131 / 196
21章
130.勇者の剣
しおりを挟む
箱へと入りオジーは辺りをキョロキョロ。もう恒例のようなものだ。
「俺の時はこんなものなかったなぁ」
足元の草や土を触ってみたり、空をじっくりと眺めてみたり。オジーは興味深そうに眺めている。
「白い箱は召使さんにもらいましたよ」
「召使? 俺も救世主と一緒に旅をしていたが、召使を名乗る人はいなかったな」
どうやら過去は不便を強いられていたようだ。マップも紙のものしかない。
また、洞窟はオジー達が神殿へと固定してくれていたらしい。かなり大変だっただろうにありがたいことだ。
オジーは気が済んだのか、景観から目を離しルーパルドを見た。
「それで? ここにその勇者の剣を見せたい人がいるのかい?」
「呼びに行きますので鍛冶場で待っててください」
ルーパルドは足早にクロノダの部屋に通じている扉を叩き、クロノダを呼んだ。返事はあったがすぐに出て来ず。
クロノダはまだ寝ていたようで大あくびをしながら扉から現れた。
おもむろにオジーを見てクロノダは指を差し、ルーパルドに問いかけた。
「このおっさんが500年前の勇者なのか?」
「おっさんって言わないでください。オジー様って呼んでも良いレベルの人ですよ!?」
「ははは……そこまで堅苦しくしなくていいよ。それで、君が勇者の剣を見たがっていたんだね?」
「ああ、そうだが……。なるほど、確かに本物っぽいな」
触って良いか許可を貰いクロノダは早速剣をくまなく調べる。オジーはそんなクロノダを見て「職人さんって感じだね」とクロノダをじっくりと眺めている。
気が済んだクロノダは剣をオジーへと返し、すぐに飾ってあった模造品の勇者の剣を手に取った。
「勇者の剣っつっても、偽物ほど高級な素材はほとんど使ってないんだな」
模造品の方が使っている素材が高価。オジーの剣は見た目こそ上品な作りだ。高級品と並べても見劣りしない。
しかし使っているのはどこにでも売っている鉄だと言う。
とは言ったものの、真似できない素材が1つ。黒スライムが誤飲して吐き出した超高純度鉄――
「また黒スライム!?」
スライムならなんでも体内に取り込み溶かしてしまえると思っていたのだが、そうでもないらしい。
あまりにも鉄の純度が高いと個体によっては不快に感じ、吐き出してしまうのだとか。加えてその個体もかなり低確率らしい。
「わかるよその気持ち。黒スライムは救世主の旅でよく見かけるからね。うんざりしてくるよね」
クロノダ以外はうんうんと頷いている。
「いや、そもそも黒スライム自体かなり貴重なんだが……」
「救世主専用の洞窟にいっぱいいるんですよ」
一応クロノダへ簡単に説明をすると、少し嫌そうな表情を見せた。流石に黒スライムだらけの洞窟は不気味だと思ったのだろう。
「なあ、勇者の剣を元に救世主用の剣を作っても良いか?」
「黒スライム取ってこいって?」
作りたくなってきたクロノダは、落ち着かない様子でそうオジーに問いかける。しかしイナトがすかさず素材について言及。
「それは別ので代用する。それで、勇者さんはどうだ? 真似して作ってもいいか?」
「もちろんそれは構わないよ。そもそも、すでにかなりの模造品が存在しているし今更だしね」
快諾したオジー。クロノダはそれもそうかと納得しつつ、素材の入っている箱を指差した。
「ここにある素材は使って良いんだろ?」
「はい。何を使っても良いですよ。足りなければ出来る限り集めてきます」
私がそう言えば、満足そうにクロノダは「よし」と頷く。どのようなものを作る予定なのかは知らないが、私の武器が強くなることは喜ばしいことだ。
「ん。それならリンが持ちやすいよう軽めにしよう。持ち手は後で粘土を握ってもらって確認する」
お尻ポケットに入れていたのであろう、くしゃくしゃの紙にペンを走らせるクロノダ。
書き終わったあとは準備をしてくると扉から自身の部屋へと戻っていってしまった。
それを見届けたオジーは片手で持っていた勇者の剣を腰に差し直して言う。
「さて、俺はもうお役御免かな」
「もう行ってしまうんですか?」
「うん。老いぼれの力なんて必要ないだろう?」
ルーパルドは家族を失っているからか、血縁関係のあるオジーと別れるのが少し寂しいようだ。だが、オジーは止まるつもりはない。
「俺はこれからも独り身で自由に生きていくよ」
嫁も子もいらない。これからも死ぬまで好きに生きる! とオジーは笑顔で言った。
「結婚してなかったんですね」
「そんな暇はないよ。俺はいつでも旅で忙しいんだからね」
「結婚して落ち着こうとは思わないんですか?」
「今更嫁さん探しって言ってもね~。もう良い歳のおじさんだし」
顎髭を触りながら考えるオジーと目が合う。
「君の婿候補にでも立候補しておこうかな」
オジーは「考えておいてね~」と軽く言った後、勇者の剣で次元を裂き箱から自ら出ていってしまった。
「すご! 今の見た? 空間裂いて出ていったよ!?」
「いや、それよりもまずあいつの告白について何かしら反応するところじゃないのか」
ロクはやっと喋ったかと思えば、私があえて触れていなかった話にツッコミを入れた。
