乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

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22章

144.大きな龍

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 ダンジョンへと戻り、また攻略を再会。
 細い道を通り、大広間で魔物と戦う。倒し切ると階段が現れるので、階段を登る。その繰り返しだ。
 私達は一切手を出さず、オジーがすべて片付けてくれる。あまりにもあっさり。圧倒的力だ。
 この人だけは敵に回したくないものだ。

「こんなに弱かったかなぁ」

 手応えのなさにオジーは少し寂しそうだ。勇者の剣に付着した血を布切れで拭いて鞘に戻した。
 過去と今で魔物の力に差があるのか、オジーがただ単に昔より強くなっているのか。どちらもあり得そうな話だが、私個人の感想としてはオジーが強くなりすぎている。と思っている。

「オジーが強いだけかと……」

 イナトも同じことを思っていたようだ。その言葉を聞いて、オジーは「そっか~」となぜか煮え切らない表情でそう言葉を返したのだった。
 
 オジーの圧倒的力を見せつけられながら進んでいると、もう気づけば最上階。
 大きな扉を前にオジーはこちらを振り返る。

「さて、開けてしまっても構わないかな?」
「もちろん。よろしくお願いします」

 皆の顔を見たあと、オジーは大きな扉をゆっくりと開ける。
 中は暗くてよく見えなかったが、オジーが扉を開き切ると、壁にかけてある松明に火が灯り、奥に大きな影が見える。それが銅像なのか魔物なのか、それはこの距離ではわからない。

 オジーが歩き出したところで私達も後をついていく。
 奥に進むにつれ大きな影は呼吸しているで、呼吸音と体の揺れが僅かにあった。
 その影は私には大きな龍に見える。

「でかいねぇ」
「でかいですねぇ」

 オジーが言った言葉をルーパルドが真似するように頷きながら言う。

「でかいでかいうるさいわね。オジー?」
「……うん?」

 名前を呼ばれて辺りを見渡した後、大きな影をじっと見つめた。
 やっと思い出したのか、オジーは目を見開いた。

「ロ、ローズクウォーツ師匠! なんでここに!?」
「え、これがオジーさんの師匠さん?」
「いや、俺の師匠の師匠。人型じゃないから思い出すのに時間かかっちゃったよ」

 ローズクウォーツと呼ばれた龍は、全身ピンク色。龍なのになんとなく感じる女性的仕草。
 オジーの話から、人型でいることの方が多かったようだ。
 
 こちらの視線と合わせるようにローズクウォーツは頭を下げ、じっと私を見つめた。また、過去の救世主に似てると言われるのだろうか。

「ふぅん、貴女強いのね」
「へ?」
「確かに俺達の知ってる救世主より断然強いよね」

 過去の救世主を知っているオジーとローズクウォーツは、珍しいものを見るように私を見ている。

「今回の救世主様はおそらく過去一強いと思います。資料を見ていてもあまり戦闘での功績は見当たりませんでしたからね」
 
 なぜかイナトがドヤ顔を決めている。私のことを買ってくれていることは素直に嬉しいが、自慢するほどじゃないので大人しくしておいてほしい。

「リンより弱くて、よく世界救済できたな?」

 ロクは私のことをそんなに強いと思っていないからか、私よりも弱い救世主を想像し、信じられなとでも言いたげな表情だ。
 
「それはあれだろ。一緒に冒険する人が強かったとか、死に戻りができるから、とかだろ」

 それに対してルーパルドは私を一瞥した後、何度も死に戻った可能性を啓示。もし早めに即死道具を持っていたのなら、あり得ないことでもない。ナルみたいなタイプがいなければ死に戻りは隠しておくこともできる。死ぬことに恐怖さえしなければ簡単なことだ。
 
 ちなみに過去の救世主は飾りというか、男を奮起させて戦うタイプばかりで前戦で戦うタイプはいなかったらしい。私はスキルポイントが貯まれば戦闘スキルによく割り振る。しかし、過去の救世主はサポートや自分の魅力など、戦闘面は控えめなことが多かったのだとか。

「私は人に任せておくのが苦手なんで……」
「良い心意気ね」
「あ、ローズクウォーツ師匠。師匠見ませんでした?」
「あんたの師匠? ……その救世主はすでに会ってるみたいだけど?」

 ローズクウォーツに聞いたところ、そのオジーの師匠の魔力痕跡が私に付着しているらしい。
 魔力痕跡は触れただけで付着する。ただそれが見てわかるのはこうして大きな龍になれるほどの能力が必要なのだとか。
 
「え? じゃあもしかして師匠、外見変えてるんですかね」
「さあ、それはわからないわね」
「そもそも、よくこの子見て暴走してませんね?」
「記憶でも失ってるんじゃない?」
「ええ~?」

 オジーの師匠はなかなかの執着を見せていたようだ。むしろそれだけの執着があったのであれば、私とその過去の人があまりにも似ていなくて、関わろうとしていないのではないだろうか。

「外見以外で何か手がかりって?」
「変態」
「お、おお……」

 オジーもローズクウォーツも、躊躇わず迷いもなくそう口にした。

「でも外面や初対面、救世主の前ではまともに見せてたわね」

 どれも抽象的すぎてわからない。そもそもその師匠は一体何者なのかもわからない。

「もうそのお師匠さんの話はいいでしょう。ダンジョンの報酬をいただけませんか?」
「ごめんごめん。世界救済するなら、師匠止めといた方がいいかなって思って。……ところで、君はこの世界で暮らすつもりかい?」
「え、帰るつもりだけど……」
「……そっか。それならやっぱり師匠は探しておいた方がよさそうだ」

 オジーは悲しそうな目をしながらも、笑って私を見たのだった。
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