのお墨付きをもらえるまで、翔はバーテンダーとして成長した──今なら『エメラルド・ミスト』も──と、翔は密かに思っている。
「こちら、『ニコラシカ』です」
あの日咲に会ったことが、翔の酒に対する姿勢を作った。
いつかあの人にカクテルをオーダーされたら、オーナーよりも上手く作って、笑わせてみたい。
弾けるような笑みを。
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