穢れを知らない魔女は穢れた神父に恋をする。

とかげになりたい僕

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心恋

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 ザフィに促されるままに、腰を少しだけ浮かして角度を調整する。ぴたりと押し当てられた熱に上擦った声が出て、それが恥ずかしくて堪らなかったから、誤魔化すようにザフィの肩口に顔を埋めた。

れるよ?」
「ぅ、ん……」

 小さく頷き、歯を微かに食いしばる。
 先端の熱が慣らすように動かされた後、内蔵を押される圧迫感と共にナカへと入ってくる。ゆっくりと進められる熱に合わせるように息を吐けば、ザフィから「つらく、ない……?」と耳元で囁かれた。

「ひ、うっ」

 それに身体がびくりと震え、一気に力が抜けて緩んだらしい。ぐりぐりと無遠慮にナカを抉る熱が、僕の喉から声を押し出させた。

「あああっ、は、んん……ッ」
「……くッ、もう少しだけ、力、抜ける?」

 言われて抜こうと試みてはみるけれど、今まで受け入れた中でもザフィのモノはひと際大きくて、上手く力を抜くことが出来ない。それに、これだけ大事に扱われたことなんてなくて、どう返せばいいのかわからない。

「ひぁ、まっ、て……、うまく、できな……っ」

 たぶん、まだ半分も入っていない。でもこれ以上受け入れたら、自分を見失いそうで、それこそザフィを欲深く求めてしまいそうで、どんな言葉を言ってもいけない気がした。

「ンンンっ」

 浅くイイところをゆるゆると揺さぶられ、肩に置いた指先に力が入る。ザフィ自身を軽く締めつけた僕は、もうこれ以上無理だと言わんばかりにザフィに身体を預けた。

「……アヅ、ここで終わろっか」
「へっ……ぁ」

 なんでと聞き返す間もなく、ザフィは僕の腰を軽く持ち上げるようにすると、ナカから自身を引き抜いた。急に失われた熱が淋しく、切なさからか腹の奥が小さく痛む。

「ザフィ……、なんで、なんで……っ」

 僕だけがザフィを求めて、ザフィに好意を寄せていたのだろうか。こんなことなら、望まなければよかった。
 俯いて静かに泣く僕に「違うよ」とはっきりとした否定が降り注ぐ。それに釣られるように顔を上げれば、ザフィもまた泣きそうな表情をしていた。

「アヅが俺を想ってること、伝わってるから。だから、怖がる必要なんて、ないんだよ」

 ザフィの左手が、僕の頬を流れる涙を拭う。指先で目尻に浮かぶ涙も掬うと、ザフィは「さ」と僕を軽々と両手で持ち上げ身体の上からどかした。

「身体、大丈夫? 服、着れる?」
「……うん」

 服を着るといっても、お互いに上は全く乱れていないし、なんならザフィはスラックスさえ脱いでないし。しいて言うなら、僕の下半身が少し、いや、それなりにベタベタするだけで、別に歩けないわけじゃない。
 脱がされたままの下着とズボンを手に取り、もたもたしながら足を通す。僕が衣類を身に着けるのを見計らって、先に身支度を終えていたザフィが立ち上がった。

「じゃ、帰ろうか。
「……うん、

 “ザフィ”と呼ばなかった僕に、彼が悲しげに目を伏せる。
 僕だって本当はザフィって呼びたい。でも、もう呼んではいけない気がして、僕はそそくさと籠の中に荷物を押し込むと、逃げるようにザフィの前を歩き出した。



 あれからニ週間ほどが経っただろうか。
 ザフィはぱったりと来なくなった。
 僕が彼を欲しがったから、もう来ないつもりなんだろう。そもそも彼は神父だ。誰か一人を特別に愛するなんてことはしないし、そして彼を“人”に縛り付けてはいけない。

「こんなことなら、やめればよかった……」

 乳鉢の中身を磨り潰しながらため息を吐く。ゴリゴリといかつい音を立てて粉状になっていく薬草。まるで僕の心みたいだ。最後には吹けば失くなってしまうのだろうか。

「……あ、もう夜か」

 窓から差し込んでいた日の光は落ちきって、綺麗な満月が覗いている。白い、いや銀色の優しい明かりは、僕にザフィの瞳を思い出させる。
 頭を振って、一旦磨り潰していた手を止める。ランプに火を点けないと、と椅子から立ち上がったところで、窓の外に灯りがゆらゆらと微かに揺れたのが見えた。

「……?」

 もしかしてザフィだろうか。なら、この間のことを謝りたい。同じ気持ちでなくていいから、これからも友人として側にいたい、いさせてほしい。
 浮き足立つのを抑えて、ザフィに出すお茶の準備をする。カップをふたつ出して、あ、水を沸かさないと。それから、そうだ、珍しい薬草が手に入ったから、それで新しいお茶を作ってみたんだけど、どう――

「……」

 用意していた手が止まる。
 おかしい。変だ。今までザフィが灯りを点けて来たことがあっただろうか。
 いや、ない。なかった。
 じゃあ、誰が……?

「っ」

 窓の外に、もう一度視線をやる。
 ひとつだった灯りは、ふたつに増え、みっつに増え、みるみるうちにその数を増やしていく。
 ガサガサと草木を分け入る音とは別に、複数の男たちの話し声が近づいてくる。

「……!」

 最近、住民が来ることはなかったのに。今さらなんで? いや、そんなの後でいい。早く逃げないと。あんな人数、無理に決まってる。それに、もうザフィ以外に触れられたくない。
 物音を立てないようにして、準備をしていたカップを棚へと戻す。左手を口に当て、息を押し殺し、忍び足で裏手へと急ぐ。閉めていたカーテンをそうっと開け、窓の鍵をカチリと解いた時、背後の扉が、壊れそうな勢いで叩かれた。
 ゴン、ゴン、ゴゴン、ゴン――

「ひ……っ」

 悲鳴が上がりそうになるのを必死で堪え、僕は、窓枠に足をかけると闇夜へと飛び出した。
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