17 / 34
超能力のような 静月side
しおりを挟む
「んー……」
そう唸りながら、パソコンの画面全体を眺め始めた紗凪。そのパソコンは、ものすごい速さで動画を再生している。
「──え、まさか全部見てるの?」
そんなわけないよな、と口にする弦。
その疑問は無理もなく、パソコンの画面は九つに分割されており、その全てにおいて再生されている。
「……そうらしいな。あまり話しかけない方がいいのか?」
「ん? あぁ、別にいいよ。もう直ぐ一日分終わるし」
「え……早いな」
「まぁ慣れてるからねー。さてと……えっと、次はこれか? あぁこっちか」
パソコンの画面とにらめっこしながら、仕事を続ける紗凪。かけている黒眼鏡に光が反射している。
「んー、いなくなった一日後にはいなかったねー。じゃあ一日前見てみますかー」
んー……とマウスをいじり、表示されているファイルを開く。
口調はいつも通りだが、その色素の薄い目には真剣さが入り混じっている。
「……目、キツくないんだ?」
「んー? あぁ、小さい頃から何故か鍛えられてね、こういうの。もともとなんか……才能? とかそういうのがあったみたいだねぇー」
「どんな教育をするだよ……」
「……親じゃないけどね」
一瞬だけ、暗い声が聞こえた。自虐するような、自嘲するような、そしてそれを既に受け止めてしまっているような声。
「え?」
「んー、なんでもない。あ、ちょっと静かにしてね」
「……あぁ、分かった」
そしてまた、パソコンを見て唸り始める紗凪。
今の声はなんだったんだ……?
「……静月、奏さん呼んできて」
「え、まさか見つかったのか!? すげぇ……」
「この白は悠月以外ないと思うけど、一応。ほら早く!」
「おっ、おう!」
内心、あの方法で見つけられるとは思っていなかった。
ものすごい速さだし、九つの場所を一度に見るなんて出来ないと──そう、思っていた。
「……紗凪、お手柄よ。悠月に話しかけてる男がいる……こいつが脅したと見て間違いない」
「いなくなる一日前です。そういえばあの日は、私がバーのアルバイトが夜勤だった日だ……」
「紗凪といないことも辻褄が合うわ」
でも、と言葉を続ける奏。
「この男は、誰かしら……」
「…………」
突然沈黙した紗凪。
その表情は怒りに染まっており、今すぐにでも男を殴りたいという衝動をぎりぎりのところで押しとどめている、というような表情だ。
「……紗凪?」
「ん? あぁ、すいません。でも、こいつがいるのは、この路地の近くの可能性が高いです」
「ちょうどここは、この組の屋敷のいわば『結界』のようなものの外だわ。結界の中はもっぱら組員が住んでいるけど、このあたりはまばらだし……」
「……ん? 俺こないだここ行ったぞ」
突然爆弾発言をした弦。
でも確かに、あの時の見回りでここに行くはずだった。
「え!? そうなの?」
「見回りのとき──紗凪が怪我してたのを静月が拾ったとき、俺だけで見回りしたんです。確かこの辺、廃ビルがあったようななかったような……」
「へぇぇー、そうだったんだ……じゃあ行くか」
既に立ち上がり、スマホで位置を確認している。
「え、早くないか?」
「善は急げ。私だけでも別にいいよ? 悠月拾ってくるだけなら私でもできるし」
「あー……まぁ一人じゃ行かせねぇけど」
「そうね……いる可能性があるならすぐにでも。あと紗凪、あれ、忘れないでね?」
「……この組で言うのもなんですけど、物騒ですよあれ」
「別に? あとで渡すから隠しときなさい」
「……二人共、なんの話です?」
思わず口をついてしまった疑問。踏み込むなと言われるかと思ったが────、
「できるなら使いたくないものの話。さて、こんなこともあろうかともう準備してあります。二人は現地捜索の準備してあるでしょ?」
「あぁ、できてる」
「じゃあそれでいいよ。私は氷蓮のカッコで行くから」
「あら、白昼堂々?おすすめできないわね」
「一番身軽ですしケンカも売られませんよ。じゃあ二人は準備してきてね」
「おぉ、分かったー」
そして俺はこの行動の所為で、この会話を聞けなかった。
「じゃあ紗凪、二つでいいかしら?」
「十分ですよ、前にもらったものもまだ使えますし」
「あぁ、あれね。でも一応持って行って」
「えー……重いです」
「お願い。……裕翔と葵に怒られるから、ね?」
「……ここで出すのは卑怯ですよ奏さん。分かりました、持って行きます」
「うん、ありがとう。遠慮なくやっていいわよ、始末は任せておきなさい」
「そこまでやりませんよ……病院程度で」
そう唸りながら、パソコンの画面全体を眺め始めた紗凪。そのパソコンは、ものすごい速さで動画を再生している。
「──え、まさか全部見てるの?」
そんなわけないよな、と口にする弦。
その疑問は無理もなく、パソコンの画面は九つに分割されており、その全てにおいて再生されている。
「……そうらしいな。あまり話しかけない方がいいのか?」
「ん? あぁ、別にいいよ。もう直ぐ一日分終わるし」