「俺の時はこんなものなかったなぁ」
足元の草や土を触ってみたり、空をじっくりと眺めてみたり。オジーは興味深そうに眺めている。
「白い箱は召使さんにもらいましたよ」
「召使? 俺も救世主と一緒に旅をしていたが、召使を名乗る人はいなかったな」
どうやら過去は不便を強いられていたようだ。マップも紙のものしかない。
また、洞窟はオジー達が神殿へと固定してくれていたらしい。かなり大変だっただろうにありがたいことだ。
オジーは気が済んだのか、景観から目を離しルーパルドを見た。
「それで? ここにその勇者の剣を見せたい人がいるのかい?」
「呼びに行きますので鍛冶場で待っててください」
ルーパルドは足早にクロノダの部屋に通じている扉を叩き、クロノダを呼んだ。返事はあったがすぐに出て来ず。
クロノダはまだ寝ていたようで大あくびをしながら扉から現れた。
おもむろにオジーを見てクロノダは指を差し、ルーパルドに問いかけた。
「このおっさんが500年前の勇者なのか?」
「おっさんって言わないでください。オジー様って呼んでも良いレベルの人ですよ!?」
「ははは……そこまで堅苦しくしなくていいよ。それで、君が勇者の剣を見たがっていたんだね?」
「ああ、そうだが……。なるほど、確かに本物っぽいな」
触って良いか許可を貰いクロノダは早速剣をくまなく調べる。オジーはそんなクロノダを見て「職人さんって感じだね」とクロノダをじっくりと眺めている。
気が済んだクロノダは剣をオジーへと返し、すぐに飾ってあった模造品の勇者の剣を手に取った。
「勇者の剣っつっても、偽物ほど高級な素材はほとんど使ってないんだな」
模造品の方が使っている素材が高価。オジーの剣は見た目こそ上品な作りだ。高級品と並べても見劣りしない。
しかし使っているのはどこにでも売っている鉄だと言う。
とは言ったものの、真似できない素材が1つ。黒スライムが誤飲して吐き出した超高純度鉄――
「また黒スライム!?」
スライムならなんでも体内に取り込み溶かしてしまえると思っていたのだが、そうでもないらしい。
あまりにも鉄の純度が高いと個体によっては不快に感じ、吐き出してしまうのだとか。加えてその個体もかなり低確率らしい。
「わかるよその気持ち。黒スライムは救世主の旅でよく見かけるからね。うんざりしてくるよね」
クロノダ以外はうんうんと頷いている。
「いや、そもそも黒スライム自体かなり貴重なんだが……」
「救世主専用の洞窟にいっぱいいるんですよ」
一応クロノダへ簡単に説明をすると、少し嫌そうな表情を見せた。流石に黒スライムだらけの洞窟は不気味だと思ったのだろう。
「なあ、勇者の剣を元に救世主用の剣を作っても良いか?」
「黒スライム取ってこいって?」
作りたくなってきたクロノダは、落ち着かない様子でそうオジーに問いかける。しかしイナトがすかさず素材について言及。
「それは別ので代用する。それで、勇者さんはどうだ? 真似して作ってもいいか?」
「もちろんそれは構わないよ。そもそも、すでにかなりの模造品が存在しているし今更だしね」
快諾したオジー。クロノダはそれもそうかと納得しつつ、素材の入っている箱を指差した。
「ここにある素材は使って良いんだろ?」
「はい。何を使っても良いですよ。足りなければ出来る限り集めてきます」
私がそう言えば、満足そうにクロノダは「よし」と頷く。どのようなものを作る予定なのかは知らないが、私の武器が強くなることは喜ばしいことだ。
「ん。それならリンが持ちやすいよう軽めにしよう。持ち手は後で粘土を握ってもらって確認する」
お尻ポケットに入れていたのであろう、くしゃくしゃの紙にペンを走らせるクロノダ。
書き終わったあとは準備をしてくると扉から自身の部屋へと戻っていってしまった。
それを見届けたオジーは片手で持っていた勇者の剣を腰に差し直して言う。
「さて、俺はもうお役御免かな」
「もう行ってしまうんですか?」
「うん。老いぼれの力なんて必要ないだろう?」
ルーパルドは家族を失っているからか、血縁関係のあるオジーと別れるのが少し寂しいようだ。だが、オジーは止まるつもりはない。
「俺はこれからも独り身で自由に生きていくよ」
嫁も子もいらない。これからも死ぬまで好きに生きる! とオジーは笑顔で言った。
「結婚してなかったんですね」
「そんな暇はないよ。俺はいつでも旅で忙しいんだからね」
「結婚して落ち着こうとは思わないんですか?」
「今更嫁さん探しって言ってもね~。もう良い歳のおじさんだし」
顎髭を触りながら考えるオジーと目が合う。
「君の婿候補にでも立候補しておこうかな」
オジーは「考えておいてね~」と軽く言った後、勇者の剣で次元を裂き箱から自ら出ていってしまった。
「すご! 今の見た? 空間裂いて出ていったよ!?」
「いや、それよりもまずあいつの告白について何かしら反応するところじゃないのか」
ロクはやっと喋ったかと思えば、私があえて触れていなかった話にツッコミを入れた。
0
あなたにおすすめの小説
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる