乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

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21章

137.アクセサリー

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 吹雪は止み、外へと出ると辺り一面雪だらけ。
 一体どこにいるんだと思うほどに何もない。地図を見れば場所なんて一発なのだが、地図を持っていない人はどのようにこのような状況を対処しているのだろう。
 
「救世主様!」

 鼻も耳も赤いイナト。雪で走りにくいはずなのに全速力で走っており、歩きづらさを感じさせない。もう雪慣れしたのか。
 私の前まで走ってきて、良かった良かったとイナトは言う。そんな様子を見て、前もこんなことあったなぁと思いつつ、イナトに感謝の言葉をかける。
 イナトは申し訳なさそうな表情をしつつも、お礼を言われて少し嬉しそうだ。

「救世主さま、落とし物ですよ」

 ルーパルドが主人の証を私に握らせる。ロクからもらったものだ。いつ落としたのだろう。
 すると、ロクがルーパルドの隣で主人の証を眺めながら言う。

「洞窟に落ちていた。だからリンを探すのに手間取った」

 どうやら私が逃げ込んだ洞窟に落ちていたようだ。
 そもそも、なぜヒスイとこの小屋にいたのかわからない。ヒスイを見ると、面倒くさそうな表情を浮かべつつも説明してくれる。

「ちょうど私はこの小屋で研究をしていました。……召使、は知っているでしょう? 召使がこの小屋の近くに救世主がいると伝えに来たんです」
「ああ、召使さん。会った記憶はないし寝ちゃってたのかな」
「ええ、それはもう気持ちよさそうに。何度も声をかけましたが起きませんでしたね」
「も、申し訳ない……」

 謝る私を無視して、イナトを見るヒスイ。イナトは「何か?」と訝しげにヒスイを睨んだ。

「首輪でもつけておいた方がよいのでは?」
「そうしたいのは山々なんですけどね」
「それは、勘弁してね?」

 大真面目に言っている雰囲気のイナトにすかさず私は言葉を投げる。さすがに犬のような扱いはごめん被りたい。
 イナトは私のひきつった表情を見て笑顔で「冗談ですよ」なんて言っている。いやでもさっき真剣な表情だったよ……

「首輪は人間につけるもんじゃないぞ?」
「うんうん。そうだな。団長がおかしくなっちゃったんだよ」
「あいつは元々リンが絡むとおかしい」
「あっはっは、違いない」
 
 ルーパルドとロクの話に仏頂面をしていたイナトだったが、それを無視して私に笑顔を向けてくる。
 そして私の側まできて、私の手首に何かを潜らせた。それはカチッと私の手首に合うように収縮。
 見たところブレスレットのようだ。金のリングにサファイアが組み込まれている。かなり高価なものであることは間違い無いだろう。
 そもそも、収縮する時点でなかなかの性能持ちだと思われる。何か魔法でもかかっているのだろうか。

「これで救世主様の居場所が僕にもわかるようになります。と言っても地図に表示されるわけではないので、救世主様のマップほどではありませんが」

 「へぇ、便利だなぁ」と私がブレスレットを眺めていると、イナトは話を続ける。

「救世主様の魔力を注入することで僕を呼び出すことも可能です。まあ、回数制限はありますが」
「え、ええ……。すごいね」

 アデルのように自分の意思で来られるわけではないようだが、イナトのことだ。私がまた1人になった時、真っ先に自分を呼び出せと言いたいのだろう。
 正直1人になるのは貴重なことだ。また、呼び出さない方がいい時だってあるはずだ。

「呼び出すのは時と場合によるってことで……」
「遠慮は不要ですよ、救世主様」
「遠慮じゃなくて――」
「はいはい、その話もう終わり」

 そう言い返そうとしたところでルーパルドが言葉を遮る。とりあえず今は頷いておけと言うことだろう。
 
「ブレスレットで思い出したんですけど、俺達にくれるって話のアクセサリーってどうなりました?」
「あ、できてはいるよ。暇な時間がちょくちょくあったからね。今日のワープポイント解放が終わったら渡すよ」

 付与自体は簡単なのだが、何を付与するか何個付与するか――考えていたら予想よりも完成が遅くなってしまった。
 3人は嬉しそうにしてくれた。なお、黙って話を聞いていたヒスイはアクセサリーに反応を示した。
 
「救世主が作ったアクセサリーですか? それは興味深いですね」
「お前の分はないぞ」
「別に欲しいなんて言ってません」

 ロクは勝ち誇ったかのように笑みを浮かべるが、ヒスイはそっけなく答える。
 表情だけでは実際の感情は読み取れない。アデルのようにただ研究材料にしたいだけかもしれない。
 だが、助けてもらったのは事実だし、自分用に作ったアクセサリーくらい渡してもいいだろう。

「私が使ってたものですが、よければどうぞ」
「……よろしいのですか?」
「はい。友人にもらった指輪があるので、それを着けようかと」

 デボラから貰ったダイヤの指輪を取り出して指に嵌める。今までつけていなかったのは、装備の枠がなかったから。なんてメタなことは言えるわけもなく。
 背後から「なんでそんな男に……」と声が聞こえた気もするが、無視しておこう。

「ありがとうございます」

 ヒスイは寒さなのか照れなのか顔を赤らめた。
 さすがに私の私物渡して照れはしないだろう。多分。きっとずっと寒い中外で立っているからだろう。そう言うことにしておこう。

「今更返してと言われても返しませんよ?」
「はい。大丈夫です」

 いそいそと胸ポケットに入れたのは見なかったことにしよう……。
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