乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

文字の大きさ
113 / 196
18章

112.仕事禁止

しおりを挟む
 何もすることのなくなったイナトはソワソワとしていた。いつも時間があれば仕事ばかりしていたようだ。仕事人間ということは想像通りではある。だが、まさかずっと私の部屋の前で待機しているとは思っていなかった。

 あまりにもイナトが私の部屋の前から動かないので、リビングに置いてある広めのソファに座って本を読むことにした。
 私がのんびり本を読んでいると、イナトは「何か飲みますか?」と言ったり、「おやつも用意しましょうか」といきなりお菓子を作り始めたり。
 
 できたてのおやつをイナトと一緒に食べた。美味しい。美味しいのだが、イナトはせかせかと私のために働いている……。これでは仕事を禁止した意味がないのではないか?

「ねえ、仕事禁止って言ったけど、私に構えってわけじゃないよ!?」

 私の隣で紅茶を飲みゆっくりしているイナトにツッコミをいれる。イナトは困った顔をしてカップを置いた。
 
「すみません。何かしていないと落ち着かなくて……。僕がしたいだけなので気にしないでください」

 イナトは子供の頃から勉強や剣術を学んでおり、スケジュールはいつもみっちりだったそうだ。だからこそ何もやることがないのには慣れていないらしい。
 これからはイナトに休むということも覚えてもらいたいものだ。

「そう言えば、スミスさんとクロノダさんが話してる最中、外に出て行ったけどあれ、なんだったの? アデルさんの話?」
「いえ、アデルについては僕とルーパルドが別件で動いていた時に連絡が来ました。救世主様に関係するものですし、話しておきましょうか」

 イナトはあまり言いたくなさそうだったが、話しておくと言ってくれたので私は静かに次の言葉を待った。

「スタート国にある神殿を覚えていますか?」
「うん。神官がいなくて、大きなウルフで洞窟を維持してたところだね」
「はい。そのウルフなんですが――」

 大きなウルフはどうやら神官が準備したものではなかったらしい。
 すでにその前から神官は木の魔物に殺されており、神殿は機能していなかったと。だが、洞窟が維持されていたのは事実だ。それならば誰がわざわざ神殿の維持のためにウルフを捕まえていたのだろう。
 
「真相を探るため、騎士を派遣していたそうです。ですが、突然魔族が現れ派遣した騎士の大半は殺されてしまったと」
「なんで魔族が? それって偶然なのかな。それとも魔族も神殿に用があったとか?」
「殺されてしまったのでわかりませんが、神殿に用があったのではないかと言われています。ファースト街にちょうど派遣されていた騎士がいるとの情報が入り、話を聞きに行っていました」

 神殿は通常であれば魔族は避けたい建物らしい。
 神聖だからと聞いたが、光魔法に弱いとかそういう類なのだろうか。
 イナトに聞いてみたものの、疑問に思ったことがないらしく、詳しいことは知らないと言われてしまった。流石に全知全能ではないし、こればっかりは仕方ない。

「男の従者に接触した後、またスタート国の神殿へと調査に行きたいのですが構いませんか?」
「もちろん。私も気になるしね」

 すぐに伝書紙を送りますと仕事モードになってしまったイナト。慌てて立ち上がったイナトの腕を掴む。

「今日は休むって言ったでしょ。伝書紙は明日ね」
「……わかりました。楽しい話でもしましょうか」

 イナトは息を吐き、ソファへと座り直した。紅茶を飲みながら話をしていると、外で昼寝をしてくると出ていたルーパルドが帰ってきた。

「もしかして、2人ずっと一緒にいます?」
「そう言えばそうだね」
「すげーや。俺、団長とずっといるの耐えられないんですけど」
「それはどう言う意味だ?」

 一瞬「しまった!」という顔をしたが、ルーパルドは素直に話し出す。
 
「だって仕事の話しかしないですもん。……あ、いやでも今なら仕事抜きで話せますかね」
「うん。例えば、ルーパルドとロクどっちが扱いやすいか、とか」
「なんですかそれ。どうせ団長は渡者って言うんでしょう?」
「ルーパルドと違って素直だからな」

 イナトが渋らずお金を使うからというのもあるが、素直だというのは同意だ。

「あ、従者に会ったらまたスタート国の神殿行くことにしたよ」
「仕事の話ししてるじゃないですか~!」
「私があの時何しに行ったのか気になったから教えてくれただけだからセーフだよ」
「全然セーフじゃないでしょ!」

 そう言ったものの、争うつもりのないルーパルドは「今日は俺の飯当番なんで今から作りまーす」とキッチンへと歩く。

「あれ? これも仕事……?」

 そんな声が聞こえたが、無視しておこう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

蝋梅
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...