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超能力のような 静月side
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「んー……」
そう唸りながら、パソコンの画面全体を眺め始めた紗凪。そのパソコンは、ものすごい速さで動画を再生している。
「──え、まさか全部見てるの?」
そんなわけないよな、と口にする弦。
その疑問は無理もなく、パソコンの画面は九つに分割されており、その全てにおいて再生されている。
「……そうらしいな。あまり話しかけない方がいいのか?」
「ん? あぁ、別にいいよ。もう直ぐ一日分終わるし」
「え……早いな」
「まぁ慣れてるからねー。さてと……えっと、次はこれか? あぁこっちか」
パソコンの画面とにらめっこしながら、仕事を続ける紗凪。かけている黒眼鏡に光が反射している。
「んー、いなくなった一日後にはいなかったねー。じゃあ一日前見てみますかー」
んー……とマウスをいじり、表示されているファイルを開く。
口調はいつも通りだが、その色素の薄い目には真剣さが入り混じっている。
「……目、キツくないんだ?」
「んー? あぁ、小さい頃から何故か鍛えられてね、こういうの。もともとなんか……才能? とかそういうのがあったみたいだねぇー」
「どんな教育をするだよ……」
「……親じゃないけどね」
一瞬だけ、暗い声が聞こえた。自虐するような、自嘲するような、そしてそれを既に受け止めてしまっているような声。
「え?」
「んー、なんでもない。あ、ちょっと静かにしてね」
「……あぁ、分かった」
そしてまた、パソコンを見て唸り始める紗凪。
今の声はなんだったんだ……?
「……静月、奏さん呼んできて」
「え、まさか見つかったのか!? すげぇ……」
「この白は悠月以外ないと思うけど、一応。ほら早く!」
「おっ、おう!」
内心、あの方法で見つけられるとは思っていなかった。
ものすごい速さだし、九つの場所を一度に見るなんて出来ないと──そう、思っていた。
「……紗凪、お手柄よ。悠月に話しかけてる男がいる……こいつが脅したと見て間違いない」
「いなくなる一日前です。そういえばあの日は、私がバーのアルバイトが夜勤だった日だ……」
「紗凪といないことも辻褄が合うわ」
でも、と言葉を続ける奏。
「この男は、誰かしら……」
「…………」
突然沈黙した紗凪。
その表情は怒りに染まっており、今すぐにでも男を殴りたいという衝動をぎりぎりのところで押しとどめている、というような表情だ。
「……紗凪?」
「ん? あぁ、すいません。でも、こいつがいるのは、この路地の近くの可能性が高いです」
「ちょうどここは、この組の屋敷のいわば『結界』のようなものの外だわ。結界の中はもっぱら組員が住んでいるけど、このあたりはまばらだし……」
「……ん? 俺こないだここ行ったぞ」
突然爆弾発言をした弦。
でも確かに、あの時の見回りでここに行くはずだった。
「え!? そうなの?」
「見回りのとき──紗凪が怪我してたのを静月が拾ったとき、俺だけで見回りしたんです。確かこの辺、廃ビルがあったようななかったような……」
「へぇぇー、そうだったんだ……じゃあ行くか」
既に立ち上がり、スマホで位置を確認している。
「え、早くないか?」
「善は急げ。私だけでも別にいいよ? 悠月拾ってくるだけなら私でもできるし」
「あー……まぁ一人じゃ行かせねぇけど」
「そうね……いる可能性があるならすぐにでも。あと紗凪、あれ、忘れないでね?」
「……この組で言うのもなんですけど、物騒ですよあれ」
「別に? あとで渡すから隠しときなさい」
「……二人共、なんの話です?」
思わず口をついてしまった疑問。踏み込むなと言われるかと思ったが────、
「できるなら使いたくないものの話。さて、こんなこともあろうかともう準備してあります。二人は現地捜索の準備してあるでしょ?」
「あぁ、できてる」
「じゃあそれでいいよ。私は氷蓮のカッコで行くから」
「あら、白昼堂々?おすすめできないわね」
「一番身軽ですしケンカも売られませんよ。じゃあ二人は準備してきてね」
「おぉ、分かったー」
そして俺はこの行動の所為で、この会話を聞けなかった。
「じゃあ紗凪、二つでいいかしら?」
「十分ですよ、前にもらったものもまだ使えますし」
「あぁ、あれね。でも一応持って行って」
「えー……重いです」
「お願い。……裕翔と葵に怒られるから、ね?」
「……ここで出すのは卑怯ですよ奏さん。分かりました、持って行きます」
「うん、ありがとう。遠慮なくやっていいわよ、始末は任せておきなさい」
「そこまでやりませんよ……病院程度で」
そう唸りながら、パソコンの画面全体を眺め始めた紗凪。そのパソコンは、ものすごい速さで動画を再生している。
「──え、まさか全部見てるの?」
そんなわけないよな、と口にする弦。
その疑問は無理もなく、パソコンの画面は九つに分割されており、その全てにおいて再生されている。
「……そうらしいな。あまり話しかけない方がいいのか?」
「ん? あぁ、別にいいよ。もう直ぐ一日分終わるし」
「え……早いな」
「まぁ慣れてるからねー。さてと……えっと、次はこれか? あぁこっちか」
パソコンの画面とにらめっこしながら、仕事を続ける紗凪。かけている黒眼鏡に光が反射している。
「んー、いなくなった一日後にはいなかったねー。じゃあ一日前見てみますかー」
んー……とマウスをいじり、表示されているファイルを開く。
口調はいつも通りだが、その色素の薄い目には真剣さが入り混じっている。
「……目、キツくないんだ?」
「んー? あぁ、小さい頃から何故か鍛えられてね、こういうの。もともとなんか……才能? とかそういうのがあったみたいだねぇー」
「どんな教育をするだよ……」
「……親じゃないけどね」
一瞬だけ、暗い声が聞こえた。自虐するような、自嘲するような、そしてそれを既に受け止めてしまっているような声。
「え?」
「んー、なんでもない。あ、ちょっと静かにしてね」
「……あぁ、分かった」
そしてまた、パソコンを見て唸り始める紗凪。
今の声はなんだったんだ……?
「……静月、奏さん呼んできて」
「え、まさか見つかったのか!? すげぇ……」
「この白は悠月以外ないと思うけど、一応。ほら早く!」
「おっ、おう!」
内心、あの方法で見つけられるとは思っていなかった。
ものすごい速さだし、九つの場所を一度に見るなんて出来ないと──そう、思っていた。
「……紗凪、お手柄よ。悠月に話しかけてる男がいる……こいつが脅したと見て間違いない」
「いなくなる一日前です。そういえばあの日は、私がバーのアルバイトが夜勤だった日だ……」
「紗凪といないことも辻褄が合うわ」
でも、と言葉を続ける奏。
「この男は、誰かしら……」
「…………」
突然沈黙した紗凪。
その表情は怒りに染まっており、今すぐにでも男を殴りたいという衝動をぎりぎりのところで押しとどめている、というような表情だ。
「……紗凪?」
「ん? あぁ、すいません。でも、こいつがいるのは、この路地の近くの可能性が高いです」
「ちょうどここは、この組の屋敷のいわば『結界』のようなものの外だわ。結界の中はもっぱら組員が住んでいるけど、このあたりはまばらだし……」
「……ん? 俺こないだここ行ったぞ」
突然爆弾発言をした弦。
でも確かに、あの時の見回りでここに行くはずだった。
「え!? そうなの?」
「見回りのとき──紗凪が怪我してたのを静月が拾ったとき、俺だけで見回りしたんです。確かこの辺、廃ビルがあったようななかったような……」
「へぇぇー、そうだったんだ……じゃあ行くか」
既に立ち上がり、スマホで位置を確認している。
「え、早くないか?」
「善は急げ。私だけでも別にいいよ? 悠月拾ってくるだけなら私でもできるし」
「あー……まぁ一人じゃ行かせねぇけど」
「そうね……いる可能性があるならすぐにでも。あと紗凪、あれ、忘れないでね?」
「……この組で言うのもなんですけど、物騒ですよあれ」
「別に? あとで渡すから隠しときなさい」
「……二人共、なんの話です?」
思わず口をついてしまった疑問。踏み込むなと言われるかと思ったが────、
「できるなら使いたくないものの話。さて、こんなこともあろうかともう準備してあります。二人は現地捜索の準備してあるでしょ?」
「あぁ、できてる」
「じゃあそれでいいよ。私は氷蓮のカッコで行くから」
「あら、白昼堂々?おすすめできないわね」
「一番身軽ですしケンカも売られませんよ。じゃあ二人は準備してきてね」
「おぉ、分かったー」
そして俺はこの行動の所為で、この会話を聞けなかった。
「じゃあ紗凪、二つでいいかしら?」
「十分ですよ、前にもらったものもまだ使えますし」
「あぁ、あれね。でも一応持って行って」
「えー……重いです」
「お願い。……裕翔と葵に怒られるから、ね?」
「……ここで出すのは卑怯ですよ奏さん。分かりました、持って行きます」
「うん、ありがとう。遠慮なくやっていいわよ、始末は任せておきなさい」
「そこまでやりませんよ……病院程度で」
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