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鈍色地面、黒髪少女。
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「……静月? どうした?」
「あ、いや……これって、紗凪だよな?」
「え、なにこれKINE? 『助けて』? 行って確かめちゃえばいいじゃん。柊、After The Snow の裏路地に行って?」
「あぁ、あのバーですか。了解しました」
するりと滑るように、車は走り出す。
「なんかあったのか?」
「いや、それはこっちが聞きたい……実際KINEで会話したの、最初の挨拶しかねぇってのに、やっとしたまともな会話が『助けて』ってんだから笑えるけど」
「そういやこないだ相談してたな。『意識してくれない』って」
「いやお前自分のこと棚に上げるなよ」
「ははっ」
「着きました。一応店の前です」
「あぁ、俺だけ行くから待ってろ。なんもなかったらすぐ戻る」
「おぉ、気をつけろよ」
「……紗凪?」
「っと、ごめんごめん……」
「お、おい大丈夫かよ?」
「左足首にヒビ、右頬平手打ち、あと腹に……回し蹴り? 右肩地面に思いっきり打った」
「……誰にやられた?」
「悠月」
端的にそう答えた。
「あぁ、佐奈田──佐奈田!?」
「んな驚かない……本気じゃないし大丈夫。むしろ私があの状態で本気でやられたら死ぬわ。よかった本気じゃなくて」
「え、なにがあったんだよ?」
「っとごめ、ん。話はあと。……そろそろ落ちそうだから、どっかで起こして」
「お、おい紗凪? お前意識落とすなよ!?」
「う……そこ痛い、静月……」
「あ、あぁ悪ぃ」
「……痛みで目も覚めたわ。でも立てないから、手伝ってくれる?」
「それは大丈夫だが……歩けるのか?」
「我慢すれば大丈夫大丈夫。この程度──うぁぁっ!!」
静月に足首を掠めるように触られ激痛が電流のように走り悲鳴をあげる紗凪。
その表情は苦悶に染まっている。
「……触っただけでそんな悲鳴なら、大丈夫じゃないな。右肩は触らないから、落ちるなよ?」
「え?ちょっとしづ──うわぁっ!」
静月は突然、紗凪を抱きかかえる。──腕を肩に回し、膝の後ろを支える──所謂「お姫様抱っこ」というものだ。
「ふっ、色気もクソもねぇな……まぁ紗凪はそんなか」
「失礼な」
「はいはい。もう寝ていいぞ。あとは手当てする」
「──るぃ……」
「ん?」
「や、なんでもない……」
そのまま紗凪は静月の方を向いたため、静月には見えなかった。紗凪の頬が、桜色に染まっていたことを──そして、紗凪が発した、「そこでその笑顔はずるい……」という言葉も。
「あ、いや……これって、紗凪だよな?」
「え、なにこれKINE? 『助けて』? 行って確かめちゃえばいいじゃん。柊、After The Snow の裏路地に行って?」
「あぁ、あのバーですか。了解しました」
するりと滑るように、車は走り出す。
「なんかあったのか?」
「いや、それはこっちが聞きたい……実際KINEで会話したの、最初の挨拶しかねぇってのに、やっとしたまともな会話が『助けて』ってんだから笑えるけど」
「そういやこないだ相談してたな。『意識してくれない』って」
「いやお前自分のこと棚に上げるなよ」
「ははっ」
「着きました。一応店の前です」
「あぁ、俺だけ行くから待ってろ。なんもなかったらすぐ戻る」
「おぉ、気をつけろよ」
「……紗凪?」
「っと、ごめんごめん……」
「お、おい大丈夫かよ?」
「左足首にヒビ、右頬平手打ち、あと腹に……回し蹴り? 右肩地面に思いっきり打った」
「……誰にやられた?」
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端的にそう答えた。
「あぁ、佐奈田──佐奈田!?」
「んな驚かない……本気じゃないし大丈夫。むしろ私があの状態で本気でやられたら死ぬわ。よかった本気じゃなくて」
「え、なにがあったんだよ?」
「っとごめ、ん。話はあと。……そろそろ落ちそうだから、どっかで起こして」
「お、おい紗凪? お前意識落とすなよ!?」
「う……そこ痛い、静月……」
「あ、あぁ悪ぃ」
「……痛みで目も覚めたわ。でも立てないから、手伝ってくれる?」
「それは大丈夫だが……歩けるのか?」
「我慢すれば大丈夫大丈夫。この程度──うぁぁっ!!」
静月に足首を掠めるように触られ激痛が電流のように走り悲鳴をあげる紗凪。
その表情は苦悶に染まっている。
「……触っただけでそんな悲鳴なら、大丈夫じゃないな。右肩は触らないから、落ちるなよ?」
「え?ちょっとしづ──うわぁっ!」
静月は突然、紗凪を抱きかかえる。──腕を肩に回し、膝の後ろを支える──所謂「お姫様抱っこ」というものだ。
「ふっ、色気もクソもねぇな……まぁ紗凪はそんなか」
「失礼な」
「はいはい。もう寝ていいぞ。あとは手当てする」
「──るぃ……」
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「や、なんでもない……」
そのまま紗凪は静月の方を向いたため、静月には見えなかった。紗凪の頬が、桜色に染まっていたことを──そして、紗凪が発した、「そこでその笑顔はずるい……」という言葉も。
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