マトリョーシカ少女

天海 時雨

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カゴの中の美しき鳥

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「弦、俺だけ帰るが大丈夫か?」
「ん? そいつ誰?」
「千堂紗凪」
「あぁ紗凪──ってバカか! 紗凪は灰色じゃねぇよ!」
「カラコン。ウィッグ。佐奈田と同じだ」

 そう、今の紗凪の外見は、学校で偽っているときとは違い、「氷蓮」の姿。つまり何も偽っていないのである。

「柊、もう一台車呼べるか。小さいのでいいから、手当道具とか載せておいてくれ」
「了解しました。……えっと、その方は?」
「……高校の仲間だ」
「あ、そういうことですね。分かりました。すぐ来るので、それまでこちらに乗っていて下さい」


「……誰にやられたって?」
「佐奈田」
「え? 悠月!?」
「声が大きい……何を思ったのかは知らないが、やりたくてやったわけではなさそうだな。本気じゃないと紗凪も言っていたし……」
「本気じゃない? じゃあ手加減したって事? 嫌いとかそういうのなら本気でやるでしょ……確かにやりたくてやってないな。でも動機は……?」
「……脅された、とかか? まぁいい、屋敷で合流してから話す」
「あぁ、頼む」



「……屋敷に向かえ、部屋を一つ用意しろ。姐が気づいたら気づいたで俺が説明する。あと医者のりんを呼べ」
「了解しやした。……その女は?」
「……お前の言葉遣い、治らないな。未来の姐とでも思っておけ」
「は、はい……!!」
「冗談だ、高校の仲間。早く向かってくれ」
「へ、へぃ!」


 車が藍咲組の屋敷に向かう間、静月は頬杖をついて考えていた。本当に悠月が、紗凪にこんなことをしたのだろうか──と。

(本気じゃないってことは手加減されたということだよな。じゃあやりたくてやったわけじゃない……いや、紗凪は佐奈田の実力を知ってるのか?)

 いや、その前に──そこで静月は、最初の疑問に辿り着いた。

(……何で紗凪は、裏路地で佐奈田を?)


「若、着きやした」
「迎えはいらない、うるさいだけだ」
「へい、散らせます」

 じゃりじゃりと音のなる地面、その先に静月を待っていたのは。

「お帰りなさい静月。大きな拾いものがあるようね?」
「……ただいま戻りました。部屋で手当てしても?」
「それはこの娘の身元を聞い──ぇ……!?」

 和装に身を包んでいる美人。老いを感じさせないほどの若く見える外見に長い黒髪を揺蕩わせ、溶けるような声で言った。

「姐様?」
「っ凛! 部屋へ行きなさい! 誰か布団と布あと氷!」
「え、母上……?」

 藍咲組姐、そして静月と弦の母、藍咲 奏あいざき かなでだった。
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