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21章
136.遭難
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「美醜の話はあまりしたくないんだが……」
そうイナトは前置きをしてから話し出す。
「ナルのような綺麗な子供を狙う者は大勢いる。魔法があるから大丈夫だと本人は言うが、魔法を封じられたら為す術はないだろう」
ナルは美少年と言われるような顔立ちをしている。また、人間では珍しい銀色の髪。高く売れると狙う輩が多く、リスクを持ち歩くようなものだとイナトは話す。
「それと、出自不明。外見に龍人や魔族などに現れる特徴はないが、人間よりもはるかに多くの魔力量を蓄えている。美しい見目だってそうだ。人間でない可能性も考えられる」
誘拐の可能性や無自覚にこちらに不利益をもたらす可能性。
国として保護していると言えればどうにでもなる。
しかし、救世主一行として迎え入れてしまうと、国ではなく救世主個人として不利益と戦わなければいけない場合もあるのだとイナトは説明してくれた。
確かに厄介なことはできるだけ避けたい。
「そうなると私1人で世界救済した方がよかったりしない?」
モテる男しかおらず、そうでなくても目立つ存在。
特にイナトについては王子だ。イナトのせいで女性には特に嫌われているし、ルーパルドだってモテる。少し前に追われた理由はルーパルドだ。
ルーパルドは慌てて私の言葉に返す。
「いやいやいや! 俺達は例外でしょ!? これまでのことを踏まえて評価してくださいよ!」
確かに、女性からの視線は痛いが戦力としてはもちろん申し分ない。街にさえいなければメリットの方が多いのは考えなくてもわかることだ。
私の表情で何を読み取ったのか、ルーパルドはまるで捨てられることを察した子犬のようだ。
「これ以上のリスクを負いたくはない。でも、今一緒に旅をしている3人とは最後まで走り抜けたいと思います」
「よかったー! 解散なんて言われたらどうしようかと思いましたよ……」
「英断ですね、救世主様」
安堵と喜びで満面の笑みを浮かべる2人を見て、私はここまで私のことを想ってくれていることに少しだけ照れてしまった。
◇
「えっと、ここどこだっけ……」
ナルを騎士学校に置いていき、早々にゲムデーズからエンドラスト国へ。
ワープポイントの全開放を目指し歩いていると、途中、吹雪に遭い洞窟へと逃げ込んだ。その時に皆とはぐれてしまったようで洞窟で1人だったはず。
それなのに今は暖炉の側に私はいる。
敷き毛布に包まれており、地べたに置かれたトレイ。そのトレイにはココアの入ったカップが2つ置いてあり、湯気がゆらゆらと空気に溶け込んでいく。
私を介抱してくれた誰かがいるようだが、部屋には私以外誰も見当たらなかった。
暖かい部屋とは裏腹に外は強風。雪が窓を叩き、風の音が騒がしい。まだ外に出るべきではないだろう。
「あなたは意外と抜けてるんですね」
呆れた声でそう言ったのは、ヒスイだった。どうやら別の部屋で暖かいスープを作っていたようで、私の目の前にスープを置いてくれた。
私の隣に腰を下ろし、トレイに乗っていたココアを1つ手に取る。曇るメガネを気にせず、ヒスイはひとくちココアを飲み一息。
「えっと、助けてくれてありがとうございます……?」
「勘違いしないでください。死の回数を調整しているだけですから」
これ以上死なれると困るということだろうか。ツンデレっぽい言い方をしているが、"死の回数"というのはなかなか物騒な言葉だ。
ヒスイはココアをトレイに置き、スープに手を伸ばす。
「飲みなさい。救世主の側にいた男達にはすでに伝書紙で伝えてあります」
スプーンで掬って飲ませようとするヒスイ。だが、甘い雰囲気は一切なく、さっさと飲めと睨んでいる。
その瞳に睨まれて、萎縮するよりも先にガラス玉のように綺麗だなと目を奪われた。
いや、そんな感想を言っている場合ではない。
「……自分で飲むのでスプーン貸してください」
スプーンに手を伸ばせば避けられてしまう。もう一度手を伸ばせば空いている手で手首を掴まれてしまう。
「大人しく口を開けて待てばいいものを、なぜ? ……私からの口移しがご所望でしょうか」
スプーンを置き、顎のラインをなぞるように空いた手を這わす。ぞわっと鳥肌が立ち、思わずその手を掴んだ。すると今度は恋人繋ぎのように指先を絡めてくる始末。
指を絡められているだけなのに、とてつもなくいやらしく感じてしまう。
「な、な、なぜそこに行き着くんですか!? なんでこの世界の人って時々会話が成り立たなくなるんですか?!」
「チッ、私も感化されたか……」
私が騒いだからか、ヒスイは舌打ちをした後、私から距離を取った。
「救世主には恋愛面で特殊な能力を持っています。それが先ほどの私の行動ですね」
ヒスイからは甘さを感じることはなかったが、やはり虜にしてしまう何かが作用しているのか。
ヒスイの行動に納得していると、不可解な表情を浮かべている姿が目に入る。
「少しでも異性に好意的な感情が芽生えると発動します。まさかあれだけ殺されておいて、私にもそのような感情が芽生えるとは……」
「え、いや、ええ……? 美形、ですし?」
綺麗だなぁと思ったことで発動したということのようだ。これだと私がいろんな男に好意を示しているせいで、発動しているということではないか。正直恥ずかしい。
「まあ、私も人のことは言えません。その相手も少なからず好意的な感情があってこそ発動するものなので。不愉快ですが」
メガネを軽く押し、ヒスイは大きくため息を吐いた。
そうイナトは前置きをしてから話し出す。
「ナルのような綺麗な子供を狙う者は大勢いる。魔法があるから大丈夫だと本人は言うが、魔法を封じられたら為す術はないだろう」
ナルは美少年と言われるような顔立ちをしている。また、人間では珍しい銀色の髪。高く売れると狙う輩が多く、リスクを持ち歩くようなものだとイナトは話す。
「それと、出自不明。外見に龍人や魔族などに現れる特徴はないが、人間よりもはるかに多くの魔力量を蓄えている。美しい見目だってそうだ。人間でない可能性も考えられる」
誘拐の可能性や無自覚にこちらに不利益をもたらす可能性。
国として保護していると言えればどうにでもなる。
しかし、救世主一行として迎え入れてしまうと、国ではなく救世主個人として不利益と戦わなければいけない場合もあるのだとイナトは説明してくれた。
確かに厄介なことはできるだけ避けたい。
「そうなると私1人で世界救済した方がよかったりしない?」
モテる男しかおらず、そうでなくても目立つ存在。
特にイナトについては王子だ。イナトのせいで女性には特に嫌われているし、ルーパルドだってモテる。少し前に追われた理由はルーパルドだ。
ルーパルドは慌てて私の言葉に返す。
「いやいやいや! 俺達は例外でしょ!? これまでのことを踏まえて評価してくださいよ!」
確かに、女性からの視線は痛いが戦力としてはもちろん申し分ない。街にさえいなければメリットの方が多いのは考えなくてもわかることだ。
私の表情で何を読み取ったのか、ルーパルドはまるで捨てられることを察した子犬のようだ。
「これ以上のリスクを負いたくはない。でも、今一緒に旅をしている3人とは最後まで走り抜けたいと思います」
「よかったー! 解散なんて言われたらどうしようかと思いましたよ……」
「英断ですね、救世主様」
安堵と喜びで満面の笑みを浮かべる2人を見て、私はここまで私のことを想ってくれていることに少しだけ照れてしまった。
◇
「えっと、ここどこだっけ……」
ナルを騎士学校に置いていき、早々にゲムデーズからエンドラスト国へ。
ワープポイントの全開放を目指し歩いていると、途中、吹雪に遭い洞窟へと逃げ込んだ。その時に皆とはぐれてしまったようで洞窟で1人だったはず。
それなのに今は暖炉の側に私はいる。
敷き毛布に包まれており、地べたに置かれたトレイ。そのトレイにはココアの入ったカップが2つ置いてあり、湯気がゆらゆらと空気に溶け込んでいく。
私を介抱してくれた誰かがいるようだが、部屋には私以外誰も見当たらなかった。
暖かい部屋とは裏腹に外は強風。雪が窓を叩き、風の音が騒がしい。まだ外に出るべきではないだろう。
「あなたは意外と抜けてるんですね」
呆れた声でそう言ったのは、ヒスイだった。どうやら別の部屋で暖かいスープを作っていたようで、私の目の前にスープを置いてくれた。
私の隣に腰を下ろし、トレイに乗っていたココアを1つ手に取る。曇るメガネを気にせず、ヒスイはひとくちココアを飲み一息。
「えっと、助けてくれてありがとうございます……?」
「勘違いしないでください。死の回数を調整しているだけですから」
これ以上死なれると困るということだろうか。ツンデレっぽい言い方をしているが、"死の回数"というのはなかなか物騒な言葉だ。
ヒスイはココアをトレイに置き、スープに手を伸ばす。
「飲みなさい。救世主の側にいた男達にはすでに伝書紙で伝えてあります」
スプーンで掬って飲ませようとするヒスイ。だが、甘い雰囲気は一切なく、さっさと飲めと睨んでいる。
その瞳に睨まれて、萎縮するよりも先にガラス玉のように綺麗だなと目を奪われた。
いや、そんな感想を言っている場合ではない。
「……自分で飲むのでスプーン貸してください」
スプーンに手を伸ばせば避けられてしまう。もう一度手を伸ばせば空いている手で手首を掴まれてしまう。
「大人しく口を開けて待てばいいものを、なぜ? ……私からの口移しがご所望でしょうか」
スプーンを置き、顎のラインをなぞるように空いた手を這わす。ぞわっと鳥肌が立ち、思わずその手を掴んだ。すると今度は恋人繋ぎのように指先を絡めてくる始末。
指を絡められているだけなのに、とてつもなくいやらしく感じてしまう。
「な、な、なぜそこに行き着くんですか!? なんでこの世界の人って時々会話が成り立たなくなるんですか?!」
「チッ、私も感化されたか……」
私が騒いだからか、ヒスイは舌打ちをした後、私から距離を取った。
「救世主には恋愛面で特殊な能力を持っています。それが先ほどの私の行動ですね」
ヒスイからは甘さを感じることはなかったが、やはり虜にしてしまう何かが作用しているのか。
ヒスイの行動に納得していると、不可解な表情を浮かべている姿が目に入る。
「少しでも異性に好意的な感情が芽生えると発動します。まさかあれだけ殺されておいて、私にもそのような感情が芽生えるとは……」
「え、いや、ええ……? 美形、ですし?」
綺麗だなぁと思ったことで発動したということのようだ。これだと私がいろんな男に好意を示しているせいで、発動しているということではないか。正直恥ずかしい。
「まあ、私も人のことは言えません。その相手も少なからず好意的な感情があってこそ発動するものなので。不愉快ですが」
メガネを軽く押し、ヒスイは大きくため息を吐いた。
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