慟哭の時

レクフル

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第四章

気づいた想い

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昼食が終わって、再び歩き出す。

紫の石の輝きを求めて歩くのだが、今までの感じとは違う。


「おかしいな……」

「ん?アッシュ、どうしたんだ?」

「石が……移動してる?」

「え?!」

「どうやら、紫の石は誰かが持ち歩いている様だ。」

「そうなのか?!」

「あぁ、レクス。前はかなり遠くに感じたのに、今は近くなっている。」

「でも、誰かが持ってた場合さ、それってどうするのさ?」

「持っている者が使えているのなら私にはどうすることも出来ない。が、もし使えていないようなら、譲って貰うよう交渉する。」

「そうか。うん、分かった!」

「方向は変わらず南西だ。行こう、レクス。」

「おう!」


移動する紫の石。


持ち主は譲ってくれるのだろうか?

それは会ってみないと分からないな。

そう思いながら、紫の光を求めて達私は歩き続けた。

今は街道が近くにある、森の一角にいる。

日が落ちたので、この辺りで野宿をする。

食事が終わって、焚き火の側で腰掛けながら、お茶を飲む。

胸元にある、ディルクから貰った首飾りの先に付いている石をそっと触る。

それから、ディルクに会いたい、と、心で想ってみる。


「アッシュ?どうしたんだ?」


レクスが顔を伺う様にこちらを見てる。

言われて、ハッとして、石から手を離した。

「ううん、何でもないよ。」

レクスに笑顔で答えると、レクスが私の胸元を見て、ビックリした顔をした。

「アッシュ!なんか光ってるぞ!」

「えっ!?」

自分の胸元を見ると、ピンクの石が光っている。

どうしたら良いのか分からないが、とりあえず光る石を触ってみる事にした。


『アシュリー?』


頭の中で声が聞こえる。


「ディルク?!」

「え?!どこに?!」

レクスがキョロキョロする。


『アシュリー、聞こえるか?』

「ディルク、聞こえる…」

「アッシュ、ディルクはどこにいるんだ?」

「え?あぁ、頭の中でディルクの声が聞こえるんだ。」

『レクスか?』

「あぁ、うん、そうだ。」

『またすぐそうやって、俺とアシュリーの仲を邪魔しようとするんだな。』

ハハハってディルクが笑ってる。

「ディルク、そんな事…!」

恥ずかしくなって俯いてしまう。

「何だよ!俺だけ何にも聞こえないぞ!」

「ごめん、レクス!」

「いいよっ!あっちに行っといてやる!」

『どうした?レクスは怒ったか?』

「うん…あっちに行っといてやるって。」

『そうか。アシュリー達は、今はどこにいる?』

「銀髪の村から、南西に行った所。街道沿いにある、森の一角で野宿をしている。」

『森に危険はないか?』

「旅には慣れているから、大丈夫だよ。」

『アシュリー。』

「なに?ディルク。」

『会いたい。』

「……っ!」

『アシュリー?』

「あ、いや、ちょっとビックリして……」

『そう思ったらいけないか?』

「…ううん。ディルク。私も会いたい……」

『良かった。ありがとう。』

「そんな…お礼なんて必要ない……」

『あぁ、そうか。うん、分かった。』

「ディルク、体は大丈夫?」

『なぜそう聞く?』

「凄く疲れているのが感じ取れる。何かあった?」

『ハハ、凄いなアシュリーは。でも大丈夫だ。アシュリーの感情が流れ込んできて、俺を癒してくれている。』

「本当に?」

『本当だよ。』

「それなら良いけど……」

『そこからインタラス国の王都は遠いか?』

「そんなに遠くはない筈だ。2、3日で着くと思うよ。」

『俺は明日、そこに行く。寄れるのであれば、そこで会う事は出来るか?』

「うん、会える……」

『またこうして話をしたい。石が光ったら触って欲しい。』

「分かった。」

『ではまたな、アシュリー。』

「うん、また。ディルク……」


フッと光が消えた。

光が消えても、暫くは石を握りしめたまま、ディルクとの会話を思い出していた。

ディルクの一言一言が、私の心に染み込んで行く。



声を感じただけなのに。


何故こんなにも心が満たされるんだろう。


私は


ディルクの事が好きなんだ……






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