「え……早いな」
「まぁ慣れてるからねー。さてと……えっと、次はこれか? あぁこっちか」
パソコンの画面とにらめっこしながら、仕事を続ける紗凪。かけている黒眼鏡に光が反射している。
「んー、いなくなった一日後にはいなかったねー。じゃあ一日前見てみますかー」
んー……とマウスをいじり、表示されているファイルを開く。
口調はいつも通りだが、その色素の薄い目には真剣さが入り混じっている。
「……目、キツくないんだ?」
「んー? あぁ、小さい頃から何故か鍛えられてね、こういうの。もともとなんか……才能? とかそういうのがあったみたいだねぇー」
「どんな教育をするだよ……」
「……親じゃないけどね」
一瞬だけ、暗い声が聞こえた。自虐するような、自嘲するような、そしてそれを既に受け止めてしまっているような声。
「え?」
「んー、なんでもない。あ、ちょっと静かにしてね」
「……あぁ、分かった」
そしてまた、パソコンを見て唸り始める紗凪。
今の声はなんだったんだ……?
「……静月、奏さん呼んできて」
「え、まさか見つかったのか!? すげぇ……」
「この白は悠月以外ないと思うけど、一応。ほら早く!」
「おっ、おう!」
内心、あの方法で見つけられるとは思っていなかった。
ものすごい速さだし、九つの場所を一度に見るなんて出来ないと──そう、思っていた。
「……紗凪、お手柄よ。悠月に話しかけてる男がいる……こいつが脅したと見て間違いない」
「いなくなる一日前です。そういえばあの日は、私がバーのアルバイトが夜勤だった日だ……」
「紗凪といないことも辻褄が合うわ」
でも、と言葉を続ける奏。
「この男は、誰かしら……」
「…………」
突然沈黙した紗凪。
その表情は怒りに染まっており、今すぐにでも男を殴りたいという衝動をぎりぎりのところで押しとどめている、というような表情だ。
「……紗凪?」
「ん? あぁ、すいません。でも、こいつがいるのは、この路地の近くの可能性が高いです」
「ちょうどここは、この組の屋敷のいわば『結界』のようなものの外だわ。結界の中はもっぱら組員が住んでいるけど、このあたりはまばらだし……」
「……ん? 俺こないだここ行ったぞ」
突然爆弾発言をした弦。
でも確かに、あの時の見回りでここに行くはずだった。
「え!? そうなの?」
「見回りのとき──紗凪が怪我してたのを静月が拾ったとき、俺だけで見回りしたんです。確かこの辺、廃ビルがあったようななかったような……」
「へぇぇー、そうだったんだ……じゃあ行くか」
既に立ち上がり、スマホで位置を確認している。
「え、早くないか?」
「善は急げ。私だけでも別にいいよ? 悠月拾ってくるだけなら私でもできるし」
「あー……まぁ一人じゃ行かせねぇけど」
「そうね……いる可能性があるならすぐにでも。あと紗凪、あれ、忘れないでね?」
「……この組で言うのもなんですけど、物騒ですよあれ」
「別に? あとで渡すから隠しときなさい」
「……二人共、なんの話です?」
思わず口をついてしまった疑問。踏み込むなと言われるかと思ったが────、
「できるなら使いたくないものの話。さて、こんなこともあろうかともう準備してあります。二人は現地捜索の準備してあるでしょ?」
「あぁ、できてる」
「じゃあそれでいいよ。私は氷蓮のカッコで行くから」
「あら、白昼堂々?おすすめできないわね」
「一番身軽ですしケンカも売られませんよ。じゃあ二人は準備してきてね」
「おぉ、分かったー」
そして俺はこの行動の所為で、この会話を聞けなかった。
「じゃあ紗凪、二つでいいかしら?」
「十分ですよ、前にもらったものもまだ使えますし」
「あぁ、あれね。でも一応持って行って」
「えー……重いです」
「お願い。……裕翔と葵に怒られるから、ね?」
「……ここで出すのは卑怯ですよ奏さん。分かりました、持って行きます」
「うん、ありがとう。遠慮なくやっていいわよ、始末は任せておきなさい」
「そこまでやりませんよ……病院程度で」
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~
朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。
婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」
静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。
夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。
「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」
彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる