乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

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21章

138.いざ、魔族の土地へ

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 ヒスイにお礼を言った後、別れてワープポイントの解放へ。
 すぐはぐれるからとルーパルドが手を繋いで歩こうかと提案してきた。もちろん拒否だ。

「恋人でもないのに手を繋ぐべきではない」

 イナトはムッとした表情でルーパルドにそう言った。イナトはそこら辺ぶれない。私は乗っかるように頷く。
 
「そうだよ。イナトの言う通りだよ」
「なら俺と恋人にでもなります?」
「いや、ならないけど?」
「俺ならどうだ?」
「なんでいけると思ったの」
 
 どうしても手が繋ぎたいルーパルド。そしてなぜか参戦するロク。イナトは呆れた表情を浮かべている。まだイナトが参戦しない分マシか……。
 
 戦闘面とか人に見られた場合など様々なデメリットを開示して、なんとかルーパルドとロクを黙らせたのだった――。
 
 魔族のテリトリー以外は終わらせてしまったので、今後は魔族との戦闘に備えておかなければならない。
 
「魔族、ねぇ。会ったことはあるけど戦ったことはないから、どの程度の実力なのかわからないね」
「エンドラストは戦闘族と呼ばれるほど強い者が多いです。それでも土地を奪われているとなると、かなりの強さかと」

 魔王はその場にいるだけで足がすくんでしまいそうなほどだった。
 部下がどの程度かはわからないが、以前会った部下の魔族はそこまで強そうには思えなかった。ただ実力を隠すのが上手いだけかもしれないのだが。
 こればっかりは戦ってみないことにはわからない。

「できるだけ魔族に見つからないように、と言いたいところですけれど難しいかもしれませんね」
「俺が倒すから大丈夫だ」
「ロクは自信ありすぎ。ちょっと前に風邪引いてたんだから無理しないでね?」
「ああ」

 ロクはつまらなさそうに口の端を下げた。


 ◇


 魔族が侵略している土地が見えてきた。
 見た目は至って普通。これまでと同じく雪で覆われており、正直魔族の土地とエンドラストの土地の境目が正確なのかわからないほどだ。
 まあ、呪いが蔓延っているとかそういう設定はないみたいだし、目に見えてヤバそうな雰囲気はないのかもしれない。
 ただ、鋭い視線は感じる。監視役がいるのだろう。

「視線の方角や距離は大体把握できますが……どうします? 槍でも投げときます?」
「やめろ。あまり刺激するな。やるとしてもまず相手に援軍を呼ばれないように手回ししておかないと」
「そうですね~。多勢に無勢は遠慮したいですしね」

 戦い慣れているからか、動揺の色はなく軽いやり取りを交えるイナトとルーパルド。
 その後、目を細めて遠くを見ていたイナトに、チュートリアルでもらった双眼鏡を渡した。イナトはじっくりと眺めた後ルートを決定。
 こちらです。と歩き出す。迷うことなく道なき道を進む。
 
 森へと入ったからか、先ほどまで感じていた視線は外れた。
 開けた場所に到着し、イナトは立ち止まる。
 
「ここで焚き火をしましょう」
「え、突然なに?」
「ここで休んでるぞ~と思わせておくんですよ」

 ルーパルドが説明をしてくれながら、いつの間に集めていたのか大量の枝を地面へと置いた。雪を退かし、土の上に枝をまとめる。
 イナトは松ぼっくりのような見た目のものに火をつけた。それをルーパルドの集めた木の中へと入れ込み燃やす。
 煙が空へと昇っていくのを眺め、少ししてからまた歩き出す。足跡がつくたび消して進む。面倒だが、足取りを掴ませないためだ。
 
「あれだけで効果あるの?」
「意外とあるんですよ」

 休んでいる隙に殺してやろうと赴いたり、あの辺にいるならまだ警戒する必要もない。など勝手に決めつけて行動する者も少なくないと言う。

「渡者じゃないと思わせるために焚き火をすることもあるぞ」
「へぇ、そうなんだ。ところで渡者じゃないって思わせる理由は?」
「迷い込んだ一般人と思われた方がいいこともあるからな。だからあまり気は緩めないことだ」

 私が知らない人に話しかけそうと言うことだろうか……。確かに遭難してそうな人を見れば話しかけてしまいそうだけれども。
 
「お、噂をすれば焚き火付近に誰かいるみたいですよ」
「何それ、設置してたの?」
「ええ。使い捨てのものですが、遠征時はよく使っています」

 プロジェクターで映し出したかのような映像。雪のせいか少し見えづらいが、焚き火付近に人影が見える。
 人影は角が生えている。よく見ると黒い服を着ており背は高め。どっかで見たことあるなぁと眺めていると、キョロキョロと辺りを見渡し始めた。
 映像が鮮明に見えるようになったころ、私は見覚えのある顔に目を瞬かせた。

「あれって、フレンドリーだった魔族じゃない?」
「確かにぽいな」

 私達を探しているのか「おっかしいな~」と焚き火から離れすぎない程度に探す。
 後から来た仲間らしき魔族。呆れた表情を浮かべ、フレンドリーな魔族に話しかける。

「ほらやっぱり。罠じゃないか」
「俺達が遅かっただけじゃね?」
「いやいや、どう見ても違うだろ。この雪の乱れなさ見たらわかるわ」
 
 地面の雪には足跡のみ。雪は降っているものの、すぐに足跡が消えることもない。そこからもう1人の魔族は罠だと気づいたようだ。

「お前の嗅覚でどうにかならない?」
「なんでそんなことしなきゃいけねぇんだよ。会わせたいって言ったって、相手は俺達のことこれっぽちも知らないんだろ」
「前の救世主の顔がタイプだったから、今の救世主も見てみたいって言ったのお前じゃん!」
「う、うるせー!」

 照れた魔族は羽を使って上空へと飛び、フレンドリーな魔族から逃げるように去っていった。
 ……これ以上新しい男を増やすな。
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