乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

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22章

146.師匠

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 ぱくぱくと口を動かすが、言葉は出ず。オジーは驚いた様子で私を見た。

「これ阻害魔法? 君のでは、ないよね?」
「はい。阻害魔法なんて覚えてないですよ」
「誰がかけたんだろう。考えられるのは、君に知らせたくない誰かだろうけど」

 オジーはその場にいた3人を眺めたが、首を傾げ顎髭を触る。

「死に戻りをデメリットと思うのは、君のような救世主だけ。でも、3人もできるだけ救世主には死んでほしくないんだよね?」

 オジーは3人に確認するように問いかける。イナトはすぐに頷きオジーの質問に答えた。
 
「はい。死に戻るからと言って、命を軽く見ないでほしいと思っています」

 ルーパルドとロクも同意見だと言う。オジーは3人の意見に頷いた。
 
「なるほど。じゃあ、もし――あ、これもダメ? ねえ、ちょっと耳聞こえなくしてもいい?」
「え? いいですけど……」

 オジーは背負っていた鞄から何かを取り出した。見たところただの耳栓のようだが、その程度ですべての音を遮断するのは、難しいのではないだろうか。

「これ、魔法も付与されてるから、完璧に遮断できるんだ。はい」

 渡された耳栓を耳に入れる。地面にオジーが「どう? 聞こえる?」と書く。
 確かに何も聞こえない。私の近くでオジーが喋っているようだが、何も聞こえない。
 「聞こえません」と私が言えば、頷いて私に背を向け3人に何かを話し始めた。

 暇な時間、私は無音の世界でぼんやりと空を眺める。薄暗い中、飛んでいく鳥や小さな龍。
 魔族らしき姿も時々目に入る。こちらには気づいていないようで、優雅に空を飛んでいる。

 ぼーっとしていると、肩をトントンと指で叩かれ我に返る。
 耳栓を外し肩を叩いた人物を見る。イナトだ。
 何を聞かされたのか、イナトは複雑な表情をしている。
 ルーパルドとロクはなぜかあまり私に視線を合わせてくれない。

「俺の言葉で迷わせてしまったのならごめんね」
「……いえ、教えていただきありがとうございます」
「あとは俺たちの気持ちの問題なんで」

 イナトは貼り付けた笑みでオジーへと感謝を伝え、ルーパルドは苦笑い。

「そんな重くなる話? 私が死に戻りを使った時のメリットを聞いたはずなんじゃ?」
 
 私は、これからどんどん死に戻りしていこう! という展開になることを期待していた。
 だが、どうやら現実は違うようだ。もしかしたら今まで散々死ぬなと言っていたこともあり、そう簡単に気持ちを切り替えることができないのだろうか。
 ロクはオジーを見て問いかける。

「オジーはこれに違和感はなかったのか?」
「神様が教えてくれたらしいし、最初に受け入れちゃってたからなぁ。まず、救世主が良しとしてたわけだし」

 オジーはあっけらかんとしている。それとは逆に3人は煮え切らない様子。
 気になるが、どうせまた阻害魔法で私が聞き出せることなどないのだろう。

「さて、そろそろダンジョン攻略の再会と行こうか。時間取らせてごめんね」


 ◇


 またオジーがダンジョンを迷うことなく突き進み、これまたすぐに最上階へ。
 魔王弱体アイテムのダンジョンが1番、階層の多いダンジョンだったらしい。このダンジョンは50階。
 辿り着くとボスがいた。しかしオジーが一瞬で片付けてしまった。
 オジーがいれば魔王城へストレートに行っても問題なかったのではないかと思うほどだ。

「これが魔族弱体アイテム?」
「それは変わってないんだね」

 説明欄には"魔族弱体アイテム。持っていると弱体化する不思議なアイテム"とだけ書かれている。
 なお、見た目はロケット型ペンダント。中身を確認したが、特に何も入っていない。
 だが、オジーが言うには、見える人には写真が見えるらしい。それこそ魔族が弱体化するような何かが見えるのかもしれない。
 
「よし、あと1つ。サクッと片付けちゃおう」

 アイテムを取ったことで開いた扉から次のダンジョンへワープ。
 すぐにダンジョン内部へと入り、同じようにダンジョン攻略。
 すぐに終わると思いきや、オジーに伝書紙が届いた。すぐに中身を確認し、オジーは眉間に皺を寄せた。

「師匠からだ。なんで俺が生きてることがバレてんだ?」

 文字を読み、ページをめくり呆れた表情を浮かべたオジー。手紙を鞄に入れ込んだところで私は質問した。
 
「バレたらまずいの?」
「そう言うわけではないけど……。ダンジョン攻略したら師匠のいるとこに行こうかな。だから、申し訳ないけど手伝えるのはここまでね」
「いえいえ! すっごく助かりました。……また、会えますよね?」
「どうだろうね。……そうだ、これ渡しておくよ。血縁関係者なら使えるだろう」

 ルーパルドに渡したのは小型ナイフ。オジーが自身で作ったものらしい。救世主のために作っていたものだったが、なぜか血縁の人間でないと使えない物になってしまったのだと。

「伝書紙用の住所もあげるね。多分いけるはずだよ」
 
 オジーは紙の切れ端に住所を書き、ルーパルドへと渡した。ルーパルドは嬉しそうに礼を言いお辞儀をした。

「ありがとうございます」
「いいよいいよ。さ、気を取り直して攻略しよう。師匠にいろいろ聞きたいことがあるし、すぐ終わらせるよ」

 オジーは足早に先に進むのだった。
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